旦那様に“君は妻ではなく家の飾りだ”と言われたので、離縁後は裁判官の家で暮らします

なつめ

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**第31話 返してもらうもの、置いていくもの**


 婚家へ戻る馬車の中で、リゼットはほとんど一言も発しなかった。

 戻ると言っても、あの家へ再び妻として足を踏み入れるためではない。判決に従い、彼女の私物と、婚姻前からの持ち物、そして持参金由来の品のうち彼女個人に帰属するものを確認し、持ち出すためだ。必要な手続きとして、どうしても一度は行かなければならない。そのことは頭でわかっていた。けれど、わかっていることと、実際に門の前まで近づくことは、やはり別だった。

 車輪が石畳を打つたび、胸の奥で小さなものがきしむ。

 窓の外には見慣れた王都の通りが流れている。午前の光は明るすぎず、春の終わりに近い乾いた風が街路樹の葉を揺らしていた。空は晴れている。数日前の判決の日とよく似た、静かで澄んだ空だった。こんな日に、またあの家へ向かっている自分が、妙に現実味を欠いて感じられる。

 向かいの席にはオディルがいた。

 濃紺の仕事着に、きっちりまとめられた栗色の髪。膝の上には小型の帳面と書類挟みが置かれている。今日は相談室でも調停院でもなく、あくまで判決履行の確認補助として同席しているのだ。彼女は普段通り余計なことを言わない。ただ一度だけ、馬車が大通りから外れて屋敷の近い区域へ入ったころ、低い声で確認した。

「持ち帰る優先順位は、もう決めている?」

 その問いに、リゼットは少しだけ間を置いた。

「……はい」

「いいわ」

 オディルはそれだけ言って、帳面へ目を落とす。何を選ぶかに口を出す気はない。ただ、迷っているなら整理の手伝いをするつもりでいたのだろう。その距離感がありがたかった。

 屋敷の門が見えた瞬間、リゼットの指先がわずかに冷えた。

 バルセ伯爵家の門扉は、以前と何も変わっていない。黒い鉄の曲線、両脇の石柱、季節の花を整えた低い植え込み。何一つ変わっていないからこそ、そこにあった長い年月がひどく現実的に戻ってくる。馬車が減速し、門番が確認のため一歩前へ出る。リゼットは無意識に背筋を伸ばしたが、すぐに気づいて肩の力を抜いた。

 もう、ここへ“整った妻”として入る必要はないのだ。

 そう自分へ言い聞かせる。

 門が開く。馬車が中庭へ入る。石畳の感触が少し変わる。その振動だけで、身体が昔の緊張を思い出しそうになるのが嫌だった。

 玄関前には執事と、家令補佐らしい男、それから古参の女中頭が並んでいた。顔ぶれも、立ち方も、ほとんど記憶のままだ。だが彼らの視線の置き方だけが、以前とは違っている。かつては「奥様」として扱われていた人間を、今はどう呼べばよいのか探りながら、それでも露骨に失礼にはなれない、そんな硬い戸惑いがあった。

 先に降りたオディルが、役所の書類を示して淡々と告げる。

「判決に基づく私物確認です。本人立会いのもとで、持ち出し対象を選別します。記録もこちらで取ります」

 執事が一礼し、「承知しております」と返す。その声音もまた、丁寧でありながら妙に平板だった。ここではもう感情を差し挟む余地がないのだと、屋敷の側も理解しているのだろう。

 リゼットが馬車を降りると、春の終わりの風がスカートの裾を軽く揺らした。玄関の石段は乾いていて、磨かれた扉の金具はいつも通りに光っている。何も変わらないその景色を見上げた時、胸の奥へ最初に来たのは懐かしさではなかった。ひどくよそよそしい、という感覚だった。長くいたはずの場所なのに、もう自分の呼吸に合う家ではない。そこがはっきりわかる。

「時間は十分取ってあります」

 オディルが隣で言う。

「急がなくていい」

「はい」

 短く返して、リゼットは玄関をくぐった。

 屋敷の中の匂いも、記憶のままだった。磨かれた木、微かな蝋、季節ごとに変える花の香り、それに人の気配をあまり残さない広い家の空気。けれど今日はそこへ、自分を迎えるぬくもりが一切ない。まるで展示室へ入ったような、整いすぎた冷たさだけがある。

 案内されたのは、かつて自分が使っていた私室だった。

 扉が開いた瞬間、胸のどこかがひどく静かに痛んだ。部屋の中も、あまり変わっていない。窓辺の細い机。小さな暖炉。衣装箪笥。鏡台。長椅子。けれどそのどれもが、いまではもう誰かに使い続けられているわけでもなく、ただ「残されていた」気配をまとっていた。人が息をしていた部屋ではなく、持ち主の不在をきれいに保った部屋。そんなふうに見える。

 女中頭が鍵束を鳴らしながら言った。

「必要なものをお選びくださいませ。衣装部屋も開けます」

 必要なもの。

 その言い方に、リゼットはかえって落ち着いた。そうだ。今日は“何を置いていかれたか”を数えに来たのではない。“何を持って出るか”を決めに来たのだ。

 彼女はゆっくりと室内を見渡した。

 まず目に入ったのは、壁際の衣装箪笥だった。婚姻中に仕立てられたドレスが何着も入っているはずだ。季節ごとの色、夜会用の重たい絹、昼の訪問用の軽いレース。そこにはきっと、王都のどの夫人より不足なく整えられた布が並んでいる。けれど、その箪笥を見た時、リゼットの胸は少しも動かなかった。

 次に鏡台。真珠の髪飾り。金の細い櫛。香油の瓶。小さな宝石箱。どれも「伯爵夫人」として必要だと判断され、選ばれ、贈られ、置かれてきたものだ。美しい。高価でもある。だが、そのどれもが、いまの自分にとっては、長いあいだ着せられていた役割の表面に過ぎないように思えた。

 リゼットは部屋の中央から動かず、ゆっくりと視線を巡らせる。

 何を返してもらうか。

 何を置いていくか。

 その問いに対して、彼女の身体はもう答えを知っている気がした。

「……まず、机を」

 そう言うと、女中頭が少し意外そうな顔をした。

「机、でございますか」

「ええ。引き出しを」

 引き出しを開けると、中には古い紙が束ねてあった。婚姻前、まだ実家にいた頃から使っていた小さな辞書。装丁は擦れて角が丸くなり、何度も開いた箇所の背が柔らかく折れている。若い頃、自分で言葉を確かめたくて手元に置いていた一冊だ。婚家へ来てからも、最初のころは時折めくっていた。いつしか使わなくなったが、捨てられてはいなかった。

 リゼットはその辞書をそっと持ち上げた。重みはたいしたことがない。けれど掌に収まるその古びた厚みが、妙に胸へ響いた。

「これを」

 オディルがすぐに帳面へ記す。

「辞書、一冊」

 リゼットは次に、引き出しの奥へ残っていた細いノートを取り出す。婚姻前から使っていた雑記帳だ。観劇の感想、気になった言葉、訪ねたい場所、母から聞いたレシピまで、何でもないことが乱雑に書きつけられている。ページの途中から空白が増え、やがてほとんど何も書かれなくなった。それでも、このノートはたしかに「誰の妻でもない頃の自分」が残した手跡だった。

 それも、持っていく。

 衣装箪笥のほうは、ほとんど開ける必要がなかった。女中頭が「こちらもご確認を」と勧めたが、リゼットは首を振った。

「婚姻後に誂えたものは、置いていきます」

 女中頭がわずかに目を見開く。

「宝飾も」

「必要ありません」

 そう言った時、自分の声が驚くほど静かであることに、リゼットは少しだけ不思議な気持ちになった。以前なら、もっと迷っただろうか。高価なものを捨てるのは損だとか、あとで必要になるかもしれないとか。そういう計算が頭をよぎったかもしれない。けれど今は違う。あの宝石箱に入っているものの多くは、自分へ贈られた品である前に、家の見栄えを整えるための装飾だった。それを持ち帰っても、たぶん重いだけだ。

 代わりに、彼女が衣装部屋の奥から探し当てたのは、小さく畳まれた刺繍布だった。

 母が手をつけかけていたものだ。婚家へ入る前に「時間がある時に続きをやりなさい」と持たされたが、結局ほとんど針を進められなかった。淡い生成りの布に、青い小花の図案が途中まで刺されている。母の手と、自分の数針だけが混ざった布。高価ではない。けれど、これを置いていく理由はないと思った。

「それも」

 オディルがまた記す。

 リゼットは次に、鏡台の引き出しから、小さな革表紙の記録帳を取り出した。そこには婚家へ来た初期のころから、自分なりに書き留めていた日々の断片がある。最初は社交の日程や、客の名、失礼のないよう覚えるためのメモだった。やがて空白が増え、さらにしばらくして、苦しさをどうにか言葉へしようとした短い断片が混じり始める。

 いまの別棟で書いている帳面とは違う。けれど、これもまた自分の名前で残した記録だ。かつて言葉を奪われていた頃の、自分なりの細い抵抗の痕跡でもある。

 それを見た瞬間、リゼットはようやく自分が何を選んでいるのかを理解した。

 返してもらうのは、自分の声に近いものばかりだ。

 言葉を引くための辞書。何でもない感想を書いたノート。母の手の記憶が残る刺繍布。そして、自分の名で残した記録。

 ドレスでも、宝石でも、豪華な化粧箱でもない。誰かの妻として整えるためのものではなく、自分が自分でいるための手触りのあるもの。それだけでいいのだと、いまはっきりわかった。

「以上ですか」

 女中頭が、少し戸惑いを隠せない声音で訊いた。

 リゼットは部屋を見渡した。箪笥。鏡台。宝石箱。夜会用の手袋。色を揃えられた靴。どれも、この家で“伯爵夫人”として必要だったものだ。けれどそのどれもが、いまの自分の呼吸にはもう必要ない。

「ええ」

 静かに答える。

「それで十分です」

 その時、廊下の向こうで足音が止まった気配がした。

 扉は閉まっている。だが人の気配には、微妙な重さがある。女中頭がわずかに顔をこわばらせたのを見て、リゼットは察した。

 アドリアンだ。

 来るだろうとは思っていた。最後まで顔を出さない男ではない。こういう場面で、自分がまだこの家の主であることを示したいはずだ。

「……どうぞ」

 女中頭が声をかけると、扉が開いた。

 アドリアンは、以前と変わらない整った姿で立っていた。昼の光が背後から差し込み、その輪郭を少しだけ白く縁取る。上着も、髪も、表情も乱れていない。だが、法廷で見せたわずかな狼狽を知ったあとでは、その端正さもどこか薄い膜のように見える。

 彼の視線は、まず机の上へまとめられた品へ落ちた。

 古い辞書。ノート。刺繍布。記録帳。

 宝石も、ドレスも、何一つない。

 そのことが、彼には少し意外だったのだろう。目の奥にごく小さな揺れが走る。

「それだけか」

 声は低い。責めるようでも、驚いたようでもない。だが、その短い一言の中に、「もっと執着すると思っていた」という含みがあった。

「はい」

 リゼットは答える。

 もう説明する気はなかった。なぜそれだけなのかを、彼に理解してもらう必要はない。

 アドリアンは部屋の中を一度だけ見回した。箪笥、鏡台、宝石箱。かつてなら彼女が価値を置いていると信じていたはずのものばかりだ。そして机の上の小さな山へ視線を戻す。

「……変わったな」

 その言葉は独り言のようでもあり、非難のようでもあり、あるいは戸惑いの露呈でもあった。

 リゼットは何も答えない。

 変わったのだろう。けれど、それは彼が思うような意味ではない。趣味が変わったのでも、急に質素ぶっているのでもない。何に自分の輪郭があるかを、ようやく知っただけだ。

 アドリアンは数歩だけ部屋へ入り、机の前で立ち止まった。近づかれても、リゼットの身体は以前のように強く縮まらなかった。そのことに、自分で少しだけ驚く。

「戻る気になったら」

 彼はそこで言った。

「いつでも」

 声は抑えられていた。以前のような苛立ちも、花束の手紙にあったような露骨な押しつけもない。むしろ、静かで、聞きようによっては寛容ですらある響きだった。

 だが、リゼットにはよくわかった。

 それは愛でも悔恨でもない。ただ、自分の管理下から完全には失いたくないという、最後の手癖のようなものだ。置いていかれたくない。扉だけは開けておきたい。自分が不要だと決めたものでも、他所で別の価値を持つと知った以上、もう一度手の届く場所へ置いておきたい。その欲だけが、いまさら静かな声を借りて出ている。

 けれどもう、それに揺れる理由はなかった。

 リゼットは、返事をしなかった。

 振り返りもせず、ただ女中頭へ向き直る。

「こちらを包んでいただけますか」

 その一言だけを、落ち着いた声で言った。

 部屋の空気が、ほんの一瞬だけ張る。

 アドリアンの気配が背後でわずかに硬くなるのがわかった。最後の言葉に、返答すら与えない。そのことの意味を、彼も理解したのだろう。けれど、いまさら言葉を重ねても遅い。彼が欲しかったのは返事ではなく、自分の選んだ位置をまだ保てるという感触だったのかもしれない。だから、何も返らないことのほうが、いちばん堪えるのだ。

 女中頭が慌てたように「かしこまりました」と答え、布と箱を用意し始める。オディルは何も言わない。ただ帳面へ、淡々と記録を書き足していた。そういう場にしてくれていることが、ひどくありがたかった。

 リゼットは窓辺へ一歩寄った。そこから見える中庭は、午後の光に照らされている。いつかはここから外を見て、何も感じないふりをしていた。屋敷の中に置かれ、外へ出る時はいつも誰かの予定に従い、戻ればまたここへ収まるしかないと思っていた。

 でも、もう違う。

 置いていくのは物ではないのだと、はっきり思う。

 置いていくのは、従っていた頃の自分だ。

 黙れば波風が立たないと信じていた自分。与えられたものをそのまま受け取り、家のために整えられていれば十分だと思い込もうとした自分。呼ばれれば行き、差し出されれば署名し、息苦しくても、それが妻としての役目なのだと自分をなだめていた自分。

 その自分を、この部屋へ、この家へ、全部置いていくのだ。

 背後で紙を包む音がする。布が擦れる音。小箱の蓋が閉まる音。女中頭の抑えた息遣い。アドリアンはもう何も言わなかった。言えなかったのかもしれないし、言っても届かないと知ったのかもしれない。

 荷物は驚くほど少なかった。

 女中頭が運べるほどの箱が二つ。それだけだ。婚家で過ごした年月に比べれば、あまりに少ない。けれどリゼットには、それが空虚には見えなかった。むしろ、ようやく自分に必要なものだけを選び取れた重みとして、静かに感じられた。

 部屋を出る時、リゼットは一度も振り返らなかった。

 鏡台も、箪笥も、窓辺の机も、あの長椅子も、視界の端には入った。けれど、顔は向けない。あれらはたしかにここでの生活の一部だった。だが、それを惜しむために来たのではない。

 廊下へ出る。光は少しだけ傾いている。歩くたび、床板が小さく鳴る。その響きさえ、以前よりずっと軽く聞こえた。

 玄関を抜け、中庭へ出る。風が頬に触れる。外の空気は少しだけ乾いていて、屋敷の中の香油や蝋の匂いを一気に洗い流してくれるようだった。

 馬車の前でオディルが先に振り返る。

「忘れ物は」

 仕事の確認みたいに訊く。

 リゼットは首を振った。

「ありません」

 その答えは、本当に物のことだけを指しているわけではなかった。

 馬車へ乗り込み、扉が閉まる。車輪が動き出し、門へ向かう。窓の外で、バルセ伯爵家の建物が少しずつ遠ざかっていく。石の壁。黒い門。整えられた庭。どれも以前と同じ形のまま、少しずつ視界の外へ流れていく。

 リゼットはその光景を黙って見ていた。

 胸の中に劇的な感情はない。涙も出ない。勝ち誇りも、ざまあみろという気持ちも、ない。ただ、長く胸の上に乗っていた重いものが、ようやく静かに下ろされていくような感覚があった。

 返してもらうものは、もう手元にある。

 古い辞書。ノート。母の刺繍布。自分の名前で残した記録。

 置いていくものも、たしかに置いてきた。

 誰かの都合で整えられ、従っていた頃の自分を。

 馬車が門を抜けた瞬間、リゼットはようやく深く息を吸った。

 空気が胸の奥まで入る。苦しくない。痛くもない。ただ、そのまま自分の身体へ戻ってくる。

 それで十分だと思った。


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