12 / 25
第二章 異世界でも流行りますか?
第七話 …………えっ?
しおりを挟む私は、この数年努力を重ね、念入りに下準備を進めてきた。帝国内にいる限り、私の権限はたかが知れている。属国に嫁ぐ皇女に権力なんて無い。
一年間、外界と隔絶された生活を送らなければならない。どんな事にも対処できるように、色々と根まわししてきた。
神官長は、私を神像のもとに案内した。やっぱり、男性の神様だ。私は、『神の花嫁』として神殿で生活する。
一年後、隣国の王ジュンイチロウ=エルネスト=クロダに嫁ぐのだ。
そこからが勝負だ。アキツムラクモ国を、ジュンイチロウ様と帝国と肩を並べる強国に発展させて、独立するのだ!
女神様、待っててね。必ず、『奴隷解放宣言』してみせるから!
突然、身体が光に包まれた!
そして、目の前に女神がいた。あの小さな身体は、普通の大人サイズになって、後光まで射してまばゆい光に包まれている。何というか、神様なのだから当たり前だが、神々しい……。
『翔音。ごめんなさい。もう、十分です。ありがとうございました』
神々しい女神様が、頭を下げて、更に下げて、土下座をした。
「な! 立って下さい! 一体どうしたのですか? なにがどうして、どうなったのか、説明プリーズ!」
私は、パニックを起こした。
『翔音は、とても良くやってくれたわ。でも、これ以上は、もう、……別の意味で世界の危機まっしぐらなの!』
「えっ? 私、まだ何の成果も出してないよ?」
『翔音のいた帝国では、起きていないの。だけど、他の国で『女神信仰』が広がって、何処の国の女神が本当に正しい姿なのか? 些細なことで戦争になって、戦乱が広がっているの』
それは、いわゆる宗教戦争? 宗派の違いの小競り合いが国家間の戦争になっているの?
「ど、どうして?」
『翔音は、私の事どう思っている?』
「?? 私の異能と異世界転生をさせられた理由を知っている、唯一私の事情を知っている存在です」
『……それだけ?』
等身大になった女神様は、とても美しく、真剣な表情で見つめられて、思わず赤面してしまった。
「う、言わなきゃダメ?」
『大事なことですよ』
「出来れば、助けてあげたい。友人のような気持ちがあると、思います。だから、女神信仰が復活すれば、いいと思っていました」
『ありがとうございます。だけど、これ以上はいけません。『女神信仰』が原因で世界の崩壊など本末転倒です!』
「えっ! そんなにヤバいの? 『奴隷解放宣言』は?」
『奴隷制度への嫌悪感は、少しづつ広がりをみせています。これをうまく『女神信仰』と結びつけて導けば、『奴隷解放宣言』も可能でしょう』
「それは、良かったです!」
『ええ、翔音。ありがとうございました』
何故だか、女神様は、頭を下げて、更に下げて、再び土下座をした。
「な! 何をしているのですか?! 頭を上げて下さい! 立って下さい!」
キラキラ度が増して神々しい女神様の土下座は、されてる私に天罰が下りそうなくらい畏れ多いものだった。勘弁して!
『翔音、もうこの世界は大丈夫です。ですから、どうか、他の異世界に転生して下さい』
「…………えっ?」
これが、私が異世界転生させられた理由。
……………… 其の二。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる