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第3章 王立ルミナス学院 2年目
第25話 隣に立てる人に
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廊下の窓から見える空は、少し霞んでいたが、確かに光が差し込んでいた。
寮の窓から差し込む陽光が白いカーテンを揺らし、部屋を明るくしている。
セレナは制服の襟を直し、鏡の前で髪を編んでいた。
彼女は数回深呼吸をした後、机の上の手紙に目を向ける。
それはクラリスから届いたものであった。
“セレナへ 明日はあなたの最初の試験ね。緊張するかもしれないけれど、あなたはちゃんと準備してきたわ。大切なのは、誰かと比べることじゃなくて、自分の言葉で答えること。あなたは、あなたのままでいいのよ。――クラリスより”
セレナは手紙を畳み、胸元にしまう。姉からの言葉だった。
窓の外では、中庭のチューリップが風によって揺れている。
扉の外から同級生が集合時間を知らせる。
「セレナさん、もうすぐ集合時間ですよ。行きましょう?」
「うん、ありがとう。……行こう」
セレナは制服を整え、筆記用具を鞄に入れて立ち上がる。
廊下の窓から見える空は少し霞んでいるが、光が差し込んでいた。
*
今日の教室は初夏の日差しが差し込む静かな場所であり、室内には緊張した雰囲気が漂っている。
セレナは筆記用紙の前で鉛筆を持ち、王国紋章入りの試験用紙を確認する。
出題内容は「運命力制度の誕生とその意義について自身の考えを述べよ」である。
他の生徒たちは答案作成を進めており、紙とペンの音が響いている。
セレナは問題文を見て思案し、過去の講堂で回答する姉の姿や、試験で高い成績を収める姉について考える。
その後、ユリウスから過去に受け取った言葉を思い出し、呼吸を整えて答案を書き始める。
「私は、制度があることは重要だと考えます。しかし、数値だけで人の価値を判断する点には慎重さが必要です。姉は高い運命力を有していますが、努力や人柄も評価すべきです。私は数字以外にも心を重視する姿勢を持ちたいと考えています。」
答案を書き終えた後、セレナは静かに鉛筆を置き、試験官の指示で用紙を提出して席を離れた。
*
試験が終わったその午後、セレナは長椅子にぐったりと座り込んでいた。
窓の外には初夏の陽射しが差し込み、ふわりとカーテンが揺れる。
「終わった…」
セレナから思わず小さくため息が漏れた。
緊張から解放されて肩の力が抜ける一方で、不思議と心は静かだった。
(あんな答案で良かったのかななんて不安もあるけど、自分の気持ちはちゃんと書けた気がする。)
そんなことをセレナが考えていると、扉がそっと開いた。
「セレナさん、少しよろしいですか?」
入ってきたのは王国史担当のエレナ先生だ。
彼女は微笑みながら、セレナの答案用紙を手にしていた。
「制度の意義について、『誰かの隣に立てる人になりたい』と書いた生徒は今までいませんでした。とても印象的でしたよ」
思わぬ言葉に、セレナの頬がほんのり赤くなる。
「あ、ありがとうございます……」
エレナ先生は優しくうなずいて部屋を出て行った。
ほっとしたのも束の間、今度は華やかな足音が響き、ユリウスが現れる。
「先生から聞いたよ。『誰かの隣に立てる人になりたい』って――素敵じゃないか」
突然の誉め言葉に、セレナは驚きつつモジモジと返事をした。
「私、中心に立つのは向いていないと思うんです。でも、誰かを支えたいという気持ちは本当で……」
ユリウスは柔らかく微笑む。
「国は、貴族だけでは成り立たない。側で支える人がいてこそ、国は動くものだよ」
その言葉が胸にじんわり染みて、セレナの中の迷いがひとつ消えていく。
控室に流れ込む初夏の風が、セレナの銀色の髪をそっと揺らした。
*
午後の講堂は、特別選抜クラスの生徒たちだけが集められ、静かに張り詰めた空気に包まれていた。
窓から差し込む初夏の光が、石造りの床に淡く広がっている。
クラリスは、前列の席に座りながら、手元の資料に目を通していた。
その表紙には、金の文字でこう記されている。
《課外演習班編成・指揮官任命通知》
壇上には、副学院長マティルダ・クローネと、新任教師エリオ・シュタインが並んでいた。
エリオは、冷静な口調で話し始める。
「皆さま、課外演習における班編成を発表いたします。各班には、特別選抜クラスの皆さまが指揮官として任命されます。班の構成は、能力・相性・制度的意義を考慮して決定されました」
クラリスは、わずかに眉を動かした。
(制度的意義……?)
エリオが資料を開き、読み上げる。
エリオは続ける。
「第1班――指揮官:レオニス・グランフェルド
第2班――指揮官:ルーク・ファルマス
第3班――指揮官:ミレーユ・クローディア
第4班――指揮官:ゼノ・ヴァルハルト
第5班――指揮官:カイ・アストレア」
エリオは続ける。
「第6班――指揮官:クラリス・ヴェルディア
班員:ロジーナ・エルス、エミール・グランツ、ナディア・ローレン、トーマス・ベルク」
クラリスは、思わず目を見開いた。
(ロジーナが……?)
隣に座っていたミレーユが、ひそひそと囁く。
「へぇ、ロジーナさんが同じ班なのね。補佐役ってところかしら?」
クラリスは、資料に目を戻しながら、胸の奥に小さな安堵を感じていた。
(よかった……彼女がいてくれるなら、きっとやりやすい)
「なお、演習では各班が異なる課題を与えられます。防衛、探索、交渉、資源管理など、実践的な内容となります。指揮官は、班の統率と成果に責任を持って行動してください」
クラリスは、資料の中に記された自分の班の構成を見つめながら、静かに息を整えた。
(私が、指揮官……飾りじゃないってところを、行動で示さなきゃ)
そのとき、レオニスが隣から声をかけてきた。
「君の班、なかなか良い人選だ。ロジーナがいるのは、君にとって心強いだろう」
クラリスは頷いた。
「ええ。彼女は、とても信頼できる人です」
レオニスは、わずかに微笑んだ。
「君がどう導くか、楽しみにしているよ」
そして、班編成の発表は静かに終わった。
*
夕暮れの王立ルミナス学院。
初夏のそよ風が回廊をくぐり抜けて、色とりどりのチューリップを優しく揺らしていた。
「やっと試験も終わったし……」
セレナは、重たい心を少しだけ軽くするように寮の階段を上っていく。
姉のクラリスと雑談をするため、彼女の部屋の前でそっと扉をノックした。
ただ、静まり返った廊下に返事はない。
もう一度強めに叩いてみても、やっぱり応答はなかった。
「クラリス様なら、班編成の発表後、武術場へ行かれましたよ」
通りすがりの使用人が声をかけてくれる。
「そうなんですね。ありがとうございます。」
セレナは慌ててお礼を告げると、扉の前でほんの少しだけ立ち止まった後、中庭へ向かうことにした。
茜色に染まる空の下、中庭のベンチに腰掛けたセレナは雲の流れをじっと眺めていた。
「私も、いつか…」
静かなつぶやきと共に、彼女は階段を降りてその場を後にした。
寮の窓から差し込む陽光が白いカーテンを揺らし、部屋を明るくしている。
セレナは制服の襟を直し、鏡の前で髪を編んでいた。
彼女は数回深呼吸をした後、机の上の手紙に目を向ける。
それはクラリスから届いたものであった。
“セレナへ 明日はあなたの最初の試験ね。緊張するかもしれないけれど、あなたはちゃんと準備してきたわ。大切なのは、誰かと比べることじゃなくて、自分の言葉で答えること。あなたは、あなたのままでいいのよ。――クラリスより”
セレナは手紙を畳み、胸元にしまう。姉からの言葉だった。
窓の外では、中庭のチューリップが風によって揺れている。
扉の外から同級生が集合時間を知らせる。
「セレナさん、もうすぐ集合時間ですよ。行きましょう?」
「うん、ありがとう。……行こう」
セレナは制服を整え、筆記用具を鞄に入れて立ち上がる。
廊下の窓から見える空は少し霞んでいるが、光が差し込んでいた。
*
今日の教室は初夏の日差しが差し込む静かな場所であり、室内には緊張した雰囲気が漂っている。
セレナは筆記用紙の前で鉛筆を持ち、王国紋章入りの試験用紙を確認する。
出題内容は「運命力制度の誕生とその意義について自身の考えを述べよ」である。
他の生徒たちは答案作成を進めており、紙とペンの音が響いている。
セレナは問題文を見て思案し、過去の講堂で回答する姉の姿や、試験で高い成績を収める姉について考える。
その後、ユリウスから過去に受け取った言葉を思い出し、呼吸を整えて答案を書き始める。
「私は、制度があることは重要だと考えます。しかし、数値だけで人の価値を判断する点には慎重さが必要です。姉は高い運命力を有していますが、努力や人柄も評価すべきです。私は数字以外にも心を重視する姿勢を持ちたいと考えています。」
答案を書き終えた後、セレナは静かに鉛筆を置き、試験官の指示で用紙を提出して席を離れた。
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試験が終わったその午後、セレナは長椅子にぐったりと座り込んでいた。
窓の外には初夏の陽射しが差し込み、ふわりとカーテンが揺れる。
「終わった…」
セレナから思わず小さくため息が漏れた。
緊張から解放されて肩の力が抜ける一方で、不思議と心は静かだった。
(あんな答案で良かったのかななんて不安もあるけど、自分の気持ちはちゃんと書けた気がする。)
そんなことをセレナが考えていると、扉がそっと開いた。
「セレナさん、少しよろしいですか?」
入ってきたのは王国史担当のエレナ先生だ。
彼女は微笑みながら、セレナの答案用紙を手にしていた。
「制度の意義について、『誰かの隣に立てる人になりたい』と書いた生徒は今までいませんでした。とても印象的でしたよ」
思わぬ言葉に、セレナの頬がほんのり赤くなる。
「あ、ありがとうございます……」
エレナ先生は優しくうなずいて部屋を出て行った。
ほっとしたのも束の間、今度は華やかな足音が響き、ユリウスが現れる。
「先生から聞いたよ。『誰かの隣に立てる人になりたい』って――素敵じゃないか」
突然の誉め言葉に、セレナは驚きつつモジモジと返事をした。
「私、中心に立つのは向いていないと思うんです。でも、誰かを支えたいという気持ちは本当で……」
ユリウスは柔らかく微笑む。
「国は、貴族だけでは成り立たない。側で支える人がいてこそ、国は動くものだよ」
その言葉が胸にじんわり染みて、セレナの中の迷いがひとつ消えていく。
控室に流れ込む初夏の風が、セレナの銀色の髪をそっと揺らした。
*
午後の講堂は、特別選抜クラスの生徒たちだけが集められ、静かに張り詰めた空気に包まれていた。
窓から差し込む初夏の光が、石造りの床に淡く広がっている。
クラリスは、前列の席に座りながら、手元の資料に目を通していた。
その表紙には、金の文字でこう記されている。
《課外演習班編成・指揮官任命通知》
壇上には、副学院長マティルダ・クローネと、新任教師エリオ・シュタインが並んでいた。
エリオは、冷静な口調で話し始める。
「皆さま、課外演習における班編成を発表いたします。各班には、特別選抜クラスの皆さまが指揮官として任命されます。班の構成は、能力・相性・制度的意義を考慮して決定されました」
クラリスは、わずかに眉を動かした。
(制度的意義……?)
エリオが資料を開き、読み上げる。
エリオは続ける。
「第1班――指揮官:レオニス・グランフェルド
第2班――指揮官:ルーク・ファルマス
第3班――指揮官:ミレーユ・クローディア
第4班――指揮官:ゼノ・ヴァルハルト
第5班――指揮官:カイ・アストレア」
エリオは続ける。
「第6班――指揮官:クラリス・ヴェルディア
班員:ロジーナ・エルス、エミール・グランツ、ナディア・ローレン、トーマス・ベルク」
クラリスは、思わず目を見開いた。
(ロジーナが……?)
隣に座っていたミレーユが、ひそひそと囁く。
「へぇ、ロジーナさんが同じ班なのね。補佐役ってところかしら?」
クラリスは、資料に目を戻しながら、胸の奥に小さな安堵を感じていた。
(よかった……彼女がいてくれるなら、きっとやりやすい)
「なお、演習では各班が異なる課題を与えられます。防衛、探索、交渉、資源管理など、実践的な内容となります。指揮官は、班の統率と成果に責任を持って行動してください」
クラリスは、資料の中に記された自分の班の構成を見つめながら、静かに息を整えた。
(私が、指揮官……飾りじゃないってところを、行動で示さなきゃ)
そのとき、レオニスが隣から声をかけてきた。
「君の班、なかなか良い人選だ。ロジーナがいるのは、君にとって心強いだろう」
クラリスは頷いた。
「ええ。彼女は、とても信頼できる人です」
レオニスは、わずかに微笑んだ。
「君がどう導くか、楽しみにしているよ」
そして、班編成の発表は静かに終わった。
*
夕暮れの王立ルミナス学院。
初夏のそよ風が回廊をくぐり抜けて、色とりどりのチューリップを優しく揺らしていた。
「やっと試験も終わったし……」
セレナは、重たい心を少しだけ軽くするように寮の階段を上っていく。
姉のクラリスと雑談をするため、彼女の部屋の前でそっと扉をノックした。
ただ、静まり返った廊下に返事はない。
もう一度強めに叩いてみても、やっぱり応答はなかった。
「クラリス様なら、班編成の発表後、武術場へ行かれましたよ」
通りすがりの使用人が声をかけてくれる。
「そうなんですね。ありがとうございます。」
セレナは慌ててお礼を告げると、扉の前でほんの少しだけ立ち止まった後、中庭へ向かうことにした。
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