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VTuberのその「次」は…?
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数年前から考えていることだが、VTuberのその「次」には、いったい何がくるだろう。
個人的に想像しているのが、VTuberの「パーソナル化」である。
現在、VTuberは主にYouTubeを拠点として活動している。これは、テレビを拠点として活動するタレントと同様である。
そんな彼らが、もし、自分の手元で動き始めたらどうだろうか。
私が考えているのは、スマートフォンに常駐可能な、Virtual Partner(バーチャルパートナー、VPartner、VP)の登場だ。
専用のアプリをダウンロードしインストールすると、まず、ゲームのキャラメイクのように、自分好みにVPartnerをカスタマイズできる。性別、髪型、体格、顔はもちろん、種族や服装、ボイスなども自由自在に作ることができる。行動原理は、基本的にはAIによって制御される。
これが、VTuberの「パーソナル化」である。それまでは主に画面の向こうの存在だったものが、一気に身近に、しかも自分好みのものと、24時間ずっと一緒にいられるのだ。
様々な弊害も考えられる。
若年層の晩婚化・未婚化はより加速するだろう。生身の人間より親身に常に寄り添ってくれるのだから。そうなると、反対に生身の人間とのコミュニケーションはより貴重なものとなるだろう。若いうちからVPartnerと関わることが日常となれば、生身の人間とのコミュニケーションを難しく、複雑で煩わしいと感じるようになっても不思議ではない。
そこまで悲観せずとも、VPartnerによって「対人コミュニケーション能力は向上する」という意見もあるだろう。実際、そのような活用も大いに見込まれると思う。
要は「依存してしまうか否か」「あくまでツールとして使用できるかどうか」だろう。
次にVTuberの今後についても語っておきたい。
海外の例は寡聞にして知らないが、「Vの文化」は日本国内において大きく発展し、花開いたものだと思っている。
ただ、いつか終わりがくるものだとも思っている。
その最たる要因は、「老い」である。これはどうしても避けられない。
たとえば、にじさんじ所属の月ノ美兎が引退した時のことを考えてみる。彼女はいわゆる一期生で、現在までにじさんじは元より、VTuber界を牽引してきたと評しても過言ではないと思う。また、彼女は日本のサブカルチャーの看板となり、発信者にもなっていると思われる。
彼女は――彼女だけではないが――苦しい時期を乗り越えてきた。引退を考えたこともあったと、いつかの動画で語っていたように記憶している。Wikiを参照すれば2018年から活動しており、その間、後輩たちの中には引退した者もいた。原因は様々だが、「老い」はない。
月ノ美兎が老いで引退する時――それは、もう動画を作ったり話をしたり、それまでのように活動する意欲が湧いてこなくなった時――VTuber界に激震が走ることはいうまでもない。
月ノ美兎の代わりになるような存在はない。VTuberの多くが個性的で唯一無二の存在ではあるものの、月ノ美兎はやはり別格である。彼女にかかればどのような話題もエンターテイメントになる。「歯医者にいった」「人間ドックにいった」「近所を散歩した」「味覚をバグらせてみた」「LINE誤爆撤回チキンレース」…独特の雰囲気とトーク力も相まって、一過性で終わらない魅力的な動画を作ることに長けている。才能と努力のハイブリッドだ。
そんな彼女の引退により、にじさんじやVTuber界は大きな立て看板を失うわけで、その損失は想像以上に大きいものと見込まれる。長年慣れ親しんできた視聴者たちの喪失感は、察するに余りある。「美兎ロス」のトレンド入りはほぼ間違いない。
一方、「老い」を理由に引退するのは、VTuberにとって理想的ともいえる。本人の不祥事は論外だが、病気や精神的ストレスなどによる引退は、できれば避けたい。本人も応援してきたファンも、中途半端な空しさが残る。「老い」は「やり切った」という意味であり、有終の美を飾るのにふさわしい。
VTuberの「老い」については、また別の見方もできる。
彼女は「高校生」だが、これを「社会人」に成長させることにより、「認識の乖離」という問題を解決できる。はっきりいってしまえば、キャラクターと演者との間の、年齢や見た目との差異だ。VTuberは声優のように声だけで表現するものではなく、本人の人格や性格が大きく反映される。演者がキャラクターとの間にギャップを感じ、違和感を覚えるようになった時、それがまさしく「老い」といえる。
今、これを執筆している時点で月ノ美兎が上げている最新の動画は、『異国の 知らん 野菜』である。例によってチャレンジ精神溢れる料理&食レポ動画となっている。
この動画を視聴して思ったのは、案外、「大人の月ノ美兎」という展開もアリだなと。
どういうことかというと、たとえ月ノ美兎が結婚して人妻になったとしても、その魅力は変わらないということである。彼女ほどのエンターテイナーであれば十分独立してやってもいけるだろう。にじさんじがそれを許すか、彼女がそれを望むかはまた別の話だが。
結婚して子供をもうけ、その日常を彼女の視点で動画にしても面白いと思うし、独身を貫いて新たな展開を模索するのもいいかもしれない。いずれにせよ、長く続けていれば物事の見方に変化が表れるはず。それこそ「おばあちゃん」になっても――非現実的かもしれないが――VTuberを続けていたら、紫綬褒章は狙えるかもしれない。
書いているうちに本題から逸れてしまった。
私が本稿でいいたいことは、VTuberのその「次」は、VPartnerという個々人に最適化された新たなVの存在である。そうした時代を迎える時、それまで活動してきたVTuberの多くが引退することになるだろう。
書いていて何だか悲しくなってきた。
だが、時代の移り変わりとは、本来そういうものなのだ。
個人的に想像しているのが、VTuberの「パーソナル化」である。
現在、VTuberは主にYouTubeを拠点として活動している。これは、テレビを拠点として活動するタレントと同様である。
そんな彼らが、もし、自分の手元で動き始めたらどうだろうか。
私が考えているのは、スマートフォンに常駐可能な、Virtual Partner(バーチャルパートナー、VPartner、VP)の登場だ。
専用のアプリをダウンロードしインストールすると、まず、ゲームのキャラメイクのように、自分好みにVPartnerをカスタマイズできる。性別、髪型、体格、顔はもちろん、種族や服装、ボイスなども自由自在に作ることができる。行動原理は、基本的にはAIによって制御される。
これが、VTuberの「パーソナル化」である。それまでは主に画面の向こうの存在だったものが、一気に身近に、しかも自分好みのものと、24時間ずっと一緒にいられるのだ。
様々な弊害も考えられる。
若年層の晩婚化・未婚化はより加速するだろう。生身の人間より親身に常に寄り添ってくれるのだから。そうなると、反対に生身の人間とのコミュニケーションはより貴重なものとなるだろう。若いうちからVPartnerと関わることが日常となれば、生身の人間とのコミュニケーションを難しく、複雑で煩わしいと感じるようになっても不思議ではない。
そこまで悲観せずとも、VPartnerによって「対人コミュニケーション能力は向上する」という意見もあるだろう。実際、そのような活用も大いに見込まれると思う。
要は「依存してしまうか否か」「あくまでツールとして使用できるかどうか」だろう。
次にVTuberの今後についても語っておきたい。
海外の例は寡聞にして知らないが、「Vの文化」は日本国内において大きく発展し、花開いたものだと思っている。
ただ、いつか終わりがくるものだとも思っている。
その最たる要因は、「老い」である。これはどうしても避けられない。
たとえば、にじさんじ所属の月ノ美兎が引退した時のことを考えてみる。彼女はいわゆる一期生で、現在までにじさんじは元より、VTuber界を牽引してきたと評しても過言ではないと思う。また、彼女は日本のサブカルチャーの看板となり、発信者にもなっていると思われる。
彼女は――彼女だけではないが――苦しい時期を乗り越えてきた。引退を考えたこともあったと、いつかの動画で語っていたように記憶している。Wikiを参照すれば2018年から活動しており、その間、後輩たちの中には引退した者もいた。原因は様々だが、「老い」はない。
月ノ美兎が老いで引退する時――それは、もう動画を作ったり話をしたり、それまでのように活動する意欲が湧いてこなくなった時――VTuber界に激震が走ることはいうまでもない。
月ノ美兎の代わりになるような存在はない。VTuberの多くが個性的で唯一無二の存在ではあるものの、月ノ美兎はやはり別格である。彼女にかかればどのような話題もエンターテイメントになる。「歯医者にいった」「人間ドックにいった」「近所を散歩した」「味覚をバグらせてみた」「LINE誤爆撤回チキンレース」…独特の雰囲気とトーク力も相まって、一過性で終わらない魅力的な動画を作ることに長けている。才能と努力のハイブリッドだ。
そんな彼女の引退により、にじさんじやVTuber界は大きな立て看板を失うわけで、その損失は想像以上に大きいものと見込まれる。長年慣れ親しんできた視聴者たちの喪失感は、察するに余りある。「美兎ロス」のトレンド入りはほぼ間違いない。
一方、「老い」を理由に引退するのは、VTuberにとって理想的ともいえる。本人の不祥事は論外だが、病気や精神的ストレスなどによる引退は、できれば避けたい。本人も応援してきたファンも、中途半端な空しさが残る。「老い」は「やり切った」という意味であり、有終の美を飾るのにふさわしい。
VTuberの「老い」については、また別の見方もできる。
彼女は「高校生」だが、これを「社会人」に成長させることにより、「認識の乖離」という問題を解決できる。はっきりいってしまえば、キャラクターと演者との間の、年齢や見た目との差異だ。VTuberは声優のように声だけで表現するものではなく、本人の人格や性格が大きく反映される。演者がキャラクターとの間にギャップを感じ、違和感を覚えるようになった時、それがまさしく「老い」といえる。
今、これを執筆している時点で月ノ美兎が上げている最新の動画は、『異国の 知らん 野菜』である。例によってチャレンジ精神溢れる料理&食レポ動画となっている。
この動画を視聴して思ったのは、案外、「大人の月ノ美兎」という展開もアリだなと。
どういうことかというと、たとえ月ノ美兎が結婚して人妻になったとしても、その魅力は変わらないということである。彼女ほどのエンターテイナーであれば十分独立してやってもいけるだろう。にじさんじがそれを許すか、彼女がそれを望むかはまた別の話だが。
結婚して子供をもうけ、その日常を彼女の視点で動画にしても面白いと思うし、独身を貫いて新たな展開を模索するのもいいかもしれない。いずれにせよ、長く続けていれば物事の見方に変化が表れるはず。それこそ「おばあちゃん」になっても――非現実的かもしれないが――VTuberを続けていたら、紫綬褒章は狙えるかもしれない。
書いているうちに本題から逸れてしまった。
私が本稿でいいたいことは、VTuberのその「次」は、VPartnerという個々人に最適化された新たなVの存在である。そうした時代を迎える時、それまで活動してきたVTuberの多くが引退することになるだろう。
書いていて何だか悲しくなってきた。
だが、時代の移り変わりとは、本来そういうものなのだ。
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