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第2話:夜会? 欠席で。理由は「眠いから」です
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あの「聖なる瞑想(ただの二度寝)」事件から、数日が経過した。
ヴェルデ公爵家の空気は、劇的に変化していた。
廊下を歩く使用人たちは、まるで忍びのように足音を殺している。 私の部屋の前を通る時は、誰もが一度立ち止まり、敬虔な祈りを捧げるような仕草をしてから通り過ぎていく。 窓ガラスを拭く音さえ聞こえない。 庭の手入れをする庭師たちは、ハサミの音がうるさくないように、一本一本丁寧に、まるで外科手術のように枝を切っているらしい。
静かだ。 あまりにも静かだ。
(……最高じゃない?)
私はベッドの上で、ふかふかのクッションに背中を預けながら、心の中でガッツポーズをした。
お父様の「勘違い」は、屋敷中に浸透していた。 『リリアーナお嬢様は、深遠なる思索のために休息を必要としている』 『お嬢様の眠りを妨げる者は、公爵家の敵とみなす』
そんなお触れが出たとか出ないとか。 おかげで、私の生活は一変した。 朝、無理やり起こされることはない。 嫌いな人参を無理やり食べさせられることもない。 「背筋を伸ばしなさい」「口角を上げなさい」と口うるさく言われることもない。
私は好きな時に起き、好きな時に食べ、好きな時に寝る。 まさに、夢の引きこもりライフ。
「ふあぁ……」
あくびが一つ。 窓から差し込む日差しはポカポカと温かく、そよ風がレースのカーテンを優しく揺らしている。
平和だ。 過去6回の人生で、これほど平和な時間は一度もなかった。 いつ処刑されるか怯えることもない。 誰かの顔色を窺う必要もない。
(このまま一生、この部屋から出たくないなぁ)
本気でそう思う。 もう、外の世界なんてどうでもいい。 国がどうなろうと、王子が誰と結婚しようと、知ったことではない。 私はこの半径5メートルの楽園を守り抜く。 それだけが、今の私の生きる目的だった。
◇
しかし、平穏な日々というのは、往々にして突然破られるものだ。
「……お嬢様。失礼いたします」
控えめなノックと共に、専属メイドのマリナが入ってきた。 彼女の足取りは、以前よりもさらに慎重だ。 手には銀のお盆を持っていて、そこには一通の封筒が載せられている。
封筒には、金色の装飾と、王家の紋章が入ったシーリングワックス。 見覚えがありすぎる。 いや、見たくもない代物だ。
「……何?」
私はクッションに顔を埋めたまま、面倒くさそうに尋ねた。
マリナが、恐る恐るお盆を差し出す。
「王宮より、招待状が届いております」
「招待状?」
「はい。来週開催される、国王陛下主催の『春の夜会』への招待状でございます。ジークフリート殿下もご出席されるとのことです」
ああ、来たか。 私は心の中で舌打ちをした。
『春の夜会』。 それは、貴族の子女にとって社交界デビューの前哨戦とも言える重要なイベントだ。 特に、私たちのような高位貴族にとっては、王家への忠誠を示し、あわよくば王子との婚約を取り付けるための戦場でもある。
過去の私は、この日のために命を懸けていた。
(1回目は、流行の最先端を行くピンクのドレスを着て、誰よりも目立とうとしたっけ……)
結果、王子には「派手すぎて目が痛い」と言われた。
(2回目は、清楚さをアピールするために純白のドレスを選んだ)
結果、「壁の花かと思った」と存在を無視された。
(3回目は、知性をアピールしようと、王国の歴史について語りかけた)
結果、「説教くさい女は嫌いだ」と敬遠された。
(4回目は……5回目は……)
思い出すだけで、胃がキリキリと痛む。 どれだけ準備しても、どれだけ完璧に振る舞っても、あの王子は私を気に入らなかった。 それどころか、ちょっとしたミスをあげつらって、公衆の面前で恥をかかせたりもした。
あんな場所、二度と行くものか。 長時間立ったまま愛想笑いを浮かべ、コルセットで腹を締め付けられ、ヒールの高い靴で足が棒になるまで踊る? 冗談じゃない。 今の私には、そんな体力も気力も、ミジンコほども残っていない。
「……ふーん」
私は興味なさげに鼻を鳴らし、封筒を受け取った。 ずっしりと重い、高級紙の感触。 王家の威光そのもののような重圧感。
マリナが期待に満ちた目で見ている。
「今回はどのようなドレスを新調いたしましょうか? 公爵様も、リリアーナお嬢様の『新たな境地』にふさわしい、神秘的なデザインが良いのではないかと……」
「いらない」
「え?」
「ドレスはいらない。夜会には行かないから」
私はきっぱりと言い放った。 マリナの目が点になる。
「い、行かない……のですか? しかし、これは王家からの正式な招待状です。欠席など、よほどの理由がない限り……」
「理由ならあるわ」
「病気ですか!? お医者様を……」
「違う」
私は枕元のクッションをポンポンと叩いた。 そして、けだるげな瞳でマリナを見つめ、真実を告げた。
「眠いから」
「……は?」
「夜は寝る時間でしょ? なんでわざわざ着飾って、うるさい場所に行かなきゃいけないの。私は寝たいの。夜会なんて行ったら、生活リズムが崩れるじゃない」
マリナが口をパクパクさせている。 まるで酸欠の金魚みたいだ。
「そ、そんな理由で……!? 国王陛下の招待を断るのですか!? 不敬罪に問われますよ!」
「不敬でもなんでもいいわよ。処刑されるなら、それはそれで永眠できるし」
まあ、招待を断ったくらいで即処刑はないだろう。 せいぜい、お父様が怒られるくらいだ。 お父様ならなんとかしてくれる。 あの人、最近私のことを「生き神様」か何かと勘違いしているし。
「それにね、マリナ」
私は手にした招待状をじっと見つめた。 厚手の紙。 しっかりとした硬さ。 そして、シーリングワックスの絶妙な厚み。
(……これ、使えるかも)
私はベッドの上でゴソゴソと動き、枕を持ち上げた。 最近、枕の高さが微妙に合わなくて、首が凝っていたのだ。 あと数ミリ。 ほんの数ミリ、高さがあれば完璧なポジションになるのに。
私は、王家の紋章が入った招待状を、枕の下に差し込んだ。
「……よし」
頭を乗せてみる。 沈み込む羽毛の下に、確かな硬さを感じる。 招待状の厚みが、足りなかった数ミリを見事に補完してくれている。
「うん、完璧」
首の角度が、背骨と一直線になった。 呼吸がしやすい。 気道が確保され、いびきもかかずに熟睡できる理想的な体勢。
「あ、あの……お嬢様? 今、招待状を……」
マリナが震える声で指摘する。
「ん? 高さ調整に使ったの。ちょうどよかったわ。紙質が良いから、湿気も吸ってくれそうだし」
「王家の! 紋章を! 枕の! 下敷きに!?」
マリナが悲鳴を上げた。 うるさいなぁ。
「静かにして。せっかくいいポジションが見つかったんだから」
私は気持ちよさそうに目を閉じた。 王家の権威を踏みつけ(頭で踏んでるけど)て眠る背徳感。 いや、背徳感なんて高尚なものはない。 ただただ、快適なだけだ。
「マリナ、下がっていいわよ。私はこのまま、この『王家公認の枕(高さ調整済み)』で二度寝をするから」
「お、お嬢様ぁぁぁ……!」
マリナは頭を抱えながら、よろよろと部屋を出て行った。 可哀想に。 常識に縛られていると、人生辛いだけなのにね。
◇
しかし、問題はそれで終わらなかった。
夕方。 心地よいお昼寝から目覚め、ベッドの上でゴロゴロとストレッチをしていた時のことだ。
「……申し上げます! 王宮より、使者の方がお見えです!」
バタバタと慌ただしい足音と共に、執事が部屋の前にやってきた。
「なんの用?」
ドア越しに尋ねる。
「夜会の出欠確認でございます! 返答がないため、直接確認に来られたのです! 公爵様は今、領地視察で不在……お嬢様が対応しなければなりません!」
あー。 そういえば、返事書いてなかったな。 枕の下に敷いちゃったし。
「……面倒くさい」
「そ、そうおっしゃらずに! 相手は国王陛下の側近、ロイス伯爵です! 失礼があっては……」
ロイス伯爵。 知ってる。 慇懃無礼で、形式を重んじる堅物眼鏡だ。 過去の人生で、何度嫌味を言われたか分からない。 「リリアーナ嬢、そのお辞儀の角度は3度足りませんな」とか。 「扇子の使い方が下品ですな」とか。
あいつに会うの? 今? このパジャマ姿で? 化粧もしてないし、髪もとかしてないのに?
(絶対ヤダ)
着替えるのに1時間。 化粧に30分。 髪のセットに30分。 そして、あの堅物との不毛な会話に30分。
合計2時間半のロスだ。 2時間半あれば、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを1.5回は回せる。
「……帰ってもらって」
「えっ!?」
「会わない。気分が乗らないから」
「そ、そんな馬鹿な! 相手は勅使ですよ!?」
執事の声が裏返る。 すると、ドアの向こうから、別の声が聞こえてきた。
「……ほう。王家の使者を門前払いとは。ヴェルデ公爵家の教育はどうなっているのかな?」
冷ややかで、ねちっこい声。 ロイス伯爵だ。 どうやら、執事の後ろをついてきてしまったらしい。
「リリアーナ嬢。部屋にいるのは分かっている。扉を開けなさい。陛下からの招待状に対し、返答を寄越さないとは何事か。直接、その無礼を問い質す必要がある」
うわぁ。 一番面倒な展開になった。 説教コースだ。 これを開けたら最後、延々とマナー講座が始まるに決まっている。
私はベッドから降りるのさえ億劫だったが、このままドアの前で騒がれると眠れない。 仕方ない。 最低限の労力で追い払おう。
私はのっそりとベッドから這い出し、ドアに近づいた。 鍵を開ける。 ガチャリ。
ドアを、ほんの少しだけ。 隙間風が入る程度に、数センチだけ開けた。
「……何?」
隙間から、片目だけを覗かせる。 もちろん、パジャマ姿のままで。
廊下には、青ざめた執事と、怒りで顔を真っ赤にしたロイス伯爵が立っていた。 伯爵は、私の姿――隙間から見えるボサボサの髪と、眠たげな半眼――を見て、絶句した。
「なっ……貴様、その格好は……!」
「寝てたの」
私は不機嫌そうに言った。
「うるさいから、静かにして」
「き、貴様……! 国王陛下の使者に対して、寝てただと!? しかも、姿も見せずに隙間から……!」
「用件は?」
「夜会の出欠だ! 出席するのか、しないのか! そもそも、招待状はどうした!」
招待状。 ああ、あれね。
「あるわよ」
私はあごでベッドの方をしゃくった。 見えないだろうけど。
「枕の下に」
「……は?」
「高さ調整にちょうどよかったから。おかげでよく眠れたわ。陛下に感謝しておいて」
ロイス伯爵の眼鏡が、カチャリとズレた。 口が開いたまま塞がらないようだ。 執事はもう、白目を剥いて気絶寸前だ。
「ま、枕の……下……? 王家の紋章を……尻に敷いたと……!?(頭だけど)」
「で、行かないから」
私はあくびを噛み殺しながら言った。
「眠いし、面倒だし。王子によろしく」
そう言って、私はドアを閉めようとした。 しかし、伯爵が足を挟んで止める。
「ま、待て! 貴様、正気か!? こんな侮辱、許されると思っているのか! 権力を恐れぬその態度は……!」
しつこい。 本当にしつこい。 眠いって言ってるのに。 私の安眠を妨害する奴は、王様だろうが何だろうが敵だ。
私は、心の底からの「拒絶」を込めて、手を振った。
シッシッ。
野良犬を追い払うような、あるいはハエを払うような、ぞんざいな手つき。 指先には力が入っておらず、だらりと垂れ下がっている。 顔は無表情。 目は半分閉じている。
「……消えて」
小さく、そう呟いた。 これは魔法ではない。 ただの、睡眠欲求からくる本音だ。 「私の視界から消えて、静寂を返して」という、切実な願いだ。
しかし。 その瞬間、私の体から無意識に漏れ出ていた魔力が、空気中のマナと共鳴した。
『覇気』。 5回目の人生、闇ギルドの総帥として裏社会を統べていた時に身につけた、絶対強者のオーラ。 それが、寝起きの無防備な状態だったために、制御されずにダダ漏れになっていたのだ。
ドォンッ……!
空気の圧力が、廊下を駆け抜けた。 窓ガラスがビリビリと震え、廊下のロウソクが一斉に消える。
「ひっ……!?」
ロイス伯爵は、見えない巨人の手で押し出されたように、後ずさりをした。 彼の目には、隙間から覗く私の紫色の瞳が、深淵の闇のように見えたことだろう。 底知れぬ、絶対的な闇。 王権などというちっぽけな権威が通用しない、圧倒的な「個」の力。
「……あ」
伯爵の膝が、ガクガクと震え始めた。
(……やば。出しすぎた?)
私は少しだけ反省した。 でも、眠いものは眠い。
「おやすみ」
パタン。 カチャリ。
私は容赦なくドアを閉め、鍵をかけた。 ふう。 これでやっと静かになる。
廊下からは、しばらくの間、荒い呼吸音だけが聞こえていたが、やがてドタドタという逃げるような足音が遠ざかっていった。
「……ふふ」
勝利。 二度目の勝利だ。 私は満足げにベッドに戻り、枕(招待状入り)の感触を確かめた。
うん、やっぱりこの高さが最高。
◇
王宮、謁見の間。
「……して、ヴェルデ公爵令嬢は、そう言ったのか?」
玉座に座る国王が、困惑した顔で尋ねた。 その御前で、ロイス伯爵は平伏し、脂汗を流しながら報告していた。
「は、はい……。間違いございません。『陛下に感謝しろ』と。そして『王子によろしく』と……」
「招待状を枕の下に敷いて、か?」
「左様でございます。しかも、私を……この私を、ゴミを見るような目で見下し、手で払いのけたのです。その時放たれた気迫たるや、まるで歴戦の猛者のようで……私は、恥ずかしながら腰が抜けるかと……」
謁見の間が、ざわめきに包まれた。
「あの堅物のロイス伯爵を震え上がらせるとは」 「王家の招待状を枕にする? 前代未聞だ」 「なんと傲慢な……いや、豪胆と言うべきか?」
大臣たちがヒソヒソと噂し合う中、一人の青年が前に進み出た。
第一王子、ジークフリート。 金色の髪に、碧眼の美青年。 この国の次期国王であり、私が最も関わりたくない人物ナンバーワン。
彼は、興味深そうに目を細めていた。
「面白い」
ジークフリートは、口元に手を当てて笑った。
「僕の誘いを断るために、あえて不敬な態度を取ったというのか? いや、違うな。ロイスの話が本当なら、彼女は『本気でどうでもいい』と思っている」
王子は、今まで数多の女性に言い寄られてきた。 誰もが彼に媚び、気に入られようと必死だった。 彼の権力に、容姿に、血筋に、ひれ伏してきた。
だが、リリアーナは違った。 招待状を枕にし、使者をパジャマ姿で追い返す。 それはつまり、「あなたごとき、私の睡眠時間ほどの価値もない」という宣言に他ならない。
「……媚びない女だ」
ジークフリートの瞳に、熱い光が宿る。
「権力に屈せず、常識に縛られず、己の信じる道(睡眠)を貫く。それほどの気高さを持つ令嬢が、この国にいたとは」
「で、殿下? 何か勘違いを……」
ロイス伯爵が顔を上げるが、王子は聞いていない。
「今まで、彼女のことを『着飾ることしか脳のない人形』だと思っていた。だが、それは彼女が被っていた仮面だったのか。真の姿は、王権すらも鼻で笑う、孤高の女帝……」
王子の脳内で、勝手にリリアーナのイメージが補正されていく。 パジャマ姿 = 飾らないありのままの美しさ。 半眼 = 俗世を見透かす達観した瞳。 「消えて」 = 弱き者への慈悲深い撤退命令。
「会いたい」
ジークフリートは、燃えるような瞳で宣言した。
「夜会に来ないなら、こちらから行くまでだ。その『枕』の寝心地、直接感想を聞かせてもらおうじゃないか」
「で、殿下!? それはお忍びで屋敷に行くと!? 危険です!」
「止めるな。これは運命だ」
王子はマントを翻し、颯爽と謁見の間を出て行った。 残された国王と大臣たちは、呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
◇
その頃。 私の部屋。
「くしゅんっ!」
私は可愛らしくくしゃみをした。 誰か噂してる? まあいいや。 風邪かもしれないから、暖かくして寝よう。
私は毛布を頭まで被り、三度目の眠りにつこうとしていた。
枕の下の招待状が、カサリと音を立てる。 それはまるで、これから訪れる波乱の予兆のように聞こえたが、今の私には心地よい子守唄にしか聞こえなかった。
まさか、あの王子が「お忍び」という名のストーキング行為に及ぶとは、夢にも思わずに。
そして翌日。 私の平穏な引きこもり生活を脅かす、第三の刺客が現れることになる。
「リリアーナ様! 勝負よ!」
そう叫んで部屋に乱入してくる、あのうるさい女の姿を、私はまだ知らない。
ヴェルデ公爵家の空気は、劇的に変化していた。
廊下を歩く使用人たちは、まるで忍びのように足音を殺している。 私の部屋の前を通る時は、誰もが一度立ち止まり、敬虔な祈りを捧げるような仕草をしてから通り過ぎていく。 窓ガラスを拭く音さえ聞こえない。 庭の手入れをする庭師たちは、ハサミの音がうるさくないように、一本一本丁寧に、まるで外科手術のように枝を切っているらしい。
静かだ。 あまりにも静かだ。
(……最高じゃない?)
私はベッドの上で、ふかふかのクッションに背中を預けながら、心の中でガッツポーズをした。
お父様の「勘違い」は、屋敷中に浸透していた。 『リリアーナお嬢様は、深遠なる思索のために休息を必要としている』 『お嬢様の眠りを妨げる者は、公爵家の敵とみなす』
そんなお触れが出たとか出ないとか。 おかげで、私の生活は一変した。 朝、無理やり起こされることはない。 嫌いな人参を無理やり食べさせられることもない。 「背筋を伸ばしなさい」「口角を上げなさい」と口うるさく言われることもない。
私は好きな時に起き、好きな時に食べ、好きな時に寝る。 まさに、夢の引きこもりライフ。
「ふあぁ……」
あくびが一つ。 窓から差し込む日差しはポカポカと温かく、そよ風がレースのカーテンを優しく揺らしている。
平和だ。 過去6回の人生で、これほど平和な時間は一度もなかった。 いつ処刑されるか怯えることもない。 誰かの顔色を窺う必要もない。
(このまま一生、この部屋から出たくないなぁ)
本気でそう思う。 もう、外の世界なんてどうでもいい。 国がどうなろうと、王子が誰と結婚しようと、知ったことではない。 私はこの半径5メートルの楽園を守り抜く。 それだけが、今の私の生きる目的だった。
◇
しかし、平穏な日々というのは、往々にして突然破られるものだ。
「……お嬢様。失礼いたします」
控えめなノックと共に、専属メイドのマリナが入ってきた。 彼女の足取りは、以前よりもさらに慎重だ。 手には銀のお盆を持っていて、そこには一通の封筒が載せられている。
封筒には、金色の装飾と、王家の紋章が入ったシーリングワックス。 見覚えがありすぎる。 いや、見たくもない代物だ。
「……何?」
私はクッションに顔を埋めたまま、面倒くさそうに尋ねた。
マリナが、恐る恐るお盆を差し出す。
「王宮より、招待状が届いております」
「招待状?」
「はい。来週開催される、国王陛下主催の『春の夜会』への招待状でございます。ジークフリート殿下もご出席されるとのことです」
ああ、来たか。 私は心の中で舌打ちをした。
『春の夜会』。 それは、貴族の子女にとって社交界デビューの前哨戦とも言える重要なイベントだ。 特に、私たちのような高位貴族にとっては、王家への忠誠を示し、あわよくば王子との婚約を取り付けるための戦場でもある。
過去の私は、この日のために命を懸けていた。
(1回目は、流行の最先端を行くピンクのドレスを着て、誰よりも目立とうとしたっけ……)
結果、王子には「派手すぎて目が痛い」と言われた。
(2回目は、清楚さをアピールするために純白のドレスを選んだ)
結果、「壁の花かと思った」と存在を無視された。
(3回目は、知性をアピールしようと、王国の歴史について語りかけた)
結果、「説教くさい女は嫌いだ」と敬遠された。
(4回目は……5回目は……)
思い出すだけで、胃がキリキリと痛む。 どれだけ準備しても、どれだけ完璧に振る舞っても、あの王子は私を気に入らなかった。 それどころか、ちょっとしたミスをあげつらって、公衆の面前で恥をかかせたりもした。
あんな場所、二度と行くものか。 長時間立ったまま愛想笑いを浮かべ、コルセットで腹を締め付けられ、ヒールの高い靴で足が棒になるまで踊る? 冗談じゃない。 今の私には、そんな体力も気力も、ミジンコほども残っていない。
「……ふーん」
私は興味なさげに鼻を鳴らし、封筒を受け取った。 ずっしりと重い、高級紙の感触。 王家の威光そのもののような重圧感。
マリナが期待に満ちた目で見ている。
「今回はどのようなドレスを新調いたしましょうか? 公爵様も、リリアーナお嬢様の『新たな境地』にふさわしい、神秘的なデザインが良いのではないかと……」
「いらない」
「え?」
「ドレスはいらない。夜会には行かないから」
私はきっぱりと言い放った。 マリナの目が点になる。
「い、行かない……のですか? しかし、これは王家からの正式な招待状です。欠席など、よほどの理由がない限り……」
「理由ならあるわ」
「病気ですか!? お医者様を……」
「違う」
私は枕元のクッションをポンポンと叩いた。 そして、けだるげな瞳でマリナを見つめ、真実を告げた。
「眠いから」
「……は?」
「夜は寝る時間でしょ? なんでわざわざ着飾って、うるさい場所に行かなきゃいけないの。私は寝たいの。夜会なんて行ったら、生活リズムが崩れるじゃない」
マリナが口をパクパクさせている。 まるで酸欠の金魚みたいだ。
「そ、そんな理由で……!? 国王陛下の招待を断るのですか!? 不敬罪に問われますよ!」
「不敬でもなんでもいいわよ。処刑されるなら、それはそれで永眠できるし」
まあ、招待を断ったくらいで即処刑はないだろう。 せいぜい、お父様が怒られるくらいだ。 お父様ならなんとかしてくれる。 あの人、最近私のことを「生き神様」か何かと勘違いしているし。
「それにね、マリナ」
私は手にした招待状をじっと見つめた。 厚手の紙。 しっかりとした硬さ。 そして、シーリングワックスの絶妙な厚み。
(……これ、使えるかも)
私はベッドの上でゴソゴソと動き、枕を持ち上げた。 最近、枕の高さが微妙に合わなくて、首が凝っていたのだ。 あと数ミリ。 ほんの数ミリ、高さがあれば完璧なポジションになるのに。
私は、王家の紋章が入った招待状を、枕の下に差し込んだ。
「……よし」
頭を乗せてみる。 沈み込む羽毛の下に、確かな硬さを感じる。 招待状の厚みが、足りなかった数ミリを見事に補完してくれている。
「うん、完璧」
首の角度が、背骨と一直線になった。 呼吸がしやすい。 気道が確保され、いびきもかかずに熟睡できる理想的な体勢。
「あ、あの……お嬢様? 今、招待状を……」
マリナが震える声で指摘する。
「ん? 高さ調整に使ったの。ちょうどよかったわ。紙質が良いから、湿気も吸ってくれそうだし」
「王家の! 紋章を! 枕の! 下敷きに!?」
マリナが悲鳴を上げた。 うるさいなぁ。
「静かにして。せっかくいいポジションが見つかったんだから」
私は気持ちよさそうに目を閉じた。 王家の権威を踏みつけ(頭で踏んでるけど)て眠る背徳感。 いや、背徳感なんて高尚なものはない。 ただただ、快適なだけだ。
「マリナ、下がっていいわよ。私はこのまま、この『王家公認の枕(高さ調整済み)』で二度寝をするから」
「お、お嬢様ぁぁぁ……!」
マリナは頭を抱えながら、よろよろと部屋を出て行った。 可哀想に。 常識に縛られていると、人生辛いだけなのにね。
◇
しかし、問題はそれで終わらなかった。
夕方。 心地よいお昼寝から目覚め、ベッドの上でゴロゴロとストレッチをしていた時のことだ。
「……申し上げます! 王宮より、使者の方がお見えです!」
バタバタと慌ただしい足音と共に、執事が部屋の前にやってきた。
「なんの用?」
ドア越しに尋ねる。
「夜会の出欠確認でございます! 返答がないため、直接確認に来られたのです! 公爵様は今、領地視察で不在……お嬢様が対応しなければなりません!」
あー。 そういえば、返事書いてなかったな。 枕の下に敷いちゃったし。
「……面倒くさい」
「そ、そうおっしゃらずに! 相手は国王陛下の側近、ロイス伯爵です! 失礼があっては……」
ロイス伯爵。 知ってる。 慇懃無礼で、形式を重んじる堅物眼鏡だ。 過去の人生で、何度嫌味を言われたか分からない。 「リリアーナ嬢、そのお辞儀の角度は3度足りませんな」とか。 「扇子の使い方が下品ですな」とか。
あいつに会うの? 今? このパジャマ姿で? 化粧もしてないし、髪もとかしてないのに?
(絶対ヤダ)
着替えるのに1時間。 化粧に30分。 髪のセットに30分。 そして、あの堅物との不毛な会話に30分。
合計2時間半のロスだ。 2時間半あれば、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを1.5回は回せる。
「……帰ってもらって」
「えっ!?」
「会わない。気分が乗らないから」
「そ、そんな馬鹿な! 相手は勅使ですよ!?」
執事の声が裏返る。 すると、ドアの向こうから、別の声が聞こえてきた。
「……ほう。王家の使者を門前払いとは。ヴェルデ公爵家の教育はどうなっているのかな?」
冷ややかで、ねちっこい声。 ロイス伯爵だ。 どうやら、執事の後ろをついてきてしまったらしい。
「リリアーナ嬢。部屋にいるのは分かっている。扉を開けなさい。陛下からの招待状に対し、返答を寄越さないとは何事か。直接、その無礼を問い質す必要がある」
うわぁ。 一番面倒な展開になった。 説教コースだ。 これを開けたら最後、延々とマナー講座が始まるに決まっている。
私はベッドから降りるのさえ億劫だったが、このままドアの前で騒がれると眠れない。 仕方ない。 最低限の労力で追い払おう。
私はのっそりとベッドから這い出し、ドアに近づいた。 鍵を開ける。 ガチャリ。
ドアを、ほんの少しだけ。 隙間風が入る程度に、数センチだけ開けた。
「……何?」
隙間から、片目だけを覗かせる。 もちろん、パジャマ姿のままで。
廊下には、青ざめた執事と、怒りで顔を真っ赤にしたロイス伯爵が立っていた。 伯爵は、私の姿――隙間から見えるボサボサの髪と、眠たげな半眼――を見て、絶句した。
「なっ……貴様、その格好は……!」
「寝てたの」
私は不機嫌そうに言った。
「うるさいから、静かにして」
「き、貴様……! 国王陛下の使者に対して、寝てただと!? しかも、姿も見せずに隙間から……!」
「用件は?」
「夜会の出欠だ! 出席するのか、しないのか! そもそも、招待状はどうした!」
招待状。 ああ、あれね。
「あるわよ」
私はあごでベッドの方をしゃくった。 見えないだろうけど。
「枕の下に」
「……は?」
「高さ調整にちょうどよかったから。おかげでよく眠れたわ。陛下に感謝しておいて」
ロイス伯爵の眼鏡が、カチャリとズレた。 口が開いたまま塞がらないようだ。 執事はもう、白目を剥いて気絶寸前だ。
「ま、枕の……下……? 王家の紋章を……尻に敷いたと……!?(頭だけど)」
「で、行かないから」
私はあくびを噛み殺しながら言った。
「眠いし、面倒だし。王子によろしく」
そう言って、私はドアを閉めようとした。 しかし、伯爵が足を挟んで止める。
「ま、待て! 貴様、正気か!? こんな侮辱、許されると思っているのか! 権力を恐れぬその態度は……!」
しつこい。 本当にしつこい。 眠いって言ってるのに。 私の安眠を妨害する奴は、王様だろうが何だろうが敵だ。
私は、心の底からの「拒絶」を込めて、手を振った。
シッシッ。
野良犬を追い払うような、あるいはハエを払うような、ぞんざいな手つき。 指先には力が入っておらず、だらりと垂れ下がっている。 顔は無表情。 目は半分閉じている。
「……消えて」
小さく、そう呟いた。 これは魔法ではない。 ただの、睡眠欲求からくる本音だ。 「私の視界から消えて、静寂を返して」という、切実な願いだ。
しかし。 その瞬間、私の体から無意識に漏れ出ていた魔力が、空気中のマナと共鳴した。
『覇気』。 5回目の人生、闇ギルドの総帥として裏社会を統べていた時に身につけた、絶対強者のオーラ。 それが、寝起きの無防備な状態だったために、制御されずにダダ漏れになっていたのだ。
ドォンッ……!
空気の圧力が、廊下を駆け抜けた。 窓ガラスがビリビリと震え、廊下のロウソクが一斉に消える。
「ひっ……!?」
ロイス伯爵は、見えない巨人の手で押し出されたように、後ずさりをした。 彼の目には、隙間から覗く私の紫色の瞳が、深淵の闇のように見えたことだろう。 底知れぬ、絶対的な闇。 王権などというちっぽけな権威が通用しない、圧倒的な「個」の力。
「……あ」
伯爵の膝が、ガクガクと震え始めた。
(……やば。出しすぎた?)
私は少しだけ反省した。 でも、眠いものは眠い。
「おやすみ」
パタン。 カチャリ。
私は容赦なくドアを閉め、鍵をかけた。 ふう。 これでやっと静かになる。
廊下からは、しばらくの間、荒い呼吸音だけが聞こえていたが、やがてドタドタという逃げるような足音が遠ざかっていった。
「……ふふ」
勝利。 二度目の勝利だ。 私は満足げにベッドに戻り、枕(招待状入り)の感触を確かめた。
うん、やっぱりこの高さが最高。
◇
王宮、謁見の間。
「……して、ヴェルデ公爵令嬢は、そう言ったのか?」
玉座に座る国王が、困惑した顔で尋ねた。 その御前で、ロイス伯爵は平伏し、脂汗を流しながら報告していた。
「は、はい……。間違いございません。『陛下に感謝しろ』と。そして『王子によろしく』と……」
「招待状を枕の下に敷いて、か?」
「左様でございます。しかも、私を……この私を、ゴミを見るような目で見下し、手で払いのけたのです。その時放たれた気迫たるや、まるで歴戦の猛者のようで……私は、恥ずかしながら腰が抜けるかと……」
謁見の間が、ざわめきに包まれた。
「あの堅物のロイス伯爵を震え上がらせるとは」 「王家の招待状を枕にする? 前代未聞だ」 「なんと傲慢な……いや、豪胆と言うべきか?」
大臣たちがヒソヒソと噂し合う中、一人の青年が前に進み出た。
第一王子、ジークフリート。 金色の髪に、碧眼の美青年。 この国の次期国王であり、私が最も関わりたくない人物ナンバーワン。
彼は、興味深そうに目を細めていた。
「面白い」
ジークフリートは、口元に手を当てて笑った。
「僕の誘いを断るために、あえて不敬な態度を取ったというのか? いや、違うな。ロイスの話が本当なら、彼女は『本気でどうでもいい』と思っている」
王子は、今まで数多の女性に言い寄られてきた。 誰もが彼に媚び、気に入られようと必死だった。 彼の権力に、容姿に、血筋に、ひれ伏してきた。
だが、リリアーナは違った。 招待状を枕にし、使者をパジャマ姿で追い返す。 それはつまり、「あなたごとき、私の睡眠時間ほどの価値もない」という宣言に他ならない。
「……媚びない女だ」
ジークフリートの瞳に、熱い光が宿る。
「権力に屈せず、常識に縛られず、己の信じる道(睡眠)を貫く。それほどの気高さを持つ令嬢が、この国にいたとは」
「で、殿下? 何か勘違いを……」
ロイス伯爵が顔を上げるが、王子は聞いていない。
「今まで、彼女のことを『着飾ることしか脳のない人形』だと思っていた。だが、それは彼女が被っていた仮面だったのか。真の姿は、王権すらも鼻で笑う、孤高の女帝……」
王子の脳内で、勝手にリリアーナのイメージが補正されていく。 パジャマ姿 = 飾らないありのままの美しさ。 半眼 = 俗世を見透かす達観した瞳。 「消えて」 = 弱き者への慈悲深い撤退命令。
「会いたい」
ジークフリートは、燃えるような瞳で宣言した。
「夜会に来ないなら、こちらから行くまでだ。その『枕』の寝心地、直接感想を聞かせてもらおうじゃないか」
「で、殿下!? それはお忍びで屋敷に行くと!? 危険です!」
「止めるな。これは運命だ」
王子はマントを翻し、颯爽と謁見の間を出て行った。 残された国王と大臣たちは、呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
◇
その頃。 私の部屋。
「くしゅんっ!」
私は可愛らしくくしゃみをした。 誰か噂してる? まあいいや。 風邪かもしれないから、暖かくして寝よう。
私は毛布を頭まで被り、三度目の眠りにつこうとしていた。
枕の下の招待状が、カサリと音を立てる。 それはまるで、これから訪れる波乱の予兆のように聞こえたが、今の私には心地よい子守唄にしか聞こえなかった。
まさか、あの王子が「お忍び」という名のストーキング行為に及ぶとは、夢にも思わずに。
そして翌日。 私の平穏な引きこもり生活を脅かす、第三の刺客が現れることになる。
「リリアーナ様! 勝負よ!」
そう叫んで部屋に乱入してくる、あのうるさい女の姿を、私はまだ知らない。
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