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第6章 王立ルミナス学院 5年目
第68話 悪い噂
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夏の陽射しが、王立ルミナス学院の白い石壁を淡く照らしていた。
中庭では、濃い緑の木々が風に揺れ、遠くで蝉の声が響いている。
季節は巡り、クラリスは、静かな焦燥を胸に抱えたまま過ごしていた。
図書館の窓辺に座るクラリスの指先が、分厚い本のページをめくる。
革張りの背表紙は古びていて、何度も読み返した跡が残っている。
だが、そこに記された言葉は、何度読んでも同じだった。
「制度の基盤を築いた英雄」「王国を守った剣」――
どれも、授業で習ったことと変わらない。
肝心なこと――剣士が語った「魔法」「代償」「英雄の失踪」については、影も形もない。
クラリスは、ページを閉じ、深く息を吐いた。
(……やっぱり、何も出てこない)
胸の奥で、もどかしさが渦を巻く。
この話を、セレナやロジーナ、師匠に相談したい気持ちはある。
けれど――内容が内容なだけに、軽々しく口にできるものではない。
そもそも荒唐無稽な話過ぎて、信じてもらえないだろう。
窓の外では、夏の光がきらめき、青空がどこまでも広がっている。
「魔法、英雄、代償……どれも霧の中。でも――必ず突き止める」
小さな声が、静かな図書館に溶けて消える。
夏の光が差し込む窓辺で、銀髪が淡く揺れる。
(諦めない。絶対に)
*
生徒会室には、夏の光が斜めに差し込む。
円形の会議卓の上に整然と並べられた資料を淡く照らしていた。
窓の外では、青空に白い雲が浮かび、遠くで蝉の声が響いている。
クラリスは、副会長として定位置に座り、銀髪を整えながら資料に目を落とした。
「――来年は、三年に一度の学院祭だ」
会議卓の中央に立つレオニスの声が、静かな空気を切り裂いた。
「王族や貴族、学院OB、そして王都の人々が集まる。学院の威信を示す場になるだろう」
レオニスの言葉に、室内の空気がわずかに引き締まる。
ミレーユが、涼しい笑みを浮かべながら口を開いた。
「でも、最近王都で噂になっていること、知ってる?――治安が少し悪くなっているって話」
その声は軽やかだが、含みを帯びていた。
「確かに聞いた」
カイが資料をめくりながら頷く。
「制度の信頼を揺るがすような噂も出始めている。学院祭は、その不安を払拭する場にすべきだ」
「じゃあ、派手な模擬戦でもやるか?」
ルークが腕を組み、にやりと笑う。
「剣を振るって見せれば、みんな安心するだろ」
「それも悪くないけど――もっと分かりやすい方法があるわ」
ミレーユが、唇に指を添え、意味深な笑みを浮かべる。
「学院祭の場で、運命力の測定を公開でやるのよ。制度の正しさを、数字で示すの」
一瞬、室内に沈黙が落ちた。
だが、次の瞬間――
「面白い」
「確かに効果的だ」
賛同の声が次々と上がる。
クラリスは、静かにその言葉を聞いていた。
胸の奥で、別の思いが渦を巻く。
(運命力測定……装置を近くで見られる。王宮の管理下にある装置を、学院祭なら――)
「異論はないな?」
レオニスの視線が、会議卓を一巡する。
クラリスは、わずかに微笑み、頷いた。
「ありません」
その声は、落ち着いていたが、胸の奥には小さな炎が灯っていた。
(この機会を逃すわけにはいかない)
「では、各自準備は少しずつ進めていけ。今日はここまでだ」
レオニスの言葉で、会議は締めくくられた。
クラリスは、資料を閉じながら、心の奥で静かに決意を固めていた。
(学院祭まであと半年――必ず、装置の秘密を掴む)
*
生徒会室の重厚な扉が静かに閉じられた。
会議を終えたクラリスは、資料を抱えたまま、長い回廊をゆっくりと歩いていた。
先ほどの会議で耳にした言葉が脳裏をよぎる。
「治安が悪くなっている」――その噂。
(最近、学業と生徒会で忙しくて、王都を見ていなかったな)
学院の外の世界――制度がどう受け止められているのか、王都の空気を肌で感じたい。
クラリスは、足を止め、窓辺に視線を向けた。
青空の下、遠くに王都の塔が霞んで見える。
(セレナやロジーナを誘うのは……危ないかもしれない)
二人を危険にさらすわけにはいかない。
なら――
クラリスの唇に、わずかな笑みが浮かんだ。
(カイとルークなら、頼りになる)
(学院祭の準備もあるけれど……今のうちに、王都を見ておきたい)
クラリスは、静かに歩き出す。
石畳に響く足音が、決意のリズムを刻んでいた。
(二人なら、きっと断らない――はず)
夏の光が、銀髪を淡く揺らしながら、クラリスの背を押していた。
中庭では、濃い緑の木々が風に揺れ、遠くで蝉の声が響いている。
季節は巡り、クラリスは、静かな焦燥を胸に抱えたまま過ごしていた。
図書館の窓辺に座るクラリスの指先が、分厚い本のページをめくる。
革張りの背表紙は古びていて、何度も読み返した跡が残っている。
だが、そこに記された言葉は、何度読んでも同じだった。
「制度の基盤を築いた英雄」「王国を守った剣」――
どれも、授業で習ったことと変わらない。
肝心なこと――剣士が語った「魔法」「代償」「英雄の失踪」については、影も形もない。
クラリスは、ページを閉じ、深く息を吐いた。
(……やっぱり、何も出てこない)
胸の奥で、もどかしさが渦を巻く。
この話を、セレナやロジーナ、師匠に相談したい気持ちはある。
けれど――内容が内容なだけに、軽々しく口にできるものではない。
そもそも荒唐無稽な話過ぎて、信じてもらえないだろう。
窓の外では、夏の光がきらめき、青空がどこまでも広がっている。
「魔法、英雄、代償……どれも霧の中。でも――必ず突き止める」
小さな声が、静かな図書館に溶けて消える。
夏の光が差し込む窓辺で、銀髪が淡く揺れる。
(諦めない。絶対に)
*
生徒会室には、夏の光が斜めに差し込む。
円形の会議卓の上に整然と並べられた資料を淡く照らしていた。
窓の外では、青空に白い雲が浮かび、遠くで蝉の声が響いている。
クラリスは、副会長として定位置に座り、銀髪を整えながら資料に目を落とした。
「――来年は、三年に一度の学院祭だ」
会議卓の中央に立つレオニスの声が、静かな空気を切り裂いた。
「王族や貴族、学院OB、そして王都の人々が集まる。学院の威信を示す場になるだろう」
レオニスの言葉に、室内の空気がわずかに引き締まる。
ミレーユが、涼しい笑みを浮かべながら口を開いた。
「でも、最近王都で噂になっていること、知ってる?――治安が少し悪くなっているって話」
その声は軽やかだが、含みを帯びていた。
「確かに聞いた」
カイが資料をめくりながら頷く。
「制度の信頼を揺るがすような噂も出始めている。学院祭は、その不安を払拭する場にすべきだ」
「じゃあ、派手な模擬戦でもやるか?」
ルークが腕を組み、にやりと笑う。
「剣を振るって見せれば、みんな安心するだろ」
「それも悪くないけど――もっと分かりやすい方法があるわ」
ミレーユが、唇に指を添え、意味深な笑みを浮かべる。
「学院祭の場で、運命力の測定を公開でやるのよ。制度の正しさを、数字で示すの」
一瞬、室内に沈黙が落ちた。
だが、次の瞬間――
「面白い」
「確かに効果的だ」
賛同の声が次々と上がる。
クラリスは、静かにその言葉を聞いていた。
胸の奥で、別の思いが渦を巻く。
(運命力測定……装置を近くで見られる。王宮の管理下にある装置を、学院祭なら――)
「異論はないな?」
レオニスの視線が、会議卓を一巡する。
クラリスは、わずかに微笑み、頷いた。
「ありません」
その声は、落ち着いていたが、胸の奥には小さな炎が灯っていた。
(この機会を逃すわけにはいかない)
「では、各自準備は少しずつ進めていけ。今日はここまでだ」
レオニスの言葉で、会議は締めくくられた。
クラリスは、資料を閉じながら、心の奥で静かに決意を固めていた。
(学院祭まであと半年――必ず、装置の秘密を掴む)
*
生徒会室の重厚な扉が静かに閉じられた。
会議を終えたクラリスは、資料を抱えたまま、長い回廊をゆっくりと歩いていた。
先ほどの会議で耳にした言葉が脳裏をよぎる。
「治安が悪くなっている」――その噂。
(最近、学業と生徒会で忙しくて、王都を見ていなかったな)
学院の外の世界――制度がどう受け止められているのか、王都の空気を肌で感じたい。
クラリスは、足を止め、窓辺に視線を向けた。
青空の下、遠くに王都の塔が霞んで見える。
(セレナやロジーナを誘うのは……危ないかもしれない)
二人を危険にさらすわけにはいかない。
なら――
クラリスの唇に、わずかな笑みが浮かんだ。
(カイとルークなら、頼りになる)
(学院祭の準備もあるけれど……今のうちに、王都を見ておきたい)
クラリスは、静かに歩き出す。
石畳に響く足音が、決意のリズムを刻んでいた。
(二人なら、きっと断らない――はず)
夏の光が、銀髪を淡く揺らしながら、クラリスの背を押していた。
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