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歪む日常

一筋の光

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「...」

もはや家を出るときの一声も無くなってしまった俺を
両親に何があったのか聞かれたが答えることもしなかった。

もう孤独な毎日であった頃の学校生活よりも
昨日から始まった躁の彼女がいる生活の方が気疲れが出てきた。

誰もが教室で黙りこくって何を考えているかも想像つかない空間の中で
いくら美人な子といちゃつけても
まるで生きた心地がしない。

原因は明らかに彼女にあるのだろうが
それも想像がつかない。

こんな今頼れそうなのは...


ピロリン

ビクッとその着信音に驚く。
普段はスマホの着信などせいぜいバイブレーションで伝えるようにさせているのに、
昨日ばかりは自分が鬱の様な状態になって音楽をかけ続けていて
いつの間にかサウンド機能全般を全開にしていたらしい。

恐る恐るスマホのスリープ状態を解除する。
スマホの画面にもびくつくのは黒田さんから連絡が来るのではないか、
と心配であるからだ。

まだ連絡先交換は言い渡されていないので一部領域は浸食されていないように
感じるが、
もはや彼女はどうあっても俺に関われるのではないかと
根拠のない怯え方をするまでになってしまった。

しかし映し出されたのは...


「あ!同好会からだ!」

思わず嬉しさのあまり声が出てしまった
SNSのグループからの通知であった。
うちはグループトークなど盛り上がることはないから
通知OFFにするまででもない。

そのことからグループに通知が入れば
他愛のない会話でなく、
活動日であることを表す

そして開いてみると
やはり部長からの不愛想な

今日は活動日だ

が書かれていた。

こんなことでも精神が落ち着きを取り戻したような気がする。
それにしてもやけに既読の数が部長の一言に着いている

と、思ったらすぐに他の3人が珍しくグループトークにメッセージを返していた

僕も話したいことがあったから丁度良かったです!、と小島。

俺も、と短く上田。

自分もです、とご丁寧に天野。

皆にも何かあったのだろうかと不安になる。
和田さんは元々考えの読めない人の上に学年も違うので知りようもないが、
他の3人は同じ学年でここまですぐに反応示したことは何か異変があったと
考えていいだろう。


「じゃあ、俺も打っておくか...」

と、小さく独り言ちてメッセージを送ろうとした時だった。


「何してるの~?」

誰かが俺の耳元まで顔を近づけてきた

「うわぁ!?」

思わず飛びのいた。
当然そこにいたのは、


「おはよ~、じゃあ行こうか?」

そうやって昨日の帰りのように手つなぎを要求してくる黒田さんだ。
気付けば昨日別れた交差点にいる。

断れるはずもなく小さく

「おはよう...」

と言って手を繋がれて登校するしかなかった。


更に今日は恋人つなぎなる手の握られ方をして、
伝わってくる体温の低さに身震いを
もう隠すことは出来なかった。
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