スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

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噂の聖女、爆誕編

第12話 褒賞とすんごい人だかり

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 隣国との戦争を回避した功績は、想像をはるかに超えるものだった。
 私たちは国王陛下から、城に一室を与えられるという破格の褒賞を受け、さらに一生遊んで暮らせるほどの金貨を下賜された。

「やったぜ! これで美味い酒が飲み放題だ!」
 ダインさんが、金貨の詰まった袋を軽々と持ち上げて笑う。

「ふふん、俺の目に狂いはなかっただろう? ルルナをパーティに入れた俺の判断は、国をも救ったというわけだ!」
 ユウキ様は、自分の手柄のように胸を張っている。

「……これだけの褒賞をいただいておきながら、なぜ私の探究心は満たされないのでしょうか」
 シルヴィアさんは、金貨には目もくれず、遠い目をして呟いていた。

 王城での暮らしは、私にとって針の筵(むしろ)だった。
 すれ違う兵士や侍女たちが、皆ひそひそと私の噂をし、敬意と好奇の入り混じった視線を向けてくる。
(もう、お家に帰りたい……いや、帰る家もなかったんだわ……)

 そんなある日、ユウキ様が「たまには城の外の空気を吸いに行こうぜ!」と提案した。
「せっかく大金も手に入ったんだ。市場でぱーっと買い物して、美味いものでも食いに行こう!」

 その提案に、私は全力で首を横に振った。
「む、無理です! 私が外を歩いたら、また騒ぎになります!」
「大丈夫だって! 俺に任せておけ!」
 ユウキ様の根拠のない自信に押し切られる形で、私たちは久しぶりに王都の市場へと繰り出すことになった。

 しかし、その心配は、すぐに現実のものとなる。
 私がフードを目深にかぶり、仲間たちの陰に隠れるようにして歩いていたにもかかわらず、一人の果物屋の店主が、私のことを見つけたのだ。

「あ! あの方は、もしや……『聖女』ルルナ様!?」

 その一言が、引き金だった。
 市場にいた全ての人々が、一斉にこちらを振り返る。あっという間に、私たちは巨大な人だかりの中心になってしまった。

「本物の聖女様だ!」「お美しい……!」
「聖女様、どうか我が子に祝福を!」「一度でいいから、そのお胸に触らせて……」
「おい、それはセクハラだろ!」

 人々が、熱狂した様子で私たちに殺到してくる。

「ひぃぃぃ! ご、ごめんなさい!」
 パニックになった私は、後ずさろうとして、すぐそばにあった果物の山積みにぶつかってしまった。

 あっ!
 荷車に山と積まれた果物が、バランスを崩し、ガラガラと崩れ落ちそうになる。

「きゃっ!」
 私は咄嗟に、荷車を支えようと手を伸ばした。
 その時、私の胸が、荷車の縁に、ぽすん、と優しく当たった。

 次の瞬間。
 崩れかけていたはずの果物の山が、まるで意思を持ったかのように、ぴたり、と動きを止めた。それどころか、一つも落ちることなく、元の美しいピラミッド状に、勝手に積み上がってしまったのだ。

「「「おおおおおっ!」」」

 広場から、地鳴りのような歓声が上がる。
「見たか! 聖女様が、念動力で果物を!」「なんと慈悲深い!」
 果物屋の店主は、その場で泣き崩れてしまった。

「はっはっは! 皆の者、落ち着いてくれ! 聖女様はプライベートでお忍びなんだ!」
 ユウキ様が、まるで私のマネージャーのように、慣れた様子で群衆をさばき始める。

「くっ、この混乱に乗じて、ルルナの髪の毛を一本……魔力特性のサンプルに……!」
 シルヴィアさんが、混乱に乗じて怪しい動きをしている。

「てめえら、いつまで騒いでやがる! 俺は腹が減ってんだぞ!」
 ダインさんが、空腹で怒り始めた。

 カオスと化した状況に、私はもう、泣き出す寸前だった。

 なんとかその場を逃げ出し、私たちは薄暗い路地裏へと駆け込んだ。
 壁に手をつき、ぜえぜえと肩で息をする。

「はぁ……はぁ……もう、無理です……」
「いやー、すごい人気だったな、ルルナ!」

 能天気なユウキ様の言葉に、私が反論しようとした、その時だった。
 ふと、視線を感じた。
 見上げると、路地裏を見下ろす建物の屋根の上に、一瞬、黒い影が見えた気がした。

(気のせい……?)

 私が目をこすっている間に、その影はもうどこにも見えなかった。
 しかし、私の胸の奥に、これまで感じたことのない、冷たい不安の染みが、じわりと広がっていくのを感じていた。

 その視線の主が、海の向こうからやってきた魔王軍の斥候であることなど、今の私には知る由もなかった。
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