24 / 65
波乱の魔王軍、介入編
第24話 決戦とすんごい大食らい
しおりを挟む
「行くぞ! 一気に決める!」
ユウキ様の号令と共に私たちは敵本陣である天幕へと突入した。
中にいたのは、巨大な作戦地図を前に腕を組む、一人の魔族。
その体は鋼のような黒い鎧に包まれ、頭からは禍々しい二本の角が生えている。圧倒的な魔力と揺るぎない威圧感。彼こそが、この軍勢を率いる『魔将軍ガザリオス』に違いなかった。
「……ネズミが紛れ込んだようだな」
ガザリオスは私たちを見ても、一切動じなかった。
「陽動に気を取られている間に本陣を叩くつもりだったか。浅はかな」
その唇に冷酷な笑みが浮かぶ。
「魔将軍ガザリオス! 勇者ユウキが、お前の首、貰い受ける!」
ユウキ様の叫びを合図に戦闘が始まった。
「こいつらの相手は俺が引き受けた!」
ダインさんがガザリオスの両脇に控えていた二人の屈強な側近へと突進する。
私とシルヴィアさんが後方へ下がり、ユウキ様がガザリオスへと斬りかかった。
キィィン!と聖剣と魔剣が激しく火花を散らす。
ガザリオスはユウキ様の猛攻を片手で捌きながら、もう片方の手を突き出し、詠唱を始めた。
「小娘の魔法など児戯に等しいわ!」
シルヴィアさんが放った雷撃をガザリオスは魔法の障壁でたやすく弾き返す。強い。これまでの敵とは次元が違う。
ユウキ様も徐々に押し込まれ始めていた。
「終わりだ勇者もどき!」
ガザリオスがユウキ様を大きく弾き飛ばすと、その両手に禍々しい闇の魔力を集中させ始めた。
漆黒のエネルギーが渦を巻き、凝縮していく。
「この『混沌の滅び(ケイオス・ディストラクション)』で、貴様ら全員、塵と化すがいい!」
彼の手から放たれたのは、全てを飲み込み破壊し尽くすであろう、巨大な闇の球体だった。
「ダメです…! あれは防ぎきれません!」
シルヴィアさんの悲痛な声が響く。
もう誰もが死を覚悟した。
その時だった。
仲間たちが私を守るように、私の前に立とうとしているのが見えた。
(いやだ…! 私だけ守られるなんて…! みんなを失いたくない!)
恐怖を振り払ったのは、仲間を失うことへの、もっと大きな恐怖だった。
私は考えるより先に仲間たちの前に飛び出していた。
そして仲間たちと、迫りくる闇の球体の間に立ちはだかった。自分より後ろには行かせない、と。その脅威そのものに向かって、ほとんど悲鳴のように叫んだ。
「こっちへこないでっ!」
それは、仲間たちを守るための彼女にできる唯一で、最善の言葉だった。
迫りくる絶望の塊。
私は両腕を広げ、それを迎え撃つように、ぐっと胸を張った。
そして闇の魔法は私の胸に吸い込まれた。
…………。
爆発も、衝撃も、何も起こらない。
あれほど巨大だった闇のエネルギーが、まるでブラックホールにでも飲み込まれたかのように、私の胸の中へと跡形もなく消えてしまったのだ。
天幕の中に絶対的な静寂が訪れる。
「ひっく……」
私の口から小さな可愛らしいしゃっくりが一つ、漏れた。
私は自分の胸をさする。
(……? なんだか胸がいっぱいに……?)
「馬鹿な……」
ガザリオスが愕然とした表情で立ち尽くしていた。
「俺の最強の魔法が……吸収されただと……? ありえん!」
全ての魔力を使い果たした彼は完全に無防備だった。
「今だっ!」
最初に我に返ったユウキ様の叫びが静寂を破った。
ダインさんとユウキさんが最後の力を振り絞り、無防備な魔将軍へと突撃する。
勝負は一瞬だった。
「……なんだ、あの小娘は……一体、何なのだ……」
床に崩れ落ちながら、ガザリオスは最後の最後まで信じられないという目で私を見つめていた。
魔将軍の討伐。それはグライフェン砦の完全な勝利を意味していた。
「ルルナ! 大丈夫か!?」
ユウキ様が私の元へ駆け寄ってくる。
「…今の、まさか敵の魔力を『食べた』のか!? スキル名『聖なる大食らい(ホーリー・グラットン)』! なんて燃費の悪いスキルだ!」
「よくわからないですけど、なんだかお腹がいっぱいです……」
私は、ぽん、と自分のお腹を叩いた。
こうして魔王軍による最初の危機は私のすんごいおっぱいが、敵の切り札を文字通り〝完食〟してしまったことで幕を閉じた。
そして、この規格外の奇跡が、魔王軍に私という存在を「絶対に排除すべき最優先ターゲット」として、深く刻み込むことになったのを私はまだ知る由もなかった。
ユウキ様の号令と共に私たちは敵本陣である天幕へと突入した。
中にいたのは、巨大な作戦地図を前に腕を組む、一人の魔族。
その体は鋼のような黒い鎧に包まれ、頭からは禍々しい二本の角が生えている。圧倒的な魔力と揺るぎない威圧感。彼こそが、この軍勢を率いる『魔将軍ガザリオス』に違いなかった。
「……ネズミが紛れ込んだようだな」
ガザリオスは私たちを見ても、一切動じなかった。
「陽動に気を取られている間に本陣を叩くつもりだったか。浅はかな」
その唇に冷酷な笑みが浮かぶ。
「魔将軍ガザリオス! 勇者ユウキが、お前の首、貰い受ける!」
ユウキ様の叫びを合図に戦闘が始まった。
「こいつらの相手は俺が引き受けた!」
ダインさんがガザリオスの両脇に控えていた二人の屈強な側近へと突進する。
私とシルヴィアさんが後方へ下がり、ユウキ様がガザリオスへと斬りかかった。
キィィン!と聖剣と魔剣が激しく火花を散らす。
ガザリオスはユウキ様の猛攻を片手で捌きながら、もう片方の手を突き出し、詠唱を始めた。
「小娘の魔法など児戯に等しいわ!」
シルヴィアさんが放った雷撃をガザリオスは魔法の障壁でたやすく弾き返す。強い。これまでの敵とは次元が違う。
ユウキ様も徐々に押し込まれ始めていた。
「終わりだ勇者もどき!」
ガザリオスがユウキ様を大きく弾き飛ばすと、その両手に禍々しい闇の魔力を集中させ始めた。
漆黒のエネルギーが渦を巻き、凝縮していく。
「この『混沌の滅び(ケイオス・ディストラクション)』で、貴様ら全員、塵と化すがいい!」
彼の手から放たれたのは、全てを飲み込み破壊し尽くすであろう、巨大な闇の球体だった。
「ダメです…! あれは防ぎきれません!」
シルヴィアさんの悲痛な声が響く。
もう誰もが死を覚悟した。
その時だった。
仲間たちが私を守るように、私の前に立とうとしているのが見えた。
(いやだ…! 私だけ守られるなんて…! みんなを失いたくない!)
恐怖を振り払ったのは、仲間を失うことへの、もっと大きな恐怖だった。
私は考えるより先に仲間たちの前に飛び出していた。
そして仲間たちと、迫りくる闇の球体の間に立ちはだかった。自分より後ろには行かせない、と。その脅威そのものに向かって、ほとんど悲鳴のように叫んだ。
「こっちへこないでっ!」
それは、仲間たちを守るための彼女にできる唯一で、最善の言葉だった。
迫りくる絶望の塊。
私は両腕を広げ、それを迎え撃つように、ぐっと胸を張った。
そして闇の魔法は私の胸に吸い込まれた。
…………。
爆発も、衝撃も、何も起こらない。
あれほど巨大だった闇のエネルギーが、まるでブラックホールにでも飲み込まれたかのように、私の胸の中へと跡形もなく消えてしまったのだ。
天幕の中に絶対的な静寂が訪れる。
「ひっく……」
私の口から小さな可愛らしいしゃっくりが一つ、漏れた。
私は自分の胸をさする。
(……? なんだか胸がいっぱいに……?)
「馬鹿な……」
ガザリオスが愕然とした表情で立ち尽くしていた。
「俺の最強の魔法が……吸収されただと……? ありえん!」
全ての魔力を使い果たした彼は完全に無防備だった。
「今だっ!」
最初に我に返ったユウキ様の叫びが静寂を破った。
ダインさんとユウキさんが最後の力を振り絞り、無防備な魔将軍へと突撃する。
勝負は一瞬だった。
「……なんだ、あの小娘は……一体、何なのだ……」
床に崩れ落ちながら、ガザリオスは最後の最後まで信じられないという目で私を見つめていた。
魔将軍の討伐。それはグライフェン砦の完全な勝利を意味していた。
「ルルナ! 大丈夫か!?」
ユウキ様が私の元へ駆け寄ってくる。
「…今の、まさか敵の魔力を『食べた』のか!? スキル名『聖なる大食らい(ホーリー・グラットン)』! なんて燃費の悪いスキルだ!」
「よくわからないですけど、なんだかお腹がいっぱいです……」
私は、ぽん、と自分のお腹を叩いた。
こうして魔王軍による最初の危機は私のすんごいおっぱいが、敵の切り札を文字通り〝完食〟してしまったことで幕を閉じた。
そして、この規格外の奇跡が、魔王軍に私という存在を「絶対に排除すべき最優先ターゲット」として、深く刻み込むことになったのを私はまだ知る由もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる