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第5章 王立ルミナス学院 4年目
第50話 危うい光
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王立ルミナス学院・生徒会室。
窓から差し込む光が、円卓を淡く照らしている。
クラリスとロジーナの、二人分の席は空いている。
視察準備で別室にいるという。
重厚な扉が閉じられ、室内には静かな緊張が漂っていた。
白い石壁に掛けられた学院旗が、わずかな風に揺れる。
その下で、レオニス・グランフェルドは椅子に深く腰を下ろしていた。
無言で資料を指先で整えている。
白金の髪が春光を受けて淡く輝き、その横顔には冷徹な光が宿っている。
「農村視察の報告よ」
栗色の髪を揺らしながら、ミレーユ・クローディアが優雅に立ち上がる。
彼女は、机の中央に資料を置き、涼しい笑みを浮かべた。
「彼女、かなり熱心だったわ。制度の“負の側面”を強調、というか、悪いところを見つけたって興奮していたけど……正直、現実はもっと複雑よね」
その言葉に、ルークが鼻を鳴らした。
「負の側面?地方の農村なんて昔から貧しいだろ。制度がなかったら、もっと悲惨だったんじゃないのか」
ミレーユは肩をすくめ、唇に笑みを残したまま視線をレオニスに送る。
「私もそう思うけど、殿下の意見を聞きたいわ」
レオニスは、資料を机に置き、指先で軽く叩いた。
その音が、静かな室内に小さく響く。
「制度が始まってから、こうした問題が大きく取り上げられなかった理由は明白だ」
彼の声は低く、よく通る。
「マイナス面よりも、圧倒的にプラスの側面が強いからだ。王国にとっても、地方にとっても」
彼の瞳が鋭さを増す。
「農村部は制度以前から貧しかった。だが、制度によって高運者が王都に出て、良い生活を送れるようになった。そして、彼らは故郷にも還元する。それは農村にとっても利益だ」
一拍置いて、レオニスは視線を落とし、冷たい言葉を続けた。
「クラリスは、自分の意見が正しいと考えすぎている。その自分の意見にとって都合の良い事実しか受け入れていない」
室内に、重い沈黙が落ちた。
その言葉は、誰もが心の中で感じていた懸念を、鋭く突きつけるものだった。
カイが、静かに口を開いた。
「確かに、制度の恩恵は大きい。秩序を守るためには、多少の不満は避けられない」
彼の声は冷静だが、その奥にわずかな緊張があった。
ゼノは、腕を組んだまま短く言った。
「問題は、象徴がその不満を広めることだな」
ルークが、椅子に背を預けながら鼻を鳴らす。
「そうだな。クラリスが“制度は不完全”なんて言い出したら、王都どころか国中が騒ぐぞ」
レオニスは、視線をミレーユに向けた。
その瞳は、冷たい光を帯びている。
「象徴としての行動が暴走すれば、対策が必要だ。……ミレーユ、君に頼みたい」
ミレーユは、唇に指を添え、楽しげに笑った。
「ふふ、面白くなってきたわね。何をすればいいの?」
「クラリスをそれとなく誘導しろ」
レオニスの声は冷徹だった。
「次の二つの訪問を終えてから、報告をまとめて“学院公式の活動報告”として発表させる。ただし、聞く側はこちらで用意する。」
ミレーユは、椅子に軽く身を預け、唇に笑みを浮かべたまま頷いた。
「任せて。クラリスさんの活動を、もっと“素敵なもの”に見せてあげるわ。彼女もきっと乗ってくれる」
レオニスは、視線を窓の外に向けた。
風がカーテンを揺らし、学院の塔が遠くに見える。
(母上に報告に行くか)
その心の声は、誰にも届かない。
*
王宮の奥、重厚な扉に囲まれた一室。
厚手のカーテンが光を遮り、燭台の炎がわずかに揺れている。
赤いワインが、血のようにグラスの中で静かに揺れた。
エレオノーラ・グランフェルドは、金糸の刺繍が施された椅子に腰掛け、指先でグラスを回していた。
その瞳は、遠く王立ルミナス学院の塔を見下ろすように、冷たく光っている。
扉が静かに開き、レオニス・グランフェルドが姿を現した。
白金の髪が燭光を受けて淡く輝き、その横顔には冷徹な決意が宿っていた。
「母上」
レオニスは、深く一礼し、静かに言葉を続ける。
「クラリスの地方視察について、報告があります」
エレオノーラは、グラスを唇に運びながら、わずかに微笑んだ。
「ええ、知っているわ。農村で制度への疑問を示唆する発言をしたそうね」
その声は甘やかでありながら、氷の刃のように鋭かった。
レオニスは、資料を机に置き、冷静に答える。
「視察の目的は“制度の影響を自分の目で確かめること”。だが、彼女は制度の負の側面を強調しすぎている。象徴として危うい」
エレオノーラは、グラスを机に置き、ゆっくりと立ち上がった。
「危うい……そうね。制度の象徴が、制度に疑問を持つ。それは許されないわ」
レオニスは、わずかに視線を伏せ、低く言った。
「学院内では、彼女を誘導する策を講じています。次の視察を終えた後、報告をまとめて“公式の活動報告”として発表させ、それで満足してもらいます」
エレオノーラは、窓辺に歩み寄り、王都の灯りを見下ろした。
「それで秩序が守れるならいいけれど……クラリスは理想に偏りすぎている。都合の良い事実しか見ない。そういう人間は、時に国を揺るがす」
レオニスは、静かに頷いた。
「見張りはつけています。ある程度、見せたいものに誘導することも可能です」
その言葉に、エレオノーラの唇が冷たく歪んだ。
「そう。こちらでも一人つけているわ。さすがに若い女3人で行くのは心配だもの」
燭台の炎が、赤いワインの影を壁に映し出していた。
その影は、王国の未来に忍び寄る闇の形をしていた。
窓から差し込む光が、円卓を淡く照らしている。
クラリスとロジーナの、二人分の席は空いている。
視察準備で別室にいるという。
重厚な扉が閉じられ、室内には静かな緊張が漂っていた。
白い石壁に掛けられた学院旗が、わずかな風に揺れる。
その下で、レオニス・グランフェルドは椅子に深く腰を下ろしていた。
無言で資料を指先で整えている。
白金の髪が春光を受けて淡く輝き、その横顔には冷徹な光が宿っている。
「農村視察の報告よ」
栗色の髪を揺らしながら、ミレーユ・クローディアが優雅に立ち上がる。
彼女は、机の中央に資料を置き、涼しい笑みを浮かべた。
「彼女、かなり熱心だったわ。制度の“負の側面”を強調、というか、悪いところを見つけたって興奮していたけど……正直、現実はもっと複雑よね」
その言葉に、ルークが鼻を鳴らした。
「負の側面?地方の農村なんて昔から貧しいだろ。制度がなかったら、もっと悲惨だったんじゃないのか」
ミレーユは肩をすくめ、唇に笑みを残したまま視線をレオニスに送る。
「私もそう思うけど、殿下の意見を聞きたいわ」
レオニスは、資料を机に置き、指先で軽く叩いた。
その音が、静かな室内に小さく響く。
「制度が始まってから、こうした問題が大きく取り上げられなかった理由は明白だ」
彼の声は低く、よく通る。
「マイナス面よりも、圧倒的にプラスの側面が強いからだ。王国にとっても、地方にとっても」
彼の瞳が鋭さを増す。
「農村部は制度以前から貧しかった。だが、制度によって高運者が王都に出て、良い生活を送れるようになった。そして、彼らは故郷にも還元する。それは農村にとっても利益だ」
一拍置いて、レオニスは視線を落とし、冷たい言葉を続けた。
「クラリスは、自分の意見が正しいと考えすぎている。その自分の意見にとって都合の良い事実しか受け入れていない」
室内に、重い沈黙が落ちた。
その言葉は、誰もが心の中で感じていた懸念を、鋭く突きつけるものだった。
カイが、静かに口を開いた。
「確かに、制度の恩恵は大きい。秩序を守るためには、多少の不満は避けられない」
彼の声は冷静だが、その奥にわずかな緊張があった。
ゼノは、腕を組んだまま短く言った。
「問題は、象徴がその不満を広めることだな」
ルークが、椅子に背を預けながら鼻を鳴らす。
「そうだな。クラリスが“制度は不完全”なんて言い出したら、王都どころか国中が騒ぐぞ」
レオニスは、視線をミレーユに向けた。
その瞳は、冷たい光を帯びている。
「象徴としての行動が暴走すれば、対策が必要だ。……ミレーユ、君に頼みたい」
ミレーユは、唇に指を添え、楽しげに笑った。
「ふふ、面白くなってきたわね。何をすればいいの?」
「クラリスをそれとなく誘導しろ」
レオニスの声は冷徹だった。
「次の二つの訪問を終えてから、報告をまとめて“学院公式の活動報告”として発表させる。ただし、聞く側はこちらで用意する。」
ミレーユは、椅子に軽く身を預け、唇に笑みを浮かべたまま頷いた。
「任せて。クラリスさんの活動を、もっと“素敵なもの”に見せてあげるわ。彼女もきっと乗ってくれる」
レオニスは、視線を窓の外に向けた。
風がカーテンを揺らし、学院の塔が遠くに見える。
(母上に報告に行くか)
その心の声は、誰にも届かない。
*
王宮の奥、重厚な扉に囲まれた一室。
厚手のカーテンが光を遮り、燭台の炎がわずかに揺れている。
赤いワインが、血のようにグラスの中で静かに揺れた。
エレオノーラ・グランフェルドは、金糸の刺繍が施された椅子に腰掛け、指先でグラスを回していた。
その瞳は、遠く王立ルミナス学院の塔を見下ろすように、冷たく光っている。
扉が静かに開き、レオニス・グランフェルドが姿を現した。
白金の髪が燭光を受けて淡く輝き、その横顔には冷徹な決意が宿っていた。
「母上」
レオニスは、深く一礼し、静かに言葉を続ける。
「クラリスの地方視察について、報告があります」
エレオノーラは、グラスを唇に運びながら、わずかに微笑んだ。
「ええ、知っているわ。農村で制度への疑問を示唆する発言をしたそうね」
その声は甘やかでありながら、氷の刃のように鋭かった。
レオニスは、資料を机に置き、冷静に答える。
「視察の目的は“制度の影響を自分の目で確かめること”。だが、彼女は制度の負の側面を強調しすぎている。象徴として危うい」
エレオノーラは、グラスを机に置き、ゆっくりと立ち上がった。
「危うい……そうね。制度の象徴が、制度に疑問を持つ。それは許されないわ」
レオニスは、わずかに視線を伏せ、低く言った。
「学院内では、彼女を誘導する策を講じています。次の視察を終えた後、報告をまとめて“公式の活動報告”として発表させ、それで満足してもらいます」
エレオノーラは、窓辺に歩み寄り、王都の灯りを見下ろした。
「それで秩序が守れるならいいけれど……クラリスは理想に偏りすぎている。都合の良い事実しか見ない。そういう人間は、時に国を揺るがす」
レオニスは、静かに頷いた。
「見張りはつけています。ある程度、見せたいものに誘導することも可能です」
その言葉に、エレオノーラの唇が冷たく歪んだ。
「そう。こちらでも一人つけているわ。さすがに若い女3人で行くのは心配だもの」
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