324 / 398
第十一章
第286話 ルームイミテーター
しおりを挟む「アタリ……?」
「そうッス。この魔物、もしかしたら守護者かもしれないッス」
「つまり、ここが最後という事か」
ロベルトがこのルームイミテーターを守護者だと判断したのは、守護者の中には戦闘に入ると、出口が閉ざされるケースがあるという事を知っていたからだ。
ルームイミテーターが部屋に偽装し、中に入ってきた者に襲い掛かる時には元々入り口を閉ざすという行動をする事は、知らなかったようではあるが。
実際の所は彼らのあずかり知らぬところではあったが、こうして閉じ込められた以上は否が応でも戦わざるをえない。
身構える信也達は、まだ敵が襲い掛かってこない事を利用して、陽子に"付与魔法"を順に掛けてもらう。
筋力増強などのステータス強化系は、この罠エリアの深層になってから常時切らさないように最低限維持し続けてきたが、今陽子が使ったのは【プロテクション】という防御力を一時的に上げる魔法である。
相手の弱点属性が分れば武器に属性付与もありだが、ウォールイミテーターなどと戦った際には、特に弱点属性はなさそうだったので今回はナシだ。
信也達がそうして戦闘準備を整えている間、ルームイミテーターもただジッとしていた訳ではなかった。
壁や床に同化することなく、少し離れた場所で本体を晒していたルームイミテーターは、魔法なのかスキルなのか。
その辺りいまいち判別がつかなかったが、石で出来た口を大きく開けると声なき声を上げる。
すると、石で出来ている周辺の床から人型をした石の塊が四つ、せりあがって来る。
そしてすぐさまやるべき事を理解したのか、その四体の人型の石――ストーンゴーレムたちは、信也達の方へと襲い掛かる。
「俺が前に出る」
「あなた達も和泉さんに加勢してね~」
ゴーレム達を見て颯爽と敵の方へと向かう信也。
その後を芽衣が召喚していたオーガ達がついていく。その数、二体。
残りの召喚枠はウィンドウルフ、アースウルフ、ファイアウルフの三種の属性ウルフ達で、その三匹には遠距離からの魔法攻撃を指示しておく。
「う~ん、あいつら相手なら途中で呼びなおした方がいいかな~」
ただでさえ石で出来たイミテーター系の魔物が相手だというのに、更にそこにストーンゴーレムまで追加されてしまっては、属性ウルフ達の牙では分が悪い相手に思える。
ひとまず芽衣は召喚はそのままでいく事にしたようで、〈フレイムランス〉を手に取ると、既に戦端が開かれている信也と由里香の下へと走りこむ。
「うー、こういう奴相手は得意じゃないんッスけどお」
泣き言を言いながらも、ロベルトもあとに続く。
確かに短剣では攻撃は通しづらいだろうが、ロベルトは"クリティカル率上昇"のスキルを持っているので、クリティカルが出ればダメージを通すことは出来る。
この辺りも咲良や陽子からすれば『ゲーム的』に感じてしまうのだが、ロベルトらこの世界の人からすればこれが当然の事だ。
攻撃をしてダメージを与える際に、時折妙に手ごたえを感じる攻撃が出来るときがある。
実際に攻撃を受けた側にもそれは伝わるので、気のせいとかではない。
しっかりとクリティカルという、概念というかシステムが存在する事の証左だ。
このクリティカルが発生するとダメージが上がる他、相手の防御の一部を貫通すると言われている。
このように硬い魔物相手に不向きな短剣であっても、ダメージをきっちり与えられるのだ。
もっともダメージを与える手段があっても、逆にあの石の体を持つストーンゴーレムに殴られれば、大きなダメージをもらうことは間違いない。
ロベルトは攻撃を当てるよりは、相手の攻撃をもらわない事に注意しながら慎重に戦いを進める。
「和泉さん、その右の奴に魔法いきます! 【フレイムランス】」
「うーん、私はちまちまコイツでも投げておきますか」
後衛では咲良が得意の"火魔法"を。陽子が魔弾などの投擲武器の援護射撃に入る。
相手方のストーンゴーレム四体はきっちり信也らが止めているので、二人の所まで近寄って来ることはない。
ただ……、
「うわっ」
部屋のどこかに潜んで、時折遠距離攻撃をしてくるルームイミテーターの攻撃が、後衛の陽子らの方へも飛来してくる。
ウォールイミテーターも使ってきた、"岩弾"のスキルだ。
もはや世に出れば結界術士として、一人前と呼ばれる程の領域に達している陽子。
各種結界を張りながらの戦闘にもすっかり慣れている彼女は、そうした遠距離攻撃を食らって強度が下がる度に、魔力を追加して結界を補強させる。
一度で結界を貫く威力の攻撃だったり、短時間で雨あられのように攻撃を受けない限りは、そうそう陽子の結界は破れはしない。
こうして着実に相手の戦力を削っていき、呼び出されたストーンゴーレムが一体、また一体と地に沈んでいく。
こういった石の体を持つ魔物の特徴として、打撃以外の攻撃が通りにくく厄介な相手ではあったが、ルームイミテーターもストーンゴーレムもランクとしてはDランク。
つまりここに来るまでに悩まされた、グリオンやスケアリーフェイスよりは下のランクだった。
「これならいけそうね」
「んー、最近はカタイ奴を殴るのも少し慣れてきたっす」
「あと残ってるのはストーンゴーレム二体と、ボスッスね」
戦っている彼らの中にも、このままなら問題なく勝てるだろうという気持ちが湧き上がってくる。
そんな彼らの気持ちが陰り始めたのは、更にもう一体のストーンゴーレムを倒した時だった。
「わ、ズルイっす!」
「えぇぇ? ちょっと……」
残りのストーンゴーレムが一体となったところで、再びルームイミテーターが大口を開け、追加のストーンゴーレムを呼び出したのだ。
その数、三体。
再び元の数に戻ったストーンゴーレムたちは、再び意思を感じられない動きで信也達へと襲い掛かる。
「みんな、大丈夫だ! 今まで通りやれば問題ない!」
そう声を張り上げる信也だったが、内心では違う事も考えていた。
(今はまだいいが、再現なくこいつらを呼ばれでもしたら、体力的にもMP的にも持たないな)
そうした内心の事は表に出さず、自分で言った言葉の通り、これまでのように前に出て積極的にゴーレムのタゲを引き受ける信也。
そうこうして再びゴーレムの数を減らすことには成功したのだが、再びゴーレムが呼び出されてしまい、メンバーの顔にも焦りの色が浮かび始める。
「これは、先にあのボスを倒さないとだめそうね」
「でも陽子さん、アイツちょこまか隠れてるから攻撃がし辛くて……」
「そうね……。ちょっと、ロベルト! アンタ、あのボスの居場所を調べて!」
「い"ぃ"っ!? で、でも、こいつら生き物でもないから、僕の"生命感知"には反応しないし……」
「いいから、つべこべ言わずさっさと探すのよ!」
「はいいぃぃ! 分かったッス、姐さん!」
そう言うとロベルトはソロリソロリと前線から移動して、辺りを探り始める。
だがロベルトの持っている感知系スキルでは、直接ルームイミテーターの居場所を特定する事は出来ない。
ただ奴もずっと壁や床に同化していられないのか、それとも単に攻撃を仕掛けたいだけなのか。
時折姿を見せては遠距離から攻撃をしかけてくることがあった。
その姿を現した瞬間を追えば、居場所をつかめるかもしれない。
味方がストーンゴーレム相手に持ちこたえる中、不意に現れて攻撃してくるルームイミテーターに気を払いつつ、意識を集中させていくロベルト。
そのお陰か、視界の端で床からせり上がっているルームイミテーターの一部を捕らえる事に成功する。
「そこッス!」
ロベルトの声にいつでも反応出来るように待機していた陽子と咲良は、その声の指し示す方に向かってつぶさに攻撃を仕掛ける。
「え、あっ! 【フレイムランス】」
「そこね」
若干の反応の遅れはあったものの、二人の攻撃がルームイミテーターへと飛来していく。
陽子は投擲攻撃ではなく〈雷鳴の書〉を使用したようで、ピカっとした光が一瞬目に入ってくる。
発動が早く避けにくい、【落雷】と同様の効果をもたらす陽子の攻撃は、見事に命中。
しかし、咲良の方は半分ほどは命中したものの、完全にはヒットしなかった。
「ああん、もう!」
「シンヤさん! 次に奴が出たら、体のどこかに明かりをつけて欲しいッス!」
「明かり? ……あぁ、分かった! その時は魔法に集中するので、二人ともフォローしてくれ」
「りょーかいっす」
「わかりました~」
ロベルトは先ほどルームイミテーターの姿を捕らえはしたものの、すでに相手は完全に姿を現した状態だった。
臆病な性格なのか、慎重な性格なのかはわからないが、あんだけ頑丈な体をしているくせに、ちょっと攻撃を受けただけでまた姿を眩ませてしまう。
あの調子ではいつまでたっても倒せやしないだろう。
それをどうにかするには、奴自身に目印をつけるのが手っ取り早い。
このロベルトの作戦は功を奏し、次にルームイミテーターが姿を現した時に、その体の一部に"光魔法"の【ライティング】を張り付ける事に成功する。
こうしてこれまで守勢だった『プラネットアース』に、反撃の態勢が整うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる