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第七章
第157話 再転職
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冒険者ギルドを出た後、《ジリマドーナ神殿》に向かった信也達。
ギルドでは予想以上に時間を取られてしまったが、神殿の方では逆に予想以上にすんなりと転職が完了した。
最初に転職した時と同じように、流れ作業で次々と転職をしていっただけだからだ。
ただ、前回と比べ色々と経験を積んだせいか、転職時に示される転職先の数はみんな増えていた。
とはいえ、基本的には全員前の職の上位職業を選んでいる。
最近は裏で事務作業などに忙しいらしく、ジョーディと話す機会も減ってしまっているが、代わりにナイルズに転職について相談した結果、他の職業に手を出すよりこちらの方がいいと勧められていたのだ。
その結果が以下の通りだ。
石田は『闇術士』から『闇術師』。
信也が『光剣士』から『ミドルライトソードマン』。
龍之介は『剣術士』から『剣術家』。
メアリーは近接戦闘の事も考えて、『回復術士』から『ミドルヒールスマッシャー』。
慶介が『水術士』から『水氷術師』。
北条は『混魔槍士』から『カオティックハルバーダー』。
由里香は『格闘家』から『武道家』。
楓は『下忍』から『中忍』。
咲良は『四大魔術士』から『四大魔術師』。
芽衣は『召雷術士』から『ランダ・ヌイ』という謎職業に。
最後に陽子が『結界付与魔術士』から『結界付与魔術師』。
後はこの場にいない長井だが、信也達が冒険者ギルドに行っている間にすでに転職は済ませたらしい。
その後いずこかへ去っていったようだが、後で一応長井の職業も確認しておく必要がありそうだ。
一同の転職結果を見ると、大抵は一つ上のランクの職に就いたようだが、北条と芽衣の職業が少し毛色が違うように見える。
北条の方はまだ字面的に前職と関係はありそうだが、芽衣の職業に関しては固有名詞のような名称だ。
この世界のステータス職業というのは多種多様に存在しており、こうした固有名詞を持つ職業が幾つも存在している。
他の一般的な職業と比べると、尖った特徴を持っていたり特殊なスキルが覚えやすくなったりと、ある意味転職するのに二の足を踏んでしまいがちだ。
しかし、転職時に提示される職業は、選択時に大まかにその職業がどのようなものかを、感覚的に理解することが可能だ。
芽衣がその時感じた感覚によると、『ランダ・ヌイ』というのは、"雷魔法"と"風魔法"、それから槍の扱いに向いた職業であるらしい。
その得意な系統の中に"召喚魔法"は含まれてはいないが、すでに取得しているので使えなくなる事はないし、今まで通り使っていけば熟練度を磨くことは可能だ。
ただし、召喚士系の職業よりは習熟速度は下がることだろう。
何故この職業を選んだのかについて、芽衣が語ることはなかったが、この職業に就いたおかげで早速"風魔法"のスキルを習得出来たらしい。
なのでこれはこれでアリの選択だった。
「さて、これで用件はとりあえず済んだが……これからどうする?」
「うーん、とりあえずごはんっ!」
「そうねえ。もうお昼も大分過ぎちゃってるみたいだし、一旦寮の方に戻るのでいいんじゃない?」
思いのほか時間を取られてしまったせいで、陽子の言うようにすでに正午はとうに過ぎていた。
なので、今にもぐぅ~っっとお腹を鳴らしそうな由里香の提案を受けて、昼食を取る事にした一行。
その帰り道のこと。ポツポツッっと雨粒が降ってきた。見ればいつの間にか空がどんよりとしてきている。
「……あー、これは午後の予定は建てられないかも」
初めは小さな雨粒だったのだが、雨足はドンドンと強くなっていき、寮にたどり着くころには大粒の雨へと変わっていた。
基本、ダンジョンに潜っている事の多い異邦人たちは、これまで大雨に振られるという経験がなかった。
せいぜい《鉱山都市グリーク》への旅の途中に、軽く雨に降られた程度だろう。
「こりゃあ、拠点予定地に屋内の戦闘訓練施設も用意した方がいいかぁ?」
時間を無駄にするのが嫌いで、常に開いた時間を効率的に活用して訓練なりを行っている北条は、思わずそんな事を呟いてしまう。
「ま、それもいいかもね」
気軽に答える陽子だが、そうした建物を作る場合、優先順位としては後回しになるだろう。
こうして活動を制限された信也達がそれぞれ屋内で出来る訓練をしたり、じっくり休息を取ったりしていると、流石の大雨に嫌気がさしたのか。どこぞへ出かけていた長井も寮へと帰ってきた。
メンバーが全員揃ったという事で、久々に全員で会議を行う。
その際に、長井の職業が『ローグ』から『ローグチーフ』になったとの報告を受けた。
これで全員の転職した職業が明らかになった訳だが、スキルに関しては完全に把握しきれておらず、芽衣のように転職によって新たに目覚めたスキルもあるかもしれない。
しかし、ナイルズの話ではステータス鑑定の魔法装置はまだ稼働していないようなので、詳細を確認するのはもう少し後になりそうだ。
他に会議では地図情報の共有を初めとした、ダンジョンに関する情報の共有。
とくに、鉱山エリアの隠し扉から抜けた先のエリアについては、改めて北条達が注意を促した。
あとは、明日になったらダンジョンに向かうまで全員一緒に移動することが決まる。
いつまでこの厳戒態勢が続くのかは不明だが、早く『流血の戦斧』問題が片付くといいなと、外から聞こえてくる雨音を聞きながらしみじみ思う信也だった。
▽△▽△▽
翌日。
朝早くからダンジョンに向かった異邦人達は、道中何事もなくダンジョンの転移部屋までたどり着くことができ、各々の探索先へと転移していった。
信也達は、五階層の北西部分にあった、下り階段から降りた先にある地下迷宮タイプのエリアの方へと。
そして、北条達も同じ地下迷宮タイプのあのエリアへと飛ぶ。
ダンジョンの各所に配置されている迷宮碑のある部屋は、必ずしも安全とは限らない。
ひっそりと近くで襲い掛かろうとする他の冒険者が潜んでいる可能性もあるし、余りないケースだが、転移先の部屋で魔物と出くわす可能性もある。
それには以下のような場合が考えられる。
まず、ダンジョンの魔物の習性として、迷宮碑のある部屋を避ける動きをすることが知られている。
しかし、魔物と出会った冒険者が、迷宮碑部屋まで逃げ込んだとしても、構わず後を追って部屋の中まで魔物は入ってくる。
このタイミングでその部屋に転移した者がいた場合、魔物とすぐ遭遇することになるだろう。
そして、そういった偶然を信じて、危険な魔物から逃げ延びる為に迷宮碑部屋を目指す冒険者もいる。
魔物を擦り付けられる形の転移してきた冒険者にとっては、完全にとばっちりなのだが、命が掛かってるとなればそういった行動をする者がいるのは致し方ない。
その場合は、転移してきた者と逃げ込んできた者が、共同で魔物退治に当たる。
迷宮碑部屋に魔物がいる場合、その部屋に転移するのは可能なのだが、魔物のいる状態の部屋から他の部屋への転移が一時的にできなくなってしまうのだ。
次に、何らかの手段で魔物を迷宮碑部屋まで誘導したり、引っ張って来た魔物を迷宮碑で足止めして一気に距離を離して逃げる。そんな事をする冒険者も存在する。
いわゆるMMORPGでいう所のMPKという連中で、魔物に冒険者を襲わせることで、自分達が手を出すことなく冒険者の遺品などを奪うことを目的にしている。
……中には愉快犯的な目的でやっている者もいるようだが、そもそも特殊なスキルや誘導方法のノウハウなども必要だ。
更に、転移してきた冒険者を狙うにしても、元々その階層の魔物と戦える連中が普通は転移してくるので、数体程度を連れてきた所で効果は微妙だ。たくさん魔物を引き連れてこない限り、普通に倒されて終わってしまう。
なので、こちらのケースは極まれである。
このように、これらのケースは基本的に人為的な原因によるものであり、まだ人の手が入っていないダンジョンならば、転移先の安全はほぼ保障されたようなものだ。
今回のように、転移してすぐに鉱山エリアの方へ戻るのならば、あの猿達と出会う事なく、鉱山エリアの最深探索部分へと復帰できるだろう。
あの時の事は未だに北条達の胸の内には残ってはいたが、意を決して転移した先には魔物の気配はなく、静けさが辺りに満ちていた。
その静けさを堪能する余裕もなく、慌てて鉱山エリアに続く階段を上り、鉱山の外縁部にまでたどり着くと、ようやく一息をつく。
こうして、転職を終えダンジョン産の装備の鑑定と分配も済ました異邦人達は、装いも新たに再びダンジョン探索へと勤しむのだった。
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