無職が始める異世界争乱記

六輝ガラン

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争乱1 インシジャーム砂漠

閑話 歪な三角関係-3

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 本宮より離れた外宮。裏手は崖に面している。正面口に続く通路へは本宮を通過しなければ辿りつけない。
 通称は影宮。元々は、闇に魅入られた王族を幽閉するために建てられたときいている。給仕達は、亡霊がでるなどと噂しているが、実際は、人目に触れることが憚られる客人の宿泊所として使っている。
 亡国の王族、命を狙われている希少種などなど。特殊な事情持ちが一時的に逗留するが、今は伽藍洞だ。彼らが安息の日々を送っていることを切に願う。
 堅牢なつくりから、避難所に指定しているが、無論、収容できる人数には限りがある……。

 ん、あれは? 
 入口周辺で神代栄太とお供の火竜が慌ている。 神代栄太と火竜が何かを引きずり始める。
「何をやってーー」
 飛び込んできた現実を理解できない。咄嗟に、遮蔽の術式を行使する。月夜で良かった。匂いや音まで隠匿することはできないが、どうやら気づかれてはいないらしい。
 事実を確かめるために慎重に近づく。


 気を失った兵士ーー門番を見下ろしながら神代栄太が腕組みしている。
 火竜がぎらついた目付きで門番の匂いを嗅いでいる。
 仮に火竜が門番を咀嚼しようとしたら私はどうすればいいのだろうか。彼の者の機嫌を損ねれば助力は得られないかもしれない。
 家臣の命かバリークの未来か。


『ガブのせいだからな』
『ギィ!ギィ!』
 火竜が抗議の声を上げた。
『俺は悪くない。ガブが墜落するのがいけないんだぞ』
 火竜の大きさからして、神代栄太を背に乗せるのは不可能だろう。
『ギィィ、ギィギィ!!』
 火竜が鱗に覆われた尻尾を地面に叩きつける。
『わかった、わかった。そんな怒るなよ。後で、骨付き肉を買ってやるから』
『ギィ~、ギィ~』
『何、果物のほうがいいのか』
『ギィギィ』
『ずいぶんと吹っ掛けるな。まぁ、何にしても作戦を成功させないとな』
 神代栄太は一体何を企んでいるのだろう。


『ヤバイ、見つかった。一時離脱だ』
 火竜がバサバサと羽ばたいて上昇する。その後ろ脚を神代栄太が掴んだ。
 一瞬、沈んで、再浮上。複数の足音が近づいてくる。
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