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13.迎えてしまった結婚式
しおりを挟むイザベラとフェルナンドの結婚式は皇宮で行われた。
それは皇帝を始め、皇帝の妃たちやイザベラの弟や妹たちも参列するためだった。
一番下のまだ三歳の妹は乳母に抱かれている。
この式は第一皇女の結婚を祝う以上の意味を持っていた。
皇女の降嫁先であるユペール侯爵家は次代を代表する家だと目されている。
イザベラの夫となるフェルナンドが次期皇帝のアーロンの覚えがめでたいことが知られているからだ。
当然、招待された貴族たちは余程の事情がない限りは当主自身が出席している。
玉座に座る皇帝の横には、イザベラの実の母である正妃がいる。
機嫌はよさそうではない。きっとまた、イザベラが男だったらとでも考えているのだろう。
母はイザベラの支度部屋にやってきた時にも、祝いの言葉も口にしなかった。
他の側妃たちのドレスや宝石の話題ばかりを一方的に話し終わると出て行ってしまった。
喜ばしい出来事ではないと母は思っているのだろうと、イザベラは少し悲しくなった。
弟のアーロンは心から喜んでいるのが見て取れる。とても機嫌がよさそうに周囲と言葉を交わしていた。
イザベラは結婚祝いの挨拶を受け終わると、フェルナンドの指示のもと、着替えもせずにユペール侯爵家の馬車に乗り込んだ。
イザベラは、遠くにでも三人の侍女たちの姿が見えないだろうかと辺りを見回したけれど、その姿は見えなかった。
いくら慌ただしくても、支度が終わった時に、お礼を伝えておけばよかったとイザベラは後悔した。
三人がいなければ、多分今のイザベラはいなかった。
イザベラはてっきり本邸に寄ってユペール侯爵夫妻に挨拶をするものと思っていた。
しかし、馬車は二人が暮らすことになる別棟に向かっている。
「侯爵と夫人へのご挨拶は明日の予定かしら」
「父はまだ王宮ですよ。母は領地から出ても来ません。挨拶は気になさらなくていいですよ。そのうち領地に行けば会えますから」
「そう」
そういえば、ユペール侯爵夫人は夜会に出て来たところを見たことがない。
噂話に全く興味がなかったイザベラは、フェルナンドの家族のことさえよく知らない。
斜め前に座るフェルナンドと視線が合わないように、イザベラはなんとなく顔を背けた。
この後、自分にどんな運命が待ち受けているのか分からない。
フェルナンドは信じることにしたとしても、この家は敵だらけかも知れない。
皇宮でも警戒は解けなかったけれど、まだ信用できる侍女たちがいた。でも、そんな存在がここにもいてくれるかは分からない。
イザベラは手を伸ばしてきたフェルナンドに冷たくなっていた手を握られた。
でも、その不安は消えなかった。
イザベラは執事だという初老の男性から丁寧な挨拶を受けると、以前見に来た自分の部屋へとフェルナンドに案内される。
フェルナンドとは扉の前で分かれた。それぞれ初夜の準備があるからだ。
イザベラは執事が開いた扉の向こうへ、恐れる心を叱咤して、ゆっくりと足を踏み入れた。
そこにはお仕着せに身を包んだ三人の女性が深々と頭を下げて立っていた。イザベラを待ち構えていたようだった。
後ろで扉が閉じられると共に、イザベラは立ち止まった。彼女は気づいた。
そして、震える声で「顔を上げて」と声を絞り出す。
顔を上げた三人に、イザベラは泣きながら駆け寄った。
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