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穏やかな日々と近づく気配
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この世界では人間が主な種族として繁栄し、国を作りそれぞれが資源や食料、そして、優秀な人材を取引材料として世界は広がっていた。人類の記録のとおりだ。
だがそこに記録に残ることない特殊な者達も存在して降り。集落を作ったり。遊牧民だったりと国を作るには適さなかった。それもそのはず、種族によっては長命のものもおり、一つにとどまることわ好まないものもいるからだ。その代表がエルフ。人間と同じ見た目をしてはいるが色白の肌にとがった耳、スラリと長い足と高い背丈。人間の中には物語の妖精のようだと称える者もいるらしい。それほど友好な関係を築いた彼らは商人として、人間では作れぬ工芸品を売り買いするなど他種族よりも交流の機会を多く有していた。
そんなエルフ族は他種族からすれば人間にひれ伏したと捉えるものもいて、エルフを下に見るが、他種族にくらべて生来の魔力の強さに勝てるものはなく。最近は他種族の争い事は起きなくなった。
それ故か今では一人で旅に出て、仕事を探したり、人族との交流を望む若者が増えている。そんな彼らに必ず大人は言うのだ。
『クロに近づくな』
『クロ』という曖昧な表現の正体は知らされることはないが旅に出たエルフの胸にその言葉は刻まれた。その一人が俺だ。
銀髪を持って生まれ、深い青色の瞳を母から譲り受けた。100年かけて体が大人になり、旅を出てから200は過ぎた。
「っし……っ今日は大量だ」
隠せるよう短く切った銀髪をフードで隠し、山菜の入った篭を手に、比較的安全な山道を歩いていた。この付近は魔物がはびこらぬように定期的に人間の偵察が入るらしく気配は少ない。そのため、こうして安心して歩けるのだ。俺はそうした人間達の歩みを見届けるのが好きだ。薬師、弓士と適当な職に付きながら様々な国をめぐり、時には再訪して人間の歩みを見てきた。それに影響される世界も。それを自分の目で確かめる。それが旅の楽しみだった。
今日だってとある国に向かう最中でつきかけの食料の代わりを探していた。ようやく安心できる量を手に、森の中を歩いているとふと、濃い花の匂いを感じた。花の匂いに誘われて期待を胸に足を動かした。しかし、その先には。
「――っ」
花があったのだろう踏み荒らされた開けた場所があった。
魔物か、人間か。
歩みの中でこうした場所が踏み荒らされることだけは気の毒でその場に荷を下ろすとその中から、大切にしまっていた笛を取り出し、そして、優しく音色を奏でた。
すると森のさざめきが大きくなり、踏み荒らされた大地が淡く輝くと、倒れた莖や千切れた葉から新芽が伸びた。そうして淡い花を咲かせてみせ、その場は小さな花畑となった。
エルフは森の神に生み出されたと言われるように、魔力や音を使い、木々や花などの力を増殖したり、借りたりすることもできる。その力の一つとして笛作りは里でも伝統工芸品として長く親しまれてきた。
「元気になったみたいだな」
音色を奏でることをやめて、一息つこうとすれば花の蜜をもらいに来た蝶や小鳥が集まり、体の一部にのったり、周りを踊るように飛んでくれた。
「良かった。お前達にとっても大切な場所だったんだな。あとは頼むよ」
鳥は種を運ぶ。
蝶は花粉を。
それぞれの役割によってこの花畑がまもられていくことだろう。
穏やかな空気のせいか、指先に小鳥や蝶を乗せては頬を緩ませていた。風で飛んだフードにも気づかず。
「綺麗な羽をしているな。あぁ、お前は小さな嘴が可愛いな」
飛び回る蝶を褒め、肩に止まる小鳥に声をかけ、久しぶりに動物に触れ合えた喜びを噛み締めていた。
そんな時、招かれざる者の気配を感じた俺に合わせるように小鳥が空へ飛び、蝶はまたたく間に離れ、緊張をしながら気配の先に顔を向けた。
「──っく、ろ」
明らかに大柄で鍛え上げた肉体を待つ男。人間では到達できない大きな体を守る鎧は胸元と腰、そして足元のみ。腰には大剣を携えており、頭を覆う兜で目元は見えないがエルフのように尖った耳から他種族の戦士というのが正解だろう。だがそれよりも驚いたのは、俺の肌に似つかぬ焦げた肌。そして、兜から背中に伸びる髪は美しいほどに黒く染まっていたのだ。
『クロに近づくな』
頭に反響にした言葉にすぐに荷に向かって走ると笛を仕舞い込み、荷を背負い、篭を片手に抱えて男の反対に位置する道の方に向かって走り出した。しかしやはりというべきか、背後から足音が追いかけてくる。盗賊なのか、何か目的があるのか。必死に考えたが獣に襲われたほうがマシだと思うほどの緊張と焦りは俺を森の中に走るように促し、必死に走った。
しかし、足音は遠ざからず、焦りは募るが背後からの気配に押されるように森の深い所に追い込まれていく。狩られる獣のような自分が嫌になって、逃げ足を止めて魔法を仕掛けた。
「っ散れ……っ!」
エルフ特有の魔力は森の木々に通じ、彼の行く手を阻む蔦となる。そして、吹き荒れる風が彼の足を止めた。その隙に弓を構え、数発放つ。微毒の交じるそれは風魔法を宿し、風をなぞりながらやつに吸い込まれるように放たれ、肌を裂き、皮膚を貫いた。すぐさま足を動かし、魔法を唱えて足場を崩すと風に紛れてその場を立ち去った。
だがそこに記録に残ることない特殊な者達も存在して降り。集落を作ったり。遊牧民だったりと国を作るには適さなかった。それもそのはず、種族によっては長命のものもおり、一つにとどまることわ好まないものもいるからだ。その代表がエルフ。人間と同じ見た目をしてはいるが色白の肌にとがった耳、スラリと長い足と高い背丈。人間の中には物語の妖精のようだと称える者もいるらしい。それほど友好な関係を築いた彼らは商人として、人間では作れぬ工芸品を売り買いするなど他種族よりも交流の機会を多く有していた。
そんなエルフ族は他種族からすれば人間にひれ伏したと捉えるものもいて、エルフを下に見るが、他種族にくらべて生来の魔力の強さに勝てるものはなく。最近は他種族の争い事は起きなくなった。
それ故か今では一人で旅に出て、仕事を探したり、人族との交流を望む若者が増えている。そんな彼らに必ず大人は言うのだ。
『クロに近づくな』
『クロ』という曖昧な表現の正体は知らされることはないが旅に出たエルフの胸にその言葉は刻まれた。その一人が俺だ。
銀髪を持って生まれ、深い青色の瞳を母から譲り受けた。100年かけて体が大人になり、旅を出てから200は過ぎた。
「っし……っ今日は大量だ」
隠せるよう短く切った銀髪をフードで隠し、山菜の入った篭を手に、比較的安全な山道を歩いていた。この付近は魔物がはびこらぬように定期的に人間の偵察が入るらしく気配は少ない。そのため、こうして安心して歩けるのだ。俺はそうした人間達の歩みを見届けるのが好きだ。薬師、弓士と適当な職に付きながら様々な国をめぐり、時には再訪して人間の歩みを見てきた。それに影響される世界も。それを自分の目で確かめる。それが旅の楽しみだった。
今日だってとある国に向かう最中でつきかけの食料の代わりを探していた。ようやく安心できる量を手に、森の中を歩いているとふと、濃い花の匂いを感じた。花の匂いに誘われて期待を胸に足を動かした。しかし、その先には。
「――っ」
花があったのだろう踏み荒らされた開けた場所があった。
魔物か、人間か。
歩みの中でこうした場所が踏み荒らされることだけは気の毒でその場に荷を下ろすとその中から、大切にしまっていた笛を取り出し、そして、優しく音色を奏でた。
すると森のさざめきが大きくなり、踏み荒らされた大地が淡く輝くと、倒れた莖や千切れた葉から新芽が伸びた。そうして淡い花を咲かせてみせ、その場は小さな花畑となった。
エルフは森の神に生み出されたと言われるように、魔力や音を使い、木々や花などの力を増殖したり、借りたりすることもできる。その力の一つとして笛作りは里でも伝統工芸品として長く親しまれてきた。
「元気になったみたいだな」
音色を奏でることをやめて、一息つこうとすれば花の蜜をもらいに来た蝶や小鳥が集まり、体の一部にのったり、周りを踊るように飛んでくれた。
「良かった。お前達にとっても大切な場所だったんだな。あとは頼むよ」
鳥は種を運ぶ。
蝶は花粉を。
それぞれの役割によってこの花畑がまもられていくことだろう。
穏やかな空気のせいか、指先に小鳥や蝶を乗せては頬を緩ませていた。風で飛んだフードにも気づかず。
「綺麗な羽をしているな。あぁ、お前は小さな嘴が可愛いな」
飛び回る蝶を褒め、肩に止まる小鳥に声をかけ、久しぶりに動物に触れ合えた喜びを噛み締めていた。
そんな時、招かれざる者の気配を感じた俺に合わせるように小鳥が空へ飛び、蝶はまたたく間に離れ、緊張をしながら気配の先に顔を向けた。
「──っく、ろ」
明らかに大柄で鍛え上げた肉体を待つ男。人間では到達できない大きな体を守る鎧は胸元と腰、そして足元のみ。腰には大剣を携えており、頭を覆う兜で目元は見えないがエルフのように尖った耳から他種族の戦士というのが正解だろう。だがそれよりも驚いたのは、俺の肌に似つかぬ焦げた肌。そして、兜から背中に伸びる髪は美しいほどに黒く染まっていたのだ。
『クロに近づくな』
頭に反響にした言葉にすぐに荷に向かって走ると笛を仕舞い込み、荷を背負い、篭を片手に抱えて男の反対に位置する道の方に向かって走り出した。しかしやはりというべきか、背後から足音が追いかけてくる。盗賊なのか、何か目的があるのか。必死に考えたが獣に襲われたほうがマシだと思うほどの緊張と焦りは俺を森の中に走るように促し、必死に走った。
しかし、足音は遠ざからず、焦りは募るが背後からの気配に押されるように森の深い所に追い込まれていく。狩られる獣のような自分が嫌になって、逃げ足を止めて魔法を仕掛けた。
「っ散れ……っ!」
エルフ特有の魔力は森の木々に通じ、彼の行く手を阻む蔦となる。そして、吹き荒れる風が彼の足を止めた。その隙に弓を構え、数発放つ。微毒の交じるそれは風魔法を宿し、風をなぞりながらやつに吸い込まれるように放たれ、肌を裂き、皮膚を貫いた。すぐさま足を動かし、魔法を唱えて足場を崩すと風に紛れてその場を立ち去った。
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