借金返済ファンタジー チートスキル 全部盛りでお願いします!

桃川鈴加

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「リリィ最強説」

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朝日が霧深い静寂の山脈を照らす中、レオネス荘では今日もいつものように借金仲間たちの一日が始まっていた。標高800メートルの山中に建つこの豪邸は、レオの【神器創造】スキルによって建てられた完全自給自足の生活拠点だ。

「おはようございます、皆さん」

優雅な足音と共に、エリカが階段を降りてくる。元貴族令嬢らしい完璧な身のこなしは、借金35億セルンを抱えた今でも変わらなかった。彼女の金髪が朝日に輝き、深いブルーのドレスが品格を演出している。

リビングでは、すでにメリサが電卓を叩きながら家計簿をつけていた。元魔王軍四天王の彼女は、今や借金仲間チームの経理担当として完璧な仕事ぶりを発揮している。黒いボブカットの髪を耳にかけながら、鋭い視線で数字を追っていく。

「おはよう。今月の支出を計算していたのだけれど...」メリサは眉間にシワを寄せて振り返る。「カイロスの茶葉代が予算オーバーよ。月3万セルンの予定が5万2千セルンって何事?」

「すまない...」

人間体のカイロスが申し訳なさそうに頭を下げる。銀髪に金色の瞳を持つ美男子の姿だが、その表情は完全に借金に悩む庶民のそれだった。推定5000歳の元竜王候補も、借金の前では一人の男に過ぎない。

「最近、竜の血が騒いでいるのか、どうしても高級茶葉でないと落ち着かなくて...元竜王としてのプライドが...」

「まったく、元王族のプライドが抜けてないわね」メリサはため息をついた。「でも借金仲間の健康状態は大切だから、今回は見逃してあげる。ただし来月からは予算内に収めなさい」

「ありがとう、メリサ。竜王の誇りにかけて、必ず予算を守る」

カイロスが深々と頭を下げる姿に、エリカが苦笑いを浮かべる。

「元王族と元四天王がお金の話で頭を下げ合うなんて...この光景に慣れるまで時間がかかりましたわ」

その時、ダイニングから美味しそうな匂いが漂ってくる。和洋中華が混じり合った、食欲をそそる香りだった。

「レオお兄ちゃんが朝ごはん作ってくれてるのじゃ!」

リリィが嬉しそうに駆け回っている。銀髪のツインテールを揺らしながら、8歳の少女らしい無邪気さを振りまいていた。白いワンピースは【神器創造】で作られたもので、汚れることも破れることもない特別製だ。

「よっしゃ、今日は【料理マスター】で和洋中華のフルコース作ったで!」

レオがエプロン姿で現れる。借金999億セルンを抱えた32歳の元ブラック企業営業マンとは思えないほど、料理に関しては完璧な手際を見せていた。関西弁混じりの関東弁で話しながら、得意げな表情を浮かべている。

「カイロスには高級茶葉の代わりに最高級の煎茶を入れてやったからな。【料理マスター】のスキルで茶葉の旨味を最大限に引き出したで」

「おお、これは...!」カイロスの目が輝く。「竜王の舌が認める味だ。5000年生きてきたが、これほど美味い茶は久しぶりだ」

「借金999億セルンの男が作る朝食にしては豪華すぎますわね」エリカが苦笑する。「でも【料理マスター】のスキルがあれば食材費は最小限に抑えられますから、家計的には助かりますわ」

そこへリューナも現れた。ダークエルフ族長の彼女は、どう見ても20代前半の美女だが、実際は150歳だ。借金15億セルンを背負いながらも、族長としての威厳を失わない立ち振る舞いを見せている。

「族長としても、この豪華な食事は士気向上に繋がるな。村にいた頃は、麦粥ばかりだったからな」

「まったく、みんな借金のことを考えると暗くなるのに、食事の時だけは明るくなるのね」メリサが呆れたように言う。

「仲間と食べる飯は最高やで!」レオが豪快に笑う。「借金があっても、仲間がおったら何とかなる!」

6人が食卓を囲む光景は、まさに家族そのものだった。借金の額も種族も年齢もバラバラだが、確かな絆で結ばれている。



リリィの新しいブーム

朝食が終わると、リリィがソワソワし始めた。金色の瞳を輝かせながら、カイロスを見上げている。

「カイロスお兄ちゃん、今日も一緒に飛ぼう!」

最近のリリィのマイブームは、カイロスの巨大ドラゴン形態の背中に乗って空を飛び回ることだった。カイロスも最初は戸惑っていたが、今では「妹を喜ばせる兄」として積極的に付き合っている。

「もちろんだ、リリィ。今日はどこに行きたい?」

カイロスの表情が優しくなる。元竜王候補として孤独だった彼にとって、リリィの純粋な信頼は何よりも大切なものだった。

「雲の上!雲の上まで飛んでみたいのじゃ!鳥さんたちと同じ高さまで行ってみたいの!」

「よし、しっかりつかまっているんだぞ」

カイロスが50センチの小型サイズから10メートルの巨大ドラゴンに変身する。銀色の鱗が朝日に輝き、威厳のある姿は確かに元竜王候補の風格を感じさせる。翼を大きく広げると、その迫力は圧倒的だった。

「わー!やっぱりカッコいいのじゃ!」

リリィがカイロスの背中に飛び乗ると、二人は空高く舞い上がっていく。カイロスの飛行技術は完璧で、リリィを危険にさらすことなく、滑らかに上昇していく。

残された4人は、微笑ましくその光景を見上げていた。

「リリィちゃん、本当に楽しそうですわね」エリカが呟く。「あの子の笑顔を見ていると、私たちも幸せな気持ちになりますわ」

「ああ、あの子が笑ってるのを見てると、借金のことも忘れそうになる」レオも穏やかな表情だ。「999億なんて数字、どうでもよくなるわ」

その時、空から声が聞こえてきた。

「みんなー!見て見て!すっごく高いところまで来たのじゃ!」

リリィの声が風に乗って響いてくる。見上げると、カイロスは雲の高さまで上昇しており、小さな点のようになっていた。
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