11 / 25
第二章 異世界でも流行りますか?
第六話 隣の同志
しおりを挟む私は、権力者を手玉に取る様な、傾国の美女になってやる!
…………ははははは!
いや、まだ大丈夫だよ。私の精神は壊れてないからね。ちょっと、ストレスを感じているだけ。
私を見つめる黒髪に黒い瞳の少年は、隣国アキツムラクモの国王陛下。帝国の属国で、帝国にしたら格下で大臣レベルの認識だ。
国王は、若干十歳だ。彼の父親は前王だった。アキツムラクモ国は、帝国との戦争に敗北した。帝国は国王を処刑して、属国にしたのだ。幼い王子を即位させて、摂政として帝国から宰相を送り込んだ。
彼が私の婚約者候補。いや、私は神様の婚約者なので。十六歳で、『神の花嫁』となり、神殿で一年過ごした後、神様と離婚した後の結婚相手だという。ううっ、ややこしい話だ。
十二年後、夫婦になるかもしれない少年は、親しみのあるアジア系のイケメン君だ。名前を、ジュンイチロウ=エルネスト=クロダと言う。異世界の日本的な立ち位置の国なのだろうか?
「はじめまして。カノン=コナ=ケアロ=バジェリアードです」
「ジュンイチロウ=エルネスト=クロダだ。五歳のお誕生日、おめでとうございます。我が国の名産品、ルルントを気に入っていただけたそうですね」
アキツムラクモ国は、例のルルントを名産品としてレシピを秘匿していた。それを、私が気に入ったという事でレシピを献上してくれるそうだ。
「はい。フィオル兄上様のお茶会で、いただいて、とても美味しかったです」
「それは、良かった。貴方は、私の将来の妻になる方です。我が国のお菓子を気に入ったように、我が国の事もお気に召していただけると良いのですが……」
「あの様な美味しいお菓子のある国です。きっと、好きになれると思います」
「嬉しいことをおっしゃる。ところで、マカロンは何味がお好きですか?」
「マカロン?」
「いいえ、ルルントでした。マカロンはルルントの名前が決まるまでの候補だったものです。つい、言い間違えてしまいました」
まさかの彼も転生者なのか……⁈ ってわけじゃなくて、単なる偶然?
「ルルントも可愛い名前ですが、マカロンも素敵ですね」
「カノン皇女殿下の方が可愛いです」
「……ありがとうございます」
それにしても、十歳にしてこのあざとさ、いえ処世術、只者じゃない。
…………彼が異世界転生者なら、色々と好都合なのになぁ。前世が同世代の日本人とかだったら、共通の倫理観で、このゲスい世界を変える為の良い味方についてくれるかも……?
これから、長い付き合いになりそうだ。見きわめを慎重にしなければならない。
私は、にっこりと微笑みながら彼にお願いしてみた。
「陛下を、ジュンイチロウ様とお呼びしてもいいでしょうか?」
「……っう! は、はい。良いですよ」
「ありがとうございます。ジュンイチロウ様。私のこともカノンと呼んでください」
「いえ、それは出来ません。私の国は帝国の属国です。皇女殿下を呼びすてには出来ません」
「そうなのですか、ごめんなさい。無理をいいました」
「いいえ、…………かっ、可愛い」
ふっ、何だよ、チョロいな少年。耳まで真っ赤にしやがって、私に魅了されたな!
前世の経営者時代、脂ぎった中年社長や、狡猾な営業マンや問屋と渡り合ってきたんだ。少年よ、君はまだまだ甘いな。
まあね、今世は自分でもうっとりしちゃう美少女だから、笑顔ひとつで破壊力バツグンだって知ってるけど。
その後、楽しく当たり障りのないおしゃべりをした。私たちの顔合わせも兼ねていたので、ルビス達も満足そうだった。
私はなにげなく、女神様信仰についてたずねた。ジュンイチロウは、自国に帰国次第、文献や遺跡を調査すると約束してくれた。
その報告を手紙でもらえる様に手配して、文通のきっかけを作ったので、親交を深めていきたい。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる