【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう

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第58話 奴隷

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賢者は、目を覚ましたサリーと対峙する。
サリーが何を考えているか探りを入れていた。


「お前は晴れて自由の身となった……
 もう奴隷では無いよ」


「……」


「これからお前は何をしたい?」


サリーは目の前の人物が誰なのか知っていた。
時の賢者ロゼ、魔界の裏切り者で、
はるか昔に大罪を犯している。


「私は復讐がしたい……」


賢者は、復讐の相手が誰なのか、
気になっている。


「恐らく魔界の魔族だと思うけど、
 君の復讐したい人は誰?」


「一人目は、エレノアだったけど死んだ……
 後は……」


その名前は、賢者が聞き覚えのある人物だった。
魔界でもかなりの実力者で、
今のサリーの実力では、復讐は叶わないだろう。


「そうだね……
 しばらくは、クレアのところに住みな!」


「え?」


賢者は、これが一番良い選択だと判断した。
まず復讐心だけで生きるのではなく、
人と触れ合って欲しいと考えたのだ。
またサリーに対して護衛と監視は必要で、
クレアが適任だと考える。


「それに、息子は覇王を持っているぞ……」


サリーは驚き、目を見開く。
そして笑みを浮かべた。
魔族に対する最高戦力である覇王。
因縁の者がまさか近くにいるとは思わない。


「昨日戦っている時に、
 気づかなかったのかい?」


「意識も剥奪されていたので」


魔族は目的達成のためなら手段を選ばない。
賢者は、そのやり方が昔から好きではなかった。


「まあ言っておくけど、
 クリスには奴隷術は効かないよ」


「え?」


「だって、君より魔力多いからね」


賢者が指摘するのは、奴隷術の効果だ。
従属化と同様に奴隷術も相手の魔力量が上だと効かないのだ。


「逆に返り討ちにされるかもね……
 気になるなら試してみると良いよ。
 後悔するけどね」


賢者は不敵な笑みを浮かべる。
サリーは、その笑みに苛立ちを覚えたが、
今は争う利点がないため感情を押し殺した。


「助言通り可能であれば、
 その家に住まわせてもらいます」


少なくとも覇王の隣にいれば、
いつか会える可能性が高まる。
サリーの憎き相手、四天王に。


「まあ、クリスやその家族に手を出したら、
 私も容赦しないけどね……」


「しませんよ……
 私にも仲良くする、
 メリットがあるうちは」


魔族は計算高い種族で合理的に行動する。
賢者は、その種族の特性を利用して、
クレアの家に住まわせる事に成功した。


そして、そろそろ起きる皆の元へ行き、
朝食にしようと賢者は提案する。


「そろそろ朝ごはんの時間だぞ」


「へ?」


サリーは、捕虜同然の自分にそんな物を用意されるのかと疑問に思っている。



「ユーリに全て食われてしまうぞ……
 早く行こう!」



「は、はい」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



カートの朝は早い。
自然と朝早くに目が覚めて、
やる事もないため訓練をする。
じっとしていられない性格なのだ。


今日はエルフの里を走っている。
エルフ達も朝早くに起きており、
今日の祭の用意でかなり忙しそうだ。
小さい子供まで荷物を運んでいる。

そして前を通る子供を手伝おうと声をかけた。
荷物を落として壊してしまいそうだったからだ。


「お嬢さん、
 おじさんが運ぶの手伝ってあげるよ」


単純に好意での行動であるが、
その女の子も感謝をしながら挨拶した。


「あの、私の妹が、
 ご迷惑をおかけしました……」


不意に後ろから声をかけられる。
振り向くと、そこにエルフの金髪美女が立っていた。
その瞬間、カートに稲妻が走る。


「あ、あ、あの私は、朝の稽古中でして、
 たまたま通りがかった次第であります」


緊張のせいで、カートは話した事もない喋り方で話してしまう。


「ふふふ、力持ちなんですね……」


「ま、任せてください!
 身体を鍛えているので」


筋肉を見せながらポーズする。
エルフの美女もそんなカートを笑っている。


「あの、あなたのお名前は?」


「イリーナと申します
 貴方は何というお名前ですか?」


「私は、カートと申します
 イリーナさん、お名前も美しい」


魔宝祭でエルフは出店を開く。
その店番はとても過酷だ。
各国から現れる観光客の数は多いため、
休憩が取れない日も続く。
イリーナも少し疲れた表情をしていた。


「イリーナさん、
 お身体の具合が悪いのですか?」


「あ、あら……
 ちょっと疲れが出てしまって……
 店番のせいですね」


カートは、明らかに疲れるイリーナを心配した。
そして屋台で食べ物中心に販売しているそうだ。



「私が手伝いましょう!」



「え?悪いですよ!」



「任せてください!
 自炊もしてますから、
 何でもできますよ」


何故か祭の手伝いをする事になったのだ。
恋は盲目である……
カートの頭の中は、イリーナという名前で一杯になってしまった。
もしかするとカートにも春が来るのかもしれない。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




そしてエルフの里、長老の家に一同は集まる。
賢者が声をかけてぞろぞろと椅子にかけた。

「朝ごはんにするぞ~」


「ん?カートがいないな」


クレアは、カートがまだ着席していないのに気づく。
遅刻が大嫌いなカートにしては珍しい。


「いらないなら私が食べますよ」


ユーリは、目を星のように輝かせている。
誰にも渡さない、そんな勢いだ。


そして、賢者からサリーの話があがる。
結論として、レガードの屋敷に住む事になった。
監視はクレアが行い、必要があれば魔物などを奴隷として宮廷魔術師の手伝いもしてもらう。



「あの、ご馳走様でした…」


サリーは、感動していた。
こんなにも人間界の食事は美味しいのか。
元々奴隷に与えられる食事は質素だが、
魔界と違う食べ物はとても新鮮に感じた。


一同は祭りの最終日を楽しもうと外に出る。
そして全員驚愕してしまう。
まるで最初から出店のおじさんだったかのように振る舞うカートを見つけたからだ。


「へい、いらっしゃい」


「カ、カート、何をやっているんだ……」


クレアはジト目で見ており、
ゲイルも呆れていた。
しかし、賢者は隣のエルフを見て納得する。


「ほう、そういう事か……」


賢者の観察眼を舐めてはいけない。
隣のイリーナを見つめるカートは、
まさに恋に一直線だ。
それを賢者は一瞬で見抜いた。


「まあ、今日は休みなんだ……
 自由にさせてやろうじゃないか」


そしてクレアとクリスもイリーナを見た途端に、
ニヤニヤしながら去った。


「あいつら…」


「カートさん、疲れました?」


「いえ、イリーナさんの声を聞いて、
 むしろ元気がみなぎりました!
 イリーナさんは休んでいてください!」
 

カートは、愛の奴隷となってしまった。
男とは見栄を張る生き物だ。
だが、今日のカートは一味違う。
エルフではない人間が、祭りの出店で最高金額の売上を達成したのだった……
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