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第21話 失ったものの値段を、今さら計算しないでください
その月の帳場は、赤い。
ラウリオンは最初、その色に苛立った。
帳簿というものは、もっと整然としているべきだと思っていたのだ。革表紙の重み、乾いた紙の匂い、几帳面に引かれた罫線、墨色の数字。そういうものは、それ自体が秩序の形をしていなければならない。少なくとも彼にとって、帳面は「読むもの」ではなく「整っているべきもの」だった。必要な時に開けば、必要な答えだけがある。そういうものであってほしかった。
だが今、机の上に積まれたそれらは違う。
頁の端についた赤い印。
支払い延期を示す細い斜線。
期限超過を示す追記。
予定額と実額の差を埋めるための修正。
そして最後に、控えの余白へ書き足された、見苦しいほど小さな数字の辻褄合わせ。
まるで血のようだ、と一瞬思って、ラウリオンは自分でその連想に顔をしかめた。大げさすぎる。たかが金の話だ。だが、その「たかが金」が、ここ数日でひどく現実の重みを持ち始めていることは認めざるをえなかった。
書庫の窓は高く、冬の終わりの白い光だけを細く入れている。外は曇りで、王都の空はどこまでも鈍い灰だ。暖炉には火が入っていたが、部屋の隅までは熱が届かず、机に向かっていると指先が少しずつ冷える。ユーディトがいた頃、こんなふうに書庫の暖炉が中途半端な温度で放っておかれることは、なかった気がする。必要な部屋へ必要なだけ火が入り、乾きすぎないよう水盆まで用意されていたことを、いなくなってから初めて思い出すのだから笑えない。
「旦那様」
ヴォルカーの声は、今日も疲れていた。
長年この別邸を切り回してきた執事長の顔には、元々大きな表情の揺れがない。だが今月に入ってから、口元の線だけが日ごとに硬くなっている。責任感の強い男ほど、崩れ始めた流れの中で疲弊を顔へ出さない。だからこそ、そのわずかな変化が目につく。
「今朝届いた分です」
差し出された封筒は三つ。
北の織元。
中央劇場の管理事務所。
そしてローベン伯爵家の執事名義。
それだけで胃のあたりが鈍く重くなる。
ラウリオンは上から順に開けた。
北の織元の書状は簡潔だった。文体は礼を保っているが、内容は容赦がない。先月の支払い遅延に加え、今月分の前金が確認できないため、春季の優先納品枠を外す可能性がある。あわせて、今後の取引条件の見直しも検討する、と。
「優先枠を外す?」
低く呟くと、ヴォルカーは頷いた。
「ええ。あちらも商売ですので」
「今までそんな話はなかっただろう」
「今までは、遅れても月内に帳尻が合っておりました」
月内に帳尻が合う。
その言い方が、今では妙に腹立たしい。誰かがどこかで合わせていたのだろう。見えないところで、遅れた支払いを別の時期へずらし、急ぎでない装飾費を後ろへ送り、義母の注文を少しだけ抑え、帳面の見た目だけでなく実際の流れまで整えていた。ラウリオンはそれを「屋敷はそんなものだ」と思ってきた。回るものは回る。少しの無理はどこかで吸収される。家格を保つにはそういう柔らかさが必要なのだと。
今わかる。
柔らかさではない。
誰かの手だ。
そしてその手が抜けた途端、帳面はただの紙ではなく、現実の失態を突きつける刃になった。
中央劇場からの書状は、さらに腹立たしかった。年間予約席の更新について、先月末までの手続きが未了であるため、今季は従来どおりの席配置を保証できないという。言い換えれば、上等な場所を失うかもしれないということだ。
「どうしてこうなる」
思わず言うと、ヴォルカーは少しだけ目を伏せた。
「昨年までは、更新月の一つ前から奥様の控えに印が入っておりました」
「またそれか」
「事実ですので」
書類の端に視線を落とす。たしかに去年の控えには、見慣れた細い字でメモが入っている。
《劇場更新 前月に先払い分確保》
《席順と贈答先を連動》
《同週の子爵家訪問と重ならないよう調整》
ひどく細かい。
そして、そのひどく細かいことの積み重ねが、上等な席と滑らかな社交を作っていたのだと、今さら理解させられる。
ローベン伯爵家の執事名義の書状は、読む前から内容が知れた。祝いの品を誤った件だ。案の定、文面は丁寧で、だからこそ棘が隠れていない。先般のご厚意に感謝する一方、当家の事情へのご配慮が欠けていたのでは、と。あからさまに非難はしない。けれど、忘れはしないという書き方だ。こういう書状は、社交の場で静かに効く。
「……最悪だ」
机の上へ落とした瞬間、紙の音がやけに乾いて響いた。
ヴォルカーはしばらく黙っていたが、やがて低く言う。
「今月の見込みを一度、全て出し直したほうがよろしいかと」
「出し直す?」
「はい。赤字幅と、今止めるべき支払いを」
その言葉に、ラウリオンはやっと現実の中心がどこにあるのかを見た気がした。
赤字幅。
つまり、損失だ。
彼は椅子へ深く腰を下ろし、こめかみを押さえた。帳簿の数字を前にすると、頭のどこかが冷たくなる。感情ではなく、計算のための冷たさだ。そうせざるをえないほど、今の状況はもう「少し荒れている」では済まなくなっている。
ヴォルカーが新しい紙を広げた。
「まず、見込みの減です」
項目が並ぶ。
織元の優先枠喪失による、春季衣装の仕入れ遅れ。
劇場席の格下げによる、今後の接待計画の見直し。
ローベン伯爵家への贈答誤りによる信用低下。
取引先二件の支払い遅延。
加えて、細かな帳尻合わせが効かなくなったことで生じる追加の利息。
利息。
利息、という言葉までこの机の上に乗るようになったのかと、ラウリオンは少し呆れた。元々、利息そのものは存在していたのだろう。ただ、それが表へ出る前に誰かが動いていた。彼が見ていたのは、最終的に整えられた皿の上だけだったのだ。
「ここまで膨らむのか」
「本来、膨らんでいたものが、見えるようになっただけとも申せます」
ヴォルカーの返答は冷酷なほど正確だった。
ラウリオンは苛立ちを覚えた。だが、その苛立ちを執事長へぶつけるには、相手があまりにも正しい。
「使用人の件もございます」
「まだあるのか」
「はい」
ヴォルカーは別の紙を出した。
「下働きの侍女二名と、帳場付きの若い書記一名が、来季での退き願いを出しております」
「何だと」
「理由はそれぞれですが」
それぞれ、と前置きしながらも、実質一つのことを言っているのだとすぐにわかる。
「奥様がいらした頃は、仕事の順序と責任の線引きが明確だった、と」
ラウリオンは息を止めた。
使用人が離れる。
それは単なる人数の問題ではない。よく知っている。長く働く者ほど、屋敷の裏の癖や、主の機嫌の扱い方や、どの取引先へどう礼を返すかを体で覚えている。その層が抜け始めると、屋敷は表面以上に痩せる。
「理由はそれだけか」
「表向きは、負担増と家庭の事情で」
「表向きは、か」
「ええ」
ヴォルカーは少しだけ間を置く。
「実際には、誰がどこまで決めてよいのか曖昧になりすぎております。以前は、最終的に奥様が整えてくださるという見込みがありましたが、今は皆、失敗を恐れて止まりがちです」
止まりがち。
それは屋敷にとって致命的だ。人は怒鳴られることより、責任の行方が見えないことに疲れる。ユーディトはそこを埋めていたのかと、ラウリオンは今さらのように思う。単に帳簿や贈答を見ていたのではない。使用人が動けるよう、最後の線を引いていたのだ。
そしてその線のありがたみを、誰もまともに数えたことがなかった。
ラウリオンは机の端を指で叩いた。無意識だったが、その音が書庫の静けさに妙に響く。
「……いくらだ」
「何がです」
「損失だ」
自分でも驚くほど乾いた声だった。
「今の段階で、彼女が抜けたことで生じている損失を、全部数字にできるなら出せ」
彼女。
そこで初めて、ラウリオンはユーディトを「妻」ではなく、ほとんど機能の単位として呼んだ。
そのことに気づいて、胸の奥が一瞬ひどくざらつく。
だが彼はそのざらつきへ蓋をした。
今は数字だ。
まず数字で状況を把握しなければならない。
そう思わなければ、自分がどれほど浅ましいかを直視することになる。
ヴォルカーは時間をかけて、いくつかの概算を挙げた。
直接の赤字。
先送りできなくなった利息。
取引先の優先枠喪失による追加費用。
贈答失敗に伴う信用低下が、今後の社交へ与える目に見えない不利益。
使用人離反による教育コスト。
そして、最も数えにくいが確実な損失として「場が乱れることによる全体の効率低下」。
ラウリオンは数字を追った。
一つ一つは耐えられない額ではない。
だが、重なれば重い。
何より、その大半が「以前は自然に吸収されていた」類のものだと考えると、胃の奥が鈍く冷える。
「……こんなに」
思わず漏れた声は、自分でも驚くほど小さかった。
彼女が抜けた穴を、今さら金額で見ている。
それがどれほど醜いことか、頭のどこかではわかる。
わかるのに、目はなお数字を追ってしまう。
この利息を避けられたはずだ。
この枠も失わずに済んだはずだ。
この贈答も、使用人離反も、彼女がいれば。
彼女がいれば。
その言葉が胸の中に浮かんで、ラウリオンはようやく、ひどく遅れて後悔に似たものへ触れた。
だが、それは愛しい人を失った痛みではない。
まず来るのは計算だ。
彼女がいた場合に回避できた損失。
彼女がいなくなったことで発生した赤字。
彼女がいた時には気づきもしなかった「静かな維持費」の総額。
そこから始まる後悔は、あまりにも浅ましい。
その時、扉が叩かれた。
ヨアヒムが入り、無駄のない一礼のあと、一通の封筒を差し出す。
「辺境伯領からでございます」
その一言に、部屋の空気が変わった。
ラウリオンの背筋がわずかに強張る。
辺境伯領。
セヴレインの屋敷からだ。
受け取り、封を切る。
紙は上等だが華美ではない。文面は簡潔で、妙に整っていた。
要点はこうだ。
今後、ユーディト名義の財務処理について虚偽または責任転嫁を含む言及があった場合、事実確認のため保持している私的記録に基づき、必要な範囲で関係各所へ説明を行う用意がある。
現在までに確認されているのは、本人名義を利用した借入、交際費への粉飾処理、持参金の流用、実家と婚家の間での不透明な穴埋め等である。
以上を踏まえ、以後の文書には十分留意されたし。
文体は礼を守っていた。
だからこそ、そこに滲む強さが余計に冷たかった。
ラウリオンの視線が止まる。
私的記録。
青い帳簿だ。
そこに何が書かれているか、彼は正確には知らない。だが、何も書かれていないはずがないことはもうわかる。彼女は気づいていたのだ。借入。贈答。交際費への付け替え。持参金の流れ。実家と婚家のあいだで都合よく継ぎを当てていた紙のことも。
知っていて、黙っていた。
そして今、その黙っていた時間そのものが、こちらにとっての脅威へ変わる。
ラウリオンは手紙を持つ指へ力を入れすぎて、紙を少しだけ鳴らした。
困る側へ回った。
その感覚が、ようやく骨の内側へ入ってくる。
今までは、自分が選ぶ側だった。
どの予定を入れるか。
どこまで甘えても許されるか。
誰にどの程度の面倒を押しつけるか。
そういう意味での選ぶ側。
だが今は違う。
彼女が持っている記録の量次第で、自分の足元が崩れるかどうかが決まる。
取引先も、実家も、義母の顔も、全部がその帳簿ひとつで揺らぐ。
自分は初めて、本当に「困る側」へ回ったのだ。
その事実が、ひどく不快で、ひどく恐ろしく、そして少しだけ信じ難かった。
ユーディトが、あの静かな女が。
黙って帳簿をつけ、感情を飲み込み、結局は折れる側だと思っていた女が。
こんなふうにこちらを追い詰める立場へ立つとは。
だが実際には、彼女は何もしていないのかもしれない。
ただ、自分を守るために記録を持っているだけで。
こちらが勝手に、その記録に怯えているだけで。
それがまた腹立たしい。
ヴォルカーが低く言う。
「……奥様は、そこまで把握しておられたのですな」
「奥様、ではない」
思わず言い返してから、自分でも何を否定したかったのかわからなくなる。
妻ではない、と言いたいのか。
もう戻らない、と認めたくないのか。
あるいは、敬意を含んだその呼び方が気に障ったのか。
ヴォルカーは何も返さなかった。
その沈黙が、かえって耳に痛い。
ラウリオンは椅子へ深く座り直し、目を閉じた。
暗いまぶたの裏へ、ここ数日の綻びがいくつも浮かぶ。
ぬるい珈琲。
誤った贈答。
押さえ損ねた劇場席。
重なる支払い。
怯える使用人。
母の苛立ち。
そして、辺境の応接間で静かにこちらを見返したユーディトの顔。
あの時、彼女は怒鳴らなかった。
泣きもしなかった。
ただ事実を並べた。
いなくなって初めて困るのなら、それは愛ではありません。
その言葉が、今さらになって胸の奥へ落ちる。
たしかにその通りだ。
今こうして彼が計算しているのは、彼女の不在が自分へもたらした損失だ。
温かい食卓でも、眠れない夜でも、寂しさでもない。
赤字。
信用低下。
人手不足。
取引停止。
青い帳簿という不確定要素。
そこから始まる後悔は、あまりにも浅ましい。
わかっている。
だが、わかったところで、この浅ましさがすぐに消えるわけではない。
むしろ一度数字を見てしまうと、頭は勝手に計算を続ける。
彼女がいれば、どれだけ防げたか。
どれだけ損をしなかったか。
どれだけ面倒を見ずに済んだか。
そこまで考えたところで、ラウリオンは自分の中にあるものの醜さに初めて少しだけ気づく。
愛していたから惜しいのではない。
ただ、自分にとって都合のいい機能が消えたから、遅れてその値段を数えているだけだ。
失ったものの値段を、今さら計算しないでください。
もしユーディトがここにいて、冷えた目でそう言ったなら、自分は何も返せないだろうと、ふと思った。
帳簿の数字はまだ机の上にある。
辺境からの書状も、指先のすぐそばにある。
暖炉の火は燃えているのに、部屋の空気はひどく冷たく感じられた。
ラウリオンは目を開ける。
窓の外の灰色の空は、少しも晴れる気配を見せなかった。
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