29 / 37
第28話 離縁書に署名した旦那様
朝の光は、やけに静かだった。
昨夜の月は薄く、冷たく、窓の外の石畳だけを細く照らしていたが、明けた空はそれよりさらに色を失っていた。晴れてはいる。雲は高く薄い。けれど春の気配を連れてくるような柔らかさはまだなく、硝子越しに差し込む光までどこか硬い。屋敷の庭木は夜露を払ったあとで、枝先だけが白く乾いていた。
セルフィーネはその朝、鏡の前で髪を整え終えたあともしばらく立ち尽くしていた。
眠れたような、眠れなかったような夜だった。目を閉じるたびに浮かぶものが多すぎたからだ。階段の踊り場。自分を庇った腕。側頭部へ落ちた鈍い衝撃音。全部を思い出してしまったオルドレンの目。そしてその翌日に始まった、冷たさではなく、触れられなさ。
記憶が戻れば、彼はまた以前のように凍るのだと思っていた。
けれど実際には、そうならなかった。
代わりに彼は、セルフィーネから少しだけ距離を取るようになった。必要なことは伝える。警護も増やす。調べも止めない。けれど直接は来ない。目が合えば逸らしはしないのに、近づかない。触れない。あまりに慎重で、その慎重さ自体が痛みになった。
あの人は自分へ触れる資格がないと思い込んでいる。
昨夜、書庫の前で偶然聞いてしまった言葉が、まだ胸の奥へ刺さったままだった。
だからこそ今日、朝一番で届いたミレナの言葉に、セルフィーネの指先は思わず冷えた。
「旦那様が、小書斎へお越しいただきたいと」
短い伝言だった。
それだけで十分だった。
何のためかは、聞かなくても分かった気がした。期限の迫った離縁書。記憶の戻った夫。ここ数日の断絶と、明らかになりつつある真実。その全部の上で、先延ばしにできないことが一つだけある。
離縁の扱いを、どうするか。
セルフィーネは薄い灰色のドレスを選んだ。華やかさのない、柔らかな色だ。襟元はきちんと詰め、袖口のレースも控えめなものにする。まるで誰かの弔いへ行くみたいだと、一瞬だけ思った。だが間違いではないのかもしれない。今日終わるのは、結婚そのものではなくても、何か一つの希望の形なのだろうから。
小書斎の扉の前へ立つと、胸の奥が静かに鳴った。
ノックをすると、すぐに低い声が返る。
「入ってくれ」
その声だけでは、感情の向きは分からない。冷たくもない。優しくもない。ただ、静かだった。
扉を開く。
小書斎は、以前と変わらず温度の低い整い方をしていた。西向きの窓から朝の淡い光が入り、暖炉にはほどよく火が入っている。棚の本は寸分違わず並び、机の上には余計なものが一つもない。けれど中央の卓の上にだけ、白い紙が二枚、まっすぐ揃えられていた。
見覚えがある紙だった。
厚手の法務文書用紙。左下に控印。上段に既に書かれたセルフィーネの名前。下段の、夫の署名欄だけがまだ空いている。
離縁書。
最初に自分が差し出したあの紙が、正式様式へ整え直されたものだった。
その横には銀のインク壺と、細身のペン。書き損じに備えた砂箱。吸取紙まで、すでに用意されている。
セルフィーネは扉のところで一瞬だけ足を止めた。
準備ができすぎていた。
話し合いのための場というより、すでに決まったことを執り行うための机だ。そう見えた瞬間、胸の奥へ冷たいものが落ちる。
オルドレンは窓際ではなく、卓の向こうに立っていた。
昨日より顔色は戻っている。だが側頭部の包帯はまだ薄く残り、目の下には眠っていない影がある。記憶が戻ったことで、怪我より別の疲労が増したのだろうと分かった。
「座ってほしい」
低い声。
セルフィーネは無言で頷き、卓の手前の椅子へ腰を下ろした。オルドレンは自分も向かいへ座るかと思ったが、そうせずに立ったままだった。まるで、まだ席につく資格がないとでも思っているように。
沈黙が、部屋へゆっくり降りる。
暖炉の火が小さくはぜた。
セルフィーネは卓の上の離縁書から視線を外せなかった。何度も望んだはずの紙だ。何度も、この人がそこへ署名してくれれば終われるのだと思ってきたはずの紙。それなのに今こうして目の前に置かれると、胸の内側がひどく静かに痛む。
「期限まで、あと三日だ」
先に口を開いたのはオルドレンだった。
「ええ」
セルフィーネも短く答える。
あと三日。昨日までは四日だった。朝は容赦なく一つずつ減っていく。
「このまま保留を続ければ、君は残るか」
セルフィーネはそこで初めて顔を上げた。
オルドレンの青灰色の瞳は、まっすぐこちらを見ている。逃げてはいない。けれど近づいてもこない。あの距離の取り方のまま、問いだけを置いてくる。
「……いいえ」
セルフィーネは静かに答えた。
「変わりません。記憶が戻った以上、なおさら」
その答えに、オルドレンは頷いた。傷ついたようには見えたが、驚きはなかった。最初から、その返事を想定していた顔だ。
「そうだろうな」
低く落ちたその一言に、セルフィーネの胸がまた痛む。
この人は、やはり分かっているのだ。いま自分を引き止めることが、どれほど身勝手で、どれほど昔の自分をなぞる行為になるのかを。
オルドレンは卓の上のペンへ視線を落とした。
その指先が、一瞬だけ躊躇うように動く。けれど次の瞬間には迷いが消えた。彼はインク壺の蓋を開け、ペン先を静かに浸す。
セルフィーネの呼吸が止まった。
何をするのか、分かっている。
分かっているのに、身体が追いつかなかった。
「オルドレン様」
自分でも知らないうちに、名前を呼んでいた。
オルドレンは顔を上げない。ただ低く言う。
「君の前でやるべきだと思った」
そしてそのまま、離縁書の下段へペン先を運ぶ。
さらさらと、乾いた音がした。
インクが紙を滑る、ひどく静かな音。
たった数秒のことなのに、セルフィーネにはずいぶん長く感じられた。彼の筆跡は昔から無駄がない。鋭く、整っていて、揺れが少ない。今もそうだ。怪我をして、記憶が戻った直後で、眠りも足りていないはずなのに、名前はほとんど乱れずにそこへ置かれた。
オルドレン・ヴァイスハルト
署名は、あまりにもあっけなかった。
終わりの形というものは、時にこんなにも静かなのかと、セルフィーネは思う。怒鳴り合いも、涙も、引き止める腕もなく。ただ一人の男が、自分の名前を書くだけで、長い結婚生活の出口が現実になる。
ペンが置かれる。
オルドレンはそこで初めて息を吐いた。
セルフィーネの胸は、妙に空っぽだった。
ああ、終わりなのだと、一瞬だけ思う。
やはりこの人は、全部を思い出した末に、離縁書へ署名したのだと。たとえ優しかった時間があっても、婚約期の恋が本物だったとしても、結局はここへ辿り着くのだと。そういう結末なのだと。
不思議と、涙は出なかった。
代わりに、自分の指先から感覚が薄れていくのが分かった。冷たくて、遠い。まるで、自分の身体だけが少し遅れてこの現実へ追いつこうとしているみたいだった。
「……これで」
セルフィーネはどうにか声を出す。
「終わり、ですか」
オルドレンはその問いに、ようやく顔を上げた。
その目を見た瞬間、セルフィーネは自分が一瞬で早合点していたことに気づく。
そこにあったのは、突き放したあとの冷たさではなかった。
むしろ逆だ。ひどく静かな痛みと、何かを切り捨てるみたいな決意と、その両方を抱えた目だった。
「終わりではない」
低い声が落ちる。
「少なくとも、俺にとっては」
セルフィーネは言葉を失う。
オルドレンは署名済みの紙を指先でまっすぐ整え、それからこちらを見たまま続けた。
「君を縛る権利は、もう私にはない」
その一言に、胸の奥が強く打つ。
今、彼は「夫だから」とも、「愛しているから」とも言わない。先に置くのは権利がないという事実だ。それが、この人の今の誠実さなのだと分かるから、よけいに苦しい。
「俺は記憶を失う前、君を疑った。責めた。見ないことを選んだ。泣く君に背を向けた」
オルドレンの声は揺れない。だからこそ、ひどく重い。
「全部を思い出した今、君へ『残ってくれ』と言うのは、また別の形で君を縛ることになる」
セルフィーネは返事ができなかった。
そうだ。今の彼がどれほど自分を選びたいと思っていても、それを理由に自分をここへ留めるのなら、また同じことになる。夫の意思が、妻の人生を決める。その残酷さを、この人はようやく正面から見ているのだ。
「だから署名した」
オルドレンは静かに言う。
「君が離れると決めた時、その道を俺が塞がないために」
セルフィーネの喉が熱くなる。
署名は拒絶ではなかった。
執着でもなかった。
離れたいと言った相手の足元から、自分の権利だけを先に引くためのものだったのだ。
「……そんなふうに」
セルフィーネは、どうにか言葉を繋ぐ。
「そんなふうにされると、余計に」
何と続けるべきか分からない。余計に苦しい。余計に終われない。余計に好きになってしまいそうだ。いくつもの本音が、喉元でぶつかる。
オルドレンはその続きを待たなかった。
「ただ」
その声が、少しだけ低くなる。
「君を傷つけた真実だけは私の手で正す」
セルフィーネは息を呑む。
彼の青灰色の瞳は、一寸の揺れもなくこちらを見ていた。
「離縁が成立しても、しなくても関係ない」
オルドレンは続ける。
「叔母上が何をしたか。偽の印章がどう作られ、誰が帳簿と手紙を盗んだか。レオニスの死のあと、どうやって君へ疑いを寄せたか。全部を明るみに出す」
その一語一語が、誓いのように静かだった。
「君が何も知らなかったこと。見捨てたのではなく、むしろ警告しようとしていたことも、公の形で戻す」
セルフィーネは、その言葉の重みに圧されるように目を伏せた。
責任。
それは言葉にすれば簡単だ。だが実際には、自分の家の醜さを公の場へ差し出し、自分が信じていた叔母の裏切りも、弟の死後の判断の誤りも、全部を認めることになる。家名も、体面も、残された情も、全部を傷つけるだろう。
それでもこの人は、それをやると言う。
愛の言葉ではなく、責任として。
その誠実さが、セルフィーネにはあまりに痛かった。
「どうして」
気づけばそう問うていた。
「どうして、そこまで」
オルドレンは一瞬だけ視線を落とし、それからゆっくりと戻す。
「そこまでしなければ、君へしたことの最低限にもならないからだ」
あまりに静かな答えだった。
弁解もない。美しく飾ろうともしない。ただ事実として、自分が壊したものに見合うだけの償いをするのだと、そういう顔だった。
「俺は君を引き止める資格がない」
彼はさらに言う。
「だが、君の名に押しつけた汚れを、そのままにして手放すこともできない」
セルフィーネの胸の奥で、何かがひどく静かに震える。
この人は、執着ではなく責任で向き合おうとしている。
それが分かった瞬間、昨日までとは違う痛みが生まれた。責任だからこそ、甘えられない。責任だからこそ、軽々しく受け取れない。けれど責任でここまで真っ直ぐに向き合われること自体が、今までなかった救いでもある。
「……あなたは」
セルフィーネは小さく言う。
「私を自由にしたいのですか」
オルドレンは少し考えるように沈黙した。
それから、ひどく正直に答える。
「本音を言えば、したくない」
セルフィーネの指先がわずかに震える。
「離れてほしくない。君を選びたい。今もそう思っている」
そこで一度、彼は言葉を切る。
「だが、それは俺の本音であって、君を拘束する理由にはならない」
その切り分け方に、セルフィーネは目を閉じたくなる。
昔なら、たぶんこの人はここまでできなかった。好きか嫌いか、疑うか信じるか、そのまま行動へ流していただろう。今の彼は違う。自分の感情と、相手の自由を、切り離して置こうとしている。その不器用な誠実さが、たまらなく胸を打つ。
「署名したからといって」
オルドレンの声は続く。
「君への気持ちが消えたわけではない」
セルフィーネはそっと目を開ける。
「……ええ」
「むしろ逆だ」
青灰色の瞳が、まっすぐこちらを捉える。
「残したいと思うからこそ、君を縛らない形を選ばなければならなかった」
その言葉は、ほとんど告白に近かった。
けれど、それは甘い告白ではない。手を伸ばして抱き留めるための言葉ではなく、自分の手を引くための言葉だ。だからこそ、よけいに真実味がある。
セルフィーネは、署名された名前を見つめた。
たった今まで、あの名前がそこに記されることは終わりの合図にしか見えなかった。けれど今は違う。この署名は、彼が自分の権利を放すためのものであり、その代わりに責任だけは引き受けるという宣言でもある。
それは、欲しかった「好きだ」とは違う。
もっと遅くて、もっと苦くて、もっと信じにくい。けれど、土台になるのはむしろこういうものなのかもしれないと、セルフィーネは思ってしまった。
昔の恋は、本物だった。
けれどその本物は、疑いと痛みの前では簡単に歪んだ。
なら、この先にもし何かがあるのだとしたら、それは昔の恋のやり直しでは足りない。権利ではなく責任で向き合う、この不器用な誠実さの上にしか築けないのだろう。
「……私は」
セルフィーネはゆっくり息を吐く。
「この署名を、見たくないはずでした」
オルドレンは黙って聞く。
「見れば終わると思っていたから。でも、いまは」
そこまで言って、言葉が少しだけ揺れる。
「終わりだとは、言い切れません」
オルドレンの瞳が、わずかに揺れた。
それは希望に飛びつくような揺れではない。むしろ、そう言わせてしまったことへの痛みに近かった。
「そう思わせたなら、すまない」
低い声。
セルフィーネは小さく首を振る。
「謝ってほしいわけではありません」
「だが」
「ただ、難しくなっただけです」
それが、正直なところだった。
以前なら、この署名で綺麗に切れたはずなのに。彼が冷たく頷き、離縁を進めるだけなら、自分もそれを持って出ていけたはずなのに。今はそうならない。今の彼は、自分を縛らないまま、真実だけは正すと言う。そこにある責任の重さが、簡単な決別を許さなくしてしまう。
オルドレンはそこでようやく椅子へ腰を下ろした。今まで立ったまま話していたせいか、その動きはわずかに重い。怪我のせいだけではないのだろう。セルフィーネはその時になって初めて、彼の右手の親指の付け根に小さなインクの滲みがあるのを見つけた。
署名の時、少しだけ手が震えていたのかもしれない。
あれほど整った筆跡だったのに、指先だけはきっと平静ではなかったのだと、今さら分かる。終わらせるためではなく、自由にするために署名する。その痛みを、この人もまたちゃんと引き受けていたのだ。
「この三日、君が望むなら北の客室を使っていい」
オルドレンが静かに言った。
「顔を合わせること自体がつらいなら、俺のほうが西翼へ移る」
セルフィーネは思わず顔を上げる。
「そこまで」
「必要だ」
即答だった。
「離れると決めた人間に、同じ屋根の下でまで我慢を強いる気はない」
その言い方に、セルフィーネの胸がまた強く揺れる。以前なら、この家の都合が先に来た。夫の動線、執務の都合、体裁。そういうものの後ろへ、妻の息苦しさは簡単に押しやられていた。今の彼は違う。先に、彼女がどうすれば少しでも呼吸しやすいかを置く。
「……考えます」
それが精一杯だった。
オルドレンは頷くだけで、無理に結論を急がせなかった。
その沈黙の優しさに、セルフィーネはかえって視線を落とす。これ以上きちんとされると、本当に終われなくなる気がしたからだ。
「君がこれを法務局へ出すかどうかは、君が決めていい」
「……ええ」
「期限まで、まだ三日ある」
その数字の短さが、改めて胸へ刺さる。
「そのあいだに、叔母上の件も、盗まれた帳簿の行方も、できる限り詰める」
オルドレンは続ける。
「君の潔白に関わることは、たとえ離縁が先に成立しても止めない」
セルフィーネはそれに頷いた。
頷くしかなかった。今ここで何を言っても、たぶんまだ足りない。心の中には言葉にしきれないものが多すぎる。
沈黙が、また二人のあいだへ落ちる。
けれどその沈黙は、以前のような断絶ではなかった。昔のオルドレンなら、ここで自分の側から扉を閉ざしただろう。今の彼は、閉ざさない代わりに、無理に近づきもしない。だから空気の中に、痛いほど不器用な誠実さだけが残る。
セルフィーネは、ふと気づく。
この人は今、自分を愛しているからではなく、愛しているうえで責任を優先しているのだと。その順序の置き方が、昔とは決定的に違う。
「オルドレン様」
小さく名を呼ぶ。
彼が目を向ける。
「あなたは……」
そこで一度言葉を切る。
好きだと言いたいわけではない。残りたいわけでもない。なのに、胸の奥でどうしても形になりたがるものがある。
「ようやく、私の人生を私へ返そうとしているんですね」
オルドレンは一瞬、言葉を失ったようだった。
やがて、ごくゆっくりと頷く。
「その通りだ」
低い声が返る。
「返すのが遅すぎた」
その一言が、セルフィーネには妙に深く沁みた。
遅すぎた。
その通りだ。何もかも遅すぎる。婚礼の日も、冷えた三年も、偽の手紙も、叔母の囁きも、全部が遅すぎる場所まで二人を連れてきてしまった。けれど遅すぎることと、意味がないことは、同じではないのだろう。
セルフィーネは署名済みの離縁書へそっと指先を置いた。
紙は冷たい。けれどその下にある名前だけが、妙に熱を持っているように感じた。
終わりのための署名。
なのに、それが再恋の土台になるなんて、少し前の自分なら信じなかっただろう。
執着ではなく、責任として向き合う。
それは甘くはない。むしろ苦い。けれど、昔の恋が壊れてしまったあとで、なお人が誰かを選び直すとしたら、たぶんこういう苦さの上からしか始められないのだと、セルフィーネは静かに思っていた。
あなたにおすすめの小説
親友の恋を応援するたび、私は少しずつ失恋していた
ちょこまろ
恋愛
一番近いのに、恋人じゃない。
紗奈は、親友の颯太にずっと片想いしていた。
けれど颯太が好きになるのは、いつも紗奈ではない誰かだった。
彼女ができた日も。
恋愛相談をされた日も。
別れた夜に頼られた時も。
紗奈はずっと笑って、颯太の恋を応援してきた。
でも本当は、そのたびに少しずつ失恋していた。
文化祭前、颯太からまた恋愛相談をされた紗奈は、ついに親友でいることに限界を迎える。
これは、好きな人の一番近くにいた女の子が、親友のふりをやめて、自分の恋を始めるまでの物語。
婚約者が私の見舞いには来ず、他の女の茶会に行っていたので――気づいた時には、もう愛は完全に冷めていました
唯崎りいち
恋愛
見舞いにも来なかった婚約者が、他の令嬢の茶会には出席していた。
その事実に気づいた時、私の愛は完全に冷めていた。
静かな婚約破棄の先で明かされる王家との繋がりと、彼の後悔。
真面目で裏切らない夫を信じていた私
クロユキ
恋愛
親族で決めた結婚をしたクレアは、騎士の夫アルフォートと擦れ違う日が続いていた。
真面目で女性の話しが無い夫を信じていた。
誤字脱字があります。
更新が不定期ですがよろしくお願いします。
完璧な夫に「好きになるな」と言われたので、愛されない妻になります
柴田はつみ
恋愛
結婚初夜、夫に「好きになるな」と言われました。
夫の隣には、馴れ馴れしい幼馴染令嬢。
ならば愛されない妻として身を引きます。
そう決めた途端、完璧な夫が私を手放してくれなくなりました。
侯爵令嬢エリシアは、王国一完璧な男と呼ばれる公爵レオンハルトに嫁いだ。
美貌、家柄、才能、礼儀。
何もかも完璧な夫。
けれど結婚初夜、彼は冷たい声で告げた。
「君は、私を好きになっては困る」
その言葉を聞いたエリシアは悟る。
この結婚は政略結婚。
夫の心には、自分ではない誰かがいるのだと。
「君なら平気だろう」と私を後回しにし続けた婚約者はもう捨てます
茶2
恋愛
婚約者フェリクスは、何かあるたび「君なら平気だろう」とクレアを後回しにした。
仕事を押し付けられても、約束を破られても、婚約者として支えるのが務めだと信じ、クレアは耐え続けてきた。
けれど誕生日の約束さえ、幼馴染を優先したフェリクスに平然と破られたことで、クレアは彼を完全に見限る。
「ええ、そうですね。私のことはお気になさらず」
そう言って微笑んだ彼女は、我慢することをやめた。
すると今まで当然のように回っていたものが、少しずつ崩れ始める――。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
「親友の兄と結婚したら、親友に夫を取られました。離婚します」
柴田はつみ
恋愛
誰も、悪くない。
だから三年間、笑っていた。
親友の兄と結婚したエルミラ。
でも夫が振り向くのは、いつも親友が夫を呼ぶときだけ
「離婚しましょう、シオン様」
「絶対に、ダメです」
逃げようとするたびに、距離が縮まる。
知るほどに、好きになってしまう。
この男を捨てるには、もう少しだけ時間が必要みたいです。
王太子は妃に二度逃げられる
たまこ
恋愛
【本編:完結済 番外編:不定期更新中】
デリンラード国の王太子アーネストは、幼い頃から非常に優秀で偉大な国王になることを期待されていた。
初恋を拗らせ、七年も相手に執着していたアーネストが漸く初恋にけりを付けたところで……。
恋愛方面にはポンコツな王太子とそんな彼をずっと支えていた公爵令嬢がすれ違っていくお話。
※『拗らせ王子と意地悪な婚約者』『先に求めたのは、』に出てくるアーネストのお話ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。