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第2話 戦士の夢
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魔王の首は、馬車に揺られていた。
魔王討伐を果たした勇者一行は、魔王城から王都へと向かっている。討伐成功の知らせは早駆けですでに送られており、吉報が各駅からも続々と届き始めた暁には、王都で盛大に凱旋を迎える準備が進むことだろう。
「それにしても」
魔術師リックがいった。
「実にあっけない最期でしたね。いままで数知れず討伐部隊を全滅させてきたといわれていたのに。私は正直、かなりの苦戦を強いられるとばかり思っていたのですが」
「まったくだ。オデもそう思っていただよ」
戦士イッチが激しく首肯する。
「オイラのこの斧がだよ、ヤツの首根っこをこう叩き落とす夢ばっかみてただ。でもどうだ? いざ蓋開けてみれば……」
「勇者様の大剣が、魔王の息の根を止めていた」
言葉を引き取ったのは、治癒師チキ。
「わたしはでも、勇者様がとどめを刺した方が様になってよかったと思ってるけどね」
「んでもよぉチキ、オイラかみさんに『魔王の首はオレが獲ってくっど! ガキと一緒に正座して待っとっけ!』っていっちゃっただよ」
「呆れた。自分の立ち位置ってものを少しは考えなさいよ……」
「フフッ」
そのとき、勇者アイルは笑った。
「イッチ。何なら、お前の手柄にしてもいいんだぜ?」
「ふぉおおおマジでがっ!?」
「ちょ、ちょっとアイル、何いってるの?」
「あはは。冗談に決まってるじゃないですか。ねえアイル?」
イッチ、チキ、リックの視線を集めるアイル。
「リック。俺は面白い冗談しかいわないんだぜ?」
「えっ……」
「俺は本気で、イッチに花を持たせようと考えてる」
「くぅううアイル!! やっぱオメーは最高の勇者だあ!!」
イッチに抱きつかれ、アイルは歯を見せて笑った。
「いやいや、ちょっと待ちなさいってば。本当にあなたそれでいいの? 実際あなたがとどめを刺したわけだし、勇者が魔王の息の根を止めたって体裁も考えないと」
「体裁なんかどうでもいいよチキ。だいたい俺たちは四人で魔王討伐の旅に出て、多くの魔物を倒し、幾多の謎を解きながら魔王城まで辿り着いた。それでもう十分体裁は整ってる。魔王の最期を決めたのは誰か、なんてどうでもいい話さ」
「そ、そうなのかしら……」
チキが助けを求めるような目でリックを見た。
「私は、アイルがそこまでいうのなら、止めはしませんが……」
「リックまでそんなこと……」
「話のわかる魔術師は好きだよ」
アイルは頷く。
「しかしアイル。これから王都までまだ時間はかかりますが、王都に到着すればまず、国王陛下との謁見があります。長旅のあらましはいいとしても、魔王の最期はどう伝えられますか?」
「そうよアイル。わたしたちには陛下への報告義務があるのよ? 嘘はつけないわ」
「魔王の最期は、イッチの口から語られる」
アイルはイッチを見た。
「イッチには、自身が魔王を討伐するという夢があった。彼が語るのはすべて夢物語だ。俺たちはただそれを聞いて頷いていればいい」
「そんな上手くいくとは思えませんがね……」
「そうよアイル。夢物語といっても、それは事実じゃない、嘘なのよ?」
「なあチキ。お前はイッチの夢を叶えてやりたくないのか?」
「そんなこといってるんじゃないわ!」
「まあまあまあ! オデのことでおまいらが喧嘩するのは、オラ忍びねえだよ」
イッチは、しかし髭を繰りながら微笑んでいる。
「でぇじょうぶだぁ。オラ、国王の前で武勇伝披露すんの夢だったんだで。頭の中でこうしてああしてって、何度も何度も考えてただ。かみさんとガキどもの喜ぶ顔想像したら、オラもういんまのいまから胸がワクワクして止まらねえだよ……!」
「イッチもこういってる。な? 細けえことは抜きにしようや」
アイルがニカッと笑うと、チキは反論できなくなってしまった。
魔王討伐を果たした勇者一行は、魔王城から王都へと向かっている。討伐成功の知らせは早駆けですでに送られており、吉報が各駅からも続々と届き始めた暁には、王都で盛大に凱旋を迎える準備が進むことだろう。
「それにしても」
魔術師リックがいった。
「実にあっけない最期でしたね。いままで数知れず討伐部隊を全滅させてきたといわれていたのに。私は正直、かなりの苦戦を強いられるとばかり思っていたのですが」
「まったくだ。オデもそう思っていただよ」
戦士イッチが激しく首肯する。
「オイラのこの斧がだよ、ヤツの首根っこをこう叩き落とす夢ばっかみてただ。でもどうだ? いざ蓋開けてみれば……」
「勇者様の大剣が、魔王の息の根を止めていた」
言葉を引き取ったのは、治癒師チキ。
「わたしはでも、勇者様がとどめを刺した方が様になってよかったと思ってるけどね」
「んでもよぉチキ、オイラかみさんに『魔王の首はオレが獲ってくっど! ガキと一緒に正座して待っとっけ!』っていっちゃっただよ」
「呆れた。自分の立ち位置ってものを少しは考えなさいよ……」
「フフッ」
そのとき、勇者アイルは笑った。
「イッチ。何なら、お前の手柄にしてもいいんだぜ?」
「ふぉおおおマジでがっ!?」
「ちょ、ちょっとアイル、何いってるの?」
「あはは。冗談に決まってるじゃないですか。ねえアイル?」
イッチ、チキ、リックの視線を集めるアイル。
「リック。俺は面白い冗談しかいわないんだぜ?」
「えっ……」
「俺は本気で、イッチに花を持たせようと考えてる」
「くぅううアイル!! やっぱオメーは最高の勇者だあ!!」
イッチに抱きつかれ、アイルは歯を見せて笑った。
「いやいや、ちょっと待ちなさいってば。本当にあなたそれでいいの? 実際あなたがとどめを刺したわけだし、勇者が魔王の息の根を止めたって体裁も考えないと」
「体裁なんかどうでもいいよチキ。だいたい俺たちは四人で魔王討伐の旅に出て、多くの魔物を倒し、幾多の謎を解きながら魔王城まで辿り着いた。それでもう十分体裁は整ってる。魔王の最期を決めたのは誰か、なんてどうでもいい話さ」
「そ、そうなのかしら……」
チキが助けを求めるような目でリックを見た。
「私は、アイルがそこまでいうのなら、止めはしませんが……」
「リックまでそんなこと……」
「話のわかる魔術師は好きだよ」
アイルは頷く。
「しかしアイル。これから王都までまだ時間はかかりますが、王都に到着すればまず、国王陛下との謁見があります。長旅のあらましはいいとしても、魔王の最期はどう伝えられますか?」
「そうよアイル。わたしたちには陛下への報告義務があるのよ? 嘘はつけないわ」
「魔王の最期は、イッチの口から語られる」
アイルはイッチを見た。
「イッチには、自身が魔王を討伐するという夢があった。彼が語るのはすべて夢物語だ。俺たちはただそれを聞いて頷いていればいい」
「そんな上手くいくとは思えませんがね……」
「そうよアイル。夢物語といっても、それは事実じゃない、嘘なのよ?」
「なあチキ。お前はイッチの夢を叶えてやりたくないのか?」
「そんなこといってるんじゃないわ!」
「まあまあまあ! オデのことでおまいらが喧嘩するのは、オラ忍びねえだよ」
イッチは、しかし髭を繰りながら微笑んでいる。
「でぇじょうぶだぁ。オラ、国王の前で武勇伝披露すんの夢だったんだで。頭の中でこうしてああしてって、何度も何度も考えてただ。かみさんとガキどもの喜ぶ顔想像したら、オラもういんまのいまから胸がワクワクして止まらねえだよ……!」
「イッチもこういってる。な? 細けえことは抜きにしようや」
アイルがニカッと笑うと、チキは反論できなくなってしまった。
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