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14.守ってくれていた人たち
しおりを挟む部屋で待っていたのは、ここにはいるはずのない、イザベラの三人の侍女たちだった。
「なんで、ここに?」
イザベラは、流れる涙ものそのままに、一人ずつ顔を見る。
それは間違いなく、ハンナ、リズ、リュシーだった。三人とも、いたずらに成功したことを喜ぶような笑顔だった。
イザベラは涙が抑えきれないでいるというのに。
「まあ、これからお支度をしますのに、泣いてはいけませんわよ」
「フェルナンド様を虜にせねばなりません」
「あら、もう若旦那様よ。それに、今さら何もしなくても、あの方は殿下……いえ、若奥様に夢中でいらっしゃいますわ」
イザベラはとにかく驚いて、泣きながら嗚咽が漏れるのもそのままに、「なんで、あなたたちが?」とまた聞いた。
「私たちの母親たちは皆、フェルナンド様のお母様の実家からついて来たメイドでした」
一番年上のハンナがそう話し出した。
イザベラの暗殺未遂事件の後、没交渉となっていた領地屋敷にいるユペール侯爵夫人の元をフェルナンドが訪ねたそうだ。
「信頼できる侍女を王宮に送り込みたい」と彼が母親である侯爵夫人に言うのを聞いていたのだと、三人は言った。
父親経由で探しては、イザベラの身を余計に危険にさらすことになるだろうし、自分自身には人を見定める目がまだないからと、フェルナンドは父とは不仲な母親に頭を下げて協力を頼んだのだという。
そして、彼の要求に応えるべく、侯爵夫人は三人を選んだ。
この三人は、メイドである母親が、侯爵夫人がユペール侯爵家へ嫁ぐ時に生家からついて来て、そのまま女主人の元で働いている。
そして、この三人自身もメイドとして侯爵夫人に仕えていたからだ。
そして、自分たちの雇い主の嫡男であるフェルナンドに頭を下げられた。
それにはとても驚いたのだと言って、彼女たちは笑った。
「フェルナンド様は、婚約者様がご自分の元に嫁いで来る前に害されることを恐れておいででした」
「それに、殿下がお食事も絶っておられると言って、大変動揺されておりました」
イザベラは、こんなに素晴らしい侍女たちが、よく自分の元に来てくれたものだと思っていた。
でも、それもフェルナンドの采配だった。
「それで、毒味まで?」
「はい。ですが、すでにフェルナンド様がお父上を説得されて、毒を仕込むような真似はしないように手配されていました。でも、殿下はそう言われても、安心してお食事を召し上がれる状態ではありませんでしたでしょう? ですから、毒味をさせていただいていたのです」
イザベラはついに我慢できなくなってしゃがみ込んだ。
溢れる涙を隠そうと手で顔を覆う。でも声は漏れてしまう。
まるで子どものようで恥ずかしいのに、それを止められない。
一人で怯えていた日々を、フェルナンドは何も言わずに支えてくれていた。
彼を嫌っていたイザベラに何を言われても、黙って微笑んでいた。
「お側でお守りするようにと命じられておりました」
「でも、もう心から安心してお暮らしになれますよ。この別棟の使用人として集められた者は全て、ユペール侯爵家とは縁のない者たちですから」
「若奥様、さあ、お支度をいたしましょう。若旦那様がお待ちですよ」
イザベラは三人に支えられながら寝支度をされた。
涙を堪えるように言われても、次々に溢れてくるそれを止められなかった。
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