『婚約破棄ですか? 契約違反ですので、まず違約金(全財産)を請求します。――ああ、有能すぎる従者が既に全て差し押さえた後でしたか』

六角

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第三十二話:復活の『愚か者』

(ヴィルフレッド様が……。王都に?) (あの男が? いったい何の価値があって?) 

ミレイの捨て台詞に、私は思わず眉をひそめた 。

オルデンブルク辺境伯も、よほど駒に困っているのね 。 あんな『愚か者』を、わざわざ王都に呼び戻すなんて 。

「アルブレヒト」 「はっ。ただちに」 

私が命じるより早く。アルブレヒトはすでに部下に指示を飛ばしていた 。 (さすが私の従者。仕事が早いわ) 

「こ、これで失礼いたしますわ!」 ミレイは、これ以上ボロが出ないうちにと、慌てて応接室から逃げ出していった 。

(ふう。疲れたわ) (帰って早々、馬鹿の相手は骨が折れる) 

私たちは、そのまま父であるヴァインベルグ公爵の執務室で、緊急の対策会議を開いた 。

「……なるほどな」 父様は、私からの報告を聞き、重々しく腕を組んだ 。

「オルデンブルク辺境伯。追い詰められた鼠だ」 「アルブレヒト君との『忠誠契約』だけでは飽き足らず」 「元・王妃や、あの小娘(ミレイ)、あまつさえヴィルフレッドまで駒として使い始めたか」 

「ええ。ですが」 私は冷たく言い放つ 。 「愚かな駒は、いくら集めても愚かなままですわ」 

コンコン。 執務室の扉がノックされ、アルブレヒトの部下から調査報告書が届いた 。 アルブレヒトはそれに素早く目を通すと、淡々と報告を始めた 。

「……判明いたしました」 「ヴィルフレッド様は……」 「オルデンブルク辺境伯の『遠縁の親戚』という触れ込みで、身分を偽っております」 「現在は『ヴィック』と名乗り……」 

「王都の**『魔道具ギルド』**に所属している模様です」 

(……魔道具ギルドですって!?) 

(……!) (繋がったわ!) (『魔力石』の最大の流通先……!) (そこで妨害工作をするつもりね!) 

あの悪党(辺境伯)。 アルブレヒトの『過去』を脅迫の材料に使いながら、同時にヴィルフレッドのような『使い捨ての駒』で、私のビジネスそのものを叩き潰そうとしている 。

(……許せないわ) (私の『資産(アルブレヒト)』と『利益(魔力石)』) (その両方に手を出したこと。完璧に後悔させてあげる) 

「アルブレヒト」 「はい」 

私は、まだ本調子ではない彼の、青白い顔を見た 。 (……きゅん) (……じゃなかったわ!) (いけない。また『弱点』が……!) 

私は咳払いをごまかすように一つした 。

「アルブレヒト。あなたはまだ完治していないわ」 「ここからは、わたくしが動く」 「あなたは屋敷で、完璧な『契約書』を作成していなさい」 

「……契約書、でございますか?」 

「ええ」 私はニヤリと笑う 。 「オルデンブルク辺境伯が二度と私たちに手出しできなくなるよう」 「彼を法的に、経済的に、**完膚なきまでに『詰ませる』**ための、契約書よ」 

アルブレヒトの目が、ほんの少しだけ見開かれた 。 (……あら? 今、ちょっと嬉しそうな顔をしなかった?) 

「……御意」 彼は、熱を帯びた瞳で、深く一礼した 。 「ですが、お嬢様がお一人では危険です」 

「一人じゃないわ」 私は『悪役令嬢』の仮面を貼り付ける 。 「『アドバイザー』には、きっちり働いてもらわないと」 

場面は変わって、王宮。 あの『厄介ごと』の第二王子、レオニード殿下の私室 。

相変わらず部屋は散らかり放題 。 彼はベッドの上でだらしなく寝転がりながら、私の訪問にニヤニヤしている 。

「なんだよユリアンナ嬢」 「鉱山町から帰ったばかりだっていうのに」 「もう俺に会いたくなったのか?」 

「ええ。その通りですわ。殿下」 

「は?」 

私は、今日一番の完璧な『ビジネススマイル』を彼に向けた 。

「あなたの『退屈しのぎ』に、最高のお仕事をご用意いたしましたわ」 

「……ほう?」 

「わたくしと**『デート』**していただきます」 

レオニード王子の目が、あのゴーレムを見つけた時以上に、カッと輝いた 。

「デートだと!? 面白い!」 

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