異世界転生興国記

引っ越し～復興

　サツマイモや塩のお土産を持って町跡の調査結果をべリルの両親に報告したところ、想像以上にとても喜ばれた。べリルの両親は感極まり涙を流している。隣にいたべリルは顔を背けて肩を震わせていた。ヒロキに魔法を教えてくれたライル先生も喜んでいた。話は瞬く間に集落全体に広がりすぐに町跡に引っ越すことになった。そんなに簡単に決めてしまって良いのかと思い尋ねてみると、領民の意見を耳に入れずに独断で町を放棄した領主の息子に今さら従う必要は無いという返事が全員から返ってきた。橋の修復や当面の食料問題など課題は山積だが全員の決意は固いものだった。
　そんな決意に対してヒロキは感染症の再発防止策として、うがいや手洗いの徹底と生水の使用禁止と住宅地の主要箇所に井戸を掘り、生活用水に使用するように約束してもらった。今の集落の人数は100人もいないので伝えることは容易だった。これから町に戻ってくる予定の人間にも周知徹底をお願いしておいた。当分の間の食料はヒロキが魔法で栽培し、井戸の掘削も請け負うことになった。無論、無料ではなく相応の報酬は出るとのことだった。

　翌朝より早速行動が開始され、まずは橋の修復が始まった。ひとまず集落の上流にある橋から急ピッチで直してしまうことになったようである。資材は空いていた小屋を解体して持っていき焼け落ちた部分にあてがわれ、昼過ぎには終わってしまっていた。

　橋の仮設工事が終わり、遅めの昼食をすませた後いよいよ町への引っ越しが始まった。次々と粗末な荷車に家財を乗せて出発していった。皆笑顔でとても嬉しそうであった。

　町に着いてからしばらくすると引っ越しが一段落ついてそれぞれの家族がもともと住んでいた家に落ち着いていた。集落にはべリル以外の衛兵が使者に出した兵士の帰りを待つ為に残った。ヒロキはというと改めて町の案内をべリルにされていた。案内がてら井戸を掘る場所の見当をつけていくことにした。ヒロキは土魔法を駆使して井戸1ヶ所につき1時間程かけて掘り終わった。川が近いお陰で井戸の深さはどこも同じように5メートル程度であった。あとは井戸の淵を石を積み上げて隙間を掘った土の粘土で固めて火魔法で炙り補強して終わった。
　魔法を使ったとはいえ、そのスピードにべリルは若干呆れていた。井戸桶や滑車と屋根については後で用意してもらえるようなのでお任せすることにした。井戸の建設が終わったのでべリルの父であるカールに報告をすると報酬で金貨を15枚貰えた。この世界の通過単位だと1500ボッチというそうだ。通過単位の名を聞いてヒロキが微妙な顔をしたのは言うまでもなかった。