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第3章 王立ルミナス学院 2年目
第24話 剣を振るう心得
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夕暮れの光が、王立ルミナス学院の武術場を淡く染めていた。
石畳の演習場には、冷たい風が吹き抜け、剣の金属音が遠くから微かに響いている。
クラリス・ヴェルディアは、訓練用の軽装に身を包み、剣を握っていた。
その目は真剣で、昼間の講堂で聞いた「指揮官としての責任」が、まだ胸の奥に残っていた。
「来たわね」
レイナ・ヴァルシュタインが、銀の鎧の上に深紅のマントを羽織りながら現れた。
その姿は、騎士団副団長としての威厳と、教官としての厳しさを併せ持っていた。
「課外演習のことは聞いているわ。上に立つものとして、実力が伴っていないと数字だけでは、誰もついてこないということを肝に銘じなさい」
レイナは、腰の剣を抜きながら言った。
「自分の身だけではだめよ。みんなを守るためには、時に自分から攻めれないといけない」
クラリスは、木剣を握り直した。
「お願いします。私は、選ばれたものとして、自分だけじゃなく、他の人の希望となりたい」
レイナは頷き、構えを取った。
「まずは、基本の一太刀。踏み込み、重心、そして“迷いのない線”を描くこと」
クラリスは、言われた通りに動こうとするが、剣先がわずかに揺れる。
「力が入りすぎてる。剣は、押しつけるものじゃない。導くのよ」
何度か繰り返すうちに、クラリスの動きが少しずつ滑らかになっていく。
踏み込みの音が、石畳に響く。
「よし。次は、連撃。攻めの型は、流れを止めないことが大事。止まれば、相手に主導権を渡す」
クラリスは、連続した動きを試みる。その動きはまだぎこちない。それでも少しずつ動きが洗礼されていく
剣が空を切り、風を裂く。その音は鋭さを増していく。
「クラリス」
レイナが、剣を下ろして言った。
「あなたの剣は、まだまだ未熟。でも、迷いが減ってきた。それは、君が無心で剣を振るえるようになってきた証よ」
クラリスは少し息を整えつつ、再び動き始める。
レイナは、満足げに微笑んだ。
「いい動きね。一つだけ、この剣を使うときの心得を教えておくわ」
「心得?」
動きをやめ、息を切らしながらクラリスは尋ねた。
「ええ。私の師匠の教えではあるのだけど、『相打ちになる覚悟で前に出ろ』よ」
「相打ち?でもそれだと自分もやられてませんか?」
「私も同じことを聞いたわ。でも実際師匠はそういう戦い方で、なぜか生き残っていたわ。それくらいの気概をもっていないといけないということだと思うわ」
「なるほど。気合が大事ということですね。続き、頑張ります」
夕暮れの空が、赤く染まり始めていた。
クラリスは、剣を胸元に構え、静かに目を閉じた。
(私は、数字だけじゃない。私の剣が、それを証明する)
そして、訓練は続いていった。
剣の音が、夕空に響きながら――。
*
夜の帳が降り、寮棟は静けさに包まれていた。
廊下の灯りは柔らかく、窓の外には星々が瞬いている。
クラリスは、自室の机に教材を並べながら、ふと懐中時計に目を落とした。
今日一日の重みを静かに刻んでいる。
(授業、演習の説明、剣術訓練……今日は、責任ばかりが増えた気がする。でも…)
そのとき、扉の外から控えめなノック音が響いた。
「クラリス姉様……今、少しだけいいですか?」
セレナの声だった。
クラリスは微笑みながら扉を開ける。
「もちろん。どうしたの?」
セレナは、王国史の教本を抱えて立っていた。
「明日の授業で、制度の始まりについて自分が調べたことを発表するんです。でも、うまくまとめられなくて……」
クラリスは、セレナを部屋に招き入れ、机の隣に椅子を引いた。
「じゃあ、一緒に考えましょう。制度の始まりは、第三次北方戦争の混乱期。そこから運命力理論が生まれて――」
「それは分かるんです。でも……どうして、そんな制度が必要だったのかなって。姉様は、どう思いますか?」
クラリスは、少しだけ言葉に詰まった。
昼間の授業で感じた葛藤が、胸の奥に残っていた。
「……きっと、誰かが“選ばれた者”に頼らなければならないほど、この国が不安定だったのよ。だから、数字に頼ることで秩序を作ろうとした。でもね、セレナ」
クラリスは、妹の目を見つめながら言った。
「数字だけじゃ、人は測れない。制度があるからこそ、私たちは“その外側”を見てあげなきゃいけないの」
セレナは、静かに頷いた。
「姉様は、制度の中で選ばれた人。でも、私……姉様みたいになれるかな」
クラリスは、セレナの手をそっと握った。
「あなたは、あなたでいいの。私が制度の象徴と言われているけど、あなたは人のそばに寄り添える希望になれる。それは、私にはできないことよ」
セレナは、少しだけ笑った。
「じゃあ、私も頑張ります。姉様の隣に立てるように」
クラリスは、そっと微笑み言葉をかける。
「運命は、誰にでも平等にあるものよ。でも、どう使うかは、自分次第。あなたの運命は、あなた自身で作ってこそよ」
その言葉に、セレナは深く頷いた。
そして、姉妹は並んで教本を開きながら、静かな夜を過ごしていった。
窓の外には、星々が優しく輝いていた。
石畳の演習場には、冷たい風が吹き抜け、剣の金属音が遠くから微かに響いている。
クラリス・ヴェルディアは、訓練用の軽装に身を包み、剣を握っていた。
その目は真剣で、昼間の講堂で聞いた「指揮官としての責任」が、まだ胸の奥に残っていた。
「来たわね」
レイナ・ヴァルシュタインが、銀の鎧の上に深紅のマントを羽織りながら現れた。
その姿は、騎士団副団長としての威厳と、教官としての厳しさを併せ持っていた。
「課外演習のことは聞いているわ。上に立つものとして、実力が伴っていないと数字だけでは、誰もついてこないということを肝に銘じなさい」
レイナは、腰の剣を抜きながら言った。
「自分の身だけではだめよ。みんなを守るためには、時に自分から攻めれないといけない」
クラリスは、木剣を握り直した。
「お願いします。私は、選ばれたものとして、自分だけじゃなく、他の人の希望となりたい」
レイナは頷き、構えを取った。
「まずは、基本の一太刀。踏み込み、重心、そして“迷いのない線”を描くこと」
クラリスは、言われた通りに動こうとするが、剣先がわずかに揺れる。
「力が入りすぎてる。剣は、押しつけるものじゃない。導くのよ」
何度か繰り返すうちに、クラリスの動きが少しずつ滑らかになっていく。
踏み込みの音が、石畳に響く。
「よし。次は、連撃。攻めの型は、流れを止めないことが大事。止まれば、相手に主導権を渡す」
クラリスは、連続した動きを試みる。その動きはまだぎこちない。それでも少しずつ動きが洗礼されていく
剣が空を切り、風を裂く。その音は鋭さを増していく。
「クラリス」
レイナが、剣を下ろして言った。
「あなたの剣は、まだまだ未熟。でも、迷いが減ってきた。それは、君が無心で剣を振るえるようになってきた証よ」
クラリスは少し息を整えつつ、再び動き始める。
レイナは、満足げに微笑んだ。
「いい動きね。一つだけ、この剣を使うときの心得を教えておくわ」
「心得?」
動きをやめ、息を切らしながらクラリスは尋ねた。
「ええ。私の師匠の教えではあるのだけど、『相打ちになる覚悟で前に出ろ』よ」
「相打ち?でもそれだと自分もやられてませんか?」
「私も同じことを聞いたわ。でも実際師匠はそういう戦い方で、なぜか生き残っていたわ。それくらいの気概をもっていないといけないということだと思うわ」
「なるほど。気合が大事ということですね。続き、頑張ります」
夕暮れの空が、赤く染まり始めていた。
クラリスは、剣を胸元に構え、静かに目を閉じた。
(私は、数字だけじゃない。私の剣が、それを証明する)
そして、訓練は続いていった。
剣の音が、夕空に響きながら――。
*
夜の帳が降り、寮棟は静けさに包まれていた。
廊下の灯りは柔らかく、窓の外には星々が瞬いている。
クラリスは、自室の机に教材を並べながら、ふと懐中時計に目を落とした。
今日一日の重みを静かに刻んでいる。
(授業、演習の説明、剣術訓練……今日は、責任ばかりが増えた気がする。でも…)
そのとき、扉の外から控えめなノック音が響いた。
「クラリス姉様……今、少しだけいいですか?」
セレナの声だった。
クラリスは微笑みながら扉を開ける。
「もちろん。どうしたの?」
セレナは、王国史の教本を抱えて立っていた。
「明日の授業で、制度の始まりについて自分が調べたことを発表するんです。でも、うまくまとめられなくて……」
クラリスは、セレナを部屋に招き入れ、机の隣に椅子を引いた。
「じゃあ、一緒に考えましょう。制度の始まりは、第三次北方戦争の混乱期。そこから運命力理論が生まれて――」
「それは分かるんです。でも……どうして、そんな制度が必要だったのかなって。姉様は、どう思いますか?」
クラリスは、少しだけ言葉に詰まった。
昼間の授業で感じた葛藤が、胸の奥に残っていた。
「……きっと、誰かが“選ばれた者”に頼らなければならないほど、この国が不安定だったのよ。だから、数字に頼ることで秩序を作ろうとした。でもね、セレナ」
クラリスは、妹の目を見つめながら言った。
「数字だけじゃ、人は測れない。制度があるからこそ、私たちは“その外側”を見てあげなきゃいけないの」
セレナは、静かに頷いた。
「姉様は、制度の中で選ばれた人。でも、私……姉様みたいになれるかな」
クラリスは、セレナの手をそっと握った。
「あなたは、あなたでいいの。私が制度の象徴と言われているけど、あなたは人のそばに寄り添える希望になれる。それは、私にはできないことよ」
セレナは、少しだけ笑った。
「じゃあ、私も頑張ります。姉様の隣に立てるように」
クラリスは、そっと微笑み言葉をかける。
「運命は、誰にでも平等にあるものよ。でも、どう使うかは、自分次第。あなたの運命は、あなた自身で作ってこそよ」
その言葉に、セレナは深く頷いた。
そして、姉妹は並んで教本を開きながら、静かな夜を過ごしていった。
窓の外には、星々が優しく輝いていた。
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