どこかで見たような異世界物語

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第六章

第109話 再会のルカナル

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 明けて翌日。

 「サムライトラベラーズ」と「プラネットアース」のパーティー代表として、信也と北条は《冒険者ギルド出張所》へと向かった。

 村内を歩いている二人は、そこかしこに《鉱山都市グリーク》からやってきたと思われる人達の姿を見かけることができた。
 その多くがたくましい体をした人足と思われる人達で、今の所まだ仕事がないのか、特に何をするでもなく、仲間内で話したり村人と話したりしている。

「これは一気に賑やかになりそうだな」

 その様子を見て信也がそう口にする。
 北条も頷き返事を返そうとした時、人足の集まる中で一人だけ風貌の異なる人がいるのを発見した。

「お、あいつぁ……」

 そう呟くと、「少し話をしてくる」と言って場を離れようとする北条。
 しかし、「俺もついていこう」と信也も後をついてくる。
 北条も特に問題にしていないのか、そのまま二人してその男の元へと向かった。

「いよぅ、久々だなぁ。といっても、一度しか会ってないから覚えてないかもしれんがぁ」

 そう話しかける北条に、振り向いた男――ルカナルも、ほんの一瞬何かを思い出そうとしたようだが、すぐに記憶から引き出せたのか、ハキハキとした様子で返事をしてくる。

「えーと、はい! 《鉱山都市グリーク》で僕の作品を褒めてくださった、ホージョーさんですね? 実はあれから僕の所に冒険者ギルドからの使者が来まして……」

 そうルカナルが語りだすと、あれから冒険者ギルドからの使者が訪れ、今回の《ジャガー村》への移籍の件についての話がされたこと。
 まだ詳細は明かせないが、鍛冶屋以外にも多様な人材が今後《ジャガー村》へと派遣され、仕事に困る事もないという話をされたこと。
 肝心の部分の説明がされなかったので、ルカナルも大分迷ったようだが、意を決して話を受け入れて、この村へとやってきたことなどを、興奮気味に語っていた。

「お話は聞いてます。ホージョーさんがギルドに直接推薦してくれたんですよね? ここに来る前はまだ不安も多かったんですが、今では感謝してます! 実は最初はうさん臭いものも感じていたんですが、まさかダンジョンが見つかっていたなんて……」

「へぇ、もう話を聞いたのかぁ。それともここに来る途中にでも聞いてたのかぁ?」

 一応は・・・秘密事項であった、ダンジョンの事を既に知っている様子のルカナル。北条は少し気になって質問をする。

「ええと、そうですねえ。最初は領主の指示で《ジャガー村》に梃入れする為に、冒険者ギルドが主体となって、村の発展計画を推し進めるって話だったんですが……」

「どっかしらから情報が漏れた、と」

 信也の合いの手に、ルカナルはコクッと頷いた。

「まあ、そもそも村の発展の為に人員を派遣するにしても、冒険者ギルドが主体になる理由も不明でしたし、三組もの冒険者パーティーを引き連れて田舎の村まで行くってのも妙だと思ってましたからね」

「ほう、三組の冒険者パーティーか……。例のダンジョン調査の為に派遣されたものだろうな」

「僕もよく知りませんが、多分そんな感じなんだと思います」

 信也達も詳しい話までは聞いていなかったが、一か月後――すでに数日経過しているが――のダンジョン公開に向けて、予めギルド側でダンジョンの調査が行われる事は耳にしていた。

 調査期間中でも、発見者である信也達はダンジョン探索に励んでも問題ないと言われていたが、ただひとつ。無理をして死ぬようなことはするなよ、と警告を受けていた。

「俺達ぁ、これから恐らくその冒険者達を交えて話をしてくる所だぁ。すまんが、そろそろ行かせてもらうぞぉ。何か用件があれば、家まで訪ねてくるといい」

 そう言って北条は今住んでいる場所を伝えると、別れの挨拶を送るルカナルから離れ、ギルド出張所の小さな建物へと向かうのだった。



▽△▽△


 ギィィ……バタンッ!

 少し立て付けの悪いギルド出張所の扉を開けて中へと入ると、途端に幾つもの視線が信也と北条の二人に降り注いだ。
 その内のひとつは毎度おなじみジョーディのものだったが、それ以外にも男が三人に女が一人いる。

 それぞれ軽く特徴を挙げていくと、男性の内一人は髭を生やした小柄な老人で、眼つきが少し悪く風貌的には山賊といっても納得しそうだ。
 残る二人の男性は恐らくは三十歳前後の青年たちで、一人は穏やかな印象を受け、とても冒険者という荒事を生業としているとは思えない。

 もう一人は気障ったらしい顔をした男で、北条達へと無遠慮な視線を送ってきている。
 残った最後の女性は、ギルドの受付嬢が着ている制服を着用しており、背筋をキリッと伸ばし、静かに佇んでいた。
 やがて、髭を生やした老齢の男性が北条へと視線を向けると、徐ろに口を開きは話しかけてくる。

「やあ、よく来たね。見ての通り狭っ苦しくてすまないが、役者も……大体揃った事だし、話をさせてもらうよ」

 と、初めにそう切り出してきた。
 
「では、まずは自己紹介といこうかね。まず、私が今回のダンジョン調査隊の責任者であり、この村に冒険者ギルドが出来た暁にはギルドマスターとなる予定の、ナイルズ・ドルハースだ。よろしく頼むよ」

 そう言って律義にも右手で挨拶を送って来る。
 北条と信也もその挨拶に同じように答えると、次に他の面子についての紹介がナイルズよりなされた。

「それで、こちらにいるのが受付嬢兼、私の補佐としてギルドより派遣されたシャンイン君だ」

「初めまして。よろしくお願いします」

 この部屋に一人だけの女性であるシャンインは、そう短く挨拶の言葉を発する。

「次にこちらにいるのが『リノイの果てなき地平』のリーダーであるシグルド君。そして――そちらにいるのが『青き血の集い』のリーダーであるヘンリックだ」

 続いて、室内にいた残りの二人の男性の紹介がナイルズよりなされる。
 シグルドは紹介を受けた際に「よろしくね」と人の良さそうな顔で挨拶をしてきたのだが、ヘンリックの方は「フンッ」と息巻くだけで挨拶をしてくる事はなかった。

 とりあえず室内にいる信也達以外の紹介が終わったので、次はお前達の番だ、とナイルズに目線で促された北条は、更にその視線を信也にパスした。
 「え、俺か?」といった様子を一瞬見せたものの、北条からの視線を受けた信也が自分達の紹介を始める。

「俺は……今回ダンジョンを発見した二組の冒険者パーティーのひとつ、『プラネットアース』のリーダーの信也だ。で、一緒にいるのがもう一組の『サムライトラベラーズ』のリーダーである北条だ。よろしく頼む」

 そう言って礼をする信也。
 それはこの世界の礼儀作法と照らし合わせてみても、問題のないものであったが、何が気にくわないのか気障ったらしい男――ヘンリックが難癖をつけてきた。

「何でこの場に"発見者"を呼び出したんだ? ダンジョンの場所なら既に報告は受けているだろう」

 どうやら詳しい話は聞いていないらしく、この場にやってきた信也達にキツイ視線を送ってくる。

「確かにその通りだが、彼らはただの"発見者"ではなく、既にあのダンジョンに潜って探索をしているのだよ。今回はそこら辺の話を聞こうと思ってね」

 そうナイルズが補足するが、ヘンリックは納得した様子を見せず、

「フンッ! 聞いたこともないようなパーティー名という事は、どうせ低ランクのひよっこなのだろう? そんな奴らの報告などいちいち聞く必要もあるまい」

 と、かたくなに信也達に敵意……とはまた違う。見下した態度を取り続ける。
 だが、北条はどうだかわからないが、少なくとも信也はこういった手合いには、向こう・・・にいた時に何度も接していて慣れている。

 ただ、まだ相手がどういった人物なのかが掴めていないため、ここはとりあえず様子見をする事にした信也。

「ふむ……。君の主張は理解したが、冒険者としては失格だね。君のいう『低ランク』冒険者ならまだしも、下調べもせずに依頼を遂行しようとするのは、怠慢というのだよ」

 ナイルズの指摘に、一瞬で顔が湯だったように赤くなったヘンリックは、何故か発言したナイルズにではなく、信也達に向けて怒りを堪えたような顔を向けてくる。

「と、いう訳で。私としてはまず君たちから情報を窺おうと思っている。どうかね?」

 理不尽にヘイトを浴びてしまい、げんなりしている信也であったが、このナイルズという男はまだ話が通じそうだったので、了解の返事を返す。

「ああ、それなら構わない」

「そうか、それなら――」

 ナイルズが何か言いかけた時、それまで黙っていた北条が口を開いた。

「あー、少し待ってくれぃ。情報を明かすのに対し"対価"はもらえるのかぁ?」

 北条の横からの言葉を聞き、ヘンリックは更にその気障な顔を歪ませるのだった。




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