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第4話 ジャックポットは望まない
『参加者の皆様。端末にご注目下さい』
耳障りな機械音声が端末から発せられた。何事かと思い黎一がタブレット端末を手に取ると、画面上には例の鮫のキャラクターが『重要なお知らせ』と書かれたプラカードを見せつけていた。
『ゲーム開始から二時間が経ちましたので、状況の報告と耳よりな情報をお持ちしました。耳の穴を血が出るまでかっぽじってお聞きください』
「いったい何のことでしょうね?」
「ジャックポットで大量のゾンビが出現しないことを祈るばかりだよ」
二人で肩を並べて流木に腰掛け、玲於奈が黎一のタブレットを覗き込む。絵面だけ見れば、カップルがタブレットで動画を楽しんでいるかのようだ。
『現時点で生存者の人数を発表いたします。不幸なことに二名の参加者が命を落とされました。残る参加者は十四名となります』
「二時間で二人か。これはなかなか」
開始直後の混乱を思えば、犠牲者は少ないというのが黎一の率直な感想だった。他の参加者も相当な手練れであることが伺える。
『犠牲となられたのは、高紐慧蔵様。中黒梓様の二名です。ご冥福をお祈り致します。もっとも、体はまだ元気に動き回っているようですがね』
二人の犠牲者、だった物が画面に映し出され、欠損し、血まみれとなった体で画面内を彷徨っていた。
「悪趣味ですね。品性を疑います」
「気が合うな。貴重品じゃなきゃ画面を叩き割ってるところだ」
見ず知らずの他人の死には何の感慨も湧かないが、人を嘲るような運営側の態度はお互いに気に入らなかった。
『お待たせしました。お次はこの島を生きていくうえで欠かせない、有益な情報を提示致します』
画面から鮫のキャラクターの姿が消え、代わりにどこかの島の地図が表示される。このタイミングで表示された地図。それが指し示す場所は当然一ヶ所しか存在しない。
『皆様のご想像通り、それはこの島の地図でございます。島の大きさは海岸線長が約七キロ。起伏は少なく、島の中心部は高い木々に囲まれる森林地帯となっております』
「地図を提示してくれるなんて、大盤振る舞いですね」
「仮にもゲームというわけだ。セルフマッピングなら地獄だったな」
恐らくは二時間を生き抜いた報酬という扱いなのだろう。いずれにせよ、地理を知ることが出来たのは大きな収穫だ。ゲームでも現実でも、見知らぬ地形を無作為に歩き続けるのは破滅をもたらすだけだ。
『この地図は端末からいつでも確認することが出来ますので、今後の行動にお役立てください。わたくしからは以上です』
鮫のキャラクターの姿は画面から消え、後には島の地図だけが残されていた。
「先ずは現在地を把握しないとな」
「方位を調べられる物は持っているんですか?」
「幸いなことに、アナログの腕時計をはめてる」
黎一は目を細めて腕時計の文字盤と太陽を見比べながら、短針を太陽の方向へと合わせる。この方法に基づくと、文字盤の十二と短針の間が南の方角ということになる。あくまでも大まかな方角しか分からないが、地図で地形が分かるので指針としては十分だ。
「現在地から見て南は海。今いるのは島の南の砂浜ということになるな」
「地図でいうと、だいたいこの辺りでしょうか」
「たぶん。あの大きな岩がこれだろう」
地図によると、南の砂浜近くには空へと突き上げる巨大な蟹バサミのような、特徴的な形の岩がある。それと似た岩を二人も視界に捉えていた。方角的にも地形の特徴的にも、現在二人がいるのは島の南側の砂浜で間違いない。
「地図のおかげで選択肢が広がりましたが、先ずはどこへ向かいましょうか?」
「森にはまだ近づかない方がいい。海岸線と違って地図では把握出来ない地形も多い。せめてもう一人戦力が増えてからだな」
戦力の話題に触れた瞬間、黎一に一つの閃きが生まれた。地図を拡大し、玲於奈にある地点を指し示す。
「この場所に見覚えがないか?」
「岩場の多い海岸沿い。もしかして、デモンストレーションで男性が殺された場所ですか?」
「海沿いでこれだけ岩場が密集している場所は他に見当たらない。ここであの男は死んだと見るべきだろう」
「意外と近いですね」
「縮尺から考えると、この先を五百メートルといったところだな」
同じ海岸線上なので、いちいち地図を確認しなくとも海沿いに進むだけで辿りつくことが出来そうだ。
「あの男もデスゲームの参加者だとすれば、対ゾンビ用の武器も支給されていたはずだ。もしかしたらあの場所には、手つかずの武器が残されているかもしれない」
黎一の閃きに感心して玲於奈は強く頷いた。これまでは戦力の強化イコール人員の増加という考えに囚われ過ぎていた。例えば同種の武器が支給されていれば、ボウガンの矢も補充出来るかもしれない。
「運が良ければ、他の参加者にも会えるかもしれない。同じことを考えている人間がいてもおかしくはないからな」
「一石二鳥となればありがたいですね」
過度な期待は控えつつも、武器の回収に向かうという方向で話は決まった。
耳障りな機械音声が端末から発せられた。何事かと思い黎一がタブレット端末を手に取ると、画面上には例の鮫のキャラクターが『重要なお知らせ』と書かれたプラカードを見せつけていた。
『ゲーム開始から二時間が経ちましたので、状況の報告と耳よりな情報をお持ちしました。耳の穴を血が出るまでかっぽじってお聞きください』
「いったい何のことでしょうね?」
「ジャックポットで大量のゾンビが出現しないことを祈るばかりだよ」
二人で肩を並べて流木に腰掛け、玲於奈が黎一のタブレットを覗き込む。絵面だけ見れば、カップルがタブレットで動画を楽しんでいるかのようだ。
『現時点で生存者の人数を発表いたします。不幸なことに二名の参加者が命を落とされました。残る参加者は十四名となります』
「二時間で二人か。これはなかなか」
開始直後の混乱を思えば、犠牲者は少ないというのが黎一の率直な感想だった。他の参加者も相当な手練れであることが伺える。
『犠牲となられたのは、高紐慧蔵様。中黒梓様の二名です。ご冥福をお祈り致します。もっとも、体はまだ元気に動き回っているようですがね』
二人の犠牲者、だった物が画面に映し出され、欠損し、血まみれとなった体で画面内を彷徨っていた。
「悪趣味ですね。品性を疑います」
「気が合うな。貴重品じゃなきゃ画面を叩き割ってるところだ」
見ず知らずの他人の死には何の感慨も湧かないが、人を嘲るような運営側の態度はお互いに気に入らなかった。
『お待たせしました。お次はこの島を生きていくうえで欠かせない、有益な情報を提示致します』
画面から鮫のキャラクターの姿が消え、代わりにどこかの島の地図が表示される。このタイミングで表示された地図。それが指し示す場所は当然一ヶ所しか存在しない。
『皆様のご想像通り、それはこの島の地図でございます。島の大きさは海岸線長が約七キロ。起伏は少なく、島の中心部は高い木々に囲まれる森林地帯となっております』
「地図を提示してくれるなんて、大盤振る舞いですね」
「仮にもゲームというわけだ。セルフマッピングなら地獄だったな」
恐らくは二時間を生き抜いた報酬という扱いなのだろう。いずれにせよ、地理を知ることが出来たのは大きな収穫だ。ゲームでも現実でも、見知らぬ地形を無作為に歩き続けるのは破滅をもたらすだけだ。
『この地図は端末からいつでも確認することが出来ますので、今後の行動にお役立てください。わたくしからは以上です』
鮫のキャラクターの姿は画面から消え、後には島の地図だけが残されていた。
「先ずは現在地を把握しないとな」
「方位を調べられる物は持っているんですか?」
「幸いなことに、アナログの腕時計をはめてる」
黎一は目を細めて腕時計の文字盤と太陽を見比べながら、短針を太陽の方向へと合わせる。この方法に基づくと、文字盤の十二と短針の間が南の方角ということになる。あくまでも大まかな方角しか分からないが、地図で地形が分かるので指針としては十分だ。
「現在地から見て南は海。今いるのは島の南の砂浜ということになるな」
「地図でいうと、だいたいこの辺りでしょうか」
「たぶん。あの大きな岩がこれだろう」
地図によると、南の砂浜近くには空へと突き上げる巨大な蟹バサミのような、特徴的な形の岩がある。それと似た岩を二人も視界に捉えていた。方角的にも地形の特徴的にも、現在二人がいるのは島の南側の砂浜で間違いない。
「地図のおかげで選択肢が広がりましたが、先ずはどこへ向かいましょうか?」
「森にはまだ近づかない方がいい。海岸線と違って地図では把握出来ない地形も多い。せめてもう一人戦力が増えてからだな」
戦力の話題に触れた瞬間、黎一に一つの閃きが生まれた。地図を拡大し、玲於奈にある地点を指し示す。
「この場所に見覚えがないか?」
「岩場の多い海岸沿い。もしかして、デモンストレーションで男性が殺された場所ですか?」
「海沿いでこれだけ岩場が密集している場所は他に見当たらない。ここであの男は死んだと見るべきだろう」
「意外と近いですね」
「縮尺から考えると、この先を五百メートルといったところだな」
同じ海岸線上なので、いちいち地図を確認しなくとも海沿いに進むだけで辿りつくことが出来そうだ。
「あの男もデスゲームの参加者だとすれば、対ゾンビ用の武器も支給されていたはずだ。もしかしたらあの場所には、手つかずの武器が残されているかもしれない」
黎一の閃きに感心して玲於奈は強く頷いた。これまでは戦力の強化イコール人員の増加という考えに囚われ過ぎていた。例えば同種の武器が支給されていれば、ボウガンの矢も補充出来るかもしれない。
「運が良ければ、他の参加者にも会えるかもしれない。同じことを考えている人間がいてもおかしくはないからな」
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