どこかで見たような異世界物語

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第七章

第158話 『再会』

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おー、見えてきた見えてきた」

 少し日に焼けた肌の、少年と青年の中間位の年ごろの男は、遠くに見える景色を見て思わずそう声を出す。
 その視線の先には、小さく木の柵で囲われた村と、大規模な拡張工事の現場が薄っすらと見え始めている。

「えーと、僕らが向かうのは村の方じゃなくて、あっちの工事してる方でいいのかな?」

 茶色の短髪の少年が周囲に確認するように問いかける。

「……じゃねーかな。前を歩いてる奴もそっち向かってるっぽいしな」

 茶髪の少年に答えるのは先ほどの少年だ。
 彼ら――『ムスカの熱き血潮』の面々は、《鉱山都市グリーク》で準備を整えるや否や、ダンジョンが発見されたという《ジャガー村》へと歩を進ませていた。
 先日の発表以来、こうして《ジャガー村》へと足を向ける冒険者の姿は後を絶たない。

 また、冒険者以外にも商機を求めた商人も数多くこの街道を移動するようになり、《ジャガー村》には連日人々が押し寄せて、てんやわんやといった様相だ。



「…………」

「どうしたー、ツヴァイ。ボーッっとした様子だけど」

 『ムスカの熱き血潮』では盗賊職担当の少年、シクルムが最近新しく加わったメンバーであるツヴァイに話しかける。
 ツヴァイは『ムスカの熱き血潮』にとっては念願ともいえる"神聖魔法"の使い手だ。

 前衛である『剣士』のムルーダと、『槍士』のロゥ。
 『盗賊』のシクルムに、『弓術士』のディラン。
 そして『魔術士』のシィラと、『バトルヒーラー』のツヴァイ。

 貴重な魔法職と回復職を押さえた、低ランクの中でもかなりバランスの良い方のパーティー編成だ。


「いや……。ようやく着いたって思ってな」

 村の方を眺めていたツヴァイが、ボーッとしていた理由に関して答える。
 その答えにシクルムもこれからの事を想ったのか、「おう、そうだな!」とテンション高めな様子だ。

「んで、あそこに着いたらどうする? まずはギルドに寄るか? それとも寝場所を確保するか?」

 ムルーダの言う「寝場所」というのは、宿を指しているのではない。
 事前にダンジョン発表の際に、《ジャガー村》ではまだ宿もない状態なので、それを踏まえた上で行動するように、とのお達しが冒険者ギルドから出ていたのだ。

 ちょうど発表の一週間程前に受けた依頼で遠出する際に、簡易組み立て式のテントを購入していたムルーダ達は、今回もその重いテントをわざわざ《ジャガー村》まで持ち運んでいた。

 一応現地でも徐々に宿……というほどでもないが、最低限の寝泊まり出来る施設も建設されているが、団体で泊まるような臨時の木賃宿しかまだ出来ていない。
 他の宿泊手段は、元々この状況を想定して《ジャガー村》に用意されたテントを有料で利用するか、商人たちが持ち運んだテントを購入するかしかない。

「んー、先に寝場所を確保した方がいいんじゃないかしら?」

 シィラの視線の先には、村の拡張部分から更に外れた場所にある"テント村"が映っている。
 まるで難民キャンプのようなそれは、ざっと見ただけで百近いテントが立ち並んでいた。
 こうして話してる今も、テントを設営中の恐らく冒険者パーティーと思われる姿が見える。

「あー……。そうだな、んじゃ先にアッチにいくか」


 こうしてムルーダ達は先にテントの設営を済ませ、改めて冒険者ギルドへと足を運ぶ事になった。
 場所については、テントを設営中に付近の同業者から情報を仕入れたので把握済みだ。

 そして、ムルーダは赴いたギルドの中で、かつてライバル認定した男と再会することになる。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「今回はあんま収穫なかったなー」

 龍之介はそうぼやきつつ、パーティー分で六分割された、自分の分の冒険の成果を受け取った。
 現在信也達は、五階層の北西部分にある階段を下りた先にある、地下迷宮エリアを探索している。
 このエリアは、北条達が足を踏み入れた場所と同じで、石で作られた地下迷宮となっているが、敵の強さに関しては雲泥の差がある。

 六階層から十階層まではG~Fランクの魔物しか姿を見せず、今回探索した十一~十三階層になって、ようやくEランクの魔物もちらほら見かけるようになった程度だ。

 魔物罠部屋だとか、番人キーパーが守る宝箱だとかいったものも見当たらず、野良の宝箱すらひとつも見つかってはいない。

「まあ、そういう事もあるだろうさ。それよりも……」

 途中で言葉を止めた信也は、ギルド内の様子をぐるりと一瞥する。
 そこには、今まで存在していなかった冒険者と思しき連中があちこちに見受けられた。
 混雑して騒がしい、といったほどではないのだが、これまでの職員しかいなかった頃と比べると、大分にぎやかなものだ。

「すごい人の数……ですね」

 その様子に慶介も思わずつぶやいてしまう。

「フンッ。まったくやかましいわね。むさくるしいったらありゃしない」

 しかめっ面をした長井がキツイ口調でそう吐き捨てる。
 確かに、見た所冒険者の男女比率は男の方が高く、特に前衛職と思われる連中は見ているだけで暑苦しい。
 近くに寄ると汗や体臭がただよってきそうな感じさえする。

「早く私の分の報酬を寄越しなさい。こんな所に長居するつもりはないわ」

 そう言って右掌を差し出す長井に、今回の報酬を渡しながら信也が話し掛ける。

「待ってくれ。ここを出ていく前に、先にみんなで『更新部屋』に寄って、ギルド証を更新する。レベルの確認と共に、取得に気づいてないスキルもあるかもしれない」

「……わかったわ。それが終わったら即行出ていくわよ」


 今回のダンジョン探索に行く前に、転職と鑑定は済ませていたが、ステータスの更新については、魔法装置の設置が終わっていないとの事で使用することが出来なかった。
 設置には数日かかるとのことで、先にダンジョンに潜る事にした異邦人達なのだが、信也達がダンジョンから帰ってきた時には設置の方が終わったとのこと。
 そこでこの度のステータスの鑑定タイムとなった。

 前回《鉱山都市グリーク》を発つ直前に調べた時は、まだレベルが十かそこいらだった信也達。
 それが今回の更新では、各自倍以上のレベルに達していた。
 このレベルは既にEランクなりたての冒険者と同等のレベルである。

 この間Fランクに上がったばかりの異邦人達だが、この調子だと近いうちにまたランクを上げられるだろう。
 このように、冒険者ギルドではDランク位までならランクに相応しい強さがあれば、比較的すぐに昇格していきやすい評価システムになっている。


「それじゃ、私は行くわ」

 そう言うなりギルドを出ていく長井。その後を石田が続く。
 帰ってくる時間がバラバラだったりするので、一緒に行動してる訳でもなさそうなのだが、この二人は他と比べ団体行動から外れることが多くなっている。

「あ、ちょっと……」

 少し慌てた信也の呼びかけに目もくれず、二人はそのまま立ち去っていく。
 信也としては、今回更新したことで明らかになったスキルについても話をしたかったのだが、実際の所そういったスキルの数は少なかった。

 闘技スキルや魔法系のスキルなどは、取得すればすぐに使用可能になって実戦で使っていくので、あえて調べないと分からないスキルとなると、耐性系のスキルなどが主だ。
 あとはせいぜい"体力強化"などの常時発動型のパッシブ系スキル位か。


 信也は今回更新した自身のギルド証を懐から取り出して、改めて自身のスキルを確認してみる。

「"ストレス耐性"は自覚していたが、"痛み耐性"なんてのも覚えていたのか。はははっ……」

 と少し情けない声を出す。
 耐性系のスキルは当人の適正も重要だが、スキルに応じた攻撃なりなんなりを、実際にその身に受けないと大きく成長できないし、スキルの取得もそもそも出来ない。

 そういったスキルの取得システムを鑑みて、それだけ自分が今までダメージを受け続けてきたのだと、突き付けられた気がした信也。
 その胸中には常に敵の攻撃を躱し、まともに負傷をした様子を見た事のない北条の姿が思い浮かんでいた。

 しかし、今や別パーティーなので現在の北条の戦闘の様子を知る事は出来ないし、そもそも北条は"ライフドレイン"で常にHPを回復しているので、負傷したとしてもすぐに治してしまう。
 なので比較対象としてふさわしくはない。

 実際のところ、ある程度累計ダメージを負っているハズの龍之介に、"痛み耐性"のスキルが生えていない辺り、結局は信也に適正があっただけの話なのだが。

「でもそれって結構じゅーよーじゃね? オレもしょーじきあの枯れ木のバケモンと戦った時は、痛みで何度も意識飛びそうになったからなー」

 そう口にする龍之介には、"痛み耐性"は覚えていなかったが、"咆哮耐性"と、"威圧耐性"というのを取得していた。
 名称からして、《ドルンカークの森》でテイルベアーと戦ったのがきっかけで覚えたのだろう。

 他にはメアリーに"水耐性"スキルなど、なんでそのスキルが? というものも幾つかあったのだが、「知らず知らずのうちに覚えていた能動的に使えるスキル」は誰も覚えていなかった。
 ついでに言えば、訓練の結果もやはりまだ出ていないようで、"恐怖耐性"も誰も取得出来ていない。


 そういった会話をしていた信也達に近づいていく男の姿があった。
 その顔は久々に会った"ライバル"を見て勝ち気そうな表情を浮かべている。

「ヨオ! リュウノスケ、元気そうだなっ!」

 親し気にそう声を掛けてきたムルーダ。
 その背後からは、彼の仲間である『ムスカの熱き血潮』の五人が人並みをかき分けて出てきた。

 こうして久々の再会・・は果たされるのだった。




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