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第32話 ふたりで迎える朝
満室の熱が去った翌朝、水篝館は不思議なくらい静かだった。
前日の遅い時間まで、食事処では器の音が途切れず、帳場でも鍵札と伝票の受け渡しが続いていた。貸切風呂の時間を気にする声、川辺から戻ってきた客の足音、湯上がりの笑い声。館は夜の深いところまで、誰かの気配でやわらかく温められていたはずなのに、朝になるとそのぬくもりだけを薄く残して、音はきれいに引いている。
澄乃は、そんな朝の静けさの中で目を覚ました。
障子の向こうは、まだ完全な朝ではなかった。夜と朝の境目にある、ひどく淡い白が、桟の向こうへうっすら広がっている。川の音がする。昼間より細く、夜よりも少し軽い。鳥の声はまだ遠い。館の中からも、布団を上げる音も、食器の触れ合う音も聞こえない。
休みの日なのだと、まぶたを開いてから数秒遅れて思い出した。
今日は朝の帳場にも立たなくていい。
食事処の流れも、最初のチェックアウトの確認も、貸切風呂の札も、誰かが別に見てくれる。昨日のうちに篠田が「明日の朝は絶対に休んでください」と言い、伊織もそれに何も足さず、ただ当然みたいに頷いた。その頷き方が、反論の余地をあらかじめ塞いでいたので、澄乃も珍しく素直に「はい」と返したのだった。
にもかかわらず、身体はいつもの時間に目を覚ます。
もう少し眠っていていいのだと頭では分かっているのに、目だけが先に起きてしまう。長いあいだ染みついていた習慣は、まだ簡単には抜けないらしい。
澄乃は布団の中で小さく息を吐き、天井を見上げた。
今日は何をしよう、と思う。
それだけのことが少し難しい。やるべきことではなく、自分がしたいことを考えるのは、相変わらず少し手間がかかる。何もしないでいるのもいいはずだ。もう一度目を閉じて、昼近くまでうとうとしても構わないのだろう。けれど、眠気は戻ってこなかった。
そうしてしばらく天井を見てから、澄乃は諦めて身を起こした。
足裏に触れる畳はひやりとしている。春と初夏の間にある朝の冷たさだった。障子を少しだけ開けると、夜気の名残を含んだ空気が細く入り込んでくる。川面には、まだ朝靄が薄く残っていた。対岸の木立ちは輪郭をぼかしていて、橋の欄干も、いつもより少し白く見える。川沿いの石灯籠は火が落ちたままなのに、その形だけが靄の中へ静かに浮かんでいた。
綺麗だと思う。
そしてその「綺麗」を、誰かへ報告したり、何かの準備へ繋げたりしなくていいことに、澄乃はまだ少し驚く。以前なら、こんな朝に目が覚めれば、すぐに献立と買い足しと来客の予定へ頭が向かった。今は違う。目の前の景色を、景色として見ていていい。
顔を洗い、髪を整え、薄手の羽織を一枚重ねる。作務衣ではなく、休みの日用にと篠田が勧めてくれた柔らかな生成りの着物地の上着だ。鏡に映る自分の顔は、眠気の名残こそあるが、いつもの朝みたいに緊張していなかった。気持ちが軽いのかと問われれば、そう単純でもない。ただ、今日はこれから誰かの機嫌に合わせるために顔を作らなくていいというだけで、目元のあたりがずいぶん違う気がした。
部屋を出ると、廊下の空気もまだ眠っているようだった。
行灯の明かりは落とされているが、外の白んだ光が廊下の板へうっすら差していて、木目が夜よりやわらかく見える。どこかで湯の音がする。たぶん朝風呂へ向かう客が、浴場の戸を開けたのだろう。だがそれもすぐに静かになる。館の中を歩く自分の足音が、今日はいつもより少し大きく感じられた。
その角を曲がったところで、人影が一つ、廊下の先に立っていた。
澄乃は足を止める。
人影は振り向き、すぐに伊織だと分かった。濃い鼠色の作務衣の上に、黒に近い羽織を無造作に重ねている。髪はまだ少しだけ寝癖の名残を残していて、いつもの昼間よりもわずかに隙がある。そのことに、なぜだか澄乃の胸がやわらかく揺れた。
「起きたのか」
伊織が低く言う。
「はい。休みの日なのに、早く目が覚めてしまって」
「同じだな」
そう言って、伊織は廊下の窓の外へ顎をしゃくった。
「川、見に行くか」
澄乃は一瞬、言葉を失った。
何か確認があるのかと思ったのだ。裏口の鍵だとか、早朝の散策客の導線だとか、そういう仕事の用事が。けれど伊織の顔には、そういう種類の切迫がなかった。ただ、起きてしまったのなら一緒に行くか、と言うだけの顔。
珍しく、何の用事も言わない。
そのことが、思った以上に澄乃の胸へ沁みた。
「……いいんですか」
「休みだろ」
伊織は短く言う。
「たまには、仕事抜きで」
その「仕事抜き」という言葉が、裏庭の朝の冷たい空気よりも先に頬へ触れた気がした。人のための支度ではなく、自分たちのためだけの時間。そういうものを、いまこの人は当たり前みたいな顔で差し出している。
「行きます」
澄乃はそう答え、気づけば少しだけ笑っていた。
玄関を出ると、朝靄は思っていた以上に濃かった。
冷たい、というより、薄い水が空気の中へ混ざっている感じだ。息を吸うたび喉の奥がほんの少し冷え、吐く息はすぐに白くならず、ただ朝の白へ溶けていく。川沿いの石畳は夜の湿りをまだ残していて、歩くと草履の裏へやわらかな感触が返った。遠くの山は靄に半分隠れ、対岸の木立ちはまだ眠そうな色をしている。橋の欄干だけが、白の中へ一本の細い線みたいに浮かんでいた。
伊織は澄乃より半歩だけ外側を歩く。
何かあれば先に道を見るような、その位置がもうあまりにも自然で、澄乃はふと、自分も何の違和感もなく隣にいることへ気づいた。いつからだろう、と思う。最初の頃なら、きっとどこかで身構えていた。気を使いすぎて、歩幅も息も、会話の間も探っていたはずだ。今は違う。隣を歩くこと自体が、もう身体へ馴染み始めている。
橋の手前まで来ると、川の音が少し深くなる。
灯籠まつりの夜には人で賑わっていた川辺も、今は誰もいない。腰掛けは露を少し含み、灯籠の置かれていた場所には細い跡だけが残っている。夜の華やぎが去ったあと、町はまたもとの静かな顔へ戻っていた。けれど澄乃には、その静けさの中にも、あの夜の灯りがまだかすかに残っているように見えた。
「寒くないか」
伊織が訊く。
「少しだけ。でも気持ちいいです」
「ならよかった」
それだけで会話が切れても、不思議と気まずくない。朝の靄の中では、言葉が多すぎるほうが似合わない気さえした。
橋を渡らずに、二人は川沿いの遊歩道へ少し入った。
朝の散策路は昼間より狭く感じる。靄が視界を削るからだろう。だからこそ、足元の石の並びや、川へ落ち込む斜面の角度がいつもよりはっきり分かる。伊織は時折、特に何も言わずに歩幅を少しだけ緩める。濡れた石のところでは半歩前へ出る。そういう細かな気遣いを、今さら数えるのもおかしいくらい、澄乃はもう何度も受け取っていた。
「休みの日まで起きるの、損した気分にならないか」
しばらく歩いてから、伊織がぽつりと言った。
「少しだけ」
澄乃は正直に答える。
「でも、起きてしまったものは仕方ないなって」
「また仕事しようとしてたろ」
それを言われると、澄乃は少しだけ肩をすくめるしかない。
「少しだけ、帳場の紙を見ようかなとは」
「少しじゃない顔してた」
「そんな顔、見てないはずでは」
「なんとなく分かる」
伊織の返しに、澄乃はくすりと笑った。
分かる。見ていなくても。そういう言い方をこの人は時々する。そして実際、分かっているのだろう。疲れ方も、息の詰まりも、紙へ向かう時の癖も。全部ではないにしても、もうかなりのところまで見抜かれている。
「私、休み方が下手なんだと思います」
靄の向こうの川を見ながら、澄乃は言う。
「何もしないでいると、落ち着かなくて」
「知ってる」
「前は、それでよかったんです。何かしていたほうが、少なくとも誰かの役には立てるから」
口にしてから、自分でも少し考える。役に立つことと、自分を保つことがいつの間にか一つになっていた。だから休みは、ただ止まることではなく、役割がなくなる時間でもあったのかもしれない。そう思うと、落ち着かなかった理由が少しだけ見える。
「今は?」
伊織が訊く。
澄乃は足元へ視線を落とした。濡れた石の上へ、靄の水滴が細かく残っている。自分の草履の先がそれを踏むたび、かすかな音もなく形が消える。
「今は……」
言葉を探し、少しだけ笑う。
「前よりは、休んでもいいんだって思えるようになりました」
「誰のおかげだ」
「そういう言い方をしますか」
「する」
あまりにも即答で、澄乃はまた笑ってしまう。朝の冷たい空気の中で笑うと、胸の奥まできれいになる気がした。
「皆さんのおかげです」
「欲張りな答えだな」
「本当ですから」
澄乃はそう言って、少しだけ伊織の横顔を見た。
靄の中では、輪郭までやわらかく見える。昼の伊織より、今の伊織のほうが少しだけ若く見えた。仕事の顔をまだ完全にはかぶっていないからかもしれない。低い声も、短い言葉も同じなのに、朝靄の中で隣を歩くと、それだけで別の人みたいな柔らかさがある。
好きになってはいけない人。
そう何度も思ってきた。思ってきたのに、こうして並んで歩くことがすでに自然になっている。足元を気にしながら、沈黙を気まずいと思わず、何か見つければ同じ方向へ目を向ける。恋は劇的に始まるものだと、昔はどこかで思っていた。選ばれるとか、強い言葉を囁かれるとか、そういうはっきりした始まりがあるのだと。けれど違ったのかもしれない。
朝、起きてしまったなら川を見に行こうと誘われること。
冷たい朝靄の中を一緒に歩くこと。
その時間が、自分でも驚くほど自然に身体へ馴染んでいること。
そういう生活の中に、恋は静かに根を張るのかもしれない。
橋の下流側へ少し開けた場所がある。川幅が広がり、朝靄が水面の上だけ少し厚くなるところだ。二人はそこまで歩いて、自然に足を止めた。川の流れは見えないのに、音だけはたしかに近い。靄の薄い膜の下を、水が絶えず滑っていく。対岸の木々は、ようやくうっすら色を持ち始めていた。空も、最初の白一色から、少しだけ青を混ぜ始めている。
「ここ、好きなんです」
澄乃が言う。
「朝の川が一番、何も飾ってない感じがして」
「飾る川って何だ」
伊織の返しは相変わらず素っ気ないのに、どこか笑っているみたいだった。
「夜の灯りも綺麗ですけど、朝はごまかしがきかないというか」
「なるほど」
伊織は川を見たまま頷く。
「それは分かる」
それだけのやり取りなのに、澄乃の胸の中で何かが少しずつほどけていく。好きな景色のことを言って、それを大げさに美化されるでもなく、ちゃんと分かると言われること。そういう小さな一致が、いまはたまらなく愛おしい。
しばらく二人で黙って川を見ていた。
朝の光は、少しずつ靄の端から世界をほどいていく。水面の輪郭。橋の影。石垣の色。町の屋根。すべてが一度に現れるのではなく、じわじわと白の中から浮き上がってくる。その遅さが美しかった。
澄乃はその変化を見ながら、胸の中へ静かな実感がひろがるのを感じていた。
伊織と並んで歩くこと。
隣で同じ景色を見ること。
言葉がなくても苦しくないこと。
これらはどれも、ある日突然できるようになったわけではない。名前で呼ばれ、仕事を返され、疲れを見つけてもらい、温かいものを置かれ、手を伸ばして初めて触れた夜があって、そういう小さな積み重ねの上に今がある。
劇的ではない。
けれど、たしかに深い。
それはたぶんもう、好きという感情の根が、自分の生活の中へ静かに降りていたということなのだろう。
「澄乃さん」
ふいに伊織が呼ぶ。
「はい」
「今日は何もしなくていい」
それは命令ではなく、確認みたいな声音だった。
「朝飯のあと、また寝てもいいし、町へ出てもいいし、部屋でぼんやりしててもいい」
澄乃は少しだけ目を細める。
「全部、難しそうですね」
「どれか一つにしろ」
「では……」
言いながら、澄乃はまた川を見た。靄はさらに薄くなり、水面の流れがはっきり見え始めている。
「少しだけ町を歩いて、それから、お昼まで部屋で何もしない練習をします」
「練習、か」
「必要なんです、たぶん」
「分かった」
伊織はそれ以上笑わなかった。笑わない代わりに、本当にそれでいいと言うみたいに頷く。その頷き方一つで、澄乃は今日の休みを少しだけ安心して受け取れそうな気がした。
川沿いを戻る頃には、朝靄はもう半分以上晴れていた。橋の向こうから、どこかの店の戸を開ける音がする。町がゆっくり起き始める。温泉街の朝は、派手ではない。だが、その控えめな目覚めの中に、人が暮らしている匂いがある。
並んで歩く足音が、石畳の上で静かに重なる。
澄乃はふと、自分がまったく無理をしていないことに気づいた。隣にいることも、歩幅を合わせることも、話すことも、黙ることも、全部が自然だった。頑張って近づいているのではない。もうそうなっている。
恋は、こういうふうに始まるのかもしれない。
大きな告白でも、劇的な抱擁でもなく。
朝早く目が覚めてしまった休みの日に、川を見に行こうと誘われること。
その誘いに、当たり前みたいに頷けること。
冷たい朝靄の中で、隣の人の足音を心地いいと思うこと。
そのすべてが、すでに恋の根だったのだと、澄乃は今になってようやく知る。
宿の石段へ差しかかったところで、足元の一枚だけが夜露を長く残していたらしい。澄乃の草履がわずかに滑る。大きく体勢を崩すほどではなかったが、その一瞬で伊織の手が自然に肘のあたりへ触れた。
「大丈夫か」
「はい、すみません」
「謝るな」
短く言って、伊織は手を離す。支えるためだけの、ごく短い接触だった。けれど、その熱だけが妙にくっきり残る。澄乃は何でもない顔をしようとして、うまくできなかった。朝の靄のせいか、胸の内のほうが少しだけ先に乱れている。
「昔なら」
気づけば口にしていた。
「たぶん、こういう時も大丈夫なふりをして、そのまま何事もなかったみたいに歩いていたと思います」
伊織が玄関へ続く石段を見ながら答える。
「今は違うのか」
「違う……ようになりたいんです」
自分でも曖昧な言い方だと思う。けれど、いまの気持ちにはそれが一番近かった。弱ったところを見せてもいいと、まだ完全には思えない。それでも、隠し続けなくていい相手がいるのかもしれないと、少しずつ覚え始めている。
「大丈夫なふりは、たぶん得意です」
澄乃は小さく笑う。
「でも、伊織さんには、あまり通じなくなってきました」
「そうだな」
即答だった。
「顔に出るようになった」
「そんなにですか」
「前よりずっと」
それはきっと、以前より弱くなったという意味ではない。むしろ逆なのだろうと澄乃は思う。隠すことだけで立っていなくてもよくなったから、表情が少し遅れて追いつくようになった。そう考えると、その変化は恥ずかしいだけではなく、どこか嬉しくもあった。
玄関の敷居へ上がる前に、澄乃はもう一度だけ振り返った。
朝靄はほとんど晴れて、川の流れが白く光り始めている。夜には見えなかった石の輪郭も、川辺の草も、橋の向こうの屋根も、いまは全部がゆっくり朝へ戻っていた。人も、町も、宿も、これからまた今日の一日を始める。けれど自分の中には、それとは別の静かな時間がちゃんと残っている。
誰かと並んで歩いた朝の時間。
それだけのことが、一日の土台になるのだと知ってしまったら、もう前の自分には戻れないのかもしれなかった。
宿へ戻ると、玄関の灯りはもう落とされ、代わりに朝の白い光が廊下の奥まで差していた。館はこれからまた、客のための時間へ向かっていく。だが今だけはまだ、その前の静かな余白が残っている。
「じゃあ」
伊織が玄関の敷居で立ち止まる。
「ちゃんと休め」
「はい」
澄乃は頷いて、それから少しだけ言い直した。
「……なるべく」
「そこは断言しろ」
思わず笑う。笑ったまま、小さく頭を下げる。
「分かりました。ちゃんと休みます」
その返事を聞いて、伊織はようやく満足そうに息をついた。ほんの少しだけ緩んだその横顔を見ながら、澄乃は胸の奥がひどくやわらかくなるのを感じた。
今日の朝は、誰かのための支度ではなかった。
自分たちのためだけの時間だった。
それがこんなにも静かに心へ残るのなら、たぶんもう、好きになってしまっているのだろう。
劇的ではなく。
でも、揺るがない形で。
澄乃は廊下を自分の部屋へ向かって歩きながら、口元に残る笑みを消そうとは思わなかった。冷たい朝の空気を吸った胸の内には、もうはっきりと、生活の中で育った恋の気配が根を張っていた。
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