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桃川鈴加

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異変

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村の入り口に到着すると、まず最初に気づいたのは門番がいないことだった。

「おかしい...いつもなら門番のジジイがいるはずなんだが...」

リューナが首をかしげる。

「あ、でも俺が設置した『怪しいやつ自動迎撃クン』があるから大丈夫だろ」

レオが指差す先には、彼が以前に設置した自動防衛装置がある。近づく者の敵意を自動判定し、危険な相手を排除するシステムだ。

『レオ様一行を確認。通行を許可します。ご苦労様でした』

機械的な音声が響く。

「相変わらず、レオさんの発明は便利ですわね」

エリカが感心する。

「でも門番がいないのは気になるわね...」

メリサが不安そうに呟く。

村の中に入った一行は、言葉を失った。

以前は木の上の小さな家や、森と調和した質素な住まいが点在していたはずの村が、完全に変貌していた。

「...何だこれは」

リューナの声が震えている。

眼前に広がるのは、豪邸の立ち並ぶ高級住宅街だった。プール付きの大理石の邸宅、庭には噴水、そして至る所にゴージャスな装飾が施されている。まるで高級リゾート地のような豪華さだ。

「わあ、お城みたいなお家がいっぱいなのじゃ!」

リリィは素直に喜んでいるが、大人たちの表情は複雑だ。

「この豪奢さ...まるで竜王の宮殿のようだ」

カイロスが呟く。竜族の宮殿と比較するほどの豪華さということだ。

「建築費だけで数十億セルンはかかってるわね...どこからこんな資金が?」

メリサが計算機のように頭を働かせている。

「まさか人間に支配されて、土地を奪われたのでは...」

エリカが心配そうに言う。

「いや、違う。これはダークエルフが建てた建物だ。でも一体なぜ...」

リューナは建築様式を見て、確実にダークエルフの手によるものだと判断する。しかし、その理由がわからずに困惑していた。



最長老ばあばとの再会

心配になった一行は、村で最も尊敬される最長老ばあばの家へ急いだ。

以前は森の奥の静かな小屋だったはずが...

「...嘘だろ」

レオの口からは、思わずそんな言葉が漏れた。

目の前にあるのは、リゾート地のような白亜の大豪邸だった。プールサイドには高級なパラソルが立ち並び、庭には南国の植物が植えられている。

「この建築費...3億セルンは軽く超えてるわね」

メリサの声も震えている。

「ばあば...一体何が...」

リューナが呟く。

豪邸のプールサイドで、最長老ばあばがビーチチェアに寝そべって人間の恋愛小説を読んでいる。横には高級フルーツのトロピカルジュースが置かれていた。

「あら~、リューナちゃん帰ってきたのね~。レオ様もお疲れ様~」

のんびりとした口調で、ばあばが振り返る。

「ばあば!何ですかこの豪邸は!一体何があったんですか!」

リューナが血相を変えて詰め寄る。

「あら、知らないの?エリクサーリーフのおかげよ~。あれが飛ぶように売れてね~」

「エリクサーリーフ?」

レオが首をかしげると、【万能解析】で記憶が蘇った。以前、村の畑の土壌改良をした時に【植物操作】と【生命創造】を組み合わせて作った特殊な薬草のことだった。

「あ!あの時、村の人たちを助けようと思って...」

「あれがね~、『伝説級万能薬草エリクサーリーフ』として、とんでもない値段で売れたのよ~」

ばあばの言葉に、メリサが身を乗り出す。

「どのくらいの値段で?」

「1株1億セルンよ~。レオ様が10株植えてくれたから...」

「じゅ、10億!?」

レオが驚愕の声を上げる。

「全部で1000億セルンになったの~」

「1000億!?!?」

全員が絶句した。

「せ、1000億って...俺の借金999億じゃん!ちょっと待てよ、そんなに高値で売れるんだったら、俺の借金返済できたんじゃねーか!」

レオがその場に膝から崩れ落ちる。

「今からでも...今からでもエリクサーリーフを...」

借金完済の可能性が目の前にあったことを知り、レオは大きなショックを受けていた。

「レオ、落ち着け」

カイロスが肩に手を置く。

「確かに計算上は借金完済可能だったわね...」

メリサも複雑な表情だ。

最長老ばあばが村を案内してくれることになった。しかし、そこで見たのは働く意欲を完全に失った村人たちの姿だった。

道端でハンモックに寝そべってフルーツを食べているダークエルフたち。以前は畑仕事や狩りをしていた勤勉な村人たちが、皆だらけ切っている。

「あ~、今日も良い天気だな~。働く必要ないから楽だ~」

「金があるって素晴らしいよな~。もう一生働かなくても生きていける~」

「勉強?めんどくさーい。お金があるから勉強しなくても大丈夫でしょ~」

子供たちまでもが、向学心を失っている。

「...」

リューナの顔が徐々に険しくなっていく。

「みんな、楽しそうなのじゃ?」

リリィは純粋にそう思っているが、大人たちは事態の深刻さを理解していた。

「これは...経済学的に見ると危険な状態ね」

メリサが分析する。

「働かずにお金だけあっても、技術や知識は育たないですわ」

エリカも憂慮している。

そんな中、村人たちがレオに群がってきた。

「レオ様!また万能薬草『エリクサーリーフ』を作ってくれ!」

「村人全員に豪邸を建てたらすっからかんになったんだ!」

「でも万能薬草『エリクサーリーフ』があれば、生涯働かずに済む!」

「お願いします!たった10株でいいんです!」

「え、でも...」

レオが村人たちに囲まれて困惑している。

「レオ様~!お願いします~!」

村人たちの哀願の声が響く。
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