今度こそ生き延びます!私を殺した旦那様、覚悟してください

由友ひろ

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第六話出会い1

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 ゴールドフロント国王に婚約の許可を貰った後、実はアレキサンダーが謁見の間に乱入してきて、ルチアの婚約を認めないとか喚いた一幕があった。
「自分の方が先に申し込んだ」(縁談に早い者勝ちがあると信じているのかしらね?)とか「王族からの縁談を断るならば、家門は断絶だ!」とかね。

 あまりにアレキサンダーがうるさいから、ルチアが他国の貴族と婚姻を結ぶことについて、長老院と貴族院で話し合われたくらいで、その上で国王の承認も合わせて、婚約承諾書なるよくわからない文書が発行された。

 その承諾書をアレキサンダーにわざとらしく見せながら、ざまあみろ!とルチアが内心では舌を出していたことなど、怒りで震えていたアレキサンダーは気が付かなかっただろう。

 それにしても、そこまでルチアを引き止めたい理由は何だったのか?まさか、政略結婚としてではなく、ルチアと本当に結婚したかったとか……?いやいや、意味がわからない。アレキサンダーに好かれているのかもって思っただけで、実際にルチアの腕に鳥肌が立ったくらい気持ちが悪かった。

「お嬢様、王都に入ったようですよ」

 腕を擦っていたルチアに、アンが窓の外を指差して言った。
 その指の先には、石造りの建物が整然と並び、整備された道路には街灯まで等間隔にあった。

 ここまで馬車で五日、快適とは言い難かったが、気心の知れたアンと喋りながらの旅は楽しかった。前回(死に戻り二回目)はアレキサンダーと一緒だったから、馬車の乗り心地は最高に良かったものの、アレキサンダーのくだらない話に一日中付き合わねばならず、苦行のような五日間だったことを考えると、まさに天国だ。あれに比べたら、ピクニックに来たみたいに楽しかったわ……と、ルチアは辛い記憶を上書きして封印する。

「凄いですね、国境近くの田舎道もきちんと整備されていたけれど、王城のある都は石畳ですよ」
「そうね」

 プラタニアの軍隊は、その進軍速度が群を抜いているのだが、その理由は初動の速さにあるのかもしれない。整備された道は軍馬も駆けやすい上、物資を運ぶのもスムーズに行く。土木の技術に優れているから、進軍を邪魔する土砂や木々をスムーズに排除でき、迂回して時間がかかる渓谷などには最速で橋をかける。ただ剣の強さだけではない、プラタニアの強さの一端を見た気がした。

 プラタニアに入ってからは、エムナール伯爵家の馬車に乗り換えていた為、道に迷うことなくエムナール伯爵邸にたどり着いた。雷靂将軍エムナールの屋敷……にしてはこじんまりした建物の前に馬車は停まった。王都における別邸と考えれば普通なのかもしれないが、彼の功績を考えれば、もっと王城に近い豪邸でもおかしくないと思うのだが……。

「色んな意味で普通ですね」
「まぁ、大き過ぎるお屋敷は、采配が大変だからこのくらいがちょうど良いのよ」

 アンとボソボソと話していると、馬車の扉が開けられ……白髪の紳士がルチアを出迎えた。

(エムナール大将ではないわね。彼のトレードマークの右頬の傷もないし、何よりこの人はエムナール大将よりもだいぶ年上だ)

「ルチア・シンドルフ様ですね。私、エムナール伯爵家執事セバスチャン・ドゴールでございます。セバスチャンもしくはセバスとお呼びください」
「よろしくお願いします。私がルチアです。こっちは侍女のアン」
「アン・ミラーです。よろしくお願いいたします」

 セバスチャンにエスコートされて馬車を降り、ルチアは伯爵邸に案内された。

「旦那様はお仕事の為、私の案内で恐縮にございます。まずは侍女頭をご紹介いたします。スーザン・ホワイト。アンさんは彼女に仕事を聞いてください」

 少しぽっちゃりしているが、気の良さそうな中年女性がお辞儀をした。その後ろには三人の若い侍女がおり、どうやら侍女は他にはいないようだ。
 他に、コックと庭師、厩舎係の男がそれぞれ名乗って挨拶をした。

 貴族の屋敷としてはかなり少ないが、この少人数で屋敷を回しているらしい。

「ルチア様には護衛も数人つく予定です。旦那様が吟味してお選びになっておりますが、うちの者は全員腕に覚えがありますのでご安心ください」

 それはセバスチャンも?白髪だからかなり高齢なのかと思いきや、肌艶はいいし、あまり皺もない。背筋もピシッと伸びているから、四十代にも見えるし、六十過ぎと言われても納得できる。
 庭師に至っては、かなりの高齢で七十は超えていそうだし、厩舎係は逆に十代前半の少年だった。彼らが手練れ……とても見えない。

「アンも護身術を少々嗜むんですよ」
「それは素晴らしい。ルチア様の専属侍女として頼もしい限りです」

 それから使用人達はルチアの荷物を屋敷に運び入れ、ルチアとアンはセバスチャンに屋敷を簡単に説明してもらった。と言っても、二階建ての屋敷で部屋数もそんなに多くなく、一階は応接間に食堂、厨房くらいで、使用人の住まいは離れがあるらしいが、人数も少ないので本邸の一階の余った部屋に住んでいるそうだ。二階には夫婦の主寝室、夫婦各自の部屋、執務室、図書室、ゲストルームがあった。

 豪華な調度品等はなかったが、全ての部屋が綺麗に整えられ、思った以上に歓迎されている雰囲気を感じる。ルチア用に用意された私室は特に、レースやフリルがふんだんに使われ、女の子ならばテンションが上がる可愛らしい内装になっていた。

「ルチア様の好みがわかりませんでしたので、侍女達が考えて部屋を整えさせていただきましたが、もしご希望がございましたら、なんなりとお申し付けください」
「十分過ぎるくらいです。あの、このドアは……」
「こちらは洗面所と浴室、こちはのドアは主寝室に繋がっておりますが、ご婚姻までは鍵をかけさせていただき、私めが鍵を預からせていただきます。もちろん、旦那様のお部屋も同様ですのでご安心くださいませ」

 セバスチャンはドアに手をかけ、開かないことをアピールする。

 夫婦になればいずれは……。しかし、今はまだ閨事については悩まないで良さそうなのでホッとする。今の身体での経験はないが、死に戻る前にはアレキサンダーの妻であったことがあるから、その時の記憶はある。あんな痛くて気持ち悪いこと、できる限りしたくないものだ。

 夕食まで部屋でくつろいでいて欲しいと言われ、ルチアは私室のソファーに座ってボーッとする。座り心地の良いソファーは眠気を誘い、旅の疲れもあり、ついウトウトとしてしまう。
 ルチアはいつの間にか深い眠りについていた。
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