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歪む日常

深刻

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「さて...痛みも引いてきたので話を始めよう」

やはり無表情であっても痛かったんだ...
とは誰も言えない雰囲気に全員が無言でうなずいた。


「お前たちが感じている異変しかり先ほどの実験しかり、
 ある一つの要因が強く関係していると私は思う...」

さっきは実験だったのか...
だったらわざわざ殴らせなくても良かったのでは...?


「それはお前の彼女だ、渡辺」

急に名指しされて背筋が伸びた

「え? 黒田さんですか?」

「なんだ渡辺...彼女をまるで怪しんでいなかったわけではあるまい...?」

そう言われると...
正直その通りだ。
彼女の躁MAXからクラスは、
いや
今は学年レベルでおかしなことになっている。


「...追加して言っておくが我が3学年にも似たようなことが起きている」

その事実に皆騒然となる

「え、おいおいマジかよ?」

「そうだったんですか?」

「まさか3年もだとは予想外だったな...」

気になる節があって俺も聞いてみる

「それって昨日から今日もですか?」

「うむ...昨日に限った話ならば良かったのだが、
 今日にもこの異常事態があったためにお前たちを緊急招集した次第だ...」

それであれば
もう黒田さんの変化が無関係だとか、
非現実な見解だと笑っている場合じゃあない。
時を同じくしてこれだけの規模で異変が起こったとなれば...


「和田さん...」

俺の珍しく出す低いトーンに全員が黙った

「これってやはり前に言っていた...」

「...ああ、そうだ」

その答えに上田以外は唖然としている。

「え!? ちょ、ちょっと待てよ? 
 まさか前に言ってたオカルト現象が関係してるってのか!?」

「...僕もそれしかないと思う」

「ああ...それにオカルト現象でなく超常現象だ、馬鹿め...」

すっかり小島と天野も深刻ムードになってしまい、
上田だけが取り残されているようだ


「仮定であった憑依説が、ここらでやっと現実味を帯びてきたってのか...?」

天野はその現実を信じたくなさそうだ

「...まだ、確証ではないが...十分に可能性はある」

全員が部長の話に耳を傾ける


「先ほどの実験の通り、アレを止めたとなれば本領発揮といったところか...」

「部長...その、そこが気になるんですが一体あの実験に何の意味が...?」

体験者の俺が一番謎に思っていることだ


「うむ...それは憑依された人間というものは自分の意志でなく体が動く状態にある...
 そのため、正常で動かされている時には起きない異常が起こることがあるんだ...」

その時点の説明で首を傾げる者たちが出てきた
それを見取って部長は


「そうだな...まずは憑依とはそもそも何かを簡単に教えるとしよう...」

親切なご説明をして下さるようだ。
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