のじゃロリ吸血鬼さんはチューチューしたい3

かま猫

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剣の舞 その2

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 彼が連れて来たのは日本刀を展示している博物館だった。一階エントランスを入るとカフェスペース、刀の出来るまでを説明した資料映像展示コーナーがあって、そこを通りチケット売り場でチケットを買うと施設内、三階にある展示室を目指す。フレイラは心なしか早足で仙一郎は置いて行かれそうになって慌てて彼女の後を追う。階段を上がり通路を通り抜けると天井の高いちょっとした体育館並に広い場所に出る。薄暗い室内の壁全面がガラス張りになっており、その中に照明に照らされ刀が展示されていた。室内は閑散としており仙一郎らの他には数人がいるだけだった。
「はぁぁっ…」
 展示室に入るとフレイラは大きく感嘆の声を上げてしまい静かな室内に響く声に人々が振り向く。彼女はそれに気づいたのか慌ててて口元を押さえる。それでも気持ちを抑えきれないのかまるでスキップするように展示室を速足で横切ると間仕切りのガラスに顔をぴたりと付けて展示してある刀を目を爛々と輝かせ食い入るように見つめる。
「これ…来国行ですよ!国宝の!この優美な曲線がなんとも美しい…」
 声をひそめて早口でまくし立てる。そして彼女は仙一郎がいるのも忘れて展示されている刀を一振り一振り丁寧に睨み続ける。時々ぶつぶつと独り言を言いながら数十分も見入っている彼女の姿があまりにも楽しそうだったので
「やっぱり刀に興味があるんだね。ここに連れて来て良かったよ。」
 その言葉にフレイラは我に返ったように彼の方に向き直る。
「あの…色々と気を使わせてしまって申し訳ございません。主に心配をかけるなんて警固役として失格ですね…」
「またそんな事を…気にしなくてイイから心ゆくまで鑑賞しよ!」
「…ありがとうございます。」
 彼の笑顔にフレイラは少しはにかんだような表情をみせた。
 それからしばらく二人は展示室を見て回る。仙一郎は日本刀の造形的な美しさは十分理解出来たが、いかんせん知識は無かったのでフレイラの学芸員顔負けの解説が有難かった。
「兼永に清綱、それに正恒。国宝に重要文化財クラスの美しい刀が一堂に会してるなんて天国ですか!ここは!」
 フレイラはずっと興奮しきりで、いつもの冷静沈着な様子を知っている身からすると微笑ましく、そんな姿を見れただけでもここに連れて来て良かったと思うのだった。
「まあここにある日本刀も美しいけどフレイラも…フラガラッハも負けず劣らず美しい剣だと思うよ。」
 その言葉にフレイラの表情は一瞬曇ったように見えたが
「そうですね!」
 とすぐに笑顔をみせて言った。

 館内の展示をあらかた見終わった頃には時刻はとうに昼を過ぎていた。仙一郎はそろそろ昼食はどうしようかとぼんやり考え始めていたが、フレイラはまだまだ鑑賞したりないといった風情で展示を眺めていた。
「やはりここにおったか!」
 突然、聞き覚えのある声がして振り返ると、路上で会った老人がいつの間にか間近に立っていた。フレイラは驚いたように飛びのき、老人と対峙するように仙一郎の前に立ったので後から声をかける。
「もめ事はダメだよ!」
「でも、あの老人は私のお尻を触ったんですよ!」
「怒る気持ちは分かるけど冷静になって。」
「いいえ!そういう事ではありません。お尻に触れたということは私に気づかれることなく間合いに入って来たということなんです。普通ではありえないことです。」
「じゃあ魔物か何か?」
 小声て聞くと
「人間ですがただ者ではありません。」
「ただ者でないのはお嬢ちゃんの方じゃろ?」
 彼女の声が聞こえていたのか老人が話しかけてくる。
「何のことです?」
「だいぶ珍しい気配を感じるんじゃがのぉ…例えるなら、良く鍛えられた切れ味鋭い名刀のような…」
「あなた何者なの?」
 フレイラは緊張した面持ちで老人を睨む。
「ただの楽隠居じゃよ。それよりひとつ手合わせを願いたいんじゃがのぉ。」
「何を言ってるんです?」
「お嬢ちゃん、かなりの腕前なのじゃろ?それで儂も久しぶりに血が滾ってしまってのぉ。」
「仙一郎様の手前、荒事にはしたくないのですが…このままお引き取り願えませんか?」
「つれないのぉ。そんな事言わずに老い先短い老人の願いを聞いてはくれんか。」
 老人は傍らの展示を見やると持っていた杖を振り上げてガラスを叩き割る。展示室に甲高い音が響き床に破片が散乱する。二人が身構えていると老人はガラスが割れた展示ケースから刀を持ち出す。
「ふむ。まあこれで良いかのぉ…」
 一通り確認するように刀身を眺めると柄のついていない刀のなかごを両手でしっかり握り中段に構える。背筋をピンと伸ばし力強く立つ姿は、先ほどまで杖を突いて歩いていた老人の面影は微塵もなく凛とした姿だった。フレイラはといえば、いつの間にか剣を顕現させて臨戦態勢をとっていたので仙一郎が叫ぶ。
「フレイラ!」
「分かってます!傷つけたりしませんよ。」
 切っ先を向け、じりじりと間合いを詰めて来る老人を睨みいつでも応戦出来る体制を整える。気づけば展示室には三人以外はだれも居らず、大きな音がしたというのに警備員が現れる気配もなかった。静まり返った室内に張りつめた空気が流れる。
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