無職が始める異世界争乱記

六輝ガラン

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争乱1 インシジャーム砂漠

百十五話 作戦会議-13

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「無茶はしないようにする。節度を守るっていうのは言葉が違うかもしれないけどさ」
 力の循環現象――アワイ、ガブ、ヒジリと共闘する上で不可欠な現象。受ける影響を零にはできなのだとしたら、緩やかであっても俺は変貌して行く。
 それを是とできないのであれば、主などと呼ばれる資格はないだろう。

「凡夫であれば、このような心配など無用の長物であるのでございますが……。主様という器は、いくらでも力を蓄積してしまうのでございますよ」
 過剰な力を受けた使役術使いの行く末が気になるところではある。膨らみすぎた風船が破裂するように、息絶えてしまうのだろうか。笑えない冗談だ。

 アワイの口ぶりから察するに俺は破裂することなく、膨らみ続けるタイプみたいだ。力と人間らしさは反比例の関係にある。力がなければ何も為せず。強大な力を手にすれば、原初の志は歪む。
 いくらブレーキ役がいたとしても、限度がある。使用制限を設けるべきか。人らしさを保てるギリギリのラインを見極めなければ……。全てを解決した後で、俺が一番の脅威とかってことになったら笑えない。
 
「とりあえず劣化再現の同時展開は、避けるよ」
 所詮は劣化コピー。正攻法で数段格上の相手に優ろうと思ったら、かなりの数を同時展開しなければならない。もう一つの使い道は、不安定過ぎて使いたくはない。

「そうでございます。主様のあの御力は乱発すべきではありません。危うい均衡の上に成り立つ世界を終焉に導く引き金になりかねませんので……」
「大げさ過ぎるだろう。まあ、でも、今の俺は違う選択肢も選べる環境にいるわけだし、無理に劣化再現を磨く必要もないよな」
 すでに頭打ちで、天井を把握できている力とまだ原石で未知数の力。後者のほうが伸びしろがあるわけだ。

 猶予はあまり残されていない。どれだけあがいても俺達だけで巨悪竜バハムート・アペプを倒せる可能性は低いだろう。
 弱さを拒絶して、多くのものを犠牲に討伐を成功させることは愚行だ。だから、人らしくあろうとする俺達は、他者の助力を勝ち得なければならない。

 ソールにフェン。ヒラール姫、ノックス、月の牙。それに加えて、姉ちゃんと凛がいれば格段に勝率は上がるはずだ。
「アワイ、俺はソールのところへ行ってくる」
「ソール殿はすでに覚醒半ばでございます。あと数日で全ての感情を失い、今生の記憶はただの記録に変質するはずでございます。何もしなくても、太陽神としての使命を果たそうとバハムート・アペプに挑むはずでございますよ」
 合理的に考えれば、太陽神に至ったソールのほうが戦闘力は高いだろう……。それがどうした。
「俺は、得体の知れない太陽神なんかよりソールのほうが信頼できる」
「しかし――」
「アワイ、俺は人らしくありたいと思っている。だから、非合理的でも仲間を助けたい」
 アワイは短く息を吐いてから「ご随意に」と呟いた。
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