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第十章
第233話 新メンバー、加入
しおりを挟む「僕はその条件で構わないッス」
ロベルトの口から、ハッキリとした了承の意志を伴う言葉が発せられる。
妹のカタリナの方は未だ考え中のようであったが、ロベルトの言葉を聞いても反対する様子はない。むしろその意志に従うかのように、考えるのを止める。
「そうかぁ。ちなみに何故そこまで俺たちに拘る? 自分で言うのもなんだがぁ、この条件は少しばかり異例だと思うぞぉ」
「それは……まずツィリルさんを救ってもらったという事があるッス」
「……ふむ」
「僕らにとって『巨岩割り』の人たちは第二の家族だったッス。その家族を治してもらい、更にはオヤジの…………敵まで取ってもらって……。ほんと、感謝しきれないッス」
あれから半月ほどが経過し、気力が抜けたようだったロベルトも表面上は持ち直している。
しかし、父親同然に思っていたジババの事を語るロベルトは、辛そうな表情を隠しきれない。
「それに、僕はあのホージョーさんと悪魔の戦いを見てて惚れたッス! あの、とんでもない化け物と真っ向勝負する姿に痺れたッス。パーティーに加わったら、ぜひともオジキと呼ばせて欲しいッス!」
「ぬ、ぬぬ……。いやぁ、そういうアレは困るのだがぁ」
先ほど浮かべていた沈痛な表情から、今度はキラキラと少年のような瞳をするロベルト。コロコロと感情が変化する様は、まるで赤ん坊のようだ。
ロベルトのその変わり身に、北条もついつい押されがちになる。
「だがまあ、事情は分かったぁ。オジキと呼ぶのは止めてもらいたいがぁ、お前たちをパーティーに受け入れよう。みんな、構わないかぁ?」
「俺は構わない」
「あたしもいいと思うっす」
「わたしも~」
「……問題はなさそうだなぁ。ではこれより"契約"を取り交わす!」
仲間の返事を確認した北条はそう言って、改めて今回交わす条件について再度述べていく。
それが終わると、契約者であるロベルトらに最終的な確認をする。
「――――以下の内容で我々と契約を結んでもらう。この契約を遵守すると誓うか?」
「誓うッス」 「誓います」
「では、我々の代表として和泉にも尋ねる。この契約について遵守すると誓うか?」
「あ、ああ。誓う」
台本にない話を急に振られた状態の信也は、若干戸惑いを見せたがすぐに返事をする。
「それでは、両者の同意に伴い、この契約を成立とする。【契約執行】」
最後に北条がそう言うと、この場にいる全員の胸元から光の糸のようなものが伸びていく。
光の糸はロベルトとカタリナの二人から、異邦人達全員に向けて伸びていき、両者が完全に繋がると僅かに明滅して消える。
「こ、これってもしかして?」
普段は冷静なカタリナも、北条が使ったこの魔法については驚きを隠せないようだ。
「む、知っていたかぁ? 今の契約は"契約魔法"によって正式に結ばれたぁ。まあ、略式の契約だけどなぁ」
「うぇっ!? "契約魔法"って言ったら奴隷とかに使う奴ッスよね?」
「んんむ、まあそういった用途が一番よく知られているがぁ、あくまでこれは契約を結ぶための魔法だぁ。別に今のでお前たちが奴隷になった訳ではないぞぉ」
まさかいきなりそんな魔法が使われるとは思っていなかった二人は、大分混乱した様子を見せている。
それと同時に、北条がどうしてここまでの条件を付けてくるかについても、薄々見当がついてきた。
「でもこれって魔法で契約したからってなにかあるの? 破ったら痛みが襲ってくるとか?」
ここで陽子が気になったらしい点を質問してくる。
「いやぁ、今回のはあくまで略式なんでそういった効果はぁない。ただ、契約を破った場合、相手にその事が伝わるようになっている」
今回の契約については、基本秘密厳守を課せられるロベルトらの方が守るべき点は多い。
だが「ロベルトらが契約違反をして奴隷身分になった場合、異邦人側は借金奴隷として扱う事」というのも契約に含まれているので、異邦人側はこれを守らなくてはならない。
「問題があればぁ、後で両者の同意の元、魔法による直接的な罰則などを設けることも出来るがぁ、まあ今はいいだろう」
「わかったッス。けど、ホージョーさんがまさか"契約魔法"まで使えるとは思ってなかったッス」
「そうよ。"契約魔法"は覚えようと思って覚えられるもんでもないし、一体どういうことなの?」
「それが違うんだなぁ、俺の場合」
そう言って北条がスキルを『ラーニング』出来る事について語ると、双子の兄妹は揃って顔から表情が抜ける。
「何を言ってるんだこいつは」とか「頭大丈夫?」とか思ってそうな、二人の胡乱気な視線を一身に受ける北条。
「まあ普通はまず信じられんわなぁ。ふうむ、どれどれ。これが一番分かりやすいか」
そんな二人に『ラーニング』の事を証明するため、北条はロベルトの持っていたスキルを本人に対して使用してみせた。
初めは微かな違和感くらいしか感じていなかったロベルトだが、徐々にその顔色が変わっていく。
「兄さん……? もしかして……?」
その様子を見て、カタリナが恐る恐るといった感じでロベルトに尋ねる。
だがロベルトはそれどころじゃないといった感じで、ひたすら小さな声で呪文を繰り返している。それはどうやら"風魔法"の呪文名らしい。
「ダメだっ! 出ないッス」
「ソレがどういう事だか、二人には理解できるはずだぁ。ついては、お前のそのスキルの事をみんなにも明かそうと思うんだが、構わんかぁ?」
「……それは構わないッス。というか、ホージョーさんは鑑定系のスキルも持ってるんッスね?」
「そゆことだぁ。では本人の承諾も得たので、ロベルトのレアスキルについて説明しよう。ロベルトはレアスキルを二つ所持しているがぁ、その内のひとつが"スキルスティール"というものだぁ」
「レアをふたつ……」
「二つ持ちもやべーけど、そのスキルの名前はっ!」
説明を聞いて咲良と龍之介が過敏に反応を見せる。
北条が自身の能力を明かした後、異邦人たちは改めて北条によって"解析"を受けているが、レアスキルの保有数というのは少なかった。
いやそれでも最初にスキルを選択可能だった分、一般人よりレアスキルの保有数は多いほうである。
それでも現時点で一人でレアスキルを二つ持っている者は、北条を除いて存在しない。
「察しの通り、これは相手のスキルを盗むスキルだぁ。といってもなんでもかんでも盗めるという訳ではない。今はロベルトから『ラーニング』した"スキルスティール"で、ロベルトの"風魔法"をスティールしていた。……っと、こいつは返すぞぉ」
北条から"風魔法"を返してもらったロベルトは、早速"風魔法"を使って確認を済ませる。
自分の持っていたスキルを奪われるというのは、この世界の人からしたらとんでもなく不安を抱かせるものなのかもしれない。
「とまあ、これで俺の『ラーニング』については理解しただろう? "スキルスティール"はレアスキルであり、俺もこれまで覚えていなかったスキルだからなぁ」
「よーーく分かったッス。……ただこんなあっさりとスキルを奪われた事が納得できないッス」
「それはお前が持っている"スティール耐性"の事を言っているのかぁ?」
「う、それもそうッスけど、元々"スキルスティール"はそう簡単に相手からスキルを奪えるもんでもないッス。使おうとすると、相手が無意識にでも抵抗してくるのでやりにくいんッス」
「そいつに関しては、俺の称号のせいだろう。お前たちも知ってるだろうがぁ、スキルは覚えるほど種類に応じた称号がもらえ、スキル効果は強化されていく。そこに俺の『ラーニング』が重なると……」
「……うぁ、それはえげつないッスね」
「その通り。これらの称号の影響はかなぁりでかい。『ラーニング』で得た多くのスキル。その結果得られた称号によって、スキルが強化されている俺は、ロベルト達よりレベルが低いというのにかかわらず、あの悪魔とサシでやりあう事も出来たという訳だぁ」
「えっ……、はっ? ちょっと、ホージョーさんのレベルって幾つなんッスか?」
「三十一だぁ」
「げぇ、本気ッスかっ!」
北条のレベルを聞いて驚きの声を上げるロベルトだが、カタリナの方はいい加減驚きの連続で疲れてしまったのか、大きな反応は見せていない。
「そういった訳で、俺を含め、俺たちみんなお前らよりレベルは低いがぁ、これからは同じパーティーメンバーになる。よろしく頼むぞぉ」
そう言って北条がロベルトの肩をポンと叩く。
「よ、よろしくッス」
ロベルトは驚きの連続で少し頭の働きが鈍っていたが、軽く肩を叩かれたことで反射的に挨拶を返す。
少し遅れてカタリナも改めて挨拶をした。
それからしばらくは、会議室でロベルトら新メンバーを交えて雑談が行われていた。
まずは改めてお互いの自己紹介から雑談は始まる。
初めの内は簡単な能力の説明などが中心だったが、両者は徐々に打ち解けていった。
好きな料理の話やら、これまで旅してきた中で見つけた珍しいものの話など、冒険者として先達であり各地を旅してきたロベルトらの話は、なかなかに興味深いものがある。
こうして異邦人達に新たなパーティーメンバー、ロベルトとカタリナの双子の兄妹が加入することになるのだった。
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