27 / 70
あなたといっしょに
5*
しおりを挟む
山口が私の胸ぐらを掴んだ。普段なら、取り乱すことなんかないだろうに、今日はやけに苛立っている。娘が行方不明になっている上で仕事を普段通りしていることに腹を立てているようだ。だが、めぐりが事件に巻き込まれたなら、私へ何かの要求があるだろうと思う。手紙もめぐりが書いたもので間違いないのだから、泊まっている相手には口止めして泊まり続けているに違いない。春樹も大して取り乱していないところを見ると、現状事件性は低いとも感じる。それでも山口は、冷たい目で私のことを見ている。
私が何か悪いことをしたのか。娘のことを心配して警察に届け出までしているんだ。めぐりはどれほど多くの人に迷惑をかけているか分かっているのだろうか。和恵も意地を張ることはあったが、自分の立場をわきまえていた。私は山口が聞くことに淡々と答えていった。このまますぐに見つかるだろう。警察が動くなら私は待っていればいい。
署からの帰り道、私は春樹の運転する車に乗っていた。外は暑いが、車の中はクーラーの冷たい風に満たされていた。
「白井さん、あれで良かったんですか。」
あれとは、山口との事だろうか、それとも捜索願についてだろうか。どちらにせよこれで良かったと思う。めぐりには悪いが家出はもう終わりだ。
「ああ。」
「そうですか。」
それだけ言って車は角を曲がり、住宅街へ入って行く。めぐりは反抗期なんだ。今まではかなり自由にさせていたから、帰って来ればもう少し厳しくした方がいいだろう。これまでも何度か家の誰にも言わずに外泊することがあったが目を瞑ってきた。中学生はそんなものだと春樹も言っていたからだ。
「白井さんは家出だと思いますか。」
「めぐりはどうせ考えなしにフラフラしているだけだろ。」
「家にいるのが嫌だったんですかね。」
こんなにも、この住宅街は入り組んでいただろうか。随分と長い間蛇行した道を進んでいる。
「春樹は私が間違っていると思うのか。」
「いいえ」
運転している春樹の顔は見えないため、はっきりとした感情は読み取れないが、そうは思っていないということだけは分かる。
もう、春樹も私も話そうとはしなかった。触り心地の悪い空気が流れ込んできた。春樹はいつもめぐりに甘い。直接会うことはないが、私がめぐりに対して文句を言えば、大抵はめぐりの肩を持つ。もともと、私のことは嫌いなのだ。春樹は和恵のことをとても慕っていたから、和恵と結婚し、そのまま見殺しにしたと思っているのだろう。車の窓が開いていることに気づき、閉めるとまたすぐに車内は冷たい空気が満たした。
私が何か悪いことをしたのか。娘のことを心配して警察に届け出までしているんだ。めぐりはどれほど多くの人に迷惑をかけているか分かっているのだろうか。和恵も意地を張ることはあったが、自分の立場をわきまえていた。私は山口が聞くことに淡々と答えていった。このまますぐに見つかるだろう。警察が動くなら私は待っていればいい。
署からの帰り道、私は春樹の運転する車に乗っていた。外は暑いが、車の中はクーラーの冷たい風に満たされていた。
「白井さん、あれで良かったんですか。」
あれとは、山口との事だろうか、それとも捜索願についてだろうか。どちらにせよこれで良かったと思う。めぐりには悪いが家出はもう終わりだ。
「ああ。」
「そうですか。」
それだけ言って車は角を曲がり、住宅街へ入って行く。めぐりは反抗期なんだ。今まではかなり自由にさせていたから、帰って来ればもう少し厳しくした方がいいだろう。これまでも何度か家の誰にも言わずに外泊することがあったが目を瞑ってきた。中学生はそんなものだと春樹も言っていたからだ。
「白井さんは家出だと思いますか。」
「めぐりはどうせ考えなしにフラフラしているだけだろ。」
「家にいるのが嫌だったんですかね。」
こんなにも、この住宅街は入り組んでいただろうか。随分と長い間蛇行した道を進んでいる。
「春樹は私が間違っていると思うのか。」
「いいえ」
運転している春樹の顔は見えないため、はっきりとした感情は読み取れないが、そうは思っていないということだけは分かる。
もう、春樹も私も話そうとはしなかった。触り心地の悪い空気が流れ込んできた。春樹はいつもめぐりに甘い。直接会うことはないが、私がめぐりに対して文句を言えば、大抵はめぐりの肩を持つ。もともと、私のことは嫌いなのだ。春樹は和恵のことをとても慕っていたから、和恵と結婚し、そのまま見殺しにしたと思っているのだろう。車の窓が開いていることに気づき、閉めるとまたすぐに車内は冷たい空気が満たした。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる