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噂の聖女、爆誕編
第6話 盗賊とすんごい腹の虫
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初クエストの祝勝会を終えた翌日。
私たちは宿屋の一室に集まり、今後の活動について話し合っていた。
「次の依頼ですが、一つ提案があります」
口火を切ったのは、意外にもシルヴィアさんだった。彼女は腕を組み、射るような視線をまっすぐ私に向けて言った。
「先日のゴブリンの件、私はまだ偶然の産物である可能性を捨てきれません。魔物と違い、知性ある人間を相手にして、あなたのスキルが――いえ、あなたが本当にパーティの戦力たり得るのか。それを確かめるべきです」
部屋に、緊張が走る。
彼女が言いたいのは、私がまだ信用できないということだ。
「そこで、この依頼を提案します」
シルヴィアさんがテーブルに広げたのは、ギルドの依頼書だった。
そこには「近隣街道に出没する盗賊団の討伐」と書かれていた。
「なるほど、対人戦か! 面白そうだ!」
ユウキ様が、にやりと笑って膝を打った。
「いいぜ、それに乗った! ルルナのスキルが人間相手にどう作用するのか、俺も見てみたいからな!」
「盗賊だろうがゴブリンだろうが、俺の斧で叩き潰すだけだ!」
ダインさんはいつも通り、細かいことは気にしていないようだ。
三人の視線が、私に集まる。
(人間が、相手……。ゴブリンよりも、もっと怖い……)
私が恐怖で俯《うつむ》いていると、ユウキ様が「大丈夫だ」と私の肩を力強く叩いた。
「これは、ルルナの実力をシルヴィアに認めさせる、絶好のチャンスだぜ!」
(ああ、またユウキ様は、私を励まそうと……)
私は彼の優しさに感謝しつつも、ますます大きくなるプレッシャーにお腹が痛くなりそうだった。
ギルドで集めた情報によれば、盗賊団のアジトは森の奥にある廃砦らしい。頭目は元傭兵で、なかなかの腕利きだという。
作戦は、夜間にアジトへ潜入し、頭目を叩くというシンプルなものに決まった。
月明かりだけを頼りに、私たちは音を殺して廃砦へと近づく。
「見張りが二人。厄介ですね」
物陰から様子を窺い、シルヴィアさんが眉をひそめた。
「私が魔法で眠らせ……」
彼女が詠唱を始めようとした、その時だった。
ぐぅぅぅぅぅぅ…………。
静寂な森に、盛大な腹の虫の音が響き渡った。
音の発生源は、言うまでもなく、私だ。緊張のあまり、お昼ご飯をほとんど喉を通らなかったせいだ。
「ご、ごめんなさい……っ!」
私は恥ずかしさで顔から火が出そうになり、必死に自分のお腹を押さえた。
すると、信じられないことが起こった。
私のお腹の音に呼応するように、見張りをしていた盗賊たちのお腹も、ぐぅ~、と可愛らしい音を立てたのだ。
「……おい、腹減らねえか?」
「ああ……そういや、まだ晩飯食ってなかったな。少しだけなら大丈夫だろ。ちょっと取ってくるか」
なんと、見張りの盗賊たちは、二人そろって持ち場を離れ、アジトの中へと消えてしまった。
「…………」
「…………」
「…………」
ユウキ様も、ダインさんも、シルヴィアさんも、言葉を失っている。
「す、すごい……!」
最初に沈黙を破ったのは、ユウキ様だった。
「音で敵の生理現象そのものをハッキングしたのか!? まさに『腹鳴りの鎮魂歌(ハングリー・レクイエム)』! これでどんな屈強な見張りも無力化できる!」
「……ありえません。ただの集団幻聴……? それとも、極低周波による共鳴……?」
シルヴィアさんは頭を抱え、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
こうして、私たちはまたしても私のあずかり知らぬ奇跡によって、いとも容易くアジトへの潜入を果たしてしまったのだった。
砦の内部は、酒と汗の匂いが充満していた。
物音を頼りに奥へ進むと、だだっ広い広間に出る。そこでは十数人の盗賊たちが、奪ったのであろう金品を前に、酒盛りをしていた。
「見つけたぜ。あいつが頭目だな」
ユウキ様が、玉座で高笑いしているひときわ屈強な男を指差す。
私たちが息を殺して様子を窺っていた、その時。
一人の盗賊が、こちらを振り返った。
「――ん? 誰だ、てめえら!」
しまった! 見つかった!
その声に、全ての盗賊が一斉にこちらを向き、武器を構えた。
「曲者だ!」「囲め、囲め!」
あっという間に、私たちは広間の中心で、十数人の凶悪な盗賊たちに完全に包囲されてしまった。
「さて、どう切り抜けるか…!」
ユウキ様が聖剣の柄に手をかける。
「数が多い…!」
シルヴィアさんの声に、焦りの色が滲む。
私は、四方から向けられる殺気に、ただ震えることしかできなかった。
「ひぃぃぃぃ……っ!」
恐怖が頂点に達した、その瞬間。
私の胸が、ぽわっと、温かい光を、微かに放った気がした。
私たちは宿屋の一室に集まり、今後の活動について話し合っていた。
「次の依頼ですが、一つ提案があります」
口火を切ったのは、意外にもシルヴィアさんだった。彼女は腕を組み、射るような視線をまっすぐ私に向けて言った。
「先日のゴブリンの件、私はまだ偶然の産物である可能性を捨てきれません。魔物と違い、知性ある人間を相手にして、あなたのスキルが――いえ、あなたが本当にパーティの戦力たり得るのか。それを確かめるべきです」
部屋に、緊張が走る。
彼女が言いたいのは、私がまだ信用できないということだ。
「そこで、この依頼を提案します」
シルヴィアさんがテーブルに広げたのは、ギルドの依頼書だった。
そこには「近隣街道に出没する盗賊団の討伐」と書かれていた。
「なるほど、対人戦か! 面白そうだ!」
ユウキ様が、にやりと笑って膝を打った。
「いいぜ、それに乗った! ルルナのスキルが人間相手にどう作用するのか、俺も見てみたいからな!」
「盗賊だろうがゴブリンだろうが、俺の斧で叩き潰すだけだ!」
ダインさんはいつも通り、細かいことは気にしていないようだ。
三人の視線が、私に集まる。
(人間が、相手……。ゴブリンよりも、もっと怖い……)
私が恐怖で俯《うつむ》いていると、ユウキ様が「大丈夫だ」と私の肩を力強く叩いた。
「これは、ルルナの実力をシルヴィアに認めさせる、絶好のチャンスだぜ!」
(ああ、またユウキ様は、私を励まそうと……)
私は彼の優しさに感謝しつつも、ますます大きくなるプレッシャーにお腹が痛くなりそうだった。
ギルドで集めた情報によれば、盗賊団のアジトは森の奥にある廃砦らしい。頭目は元傭兵で、なかなかの腕利きだという。
作戦は、夜間にアジトへ潜入し、頭目を叩くというシンプルなものに決まった。
月明かりだけを頼りに、私たちは音を殺して廃砦へと近づく。
「見張りが二人。厄介ですね」
物陰から様子を窺い、シルヴィアさんが眉をひそめた。
「私が魔法で眠らせ……」
彼女が詠唱を始めようとした、その時だった。
ぐぅぅぅぅぅぅ…………。
静寂な森に、盛大な腹の虫の音が響き渡った。
音の発生源は、言うまでもなく、私だ。緊張のあまり、お昼ご飯をほとんど喉を通らなかったせいだ。
「ご、ごめんなさい……っ!」
私は恥ずかしさで顔から火が出そうになり、必死に自分のお腹を押さえた。
すると、信じられないことが起こった。
私のお腹の音に呼応するように、見張りをしていた盗賊たちのお腹も、ぐぅ~、と可愛らしい音を立てたのだ。
「……おい、腹減らねえか?」
「ああ……そういや、まだ晩飯食ってなかったな。少しだけなら大丈夫だろ。ちょっと取ってくるか」
なんと、見張りの盗賊たちは、二人そろって持ち場を離れ、アジトの中へと消えてしまった。
「…………」
「…………」
「…………」
ユウキ様も、ダインさんも、シルヴィアさんも、言葉を失っている。
「す、すごい……!」
最初に沈黙を破ったのは、ユウキ様だった。
「音で敵の生理現象そのものをハッキングしたのか!? まさに『腹鳴りの鎮魂歌(ハングリー・レクイエム)』! これでどんな屈強な見張りも無力化できる!」
「……ありえません。ただの集団幻聴……? それとも、極低周波による共鳴……?」
シルヴィアさんは頭を抱え、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
こうして、私たちはまたしても私のあずかり知らぬ奇跡によって、いとも容易くアジトへの潜入を果たしてしまったのだった。
砦の内部は、酒と汗の匂いが充満していた。
物音を頼りに奥へ進むと、だだっ広い広間に出る。そこでは十数人の盗賊たちが、奪ったのであろう金品を前に、酒盛りをしていた。
「見つけたぜ。あいつが頭目だな」
ユウキ様が、玉座で高笑いしているひときわ屈強な男を指差す。
私たちが息を殺して様子を窺っていた、その時。
一人の盗賊が、こちらを振り返った。
「――ん? 誰だ、てめえら!」
しまった! 見つかった!
その声に、全ての盗賊が一斉にこちらを向き、武器を構えた。
「曲者だ!」「囲め、囲め!」
あっという間に、私たちは広間の中心で、十数人の凶悪な盗賊たちに完全に包囲されてしまった。
「さて、どう切り抜けるか…!」
ユウキ様が聖剣の柄に手をかける。
「数が多い…!」
シルヴィアさんの声に、焦りの色が滲む。
私は、四方から向けられる殺気に、ただ震えることしかできなかった。
「ひぃぃぃぃ……っ!」
恐怖が頂点に達した、その瞬間。
私の胸が、ぽわっと、温かい光を、微かに放った気がした。
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