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第6章 王立ルミナス学院 5年目
第69話 反制度組織『UNLUX』
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王都の街並みは、夏の陽射しに包まれていた。
白い石畳が光を反射し、遠くで鐘の音が静かに響く。
市場では人々の声が飛び交い、香辛料や果物の匂いが風に乗って流れてくる。
クラリスは、学院の門を抜けながら深く息を吸い込んだ。
(……久しぶりの王都。治安が悪化しているって噂、本当なのかしら)
隣には、冷静な表情で歩くカイと、腕を組んで退屈そうにしているルーク。
「で、なんで俺たちが付き合わされてるんだ?」
ルークがぼやくと、カイが淡々と答える。
「学院祭の準備のためにも、王都の空気を知っておく必要がある。合理的だ」
そのやり取りに、クラリスは小さく笑みを浮かべた。
「二人とも、ありがとう。すぐ終わるから」
その瞬間――背後から軽やかな声が響いた。
「ふふ、面白そうなことが起きそうだから、私もついてきちゃった♪」
振り返ると、栗色の髪を揺らしながらミレーユが立っていた。
涼しい笑みを浮かべ、まるで散歩にでも来たかのような軽やかさ。
「ミレーユ……どうして?」
クラリスが問いかけると、彼女は肩をすくめて答える。
「だって、あなたが行くのよ?退屈な学院より、ずっと面白そうじゃない」
ルークが呆れたように鼻を鳴らす。
「お前、ほんと自由だな」
ミレーユは、楽しげに笑いながらクラリスの隣に並んだ。
「さあ、案内してちょうだい。王都の“今”を見に行きましょう」
クラリスは、胸の奥にわずかなざわめきを覚えながら、視線を前に向けた。
(火のないところに煙は立たない――何かあるはず)
そして、4人は王都の賑わう通りへと歩みを進めた。
*
王都の通りを歩いていたクラリスは、ふと足を止めた。
視線の先――石壁に貼られた一枚の張り紙が、夏の光を受けて揺れている。
大きく書かれた文字は、黒く鋭い筆致でこう記されていた。
『UNLUX』
『運命に頼らない。自由な社会を目指す』
クラリスは、無意識に近づき、指先で紙の端をなぞった。
(……運命に頼らない?自由な社会?)
その言葉は、かつての自分なら胸を打っただろう。
だが――今は違う。
(昔なら、何も考えずに賛同していたかもしれない。でも……今は冷静に判断できる)
「なにそれ、面白いじゃない」
背後から軽やかな声が響く。ミレーユだ。
彼女はクラリスの肩越しに張り紙を覗き込み、唇に笑みを浮かべる。
「なんかクラリスが好きそうな組織ね。もしかして、あなたに関係してるんじゃない?」
クラリスは、即座に首を振った。
「無関係よ」
声は落ち着いていたが、胸の奥で小さなざわめきが広がる。
ルークが、腕を組んで張り紙を見上げる。
「UNLUX……なんだこれ?なんかの宣伝か?怪しいな」
クラリスは、視線を張り紙に戻しながら呟いた。
「……なんか危うい気がする」
カイが、冷静な声で情報を補足する。
「最近、急速に勢力を伸ばしている反制度団体らしい。創設者やメンバーは不明。王都でも噂になっている」
ルークが鼻を鳴らす。
「なるほどな。治安悪化の噂、これが原因かもな。でも騎士団が何とかするだろ」
クラリスは、張り紙から視線を外し、胸の奥で小さく息を吐いた。
(……制度を否定する声が、こんな形で広がっているなんて)
*
夕暮れ。
王都の街並みに淡い光を落としていた。
市場の喧騒も少しずつ静まり、石畳に長い影が伸びていく。
クラリスは、学院へ戻る道を歩きながら、ふと問いかけた。
「……今日見た中で、何か気になることはあった?」
ミレーユは、肩をすくめて笑う。
「特にはないわね。何も変わらないわ。張り紙以外は、退屈なほど普通だったわ」
ルークも、腕を組んだまま鼻を鳴らす。
「俺もだな。騎士団が見回ってるし、変な感じはしなかった」
クラリスは、二人の言葉に小さく頷き、視線をカイに向ける。
「カイは?」
カイは、少しだけ歩みを緩め、静かな声で答えた。
「……雰囲気が違った」
クラリスは眉をひそめる。
「雰囲気?」
「前はもっと活気があった。それでいて、秩序も感じられた。王都らしい気品があったんだ」
カイの瞳が、遠くの街灯を映す。
「でも今は……そうだな、言葉を選ばずに言うと、品がない。そんな印象を受けた」
クラリスは、胸の奥に冷たいものが広がるのを感じた。
(……制度への不満が、こんな形で表れているの?)
その時――
「……待て」
ルークが突然立ち止まった。
クラリスは驚いて振り返る。
「ルーク?」
周囲を見渡すと、異様な静けさが広がっていた。
路地裏でもないのに、人影が消えている。
さっきまで賑わっていた通りが、まるで人払いされたかのように――音がない。
クラリスの心臓が、強く脈打った。
「……何、この感じ」
ルークは低く呟く。
「何だこの気配……王都で感じていいものじゃない」
彼は、剣の柄に手をかけながら、仲間たちに視線を送る。
「合図したら学院まで走るぞ。……3、2、1!」
その瞬間、4人は一斉に駆け出した。
石畳を蹴る足音が、静寂を切り裂く。
クラリスも走りながら、背後に漂う異様な気配を感じ取った。
(……何かが、追ってきている?)
胸の奥で、冷たい恐怖が膨らむ。
だが、振り返る余裕はない。
ただ――走る。
学院まで、わき目も振らずに。
*
4人は、息を切らしながら学院の門へと駆け込む。
胸の奥で脈打つ鼓動が、耳にまで響いてくる。
クラリスは、門をくぐった瞬間、ようやく足を止めた。
冷たい風が頬を撫で、汗に濡れた髪を揺らす。
「……はぁ、はぁ……何だったの、今の……」
ミレーユは、肩で息をしながらも、まだ笑みを崩さない。
「まるで追いかけられてるみたいだったわね……でも、何も見えなかった」
ルークは、剣の柄に手をかけたまま、鋭い視線を王都の方へ向ける。
「いや……何かいた。気配だけじゃない。あれは――獣だ」
クラリスの胸に、冷たいものが走る。
(獣……?まさか……)
彼女は、ゆっくりと振り返った。
学院の門の向こう、遠くに霞む王都の影。
その暗がりの中――一瞬だけ、何かが動いた。
街灯の光を反射する、異様に光る瞳。
そして、闇に溶ける黒い影。
その姿は、あの森で見た獣と――酷似していた。
クラリスは、息を呑む。
(……どうして、王都に?)
だが、次の瞬間には、その影は消えていた。
まるで、最初から何もなかったかのように。
白い石畳が光を反射し、遠くで鐘の音が静かに響く。
市場では人々の声が飛び交い、香辛料や果物の匂いが風に乗って流れてくる。
クラリスは、学院の門を抜けながら深く息を吸い込んだ。
(……久しぶりの王都。治安が悪化しているって噂、本当なのかしら)
隣には、冷静な表情で歩くカイと、腕を組んで退屈そうにしているルーク。
「で、なんで俺たちが付き合わされてるんだ?」
ルークがぼやくと、カイが淡々と答える。
「学院祭の準備のためにも、王都の空気を知っておく必要がある。合理的だ」
そのやり取りに、クラリスは小さく笑みを浮かべた。
「二人とも、ありがとう。すぐ終わるから」
その瞬間――背後から軽やかな声が響いた。
「ふふ、面白そうなことが起きそうだから、私もついてきちゃった♪」
振り返ると、栗色の髪を揺らしながらミレーユが立っていた。
涼しい笑みを浮かべ、まるで散歩にでも来たかのような軽やかさ。
「ミレーユ……どうして?」
クラリスが問いかけると、彼女は肩をすくめて答える。
「だって、あなたが行くのよ?退屈な学院より、ずっと面白そうじゃない」
ルークが呆れたように鼻を鳴らす。
「お前、ほんと自由だな」
ミレーユは、楽しげに笑いながらクラリスの隣に並んだ。
「さあ、案内してちょうだい。王都の“今”を見に行きましょう」
クラリスは、胸の奥にわずかなざわめきを覚えながら、視線を前に向けた。
(火のないところに煙は立たない――何かあるはず)
そして、4人は王都の賑わう通りへと歩みを進めた。
*
王都の通りを歩いていたクラリスは、ふと足を止めた。
視線の先――石壁に貼られた一枚の張り紙が、夏の光を受けて揺れている。
大きく書かれた文字は、黒く鋭い筆致でこう記されていた。
『UNLUX』
『運命に頼らない。自由な社会を目指す』
クラリスは、無意識に近づき、指先で紙の端をなぞった。
(……運命に頼らない?自由な社会?)
その言葉は、かつての自分なら胸を打っただろう。
だが――今は違う。
(昔なら、何も考えずに賛同していたかもしれない。でも……今は冷静に判断できる)
「なにそれ、面白いじゃない」
背後から軽やかな声が響く。ミレーユだ。
彼女はクラリスの肩越しに張り紙を覗き込み、唇に笑みを浮かべる。
「なんかクラリスが好きそうな組織ね。もしかして、あなたに関係してるんじゃない?」
クラリスは、即座に首を振った。
「無関係よ」
声は落ち着いていたが、胸の奥で小さなざわめきが広がる。
ルークが、腕を組んで張り紙を見上げる。
「UNLUX……なんだこれ?なんかの宣伝か?怪しいな」
クラリスは、視線を張り紙に戻しながら呟いた。
「……なんか危うい気がする」
カイが、冷静な声で情報を補足する。
「最近、急速に勢力を伸ばしている反制度団体らしい。創設者やメンバーは不明。王都でも噂になっている」
ルークが鼻を鳴らす。
「なるほどな。治安悪化の噂、これが原因かもな。でも騎士団が何とかするだろ」
クラリスは、張り紙から視線を外し、胸の奥で小さく息を吐いた。
(……制度を否定する声が、こんな形で広がっているなんて)
*
夕暮れ。
王都の街並みに淡い光を落としていた。
市場の喧騒も少しずつ静まり、石畳に長い影が伸びていく。
クラリスは、学院へ戻る道を歩きながら、ふと問いかけた。
「……今日見た中で、何か気になることはあった?」
ミレーユは、肩をすくめて笑う。
「特にはないわね。何も変わらないわ。張り紙以外は、退屈なほど普通だったわ」
ルークも、腕を組んだまま鼻を鳴らす。
「俺もだな。騎士団が見回ってるし、変な感じはしなかった」
クラリスは、二人の言葉に小さく頷き、視線をカイに向ける。
「カイは?」
カイは、少しだけ歩みを緩め、静かな声で答えた。
「……雰囲気が違った」
クラリスは眉をひそめる。
「雰囲気?」
「前はもっと活気があった。それでいて、秩序も感じられた。王都らしい気品があったんだ」
カイの瞳が、遠くの街灯を映す。
「でも今は……そうだな、言葉を選ばずに言うと、品がない。そんな印象を受けた」
クラリスは、胸の奥に冷たいものが広がるのを感じた。
(……制度への不満が、こんな形で表れているの?)
その時――
「……待て」
ルークが突然立ち止まった。
クラリスは驚いて振り返る。
「ルーク?」
周囲を見渡すと、異様な静けさが広がっていた。
路地裏でもないのに、人影が消えている。
さっきまで賑わっていた通りが、まるで人払いされたかのように――音がない。
クラリスの心臓が、強く脈打った。
「……何、この感じ」
ルークは低く呟く。
「何だこの気配……王都で感じていいものじゃない」
彼は、剣の柄に手をかけながら、仲間たちに視線を送る。
「合図したら学院まで走るぞ。……3、2、1!」
その瞬間、4人は一斉に駆け出した。
石畳を蹴る足音が、静寂を切り裂く。
クラリスも走りながら、背後に漂う異様な気配を感じ取った。
(……何かが、追ってきている?)
胸の奥で、冷たい恐怖が膨らむ。
だが、振り返る余裕はない。
ただ――走る。
学院まで、わき目も振らずに。
*
4人は、息を切らしながら学院の門へと駆け込む。
胸の奥で脈打つ鼓動が、耳にまで響いてくる。
クラリスは、門をくぐった瞬間、ようやく足を止めた。
冷たい風が頬を撫で、汗に濡れた髪を揺らす。
「……はぁ、はぁ……何だったの、今の……」
ミレーユは、肩で息をしながらも、まだ笑みを崩さない。
「まるで追いかけられてるみたいだったわね……でも、何も見えなかった」
ルークは、剣の柄に手をかけたまま、鋭い視線を王都の方へ向ける。
「いや……何かいた。気配だけじゃない。あれは――獣だ」
クラリスの胸に、冷たいものが走る。
(獣……?まさか……)
彼女は、ゆっくりと振り返った。
学院の門の向こう、遠くに霞む王都の影。
その暗がりの中――一瞬だけ、何かが動いた。
街灯の光を反射する、異様に光る瞳。
そして、闇に溶ける黒い影。
その姿は、あの森で見た獣と――酷似していた。
クラリスは、息を呑む。
(……どうして、王都に?)
だが、次の瞬間には、その影は消えていた。
まるで、最初から何もなかったかのように。
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