夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ

文字の大きさ
9 / 44

第8話 若旦那との再会


 暖簾をくぐった瞬間、空気が変わった。

 外の春の風はまだ少し乾いていて、川沿いの陽射しにはきらきらとした軽さがあったのに、玄関の中へ一歩入ると、そこには木と畳と、わずかな湯気の気配が混じった、やわらかな湿り気があった。古い建物特有の乾いた木の匂いではない。長年、人の息と湯の熱を吸ってきた柱や床が持つ、深くて穏やかな匂いだ。磨き込まれた式台は鈍い光を返し、正面の生け花には白い椿と青い枝物が控えめに挿されている。どこかで湯が落ちる音がして、さらに遠くでは川の流れが低く響いていた。

 懐かしい、と思うより先に、身体が少しだけ緩んだ。

 この空気を、澄乃は覚えていた。

 祖母の付き添いで初めてここへ来た時も、戸を開けた瞬間に同じような匂いがした。川の冷たさと、湯のやわらかさと、古い建物の木肌が混じり合った匂い。騒がしいものを一度玄関の外へ置いていくための匂いだと、あの時はよく分からないまま感じていた。

 澄乃はキャリーケースを静かに引き寄せ、きちんと揃えて靴を脱いだ。靴下越しに触れる板の感触は、春の陽を少しだけ吸っていて冷たすぎない。たったそれだけのことが、ひどく胸に沁みた。

「いらっしゃいませ」

 帳場の奥から声がして、澄乃は顔を上げた。

 小柄な女性が一人、こちらへ歩いてくる。四十代の終わりか五十代に差しかかったくらいだろうか。濃紺の作務衣に白い前掛けをきちんとつけて、髪は無駄なくまとめられている。笑顔はあるが、過度に愛想を振りまかない落ち着いた顔だった。澄乃には見覚えがない。自分が通っていた頃にいた従業員ではないのだろう。

「ご宿泊でいらっしゃいますか」

 問われて、澄乃は一瞬だけ言葉に詰まった。

 ご宿泊。もちろんそうだ。そうなのだが、予約もしていない。何年も連絡のないまま、キャリーケースを引いていきなり現れた人間に、ここがどう見えるだろう。訳ありに見えるのだろうか。見えるのだろう。だが、それをどう説明すればいいのか、まだ頭の中で文がうまく結べない。

「……はい」

 結局、最初はそれしか出なかった。

「ただ、予約はなくて」

 言いながら、指先が少し強くキャリーケースの持ち手を握る。

「以前、祖母がこちらでお世話になっていて……私も、その、何度か」

 そこまで口にしたところで、帳場の奥から別の足音が近づいてきた。

 畳へ落ちる足音ではなく、板の間を静かに渡る、ためらいのない足音だった。急いでいるわけではない。けれど迷いがない。水の上を長く歩いてきた人の足取りみたいに、無駄なくまっすぐだ。

「どうしました」

 低い声がする。

 その声を聞いた瞬間、澄乃の胸の奥で何かが小さく揺れた。

 振り向いた先に立っていたのは、記憶の中よりずっと背の高くなった男だった。

 匂坂伊織。

 その名前が、澄乃の中で一拍遅れて輪郭を持つ。

 昔の伊織は、もっと細くて、少年の名残をどこかに残した顔をしていた。無愛想で、口数が少なくて、帳場の奥や裏方を黙って手伝っていることが多い、旅館の息子。客前で愛想笑いを振りまくことはないのに、困っている人間を見ると先に動いてしまうような、そういう不器用さを持った少年だった。

 いま目の前にいる伊織は、その面影を確かに残しながら、別の輪郭をまとっていた。

 背が伸び、肩幅がしっかり広くなっている。細身ではあるが、働く男特有の無駄のない厚みが腕と胸にある。濃い墨色の作務衣の袖を少しだけ捲っていて、手首から先の骨ばった線が目についた。髪は黒く、以前より短く整えられている。額が見えることで、目元の鋭さが増していた。切れ長の目はもともと愛想がある形ではない。けれど、その目の奥に、人を突き放さない気配が変わらず残っているのを、澄乃は見た。

 伊織も、澄乃を見ていた。

 その視線が、最初はただ来客を確かめるものだったのに、数秒のうちに何かを見分ける色へ変わる。顔、立ち姿、キャリーケース、手の位置、息の浅さ。そういうものを一瞬で見たのだろう。目がわずかに見開かれ、それからほんの少しだけ細まった。

「……杠さん」

 名前を呼ばれて、澄乃の喉の奥がひどく熱くなった。

 久しぶりにその名字を、その声で、そのままの形で呼ばれた。久世でも、奥さまでも、奥さんでもなく、杠。結婚前から変わらない自分の名前だ。その音が空気の中へ出た瞬間、胸のどこかにずっと引っかかっていたものが、少しだけ外れそうになる。

「匂坂さん……」

 言葉が、思ったより掠れた。

 伊織は一歩、こちらへ近づいた。昔と同じく無駄な動きはない。けれどその近づき方は客へ圧をかけない距離をきちんと知っている人間のそれだった。若旦那になったのだと、立っているだけで分かる。

「久しぶりですね」

 低い声音だった。懐かしさを大げさに滲ませるでもなく、かといって他人行儀でもない、静かな言い方。

「ええ……ご無沙汰してしまって」

 そう返しながら、澄乃はどう説明すべきか分からず、目を伏せかけた。

 いきなり来たこと。

 何年も連絡がなかったこと。

 予約がないこと。

 そして何より、自分がどういう事情でここへ来たのか。

 言うべきだろうかと思う。少なくとも何も告げずに泊めてもらうのは失礼だ。祖母が世話になった縁があるからといって、だから何をしてもいいわけではない。けれど、いざ口を開こうとすると、言葉がうまく並ばない。離婚します。夫の家を出ました。行く先がここしか思いつきませんでした。そういう事実は口にできる。だが、その事実の周りにまとわりつく疲労や恥ずかしさや、ようやく呼吸ができるという感覚を、一体どう言えばいいのだろう。

「その……」

 澄乃は言いかけて、やはり少し詰まった。

 伊織はそんな澄乃の顔を、ほんの短い時間だけ見ていた。じっとではない。覗き込むでも、探るでもない。ただ一度、必要な分だけ見て、それ以上は踏み込まないように視線をほどく。

 それから、澄乃の脇に置かれたキャリーケースへ目を落とし、帳場にいた女性へ向かって言った。

「泊まる部屋、空いてるよな」

 女性がすぐに頷く。

「はい。離れではないですが、一階の川側が一部屋空いています」

「そこ、使ってもらって」

 短く指示を出してから、伊織はまた澄乃へ向き直った。

「泊まる部屋は空いてる」

 言葉は簡潔だった。

「働く話は明日でいい」

 澄乃は、その一言で、自分がどれほど緊張していたのかを初めて知った。

 息が、ほどける。

 胸の中央をきつく縛っていた何かが、指先で結び目を解かれたみたいに緩む。事情を説明しなければ。迷惑ではないと確認しなければ。今夜だけでも泊めてほしいと頭を下げなければ。そういう言葉を準備していた部分が、一瞬で行き場をなくした。

 泣きそうになった。

 本当に。

 目の奥が熱くなって、鼻の奥がつんとする。けれど、それは久世家で何度も押し殺した種類の涙とは違った。悔しさや惨めさや、喉元まで来た言葉を飲み込むための涙ではなく、いきなり肩へ毛布を掛けられた時の体温の変化に似ている。冷えきっていたことを、温められて初めて知るような、そういう涙だ。

 澄乃は咄嗟に唇を引き結んだ。

 ここで泣きたくないと思った。泣いてしまえば、たぶん言葉が乱れる。そうなるのが嫌だった。甘えるみたいに見えるのも、たぶん少し怖かった。だから、ぐっと息を飲み込み、目の縁に浮きかけた熱を押し戻す。

「……ありがとうございます」

 ようやく出た声は、かすかに震えていた。

 伊織はその震えに気づいただろう。けれど何も言わなかった。大丈夫か、とも。何があった、とも。お気の毒に、とも。そういう言葉は一つも出さない。

 ただ、それがどれほどありがたいかを、澄乃はいまはっきり知っていた。

 可哀想だと決めつけられないこと。

 事情を今すぐ吐き出さなくていいこと。

 今の自分に必要なのが説明ではなく、一晩ちゃんと身体を置ける場所だと分かった上で、その順番を整えてくれること。

 それは、優しさというより配慮だった。そして澄乃は、久しぶりに、自分が配慮される側へ置かれていることにひどく戸惑った。

「失礼します」

 さきほどの女性が近づき、キャリーケースへ手を伸ばしかける。

 澄乃は反射的に言った。

「いえ、自分で持ちます」

 その声は少し早かった。

 すると伊織がわずかに眉を動かし、しかし制するような口調ではなく、ごく淡々と言った。

「重いなら無理しなくていい」

「……大丈夫です」

「そう」

 それで終わる。無理に取り上げもしないし、気遣いを押しつけもしない。昔からそういう人だった、と思う。こちらの手から荷物を奪って親切を完成させるのではなく、自分で持ちたいなら持たせる。その代わり、本当に危なければ黙って先に動く。そういう不器用な距離の取り方をする人だった。

 帳場の女性が穏やかに名乗った。

「私は篠田と申します。どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」

 澄乃は頭を下げる。

 その時、伊織が一歩だけ脇へ退いた。玄関から客室へ向かう通路を自然に空けるための動きだ。昔ならもっと直線的で、少し無愛想に見えたはずなのに、いまは立ち方の端々に、客を先に通す習慣が身体へ馴染んでいる。若旦那、という立場がそのまま形になったような所作だった。

 廊下へ足を踏み入れる。

 磨かれた木の床は、歩くたびにやわらかく鳴る。窓の外にはすぐ川が見え、午後の光を受けた水面がちらちらと揺れていた。障子越しに入る光は白すぎず、室内の色を少しだけ丸くする。どこかの客室から、かすかに湯の匂いが流れてきた。遠くで器の触れ合う音、廊下の奥で布団を叩く乾いた音、川の低い音。その全部が重なって、水篝館の中だけにある時間を作っている。

 懐かしかった。

 けれど、ただ懐かしいだけではなかった。あの頃は祖母の付き添いだった。若く、少しだけ身軽で、ここへ来るたびに「少し休める」と思っていた。いまの自分は、休むためだけに来たのではない。逃げてきたわけでもないと、できれば思いたかった。けれど少なくとも、ひどく疲れた身体をひとまず降ろしに来たことは確かだ。

 篠田が案内してくれた部屋は、一階の川側に面した和室だった。

 障子を開けると、庭石の向こうに川が見える。部屋の中には六畳と控えの間、低い文机、座椅子、床の間に小さな掛け軸。派手ではない。けれど、呼吸の仕方を思い出せるような静けさがある。畳は新しすぎず古すぎず、干した日差しの匂いをほのかに残していた。

「お茶をお持ちしますね」

 篠田がそう言って襖を閉める。

 部屋に一人残された瞬間、澄乃はその場に立ったまま動けなくなった。

 静かだった。

 ただ静かで、誰の気配も迫ってこない。何かを頼まれるでも、確認されるでも、機嫌を窺う必要もない。窓の外の川が流れ、風が障子の紙をわずかに揺らしている。それだけだ。

 キャリーケースの持ち手を離す。

 かすかな音とともに、それが畳の上へ置かれる。澄乃はゆっくりと座布団の上へ膝を折った。背筋はまだまっすぐなままだった。ちゃんとしなければ、という癖が抜けない。だが、両手を膝の上へ置いた瞬間、自分の肩が思っていた以上にこわばっていることが分かる。

 深く息を吐く。

 肺の奥から、長いあいだ抜けなかった何かが、少しずつ外へ出ていくような感じがした。

 ほどなくして、襖の向こうから控えめな声がした。

「失礼します」

 開いた襖の向こうにいたのは、篠田ではなく伊織だった。

 盆の上に湯呑みと、小皿に載せた小さな菓子を持っている。澄乃は少し驚いて立ちかけたが、伊織が先に言った。

「座ったままでいい」

 その言い方に、懐かしさが混じる。昔から、彼は必要以上に丁寧な敬語を使わない人だった。ぶっきらぼうというほどではないが、言葉数が少なく、余計な飾りがない。

「篠田さんは、帳場が立て込んでて」

 伊織はそう付け足し、盆を文机へ置いた。湯呑みからはやわらかな湯気が立ちのぼり、茶の香りが部屋へ広がる。小皿の上の菓子は、小さな薄皮饅頭だった。ここの売りではないが、昔から客へよく出していたものだ。

「ありがとうございます」

 澄乃が頭を下げると、伊織は少しだけ首を振った。

「礼は、あとでいい」

 その言葉に、澄乃はまた少し喉が熱くなった。

 あとでいい。

 いま無理に整った言葉を返さなくていい、と言われたのと同じだった。

 伊織は部屋の入口に立ったまま、中へずかずか入ってこない。距離の取り方が絶妙だと、澄乃は思う。近すぎない。遠すぎない。こちらが構えなくていい程度にだけ、そこにいる。

「……その」

 澄乃は湯呑みに触れず、口を開いた。

「いきなり来てしまって、すみません」

「別に」

「何年もご無沙汰していたのに」

「そういうのはいい」

 伊織はあっさり言う。

「うちは宿だし」

 それだけなら、ただの仕事の範囲にも聞こえる。けれど声の端に、必要以上に気にさせないための平らさがあった。

「でも」

 澄乃は少しだけ迷い、それでも言った。

「事情をお話ししたほうがいいかと……」

「今じゃなくていい」

 伊織は遮った。

「話したいなら明日でいいし、話したくないなら話さなくていい」

 淡々とした言い方だった。

「とにかく今日は、休め」

 それは命令ではない。ただ、それ以外の選択肢を今の澄乃に考えさせないための、短い言葉だった。澄乃はその言葉の前で、また泣きそうになった。休め、と言われただけなのに。何を説明して自分の存在を正当化するか考えなくていいまま、先に休むことを許される。その順序が、どうしてこんなにありがたいのだろう。

「……はい」

 返事は、ぎりぎりで保った声だった。

 伊織はそれを聞き、ほんの一瞬だけ目を伏せた。泣きそうなのに泣かない顔を、たぶん彼は見ている。けれどそれを指摘しない。見ないふりとも違う。見えているが、そこへ名前をつけない。澄乃は、その扱いに救われた。

「夕飯は、部屋に運ばせる」

「そんな、そこまで」

「宿代はあとでいい」

「いえ、そういうことではなくて」

「顔色がよくない」

 短く言われて、澄乃は言葉を失った。

 顔色。そんなものまで、いま見られているのかと思う。けれど伊織の目は責めてもいなければ、心配を押しつけてもいない。ただ事実として、それを告げただけだった。

「無理に風呂まで行かなくていい。先に茶でも飲んで、少し寝ろ」

 昔より言葉が少しだけ増えたのか、それともこちらがそう感じるだけなのか。いずれにせよ、その実務的な気遣いに、澄乃の胸の内がまた少しゆるむ。

 伊織はそれだけ言うと、長居するつもりはないらしく襖のほうへ半歩下がった。

「何か必要なら、廊下の呼び鈴で」

「……はい」

 返事をしたあと、澄乃ははっとして頭を下げた。

「本当に、ありがとうございます」

 今度はきちんと、言えた。

 伊織はわずかに口元を動かした。笑ったと言うにはあまりにも小さな変化だ。けれど目元の硬さがほんの少しだけ緩む。

「明日でいいって言っただろ」

 そう言って、伊織は襖を閉めた。

 静かに。

 音を立てずに。

 澄乃はその閉じられた襖を、しばらく見ていた。

 部屋の中にはまた川の音だけが残る。湯呑みから上る茶の香りが、さっきよりも濃く感じられた。手を伸ばして持ち上げると、陶器のあたたかさが掌へじんわり移る。口をつける。少し熱くて、少し苦くて、やわらかい。

 おいしいと思った瞬間、ようやく肩から力が抜けた。

 まだ泣いてはいない。

 泣きたくないとも思っていた。

 けれど茶を一口飲み込んだあと、視界が少しだけ滲みそうになった。澄乃はそれを誤魔化すように、ゆっくりもう一度頭を下げる。誰に向けてでもなく、この部屋と、この静けさと、押しつけない優しさの前で。

 泣かずにいられたのは、たぶん最後の意地だった。

 それでも、泣きそうなまま頭を下げることはできた。

 それで十分だった。


あなたにおすすめの小説

真面目で裏切らない夫を信じていた私

クロユキ
恋愛
親族で決めた結婚をしたクレアは、騎士の夫アルフォートと擦れ違う日が続いていた。 真面目で女性の話しが無い夫を信じていた。 誤字脱字があります。 更新が不定期ですがよろしくお願いします。

「愛していると、一度も言わなかったあなたへ」 ~十年間泣いていたことを、あなたは知らない~

まさき
恋愛
十年間、彼は一度も「愛している」と言わなかった。 悪意はなかった。ただ、私がいて当然だと思っていた。 ある朝、私は指輪を置いて出て行った。涙も言葉も置かずに。 辺境の地で、ようやく自分の人生が始まった気がした。 そこへ彼が現れた。「なぜ出て行ったのか、ずっと考えていた」と。 考えるのに、一年かかったのですね。 私が泣いていたことを、あなたはまだ知らない。

「親友の兄と結婚したら、親友に夫を取られました。離婚します」

柴田はつみ
恋愛
誰も、悪くない。 だから三年間、笑っていた。 親友の兄と結婚したエルミラ。 でも夫が振り向くのは、いつも親友が夫を呼ぶときだけ 「離婚しましょう、シオン様」 「絶対に、ダメです」 逃げようとするたびに、距離が縮まる。 知るほどに、好きになってしまう。 この男を捨てるには、もう少しだけ時間が必要みたいです。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

義母と愛人に家を乗っ取られたので、離縁して辺境伯の館へ逃げます

なつめ
恋愛
夫は愛人を堂々と屋敷に住まわせ、義母はそれを止めるどころか、正妻である彼女を追い詰める側に回った。 侮辱、横領、すり替え、使用人の切り崩し。静かに家を奪われ続けた伯爵夫人セスティアは、泣き寝入りをやめる。 彼女が選んだのは、感情的な反撃ではなく、帳簿と証言と領収書による完璧な離縁。 そして逃げ込んだ先は、亡き父と縁のあった辺境伯ラドヴァンの館だった。 無骨で無愛想。けれど、彼は怯える彼女に「怖い」「苦しい」「眠れない」「触れられたくない」と、一つずつ名前を与えて守ってくれる。 壊された人生を取り戻す静かな再生と、遅れてやってくる深い愛。 一方その頃、元夫側の家は、彼女が抜けたことで内側から崩れ始めていた。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

妻を信じなかった皇帝の末路ーあの日の約束を覚えていますか?ー

きぬがやあきら
恋愛
不遇な境遇で育った王女スフィアは、停戦の代償に帝国へと嫁いだ。 レグナシア帝国皇帝ヴィクターと政略結婚を結ぶが、結婚初夜、ヴィクターが冷たく告げる。 ――俺はお前を愛するつもりはない。 愛を望みながらも義務に徹する皇妃と、愛を拒む冷酷な皇帝。 すれ違いのまま始まる“白い結婚”。 しかし皇帝はやがて、その約束を後悔することとなる。 妻を信じなかった皇帝の“末路”とは。 不器用な2人が織りなすラブロマンスファンタジー。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。