どこかで見たような異世界物語

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第十一章

第273話 順調な探索

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「この辺りも出現する魔物はそう変わらないようね」

「そうだな! 確かもうしばらくはこんな感じだったと思うぜ」

 信也達『プラネットアース』と十層で分かれた北条たちは、その先へと続く階層を先へと進んでいた。
 地下迷宮エリア十一層の入り口には迷宮碑ガルストーンが設置されていて、そこで登録を済ませた一行は魔物を蹴散らしながらエリア制覇を目指す。

 龍之介の話によれば、この地下迷宮は最初の六層と先ほどの十一層、それから十六層と二十一層に迷宮碑ガルストーンが設置されているらしい。
 順当に行けばその先は二十六層ということになるが、このペースでどこまで階層が伸びているのかは、未だにギルドでも情報が出回っていない。


「まあこれ位の魔物相手ならいいけど、リューノスケ。あなたちょっと前に出すぎじゃない?」

「ああん、そうかあ? オレはいつもこんな感じだぜ?」

「だからそれを少し抑えなさいって言ってるのよ」

「ごちゃごちゃうるせーなあ。お前は咲良かよ!」

「はぁ……。サクラの気持ちもわかるわね。アンタが前に出過ぎると、後衛側はやりづらいのよ」

「っつっても、前に出れば敵はどんどん襲ってくるんだ。それに対応してたら前に出ちゃうのも仕方ねーだろ」

「メアリーを前に良い所見せたいのは分かるけど、そんな立ち回りでは今後大きな失敗に繋がる事もあるわよ」

「なぁっ! はあぁ? お前何言ってんだよ。べ、別に細川さんはかんけーねーだろ!」

 これまで龍之介の前に出ていくような戦い方について、注意してくる相手は咲良かせいぜい陽子辺りであったが、今はその両名ともパーティーに参加していない。
 北条はなんだかんだでこの程度の階層なら余裕もあるので、いざという時でもすぐにカバー出来ると思っているせいか、口を挟んだりはしてこない。
 だが冒険者として年単位で先輩であるカタリナは、腕はあるのに未熟な部分が多い龍之介の事が気になるようだ。

「pggrrrrr……」

 二人がそんな会話をしていると、通路の奥から魔物の鳴き声が聞こえてくる。
 実は二人の会話中にも北条が魔物接近を告げていたのだが、カタリナはともかく龍之介の方は今魔物に気づいたようだ。

「っとお、敵さんのお出ましだぜ!」

 小うるさい話を切り上げる絶好の機会として、さっさと前衛の位置へと移動していく龍之介。
 その後に、メアリーも所々に血のような色合いのある〈ブラッドメイス〉を手に、前衛の位置へと配置に付く。

 二人の前衛の後ろには中衛として楓が。更にその背後には後衛として残りの三人が控える。これが現在の『サムライトラベラーズ』の基本フォーメーションだった。

 メアリーも最近ではすっかりメイスの扱いに慣れてきたようで、普段の大人しい感じとは裏腹に、ニコリとも気迫の籠った顔でもなく、淡々と表情を変える事なく次々と敵を屠っていた。

 やがて配置が完了した『サムライトラベラーズ』の前に、いくつかのふわふわと浮かぶ球体と、ゴブリン達がタッグを組んで襲い掛かってきた。
 この浮遊する球体は「フライングアイ」というFランクの魔物で、名前の通り直径六十センチほどもある巨大な空飛ぶ目玉だ。

 こいつは直接攻撃はしてこないのだが、その巨大な眼は"麻痺眼"の能力を有しており、ただひたすらに冒険者の事をじいぃっと見つめてくる。
 強さはそれほどでもないのだが、攻撃しようとすると上空に浮遊して逃げるので、近接の前衛だと倒しづらい相手だ。

 そういった特性のせいか、大抵こいつらは単体で現れるのではなく、他の魔物とセットで登場してくる。
 魔術士の中でも使用者が多い、"火魔法"や"風魔法"に対しての耐性を持つフライングアイは、遠距離攻撃出来たとしても少し面倒な相手だ。

「よおし。俺と睨めっこ勝負だぁ!」

 しかし豊富なスキルを持つ北条からすれば、ただの金魚のフン的な魔物に過ぎない。
 今もスキル上げを兼ねて、信也から覚えた"光の魔眼"と"闇の魔眼"のダブル魔眼で、フライングアイのHPを削っていく。

 じぃぃぃぃ……。

 じいいいぃぃぃぃ……。

 両者ともに相手をじっと見つめあう睨めっこ勝負は、やがてHPが尽きたのか、ポトリと地面に落ちたフライングアイの敗北によって決した。
 フライングアイも、必死に"麻痺の魔眼"で北条を見つめていたのだが、まったくといっていいほど効果はなかった。

 一方前衛ではゴブリン達相手に大立ち回りをする龍之介と、それをフォローするように立ち回るメアリーの姿があった。

「ううん……。あの様子なら手助けの必要もなさそうだけど、魔力には余裕もあるし、スキル上げの為にもちょっと手を出しますか」

「龍之介さん、魔法行きます! 【雷の矢】」

 どちらでもいいかなと少し様子を見ていたカタリナも、魔力に余裕があったので攻撃に参加しようとする。
 だがその前に、先に慶介の"雷魔法"が放たれた。
 レベルの上ではカタリナの方が高いのだが、慶介は魔法スキルを四種類も持っているので、MP的にはカタリナより少し多い。

「prrrrrrr!!」

 慶介の【雷の矢】を受けたフライングアイが、地面へと墜落していく。
 だがまだ止めは刺せていないようで、その事に気づいた龍之介が落ちて来たフライングアイを見事に一刀両断する。

「ハァ……。剣の腕だけ見れば凄いんだけどねえ」

 その様子を見てカタリナがそう呟きつつ、自身も魔法攻撃を開始する。
 "精霊魔法"の方ではなく、"水魔法"による攻撃だ。

 こうして一匹、また一匹と、魔物の姿はなくなっていく。
 数分後にはドロップを回収する龍之介達の姿が、そこにあった。


▽△▽


「うーーーん、これどんな味すんだろ」

 ドロップの一つ、フライングアイの肉を手に、龍之介が思案気な声を上げる。
 フライングアイは、完全に眼球だけが浮いているのではなく、その周りにぶよぶよとしてそうな肉の部分も若干付着している。
 このドロップはその肉の一部分だと思われるのだが、少し灰色がかっていて余り食欲を注がれるものではない。

「味は分からんがぁ、耐性スキルの訓練に食べてみるのもいいかもしれんぞぉ。なんなら俺が焼いてやろう」

「い、いや……それはちょっと……」

 自分で言いだしておきながら及び腰の龍之介。
 実はすでに"解析"スキルでこの肉の効果は全員が聞かされていた。
 このフライングアイの肉は、魔物が好むらしく、魔物をテイムする際などに使われる事があるらしい。
 だが人間がこの肉を食べると「状態異常:盲目」になるらしく、わざわざこの肉を食べようとする者はいない。

「僕は食べてみよう……かな」

「え、おま……マジかよ!」

 半分冗談のノリの会話に参加してきたのは、真面目な表情をした慶介だ。

「北条さんの"恐怖耐性"訓練だって役に立ちましたし、これだっていつか役に立つときがくるかも……」

「あー……、まあ、そうだなぁ。本人がその気なら構わんがぁ、やるならダンジョン出てからのが良いだろう」

 北条もまさか同意者が出るとは思ってなかったのか、少し言葉につっかえていた。
 ただ実際に称号効果によって、北条が指導した相手はスキル熟練度の伸びがいい。

 本来なら戦闘スキルとか魔法スキルだとか、スキルは幾つもの分類に分かれている。
 なので、称号効果で魔法の達人は魔法を教えるのが上手くなるが、戦闘スキルに関してはからっきしというのが普通だ。

 だがこれらのスキル系の称号は、スキルの取得数によって上位の称号に昇格していくので、『ラーニング』しまくっている北条は、種類ごとに応じた上位の称号を幾つも持ち合わせている。
 そんな北条がフライングアイの肉を調理して食べさせれば、確かに"盲目耐性"辺りの耐性スキルは得やすいだろう。

「……なんだかあなた達って不思議ね」

 そうしたやり取りを見て、カタリナは今までも何度か感じた事のある疑問を抱く。
 確かに強さに貪欲な冒険者というのもいるにはいるが、そういった冒険者はただ単に無謀に敵に突っ込んでいったり、身の程を知らずに上の狩場に行ったりするような奴らばかりだ。

 だが彼ら異邦人は驚くほどに安全に対して気を使い、それでいて苦行者かと思う程鍛錬なども欠かさない。
 一国の騎士を目指す従士でも、あそこまでストイックではないんじゃなかろうか。
 このように頻繁なペースでダンジョンに潜る冒険者というのは、実はそう多くはないのだ。


「ま、俺らは遠い異国の生まれだからなぁ」

「ふぅん……、ま、確かにそう言われると納得は出来るわね」


 そうした世間話をしてる間にドロップの回収は終わり、特に休みを入れる事なく再び探索を再開する。
 こうして二手に分かれて探索を始めてから四日が経過し、無事に十六層まで辿り着いた『サムライトラベラーズ』は、迷宮碑ガルストーンに登録を済ませ一息つくのであった。



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