スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

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噂の聖女、爆誕編

第5話 祝杯とすんごい疑惑

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 ゴブリン討伐から王都ソリスティアへの帰り道、馬車の中の空気はどこか奇妙なものだった。

「いやー、それにしてもルルナの活躍はすごかったな! まさか初陣であんな奇跡を起こすとは!」
 ユウキ様は終始ご機見で、私の「手柄」を何度も褒めてくれる。

「偶然ですってば……」
 私はその度に顔を真っ赤にして縮こまる。

「がはは! 嬢ちゃん、大したもんだぜ! 今夜はパーッと祝杯だな!」
 ダインさんはすでに酒のことしか頭にないようだ。

 ただ一人、シルヴィアさんだけは、腕を組んだまま、じっと私のことを見つめていた。その視線は、まるで未知の魔法生物を観察するかのようで、私は生きた心地がしなかった。

 冒険者ギルドに戻り、討伐の証であるゴブリンの耳を提出すると、受付の女性は驚きの声を上げた。
「まあ、勇者様御一行! もうお戻りですか? さすがにお早いですね!」

 クエスト達成の報酬を受け取り、私たちはギルドに併設された酒場へと向かった。ダインさんの提案で、ささやかな祝勝会を開くことになったのだ。

「まずは乾杯だ! 俺たちの新しい仲間、ルルナの初陣の勝利に!」
 ユウキ様が高らかにジョッキを掲げる。
 ダインさんも「おう!」と巨大なジョッキを打ち鳴らし、シルヴィアさんはやれやれといった顔でグラスを少しだけ持ち上げた。

 私もおずおずと、果実水の入ったグラスを掲げる。
(私の手柄でも何でもないのに……でも、こうして仲間として認めてもらえているのは、嬉しい、かも……)
 複雑な気持ちで、甘酸っぱい液体を口に含んだ。

 祝宴が始まると、仲間たちの意外な一面が見えてきた。
 ダインさんは、見た目通り、エール(お酒)を水のように飲み干していく。顔色一つ変えないあたり、相当な酒豪なのだろう。
 ユウキ様は、お酒が入るとさらに饒舌になり、故郷(日本というらしい?)の武勇伝らしきものを語り始めた。「俺、学生時代は帰宅部のエースって呼ばれててさー」などと、意味のわからないことを言っている。

 そして、最も意外だったのはシルヴィアさんだった。
「……エルフは、あまりお酒に強くないのです」
 そう言って、一杯のエールをちびちびと飲んでいた彼女は、しばらくすると、普段の氷のような表情が嘘のように、ふにゃりと頬を緩ませた。

「うぅ……でも、祝杯ですものね……飲まないと……」
 呂律が回っていない。明らかに酔っ払っている。

 その時だった。
「ねえ、ルルナさん……」
 酔ったシルヴィアさんが、とろんとした目で私に絡んできた。
「やっぱり、あなたのスキル……おかしいです……」

「えっ!?」
 ドキリとして、私は背筋を伸ばした。

「ゴブリンが転んだのも、動きが止まったのも……偶然にしては、タイミングが良すぎます……。私の知らない、未知の法則が働いているとしか……」
 彼女はそう呟きながら、じーっと私の胸元を見つめた。

「ひゃっ!?」
 私は思わず、両腕で胸を隠す。

「この胸が揺れた時……魔力の揺らぎを観測しました……。微弱ですが、確かに……。この中に、何か……古代の遺物(アーティファクト)でも隠しているんじゃありませんか……?」
 シルヴィアさんはそう言うと、ふらふらと立ち上がり、私の胸に人差し指を伸ばしてきた。

「や、やめてくださいっ!」
「ちょっと、シルヴィア! 酔いすぎだぞ!」

 ユウキ様が慌てて止めに入るが、シルヴィアさんの探究心は止まらない。
「この揺れのメカニズムを解明すれば……新たな魔法体系を確立できるかもしれない……うふふ……」

「がはは! シルヴィアは酔うとこれだから面白え!」
 ダインさんが腹を抱えて笑っている。

 酒場中が、私たちのテーブルに注目している。
(もう、お家に帰りたい……!)

 結局、完全に酔い潰れたシルヴィアさんをダインさんが担ぎ、その日のお開きとなった。
 宿屋に戻る道すがら、ユウキ様が苦笑しながら私に謝った。

「悪かったな、ルルナ。あいつも悪気はないんだ。ただ、真理を探究するのが好きなだけで……」
「い、いえ……大丈夫です」

 大丈夫ではなかったけれど、そう答えるしかなかった。
 シルヴィアさんの疑惑の目は、きっと晴れることはないだろう。
 だって、私自身が、このスキルのことを何一つ理解できていないのだから。

 部屋のベッドに倒れ込みながら、私は今日の出来事を思い返す。
(私のスキル、やっぱりただの呪いなんかじゃないのかも……)

 初めて芽生えた、ほんの少しの期待。
 それは、まだ誰にも言えない、私だけの秘密だった。
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