126 / 202
争乱1 インシジャーム砂漠
閑話 歪な三角関係-3
しおりを挟む
本宮より離れた外宮。裏手は崖に面している。正面口に続く通路へは本宮を通過しなければ辿りつけない。
通称は影宮。元々は、闇に魅入られた王族を幽閉するために建てられたときいている。給仕達は、亡霊がでるなどと噂しているが、実際は、人目に触れることが憚られる客人の宿泊所として使っている。
亡国の王族、命を狙われている希少種などなど。特殊な事情持ちが一時的に逗留するが、今は伽藍洞だ。彼らが安息の日々を送っていることを切に願う。
堅牢なつくりから、避難所に指定しているが、無論、収容できる人数には限りがある……。
ん、あれは?
入口周辺で神代栄太とお供の火竜が慌ている。 神代栄太と火竜が何かを引きずり始める。
「何をやってーー」
飛び込んできた現実を理解できない。咄嗟に、遮蔽の術式を行使する。月夜で良かった。匂いや音まで隠匿することはできないが、どうやら気づかれてはいないらしい。
事実を確かめるために慎重に近づく。
気を失った兵士ーー門番を見下ろしながら神代栄太が腕組みしている。
火竜がぎらついた目付きで門番の匂いを嗅いでいる。
仮に火竜が門番を咀嚼しようとしたら私はどうすればいいのだろうか。彼の者の機嫌を損ねれば助力は得られないかもしれない。
家臣の命かバリークの未来か。
『ガブのせいだからな』
『ギィ!ギィ!』
火竜が抗議の声を上げた。
『俺は悪くない。ガブが墜落するのがいけないんだぞ』
火竜の大きさからして、神代栄太を背に乗せるのは不可能だろう。
『ギィィ、ギィギィ!!』
火竜が鱗に覆われた尻尾を地面に叩きつける。
『わかった、わかった。そんな怒るなよ。後で、骨付き肉を買ってやるから』
『ギィ~、ギィ~』
『何、果物のほうがいいのか』
『ギィギィ』
『ずいぶんと吹っ掛けるな。まぁ、何にしても作戦を成功させないとな』
神代栄太は一体何を企んでいるのだろう。
『ヤバイ、見つかった。一時離脱だ』
火竜がバサバサと羽ばたいて上昇する。その後ろ脚を神代栄太が掴んだ。
一瞬、沈んで、再浮上。複数の足音が近づいてくる。
通称は影宮。元々は、闇に魅入られた王族を幽閉するために建てられたときいている。給仕達は、亡霊がでるなどと噂しているが、実際は、人目に触れることが憚られる客人の宿泊所として使っている。
亡国の王族、命を狙われている希少種などなど。特殊な事情持ちが一時的に逗留するが、今は伽藍洞だ。彼らが安息の日々を送っていることを切に願う。
堅牢なつくりから、避難所に指定しているが、無論、収容できる人数には限りがある……。
ん、あれは?
入口周辺で神代栄太とお供の火竜が慌ている。 神代栄太と火竜が何かを引きずり始める。
「何をやってーー」
飛び込んできた現実を理解できない。咄嗟に、遮蔽の術式を行使する。月夜で良かった。匂いや音まで隠匿することはできないが、どうやら気づかれてはいないらしい。
事実を確かめるために慎重に近づく。
気を失った兵士ーー門番を見下ろしながら神代栄太が腕組みしている。
火竜がぎらついた目付きで門番の匂いを嗅いでいる。
仮に火竜が門番を咀嚼しようとしたら私はどうすればいいのだろうか。彼の者の機嫌を損ねれば助力は得られないかもしれない。
家臣の命かバリークの未来か。
『ガブのせいだからな』
『ギィ!ギィ!』
火竜が抗議の声を上げた。
『俺は悪くない。ガブが墜落するのがいけないんだぞ』
火竜の大きさからして、神代栄太を背に乗せるのは不可能だろう。
『ギィィ、ギィギィ!!』
火竜が鱗に覆われた尻尾を地面に叩きつける。
『わかった、わかった。そんな怒るなよ。後で、骨付き肉を買ってやるから』
『ギィ~、ギィ~』
『何、果物のほうがいいのか』
『ギィギィ』
『ずいぶんと吹っ掛けるな。まぁ、何にしても作戦を成功させないとな』
神代栄太は一体何を企んでいるのだろう。
『ヤバイ、見つかった。一時離脱だ』
火竜がバサバサと羽ばたいて上昇する。その後ろ脚を神代栄太が掴んだ。
一瞬、沈んで、再浮上。複数の足音が近づいてくる。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる