6 / 44
集落滞在1日目その1
しおりを挟む
ヒロキはべリルを待つ間に小屋でくつろぐことにした。小屋の中は広さは六畳間くらいでむき出しの木製ベッドに机と円椅子があるだけだった。一応掃除はされているようで部屋はそこそこ綺麗に感じた。ただ、建物自体は安普請で所々に隙間があり、かなり造り自体は適当である。しかし昨晩の野宿に比べれば快適そうではあった。ヒロキはとりあえず編上靴を脱ぎ靴下も放り出しベッドに身を投げ出し横になった。数分後気持ち良くなりうとうとしかけた頃に壁の隙間から風と一緒に悪臭がした。鼻が曲がりそうになり思わず飛び起きて叫ぶ。
「く、くっさ!臭い!!」それは強烈な糞尿の臭いであった。
「どうした!?何があったんだ?」勢いよくドアが開きべリルが入って来る。
「いや、ちょっと余りにも強烈な悪臭がしたのでびっくりしてしまって・・・。」
ヒロキは申し訳なさそうに答えた。
「?。なんだそんなことか。10日に一度各家の糞尿が入った瓶を荷車に積んで捨てに行くんだよ。それが近くを通っただけだろ?何事かと思ったぞ。」
「念のために聞きますけど、何処に捨てるんですか?」
「川に決まっているだろう?あっとゆう間に流れて臭いもしない。昔からやっていることだ。それにこの集落の下流に流しているから問題あるまい?そんなことより少し遅いが飯にしよう。量は少ないがお前の分もあるぞ?」そう言うとべリルはバスケットを机に置く、中には固そうな黒いパンが4個蒸かした芋が2個、姫林檎のような果物が2個入っていた。ヒロキは先程の悪臭で食欲が減退していたが、気を取り直し食べることにした。二人はそれぞれの食べ物を半分ずつ食べた。
「オイシカッタデス・・・。ゴチソウサマデシタ。」
「無理しなくていいぞ?顔に出てるし。・・・俺だってうまいとは思っていない。無いよりはましだとは思うがな。」
べリルは苦笑しながらそう言ったあと、しまったとゆう顔をして懐から小さな土瓶を取り出して申し訳なさそうにヒロキに言った。
「すまん・・・。塩があったのを忘れてた。」
ヒロキはじと目でべリルを見る。べリルは目を逸らしながらこう続けた。
「塩も最近では貴重品だからな・・・。まあ・・・その・・・なんだ。悪かったよ!では親父の所に向かうぞ!」べリルは恥ずかしそうに矢継ぎ早にそう告げると立ち上がって小屋を出て行ったのでヒロキは慌ててあとに続いた。
歩きながらヒロキはべリルに話しかけもうひとつ頼みごとをする。
「実はもうひとつ頼みごとがあるのですがいいですか?」
「なんだ?まだあるのか?呆れた奴め、一応言ってみろ。」
「この集落で魔法の使い方をできれば教わりたいのですが?」
べリルは少し考る仕草を見せたが答える。
「魔法か・・・。初歩的なものなら俺でも教えられるが適任ではないな。そもそも見張りの仕事もあるしな。今日はたまたま滅多に人が通らない場所を見張ってただけだからな。そうだな、俺の両親の隣に住んでいるライルという老人が住んでいるがその人が昔、町で基礎魔法を教える塾のようなものをしていたな。あとで聞いてみると良い。」そう話しているうちに二人は一軒の家の前に着いた。丸太を組んだログハウスのような建物だ。よく見ると集落の建物はほとんどがログハウス風だった。べリルは家の戸を叩き返事も待たずに開けるとヒロキに入るように促した。ヒロキが家に入ると、そこには人の良さそうな初老の老夫婦がいた。
「はじめまして、いきなりお邪魔してすいません。旅人のヒロキと申します。」
ヒロキは努めて丁寧にあいさつした。
「どうもはじめまして、べリルの父カールと申します。こちらは家内のメレルです。何もない集落ですがゆっくりしていってください。話は息子から伺っております。まずはお掛けください。」
穏やかにあいさつを返すとカールは食卓テーブルにヒロキを招く。それと同時にべリルは家を辞していた。おそらく職務に戻ったのだろう。ヒロキは椅子に座るとまずは昼食のお礼を述べた。それに対してカールは申し訳なさそうに答えた。
「困っている旅人を助けるのは当然のことだと思っております。ただ粗末な物しか用意できなくて心苦しいくらいです。さて、あいさつはこれぐらいにして本題に入りましょう。私供が町にいたころの病について、とのことでしたかな?」
カールはゆっくりとそう述べた。ヒロキはそれに対して聞き返した。
「そうですね。町の方々が祭りの後に3分の1も亡くなったと聞きました。私は医者ではないのですが、少し気になりまして、これからの旅に役立てればとお伺いした次第です。どのような症状だったのですか?」
カールは悲しげに遠い目をしながら答える。
「当時のことは思い出すと少々辛いのですが、病も祭りの直後ではなく2~3日後に流行りだしました。症状は一番多かった者で下痢が止まらない、次に嘔吐、最後に両方でした。亡くなった者はいずれも体の水分が失われた状態になってしまいました。当時の領主様も下痢と嘔吐が特にひどかったそうです。祭り自体も特に変わった食べ物が出された訳でもなく、川で獲れた魚を焼いた物や生野菜や果物でした。酒も出されましたが悪酔いする程飲んだ者もいませんでした。私共は幸い祭りの運営や裏方をしておりましたので難を逃れましたが、今思い出しても悲しく恐ろしい出来事でした。病になった者は熱も無く、医者も何人かいましたが原因がわからず頭を抱えておりました。私が知っている事は以上です。」
カールは言い終わると少し疲れた表情をしていた。隣に控えているメレルの表情も暗い。
ヒロキはカールの話を聞いて考えてみる。どこかで聞いたような病気である。仮に原因が食べ物ならば寄生虫か細菌である可能性が高いと推測される。実にもどかしい、思い出せるようで思い出せない。何とかしてあげたい。話を聞く限りでは、目の前の老夫婦はもとより町の人間がかわいそうである。
「く、くっさ!臭い!!」それは強烈な糞尿の臭いであった。
「どうした!?何があったんだ?」勢いよくドアが開きべリルが入って来る。
「いや、ちょっと余りにも強烈な悪臭がしたのでびっくりしてしまって・・・。」
ヒロキは申し訳なさそうに答えた。
「?。なんだそんなことか。10日に一度各家の糞尿が入った瓶を荷車に積んで捨てに行くんだよ。それが近くを通っただけだろ?何事かと思ったぞ。」
「念のために聞きますけど、何処に捨てるんですか?」
「川に決まっているだろう?あっとゆう間に流れて臭いもしない。昔からやっていることだ。それにこの集落の下流に流しているから問題あるまい?そんなことより少し遅いが飯にしよう。量は少ないがお前の分もあるぞ?」そう言うとべリルはバスケットを机に置く、中には固そうな黒いパンが4個蒸かした芋が2個、姫林檎のような果物が2個入っていた。ヒロキは先程の悪臭で食欲が減退していたが、気を取り直し食べることにした。二人はそれぞれの食べ物を半分ずつ食べた。
「オイシカッタデス・・・。ゴチソウサマデシタ。」
「無理しなくていいぞ?顔に出てるし。・・・俺だってうまいとは思っていない。無いよりはましだとは思うがな。」
べリルは苦笑しながらそう言ったあと、しまったとゆう顔をして懐から小さな土瓶を取り出して申し訳なさそうにヒロキに言った。
「すまん・・・。塩があったのを忘れてた。」
ヒロキはじと目でべリルを見る。べリルは目を逸らしながらこう続けた。
「塩も最近では貴重品だからな・・・。まあ・・・その・・・なんだ。悪かったよ!では親父の所に向かうぞ!」べリルは恥ずかしそうに矢継ぎ早にそう告げると立ち上がって小屋を出て行ったのでヒロキは慌ててあとに続いた。
歩きながらヒロキはべリルに話しかけもうひとつ頼みごとをする。
「実はもうひとつ頼みごとがあるのですがいいですか?」
「なんだ?まだあるのか?呆れた奴め、一応言ってみろ。」
「この集落で魔法の使い方をできれば教わりたいのですが?」
べリルは少し考る仕草を見せたが答える。
「魔法か・・・。初歩的なものなら俺でも教えられるが適任ではないな。そもそも見張りの仕事もあるしな。今日はたまたま滅多に人が通らない場所を見張ってただけだからな。そうだな、俺の両親の隣に住んでいるライルという老人が住んでいるがその人が昔、町で基礎魔法を教える塾のようなものをしていたな。あとで聞いてみると良い。」そう話しているうちに二人は一軒の家の前に着いた。丸太を組んだログハウスのような建物だ。よく見ると集落の建物はほとんどがログハウス風だった。べリルは家の戸を叩き返事も待たずに開けるとヒロキに入るように促した。ヒロキが家に入ると、そこには人の良さそうな初老の老夫婦がいた。
「はじめまして、いきなりお邪魔してすいません。旅人のヒロキと申します。」
ヒロキは努めて丁寧にあいさつした。
「どうもはじめまして、べリルの父カールと申します。こちらは家内のメレルです。何もない集落ですがゆっくりしていってください。話は息子から伺っております。まずはお掛けください。」
穏やかにあいさつを返すとカールは食卓テーブルにヒロキを招く。それと同時にべリルは家を辞していた。おそらく職務に戻ったのだろう。ヒロキは椅子に座るとまずは昼食のお礼を述べた。それに対してカールは申し訳なさそうに答えた。
「困っている旅人を助けるのは当然のことだと思っております。ただ粗末な物しか用意できなくて心苦しいくらいです。さて、あいさつはこれぐらいにして本題に入りましょう。私供が町にいたころの病について、とのことでしたかな?」
カールはゆっくりとそう述べた。ヒロキはそれに対して聞き返した。
「そうですね。町の方々が祭りの後に3分の1も亡くなったと聞きました。私は医者ではないのですが、少し気になりまして、これからの旅に役立てればとお伺いした次第です。どのような症状だったのですか?」
カールは悲しげに遠い目をしながら答える。
「当時のことは思い出すと少々辛いのですが、病も祭りの直後ではなく2~3日後に流行りだしました。症状は一番多かった者で下痢が止まらない、次に嘔吐、最後に両方でした。亡くなった者はいずれも体の水分が失われた状態になってしまいました。当時の領主様も下痢と嘔吐が特にひどかったそうです。祭り自体も特に変わった食べ物が出された訳でもなく、川で獲れた魚を焼いた物や生野菜や果物でした。酒も出されましたが悪酔いする程飲んだ者もいませんでした。私共は幸い祭りの運営や裏方をしておりましたので難を逃れましたが、今思い出しても悲しく恐ろしい出来事でした。病になった者は熱も無く、医者も何人かいましたが原因がわからず頭を抱えておりました。私が知っている事は以上です。」
カールは言い終わると少し疲れた表情をしていた。隣に控えているメレルの表情も暗い。
ヒロキはカールの話を聞いて考えてみる。どこかで聞いたような病気である。仮に原因が食べ物ならば寄生虫か細菌である可能性が高いと推測される。実にもどかしい、思い出せるようで思い出せない。何とかしてあげたい。話を聞く限りでは、目の前の老夫婦はもとより町の人間がかわいそうである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる