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第3話 ブラックジャック
「互いの所持品を確認しておこう。俺の手持ちはこんなところだ」
黎一のリュック入っているのは、トレーニング用の着替えとして入れていたティーシャツとハーフパンツ。暗殺の工作用にたまたま持ち歩いていたテグスとニッパー、スマホ、財布、ボールペンとメモ帳。手首にはアナログの腕時計も巻いている。荷物になるかと思い、無人島では使い道のないノートや参考書の類は全て破棄してきた。それ以外にはこの島に来てから入手したバールとそれが入っていた布袋、タブレット端末があるだけだ。
スマホは夜間にはライトとして。緊急時にはタイマー機能を使ってゾンビに対する囮のようにも使えるだろう。ボールペンとメモ帳の用途はそのまま、情報を書き留めること。スマホの充電が出来ない以上、記録方法はアナログが主流になる。相手が生きた人間ならボールペンも十分凶器になるが、ゾンビ相手ならそれは難しいかもしれない。
「布袋は必要ですか?」
「ブラックジャックって知ってるか?」
「トランプゲームですね。数字の合計で21を目指す駆け引きが面白いです」
「えっと、この場合のブラックジャックは武器の名前で」
「冗談です。なるほど、そのための布袋でしたか」
「冗談を言う余裕。心強いね」
革や布袋に砂や金貨などを詰め込んだ殴打武器。それがブラックジャックだ。材料さえあれば誰でも簡単に作ることが出来るうえに威力も高い。表面が布のため標的の流血を伴いにくい。殴打音が小さいという特徴もあり、暗殺武器としてもブラックジャックは有用。推理小説などでもお馴染みの凶器の一つである。黎一は手慣れた様子でバールの入っていた布袋に砂を詰め込み、口先をテグスで縛って、お手製のブラックジャックを完成させた。
「砂はたくさんありますし、手軽に武器が作れますね」
「そういうこと。使えそうな物は何でも使わないとな」
ブラックジャックの一撃がゾンビに有効かは実戦で試してみないと分からないが、万が一バールが使えなくなった時の保険にと、到着した時から利用を考えていた。
「俺は基本的にバールで戦うつもりだけど、玲於奈も護身用として持っておいてもいいんじゃないか? もちろん、君にゾンビを近づけないようには努力するが」
「ありがとうございます。近接装備があると少し安心しますね」
玲於奈はボウガンの矢が入っていた布袋を差し出すと、黎一はそれを使って手早く、玲於奈の分もブラックジャックを完成させた。
「テグスなんてよく持ち合わせていましたね」
「大学の課題でちょっとな」
以前暗殺の仕事で使った物を持ち合わせていたのだとは流石に言えなかったが、裏の顔を持つのは玲於奈も同様だろうと黎一は察していた。ゾンビの眉間に躊躇なくボウガンの矢を放つ技量といい、このような状況下で冷静さを保つ度量といい。少なくとも単なる一般人ではないはずだ。
「玲於奈の武器以外の持ち物は?」
「こんな感じです」
玲於奈は白いキャンバス地のリュックサックの中から所持品を鋭司へと提示する。
内容は絆創膏が数枚。クッキータイプの菓子が一箱。痛み止め。生理用品。財布。スマホ。ハンカチ。ポケットティッシュ。化粧用品。手鏡、等々。
「使えそうな物はそれなりにあるな」
鏡は安全確認のために。絆創膏や痛み止めはそのままの用途で、生理用品も怪我をした際に止血に利用することが出来る。ゾンビの攻撃を受けて負傷したら、そもそも応急処置が意味を成さない可能性はあるが、無いよりはマシだろう。
「矢の残数は?」
「入手時点で三十本。先程一射放ちましたので残りは二十九本。放った矢を回収しようとも思いましたが、ゾンビの頭蓋を貫いた際に破損したようで、再利用は難しそうですね」
「本数が決まっている以上、使いどころを見極める必要があるな」
最終手段として枝などを削って手製の矢を作成するという手もあるが、ゾンビだらけの島でそんな余裕があるかは分からない。節約するにこしたことはないだろう。
「玲於奈。君はこれからどう動くべきだと考える?」
「仲間を増やすべきではないでしょうか」
「それなら、何人仲間を増やすべきだと思う?」
「一人で十分かと。私達を入れて計三人。それが理想です」
「俺も同意見だ。三人はチームを組む上で最小の奇数だからな。それ以上の人数は意思の疎通や連携が難しくなってくる」
同じレベルで会話が出来るため、話し合いはスムーズに進む。黎一も仲間を増やすならあと一人までだと考えていた。
「どういう人材をご所望だ?」
「状況に応じて立ち回りを変えられる、臨機応変な人が望ましいでしょうね。度胸があって人格者で、インテリジェンスで筋骨隆々ならなおのこと良し」
「もはや映画の主人公だな。出会えたら俺は喜んで脇役に回るよ」
「理想は高く持てというのが父の教えですので。とはいえ、現実には妥協も必要なのもまた事実。最低限の条件を挙げるなら、頭の良い人が望ましいですね。余計な説明に時間を取られたくありませんし」
玲於奈の注文はもっともだが、そもそも聖者以前に生者と出会えるのかという問題もある。デスゲームの開始から間もなく二時間。仮に全員が武闘派だと想定すれば、まだほとんどの人間が生き残っていると思われるが、それでも閉鎖空間の中では生存者の数はどんどん減っていくはずだ。仲間集めも時間との勝負かもしれない。
黎一のリュック入っているのは、トレーニング用の着替えとして入れていたティーシャツとハーフパンツ。暗殺の工作用にたまたま持ち歩いていたテグスとニッパー、スマホ、財布、ボールペンとメモ帳。手首にはアナログの腕時計も巻いている。荷物になるかと思い、無人島では使い道のないノートや参考書の類は全て破棄してきた。それ以外にはこの島に来てから入手したバールとそれが入っていた布袋、タブレット端末があるだけだ。
スマホは夜間にはライトとして。緊急時にはタイマー機能を使ってゾンビに対する囮のようにも使えるだろう。ボールペンとメモ帳の用途はそのまま、情報を書き留めること。スマホの充電が出来ない以上、記録方法はアナログが主流になる。相手が生きた人間ならボールペンも十分凶器になるが、ゾンビ相手ならそれは難しいかもしれない。
「布袋は必要ですか?」
「ブラックジャックって知ってるか?」
「トランプゲームですね。数字の合計で21を目指す駆け引きが面白いです」
「えっと、この場合のブラックジャックは武器の名前で」
「冗談です。なるほど、そのための布袋でしたか」
「冗談を言う余裕。心強いね」
革や布袋に砂や金貨などを詰め込んだ殴打武器。それがブラックジャックだ。材料さえあれば誰でも簡単に作ることが出来るうえに威力も高い。表面が布のため標的の流血を伴いにくい。殴打音が小さいという特徴もあり、暗殺武器としてもブラックジャックは有用。推理小説などでもお馴染みの凶器の一つである。黎一は手慣れた様子でバールの入っていた布袋に砂を詰め込み、口先をテグスで縛って、お手製のブラックジャックを完成させた。
「砂はたくさんありますし、手軽に武器が作れますね」
「そういうこと。使えそうな物は何でも使わないとな」
ブラックジャックの一撃がゾンビに有効かは実戦で試してみないと分からないが、万が一バールが使えなくなった時の保険にと、到着した時から利用を考えていた。
「俺は基本的にバールで戦うつもりだけど、玲於奈も護身用として持っておいてもいいんじゃないか? もちろん、君にゾンビを近づけないようには努力するが」
「ありがとうございます。近接装備があると少し安心しますね」
玲於奈はボウガンの矢が入っていた布袋を差し出すと、黎一はそれを使って手早く、玲於奈の分もブラックジャックを完成させた。
「テグスなんてよく持ち合わせていましたね」
「大学の課題でちょっとな」
以前暗殺の仕事で使った物を持ち合わせていたのだとは流石に言えなかったが、裏の顔を持つのは玲於奈も同様だろうと黎一は察していた。ゾンビの眉間に躊躇なくボウガンの矢を放つ技量といい、このような状況下で冷静さを保つ度量といい。少なくとも単なる一般人ではないはずだ。
「玲於奈の武器以外の持ち物は?」
「こんな感じです」
玲於奈は白いキャンバス地のリュックサックの中から所持品を鋭司へと提示する。
内容は絆創膏が数枚。クッキータイプの菓子が一箱。痛み止め。生理用品。財布。スマホ。ハンカチ。ポケットティッシュ。化粧用品。手鏡、等々。
「使えそうな物はそれなりにあるな」
鏡は安全確認のために。絆創膏や痛み止めはそのままの用途で、生理用品も怪我をした際に止血に利用することが出来る。ゾンビの攻撃を受けて負傷したら、そもそも応急処置が意味を成さない可能性はあるが、無いよりはマシだろう。
「矢の残数は?」
「入手時点で三十本。先程一射放ちましたので残りは二十九本。放った矢を回収しようとも思いましたが、ゾンビの頭蓋を貫いた際に破損したようで、再利用は難しそうですね」
「本数が決まっている以上、使いどころを見極める必要があるな」
最終手段として枝などを削って手製の矢を作成するという手もあるが、ゾンビだらけの島でそんな余裕があるかは分からない。節約するにこしたことはないだろう。
「玲於奈。君はこれからどう動くべきだと考える?」
「仲間を増やすべきではないでしょうか」
「それなら、何人仲間を増やすべきだと思う?」
「一人で十分かと。私達を入れて計三人。それが理想です」
「俺も同意見だ。三人はチームを組む上で最小の奇数だからな。それ以上の人数は意思の疎通や連携が難しくなってくる」
同じレベルで会話が出来るため、話し合いはスムーズに進む。黎一も仲間を増やすならあと一人までだと考えていた。
「どういう人材をご所望だ?」
「状況に応じて立ち回りを変えられる、臨機応変な人が望ましいでしょうね。度胸があって人格者で、インテリジェンスで筋骨隆々ならなおのこと良し」
「もはや映画の主人公だな。出会えたら俺は喜んで脇役に回るよ」
「理想は高く持てというのが父の教えですので。とはいえ、現実には妥協も必要なのもまた事実。最低限の条件を挙げるなら、頭の良い人が望ましいですね。余計な説明に時間を取られたくありませんし」
玲於奈の注文はもっともだが、そもそも聖者以前に生者と出会えるのかという問題もある。デスゲームの開始から間もなく二時間。仮に全員が武闘派だと想定すれば、まだほとんどの人間が生き残っていると思われるが、それでも閉鎖空間の中では生存者の数はどんどん減っていくはずだ。仲間集めも時間との勝負かもしれない。
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