5 / 65
噂の聖女、爆誕編
第5話 祝杯とすんごい疑惑
しおりを挟む
ゴブリン討伐から王都ソリスティアへの帰り道、馬車の中の空気はどこか奇妙なものだった。
「いやー、それにしてもルルナの活躍はすごかったな! まさか初陣であんな奇跡を起こすとは!」
ユウキ様は終始ご機見で、私の「手柄」を何度も褒めてくれる。
「偶然ですってば……」
私はその度に顔を真っ赤にして縮こまる。
「がはは! 嬢ちゃん、大したもんだぜ! 今夜はパーッと祝杯だな!」
ダインさんはすでに酒のことしか頭にないようだ。
ただ一人、シルヴィアさんだけは、腕を組んだまま、じっと私のことを見つめていた。その視線は、まるで未知の魔法生物を観察するかのようで、私は生きた心地がしなかった。
冒険者ギルドに戻り、討伐の証であるゴブリンの耳を提出すると、受付の女性は驚きの声を上げた。
「まあ、勇者様御一行! もうお戻りですか? さすがにお早いですね!」
クエスト達成の報酬を受け取り、私たちはギルドに併設された酒場へと向かった。ダインさんの提案で、ささやかな祝勝会を開くことになったのだ。
「まずは乾杯だ! 俺たちの新しい仲間、ルルナの初陣の勝利に!」
ユウキ様が高らかにジョッキを掲げる。
ダインさんも「おう!」と巨大なジョッキを打ち鳴らし、シルヴィアさんはやれやれといった顔でグラスを少しだけ持ち上げた。
私もおずおずと、果実水の入ったグラスを掲げる。
(私の手柄でも何でもないのに……でも、こうして仲間として認めてもらえているのは、嬉しい、かも……)
複雑な気持ちで、甘酸っぱい液体を口に含んだ。
祝宴が始まると、仲間たちの意外な一面が見えてきた。
ダインさんは、見た目通り、エール(お酒)を水のように飲み干していく。顔色一つ変えないあたり、相当な酒豪なのだろう。
ユウキ様は、お酒が入るとさらに饒舌になり、故郷(日本というらしい?)の武勇伝らしきものを語り始めた。「俺、学生時代は帰宅部のエースって呼ばれててさー」などと、意味のわからないことを言っている。
そして、最も意外だったのはシルヴィアさんだった。
「……エルフは、あまりお酒に強くないのです」
そう言って、一杯のエールをちびちびと飲んでいた彼女は、しばらくすると、普段の氷のような表情が嘘のように、ふにゃりと頬を緩ませた。
「うぅ……でも、祝杯ですものね……飲まないと……」
呂律が回っていない。明らかに酔っ払っている。
その時だった。
「ねえ、ルルナさん……」
酔ったシルヴィアさんが、とろんとした目で私に絡んできた。
「やっぱり、あなたのスキル……おかしいです……」
「えっ!?」
ドキリとして、私は背筋を伸ばした。
「ゴブリンが転んだのも、動きが止まったのも……偶然にしては、タイミングが良すぎます……。私の知らない、未知の法則が働いているとしか……」
彼女はそう呟きながら、じーっと私の胸元を見つめた。
「ひゃっ!?」
私は思わず、両腕で胸を隠す。
「この胸が揺れた時……魔力の揺らぎを観測しました……。微弱ですが、確かに……。この中に、何か……古代の遺物(アーティファクト)でも隠しているんじゃありませんか……?」
シルヴィアさんはそう言うと、ふらふらと立ち上がり、私の胸に人差し指を伸ばしてきた。
「や、やめてくださいっ!」
「ちょっと、シルヴィア! 酔いすぎだぞ!」
ユウキ様が慌てて止めに入るが、シルヴィアさんの探究心は止まらない。
「この揺れのメカニズムを解明すれば……新たな魔法体系を確立できるかもしれない……うふふ……」
「がはは! シルヴィアは酔うとこれだから面白え!」
ダインさんが腹を抱えて笑っている。
酒場中が、私たちのテーブルに注目している。
(もう、お家に帰りたい……!)
結局、完全に酔い潰れたシルヴィアさんをダインさんが担ぎ、その日のお開きとなった。
宿屋に戻る道すがら、ユウキ様が苦笑しながら私に謝った。
「悪かったな、ルルナ。あいつも悪気はないんだ。ただ、真理を探究するのが好きなだけで……」
「い、いえ……大丈夫です」
大丈夫ではなかったけれど、そう答えるしかなかった。
シルヴィアさんの疑惑の目は、きっと晴れることはないだろう。
だって、私自身が、このスキルのことを何一つ理解できていないのだから。
部屋のベッドに倒れ込みながら、私は今日の出来事を思い返す。
(私のスキル、やっぱりただの呪いなんかじゃないのかも……)
初めて芽生えた、ほんの少しの期待。
それは、まだ誰にも言えない、私だけの秘密だった。
「いやー、それにしてもルルナの活躍はすごかったな! まさか初陣であんな奇跡を起こすとは!」
ユウキ様は終始ご機見で、私の「手柄」を何度も褒めてくれる。
「偶然ですってば……」
私はその度に顔を真っ赤にして縮こまる。
「がはは! 嬢ちゃん、大したもんだぜ! 今夜はパーッと祝杯だな!」
ダインさんはすでに酒のことしか頭にないようだ。
ただ一人、シルヴィアさんだけは、腕を組んだまま、じっと私のことを見つめていた。その視線は、まるで未知の魔法生物を観察するかのようで、私は生きた心地がしなかった。
冒険者ギルドに戻り、討伐の証であるゴブリンの耳を提出すると、受付の女性は驚きの声を上げた。
「まあ、勇者様御一行! もうお戻りですか? さすがにお早いですね!」
クエスト達成の報酬を受け取り、私たちはギルドに併設された酒場へと向かった。ダインさんの提案で、ささやかな祝勝会を開くことになったのだ。
「まずは乾杯だ! 俺たちの新しい仲間、ルルナの初陣の勝利に!」
ユウキ様が高らかにジョッキを掲げる。
ダインさんも「おう!」と巨大なジョッキを打ち鳴らし、シルヴィアさんはやれやれといった顔でグラスを少しだけ持ち上げた。
私もおずおずと、果実水の入ったグラスを掲げる。
(私の手柄でも何でもないのに……でも、こうして仲間として認めてもらえているのは、嬉しい、かも……)
複雑な気持ちで、甘酸っぱい液体を口に含んだ。
祝宴が始まると、仲間たちの意外な一面が見えてきた。
ダインさんは、見た目通り、エール(お酒)を水のように飲み干していく。顔色一つ変えないあたり、相当な酒豪なのだろう。
ユウキ様は、お酒が入るとさらに饒舌になり、故郷(日本というらしい?)の武勇伝らしきものを語り始めた。「俺、学生時代は帰宅部のエースって呼ばれててさー」などと、意味のわからないことを言っている。
そして、最も意外だったのはシルヴィアさんだった。
「……エルフは、あまりお酒に強くないのです」
そう言って、一杯のエールをちびちびと飲んでいた彼女は、しばらくすると、普段の氷のような表情が嘘のように、ふにゃりと頬を緩ませた。
「うぅ……でも、祝杯ですものね……飲まないと……」
呂律が回っていない。明らかに酔っ払っている。
その時だった。
「ねえ、ルルナさん……」
酔ったシルヴィアさんが、とろんとした目で私に絡んできた。
「やっぱり、あなたのスキル……おかしいです……」
「えっ!?」
ドキリとして、私は背筋を伸ばした。
「ゴブリンが転んだのも、動きが止まったのも……偶然にしては、タイミングが良すぎます……。私の知らない、未知の法則が働いているとしか……」
彼女はそう呟きながら、じーっと私の胸元を見つめた。
「ひゃっ!?」
私は思わず、両腕で胸を隠す。
「この胸が揺れた時……魔力の揺らぎを観測しました……。微弱ですが、確かに……。この中に、何か……古代の遺物(アーティファクト)でも隠しているんじゃありませんか……?」
シルヴィアさんはそう言うと、ふらふらと立ち上がり、私の胸に人差し指を伸ばしてきた。
「や、やめてくださいっ!」
「ちょっと、シルヴィア! 酔いすぎだぞ!」
ユウキ様が慌てて止めに入るが、シルヴィアさんの探究心は止まらない。
「この揺れのメカニズムを解明すれば……新たな魔法体系を確立できるかもしれない……うふふ……」
「がはは! シルヴィアは酔うとこれだから面白え!」
ダインさんが腹を抱えて笑っている。
酒場中が、私たちのテーブルに注目している。
(もう、お家に帰りたい……!)
結局、完全に酔い潰れたシルヴィアさんをダインさんが担ぎ、その日のお開きとなった。
宿屋に戻る道すがら、ユウキ様が苦笑しながら私に謝った。
「悪かったな、ルルナ。あいつも悪気はないんだ。ただ、真理を探究するのが好きなだけで……」
「い、いえ……大丈夫です」
大丈夫ではなかったけれど、そう答えるしかなかった。
シルヴィアさんの疑惑の目は、きっと晴れることはないだろう。
だって、私自身が、このスキルのことを何一つ理解できていないのだから。
部屋のベッドに倒れ込みながら、私は今日の出来事を思い返す。
(私のスキル、やっぱりただの呪いなんかじゃないのかも……)
初めて芽生えた、ほんの少しの期待。
それは、まだ誰にも言えない、私だけの秘密だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる