処刑されるはずの悪役令嬢、なぜか敵国の「冷徹皇帝」に拾われる ~「君が必要だ」と言われても、今さら国には戻りません~

六角

文字の大きさ
14 / 20

第14話 二度目の手紙「君が必要だ」

しおりを挟む
 ルミナス王国の王城前広場での「公開決別」から、数時間が経過した。  アルフォンス王子が民衆の罵声を浴びながら連行されていった後、王城は帝国軍によって完全に制圧された。  といっても、それは暴力的な占領ではなかった。  飢えと寒さに震える国民たちに、帝国軍は迅速に食料と毛布を配布し、壊れたインフラの応急処置を開始したのだ。  その指揮を執っているのが、かつてこの国を追放された「悪役令嬢」である私だと知った時、民衆の熱狂は頂点に達していた。

「リーゼロッテ様! こちらの区画、水道管の圧力が安定しました!」 「南街区の魔導暖房、再起動に成功! 住民たちが泣いて喜んでいます!」

 王城の一室に設けられた臨時対策本部には、次々と朗報が飛び込んでくる。  私は広げた図面に次々と指示を書き込みながら、的確な指令を飛ばし続けた。

「第三ゲートの結界濃度を下げて。その分の魔力を病院の電力に回してちょうだい。今は防衛よりも人命救助が最優先よ」 「ハッ! 直ちに!」

 帝国の技術者たちと、かつての部下だった王国の魔導師たちが、私の指示の下で手を取り合って働いている。  王国の魔導師たちは最初こそ気まずそうにしていたが、私が「今は過去を問う時ではありません。手を動かしなさい」と一喝すると、憑き物が落ちたように働き始めた。  彼らもまた、無能な上層部に振り回されていた被害者だったのだ。

「……見事な手腕だ」

 ふと、背後から声をかけられた。  ジークハルトだ。彼は私のために淹れたてのハーブティーを持ってきてくれていた。

「少し休め。貴様が倒れたら、この国の復興はそこで終わるぞ」 「ありがとう、ジーク。……でも、もう少しだけ。地下水路の浄化システムだけは、今日中に復旧させないと」

 私がカップを受け取ると、彼は呆れたように、しかし愛おしそうに私の頭を撫でた。

「貴様は本当にお人好しだな。……あんなに酷い仕打ちをした国のために、ここまでしてやるとは」 「国のためではありません。……そこで暮らす人々と、この土地に罪はないからです」

 私は窓の外を見た。  夕闇が迫る中、街のあちこちに明かりが灯り始めている。  かつて私が守り、そして失われた光景。  それをもう一度、自分の手で取り戻せたことには、確かな達成感があった。

「それに……まだ、やり残したことがありますから」

 私の言葉に、ジークハルトは真剣な表情で頷いた。

「ご両親のことだな」 「はい」

 私の実家、エーデル公爵家。  王子の横領の罪を被せられた私への「連座」として、取り潰しの憂き目に遭った。  父と母は捕らえられ、王城の地下牢に幽閉されていると聞いている。  無事だろうか。  寒さに凍えていないだろうか。  不安が胸をよぎる。

「安心しろ。……すでに部下を向かわせている。丁重に保護し、こちらへ連れてくる手はずだ」 「本当ですか!?」 「ああ。私の義理の両親になる方々だ。粗相があってはならんからな」

 彼はさらりと「義理の両親」と言ってのけた。  私は顔が熱くなるのを感じたが、今はその頼もしさが何よりも嬉しかった。

 その時、部屋の扉がノックされ、フランツ宰相が入ってきた。  彼の表情は、どこか渋い。手には一通の封書を持っている。

「……陛下、リーゼロッテ様。保護した元王国の高官から、一通の書状を預かりました」 「書状?」 「はい。……幽閉中の国王、フリードリヒ陛下からの『親書』だそうです」

 国王。アルフォンス王子の父。  病弱で政務を王子に丸投げしていたとはいえ、腐っても一国の主だ。  帝国の介入と、王子の失脚を知り、何か言ってきたのだろうか。

「……読もう」

 ジークハルトが手紙を受け取り、封を切った。  彼はざっと目を通すと、鼻で笑い、手紙を私に放り投げた。

「……読んでみろ。呆れてものも言えん」

 私は恐る恐る手紙を広げた。  そこには、震える筆跡で、信じがたい内容が綴られていた。

『親愛なるリーゼロッテ嬢へ

 此度の帝国の介入、誠に感謝する。  愚かな息子アルフォンスの暴走により、君に多大なる苦労をかけたこと、心より詫びよう。  アルフォンスは廃嫡とし、王位継承権を剥奪した。彼はもはや王族ではない。

 さて、ここからが本題だ。  我が国は今、指導者を失い、存亡の危機にある。  民衆は君を求めている。君の魔導技術と、その慈悲深い心こそが、この国を救う唯一の希望だ。

 そこで提案がある。  君を、我が国の「女王」として迎えたい。  アルフォンスに代わり、君が玉座に座るのだ。  君の実家である公爵家の名誉回復はもちろん、君を王国の最高権力者として遇することを約束する。  帝国との関係も、君がいれば円滑に進むだろう。

 君が必要です。  どうか、過去の恩讐を越えて、この老いぼれを、そして国を助けてほしい。    ルミナス国王 フリードリヒ』

 読み終えた私は、深い深いため息をついた。   「……どこまでも、図々しい人たちね」

 自分の息子がしでかしたことの責任を取るどころか、被害者である私に「女王になれ」だって?  聞こえはいいが、要するに「君の能力と、帝国のバックアップが欲しいから、戻ってきて泥舟の舵を取ってくれ」ということだ。  私を便利な道具としてしか見ていない点は、親子そっくりだ。

「どうする? 女王陛下になりたいか?」

 ジークハルトが皮肉っぽく笑う。

「まさか。……あんなカビ臭い玉座に縛り付けられるなんて、死んでも御免です」

 私は即答し、手紙をテーブルに置いた。

「それに、私の上司は世界でただ一人。……貴方だけですから」 「……合格だ」

 ジークハルトは満足げに私の腰を引き寄せ、髪にキスをした。

「国王には後で『丁寧な』返事を書いてやろう。『彼女の時給は高いぞ。国を三つほど売れば雇えるかもしれんが?』とな」 「ふふ、それいいですね」

 私たちは顔を見合わせて笑った。  かつては絶対的な権力者として恐れていた国王の言葉が、今はただの戯言にしか聞こえない。  それが、私がこの数週間で得た「強さ」の証だった。

 ◇

 それから一時間後。  私はジークハルトと共に、王城の地下へと向かった。  湿っぽく、暗い石造りの廊下。  かつて私も放り込まれそうになった場所だ。

「……この奥の特別房に、ご両親がいる」

 案内された鉄格子の前で、私は足を止めた。  心臓が早鐘を打つ。  鍵が開けられ、重い扉が開く。

 薄暗い部屋の中に、二つの人影があった。  粗末なベッドに寄り添うように座っていた初老の男女。  やつれてはいるが、その背筋は凛と伸びていた。  父と母だ。

「……お父様、お母様」

 私の声に、二人がゆっくりと顔を上げた。  その瞳が、私を捉え、大きく見開かれる。

「……リーゼ? リーゼロッテなのか?」 「まあ……! 夢を見ているのかしら……」

 母がよろめきながら立ち上がり、私の方へ手を伸ばした。  私は駆け寄り、格子のない開かれた入り口で、母を抱きしめた。

「お母様! ごめんなさい、遅くなって……!」 「ああ、リーゼ……! 生きていたのね……! 無事だったのね……!」

 母の体は痩せて小さくなっていたが、その温もりは昔のままだった。  父も歩み寄り、私たち二人を大きな腕で包み込んだ。

「よかった……本当によかった。お前が無事なら、私たちはどうなってもいいと……それだけを神に祈っていたんだ」

 父の声が震えている。  いつも厳格だった父が、子供のように泣いていた。  私のために、冤罪の汚名を着せられ、地位も名誉も奪われたのに、彼らは一言も私を責めなかった。ただ、私の無事を喜んでくれている。

 これが家族だ。  アルフォンス王子や国王が決して持っていなかった、本物の絆。

「……感動の再会中、失礼する」

 低い声が響き、両親がビクリと体を震わせた。  入り口に立つジークハルトの存在に、ようやく気づいたようだ。  漆黒の軍服。圧倒的な覇気。  どう見ても、敵国の将軍か、あるいは死神にしか見えないだろう。

「ひぃッ!? て、敵襲か!?」 「リーゼ、下がりなさい! お父様が守るから!」

 父が私の前に立ちはだかり、素手でジークハルトを威嚇する。  魔力も武器もない老人が、最強の皇帝相手に。  その無謀な勇気に、私は涙が出るほど愛しさを感じた。

「待って、お父様! 違うの、この人は……!」 「お初にお目にかかります、お義父上」

 ジークハルトは父の威嚇を気にも留めず、優雅に一礼した。  その所作は完璧な貴族の礼儀に則っていた。

「ガルガディア皇帝、ジークハルト・ヴォルフ・ドラグーンです。……娘さんを、私にください」

 ……え?  今、このタイミングで?

 父と母は、ポカンと口を開けて固まった。  思考が追いついていないようだ。  無理もない。「敵国の皇帝」が「娘をくれ」と言っているのだから、「人質として連れて行く」という意味に聞こえてもおかしくない。

「ま、待て。娘をどうするつもりだ! 処刑するなら私を先に……!」 「いえ、そうではなく。……結婚を前提にお付き合いさせていただいております」

 ジークハルトは真顔で言った。

「彼女は私の命の恩人であり、帝国の英雄であり、そして……私の最愛の女性です。必ず幸せにしますので、どうか認めていただきたい」

 帝国の皇帝が、罪人の姿をした没落貴族に頭を下げている。  その光景はあまりにシュールで、そして誠実だった。

「……リーゼ、本当なのか?」

 母が信じられないという顔で私を見た。  私は顔を赤くしながら、こくりと頷いた。

「はい。……ジークは、私を救ってくれました。私の才能を認めてくれて、大切にしてくれて……。私、この人のことが好きなんです」

 私の言葉を聞いて、両親は顔を見合わせ、それから深く息を吐いて力が抜けたようにへたり込んだ。

「……そうか。あの『氷の皇帝』が、まさか……」 「世の中、何が起こるか分からないわね……」

 父は苦笑いしながら立ち上がり、ジークハルトを真っ直ぐに見つめた。

「陛下。……娘は、不器用で損ばかりする子です。人のために無理をして、自分を犠牲にしてしまう。……貴方に、その娘を守り抜く覚悟はおありですか?」 「あります。……私の全生涯と、帝国の全勢力をかけて、彼女を守り抜きます」

 ジークハルトは即答した。  父はその瞳の奥にある揺るぎない意志を見て取り、満足げに頷いた。

「……よろしい。娘を頼みましたぞ」 「はい。必ず」

 男同士の固い握手が交わされた。  私はその様子を見ながら、嬉し涙を拭った。  私の大切な人たちが、こうして繋がってくれたこと。  それが何よりも嬉しかった。

 ◇

 両親の救出を終え、地上に戻ると、フランツ宰相が待ち構えていた。

「陛下、国王陛下……いえ、フリードリヒ氏との会談の準備が整いました」

 そう。  まだ最後の仕事が残っている。  私に「女王になれ」と言ってきた、あの厚かましい手紙の返事をしに行かなければならない。

 通されたのは、王城の最上階にある『王の間』。  そこには、病み上がりの老王フリードリヒが、豪奢な椅子に座って待っていた。  周りには数人の側近がいるが、皆、帝国兵に囲まれて怯えきっている。

「おお、リーゼロッテ嬢! 来てくれたか!」

 フリードリヒは私を見るなり、満面の笑みで立ち上がった。  まるで、私が彼の手紙を受け入れて戻ってきたと信じ込んでいるようだ。  その隣に立つ、黒いオーラを纏ったジークハルトの存在が見えていないのだろうか。

「さあ、こちらへ。玉座は用意してある。……君が女王になれば、民衆も鎮まる。帝国の支援も得られる。万々歳だ」

 彼は手を広げて私を迎え入れようとした。  私は一歩も動かず、冷ややかに言った。

「お断りします」 「……は?」 「私は女王になる気はありませんし、この国に戻る気もありません。……私は帝国へ帰ります」

 フリードリヒの笑顔が凍りついた。

「な、何を言っているんだ? これは君のためでもあるんだぞ? 公爵家の名誉も回復できるし……」 「名誉?」

 私は鼻で笑った。

「私たち家族の名誉なら、自分たちで守ります。貴方たちがくれた泥まみれの名誉など、要りません」 「だ、だが、君がいなければこの国はどうなる!? インフラは? 経済は? 誰が立て直すんだ!」

 彼は本性を現し、喚き始めた。  結局、彼は自分の老後の安泰と、王家の存続しか考えていないのだ。

「それは、貴方たちが考えることです」

 私は突き放した。

「今まで私に押し付けてきたツケを、自分たちで払う番が来ただけです。……頑張ってくださいね、元国王陛下」

 私が背を向けると、フリードリヒは「待て! 行くな!」と叫びながら、私を捕まえようと手を伸ばしてきた。  その瞬間。

 ザッ!

 ジークハルトが私の前に割り込み、フリードリヒの手首を掴んだ。  バキリ、と嫌な音がする。

「痛っ……!?」 「……私の婚約者に、気安く触れるな」

 ジークハルトの声は、地獄の底から響くようだった。

「彼女はすでに、帝国の保護下にある。これ以上、彼女にしつこくつきまとうなら……この国への人道支援を全て打ち切り、焦土に変えるが、それでもいいか?」

 その言葉に、フリードリヒは顔面蒼白になり、ガタガタと震え出した。  支援が打ち切られれば、彼らは明日にも餓死するか、暴徒化した民衆に八つ裂きにされる。  それが分かっているから、彼はもう何も言えなかった。

「……行くぞ、リーゼロッテ」 「はい」

 私たちは呆然とする元国王を残し、王の間を後にした。  長い廊下を歩きながら、私は一度だけ振り返った。  そこにあったのは、かつて私が憧れ、尽くそうとした王国の残骸。  でも、今の私には、それはただの「過去の風景」にしか見えなかった。

 城の外へ出ると、夜空には満月が輝いていた。  空気は澄んでいて、冷たいけれど心地よい。  帝国軍のテントからは、温かいスープの香りと、人々の安らかな寝息が聞こえてくる。

「……終わりましたね」 「ああ。……これで、心置きなく私の元へ来れるな」

 ジークハルトが私の肩を抱く。  そこへ、保護された両親が駆け寄ってきた。

「リーゼ! 待っていたよ!」 「さあ、行こう。……新しいお家へ」

 母が私の手を取る。  右手にジークハルト。左手に両親。  私の手は、温もりで満たされていた。

「はい。……帰りましょう、私たちの帝国へ」

 私たちは飛竜に乗り込み、北の空へと飛び立った。  眼下で小さくなっていく祖国に、私は別れの言葉を告げなかった。  必要なかったからだ。  私の未来は、あの星空の向こう、輝く帝都にあるのだから。

 こうして、私の「悪役令嬢」としての物語は終わりを告げた。  そして明日からは、「帝国の女神」として、そして「皇帝の最愛の妻」としての、新しい章が始まるのだ。

 風が、私の頬を優しく撫でていった。  それは、祝福のように感じられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

仮面王の花嫁〜婚約破棄された薄幸令嬢は仮面の王に愛される〜

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません

綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」 婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。 だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。 伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。 彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。 婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。 彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。 真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。 事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。 しかし、リラは知らない。 アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。 そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。 彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。 王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。 捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。 宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――? ※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。 物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

処理中です...