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第三章 戦王の咆哮
第72話 牙と風の交錯
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剣戟の音と獣の咆哮が交錯する戦場。セリスの率いる部隊は都市南端の峡谷付近で敵の先鋒と激しくぶつかっていた。
「『風哭』……!」
風を切り裂く音とともにセリスの斬撃が獣魔族の肩口を裂いた。鋭いその一撃は重厚な筋肉や骨すら抵抗なく断ち切っていた。
「はぁっ!」
彼女は間髪入れずに反転し、背後から迫ってきたもう一体の獣魔族へ斜めに斬り込む。
仲間の援護もあって一時は優勢に見えたが——。
「ぐあぁっ!」
悲鳴と共に仲間の一人が腕を押さえて崩れ落ちた。さらに後方の薄暗い林から無数の影が姿を現す。ざりざりと土を踏みしめ、血に飢えた眼光で彼女たちを見据えていた。
「増援……!?」
セリスは即座に後退指示を出そうとするが敵の動きは速い。敵の一部が素早く側面に回り込み、包囲網を形成し始めていた。
「まだ、倒れられません……! カイン殿が来てくれると信じて、ここを支えます!」
その目には強い覚悟が宿っていた。
***
一方、後方で戦況を見守るカインたちの緊張もピークに達していた。
「セリスの気配が不安定になってきたな……」
俺は戦場の配置図から目を上げ、前方を睨みつけた。その傍らではティルが脂汗を浮かべて水晶板を操作している。
「魔力反応、急速に増加中! これは……明らかに敵の増援です!」
ルナが耳をぴくりと動かし、顔をしかめる。
「変な音がしてる……骨がきしむような、そんな感じ。近くまで来てるよ」
エルンが杖を握りしめ、俺に問いかける。
「どうします、カイン? このままではセリスたちが危険です」
「ティル、風魔法でギルドへ伝令を! 援軍要請だ!」
「はいっ! 『風の伝令』! ……行きました!」
ティルが杖を振ると、小さな竜巻のような風が街の方角へと飛んでいった。
「よし、俺たちも行くぞ!」
俺は剣を抜き、仲間たちとともに前線へと駆け出す。
戦場へと駆けつけた俺たちの視界に飛び込んできたのは後退しかけたセリス隊の姿と、それを追い詰めようとする獣魔族の群れだった。
「エルン、前方に光を!」
「はい!」
エルンが詠唱を終えると、眩い閃光が敵陣を照らした。視界を奪われた獣魔族たちが一瞬ひるむ。
「ルナ、右から回り込んで牽制を!」
「うんっ、行ってくる!」
ルナの素早い動きが敵の注意を引き、セリス隊が再び体勢を整える隙を作った。
「カイン殿!」
セリスが振り返る。その顔には汗と土が付いていたが、瞳はしっかりと前を見据えていた。
「無理はするな。ここは俺たちが引き受ける。部隊を少し下げて立て直すんだ」
「……はい! 感謝します!」
セリスたちが後退するのを見届けると、俺は掌に魔力を集中させた。
「『流転の雫』!」
放たれた高密度の水球が敵の足元で炸裂する。泥濘に足を取られ、体勢を崩した獣魔族の懐へ、俺は滑るように踏み込んだ。
「シッ……!」
鋭い呼気と共に剣が一閃し、獣魔族の腕が宙を舞う。
怒号と共に後続の敵が押し寄せるが、ティルがすかさず前に出た。
「させません! 『防護結界』!」
「ナイスだ、ティル! そのまま押し返すぞ!」
援護と連携が戦場の均衡を取り戻し、敵の勢いを徐々に削いでいく。
――数分後。どうにか敵の波を退けた俺たちはセリスと再合流し、戦線を整理していた。
「助かりました、カイン殿……私はまだまだですね」
「そんなことはない。セリスの踏ん張りがあったから前線が崩壊せずに済んだんだ」
セリスは小さく息をつき、刃こぼれひとつない愛剣を見つめる。
「次は……もっと強くなって、支えられるのではなく並び立ちたいです」
その言葉に俺はうなずいた。
「ああ。俺もその横に立つ資格を持てるよう、もっと腕を磨かないとな」
戦場は一時的に静まり返ったが、それは嵐の前の不気味な凪に過ぎなかった。
敵の本隊は未だその姿を見せていない。本当の戦いはこれから始まるのだ。
「『風哭』……!」
風を切り裂く音とともにセリスの斬撃が獣魔族の肩口を裂いた。鋭いその一撃は重厚な筋肉や骨すら抵抗なく断ち切っていた。
「はぁっ!」
彼女は間髪入れずに反転し、背後から迫ってきたもう一体の獣魔族へ斜めに斬り込む。
仲間の援護もあって一時は優勢に見えたが——。
「ぐあぁっ!」
悲鳴と共に仲間の一人が腕を押さえて崩れ落ちた。さらに後方の薄暗い林から無数の影が姿を現す。ざりざりと土を踏みしめ、血に飢えた眼光で彼女たちを見据えていた。
「増援……!?」
セリスは即座に後退指示を出そうとするが敵の動きは速い。敵の一部が素早く側面に回り込み、包囲網を形成し始めていた。
「まだ、倒れられません……! カイン殿が来てくれると信じて、ここを支えます!」
その目には強い覚悟が宿っていた。
***
一方、後方で戦況を見守るカインたちの緊張もピークに達していた。
「セリスの気配が不安定になってきたな……」
俺は戦場の配置図から目を上げ、前方を睨みつけた。その傍らではティルが脂汗を浮かべて水晶板を操作している。
「魔力反応、急速に増加中! これは……明らかに敵の増援です!」
ルナが耳をぴくりと動かし、顔をしかめる。
「変な音がしてる……骨がきしむような、そんな感じ。近くまで来てるよ」
エルンが杖を握りしめ、俺に問いかける。
「どうします、カイン? このままではセリスたちが危険です」
「ティル、風魔法でギルドへ伝令を! 援軍要請だ!」
「はいっ! 『風の伝令』! ……行きました!」
ティルが杖を振ると、小さな竜巻のような風が街の方角へと飛んでいった。
「よし、俺たちも行くぞ!」
俺は剣を抜き、仲間たちとともに前線へと駆け出す。
戦場へと駆けつけた俺たちの視界に飛び込んできたのは後退しかけたセリス隊の姿と、それを追い詰めようとする獣魔族の群れだった。
「エルン、前方に光を!」
「はい!」
エルンが詠唱を終えると、眩い閃光が敵陣を照らした。視界を奪われた獣魔族たちが一瞬ひるむ。
「ルナ、右から回り込んで牽制を!」
「うんっ、行ってくる!」
ルナの素早い動きが敵の注意を引き、セリス隊が再び体勢を整える隙を作った。
「カイン殿!」
セリスが振り返る。その顔には汗と土が付いていたが、瞳はしっかりと前を見据えていた。
「無理はするな。ここは俺たちが引き受ける。部隊を少し下げて立て直すんだ」
「……はい! 感謝します!」
セリスたちが後退するのを見届けると、俺は掌に魔力を集中させた。
「『流転の雫』!」
放たれた高密度の水球が敵の足元で炸裂する。泥濘に足を取られ、体勢を崩した獣魔族の懐へ、俺は滑るように踏み込んだ。
「シッ……!」
鋭い呼気と共に剣が一閃し、獣魔族の腕が宙を舞う。
怒号と共に後続の敵が押し寄せるが、ティルがすかさず前に出た。
「させません! 『防護結界』!」
「ナイスだ、ティル! そのまま押し返すぞ!」
援護と連携が戦場の均衡を取り戻し、敵の勢いを徐々に削いでいく。
――数分後。どうにか敵の波を退けた俺たちはセリスと再合流し、戦線を整理していた。
「助かりました、カイン殿……私はまだまだですね」
「そんなことはない。セリスの踏ん張りがあったから前線が崩壊せずに済んだんだ」
セリスは小さく息をつき、刃こぼれひとつない愛剣を見つめる。
「次は……もっと強くなって、支えられるのではなく並び立ちたいです」
その言葉に俺はうなずいた。
「ああ。俺もその横に立つ資格を持てるよう、もっと腕を磨かないとな」
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