どこかで見たような異世界物語

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第十三章

第338話 戸惑うマージ

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「おい、ゼンダーソン。この拠点から魔力を感じるぞ」

「確かに……。これは"結界魔法"? それに張り巡らされた壁からも魔力を感じるな」

「そういうんは恐らくホージョーがなんかしたんやろな」

「……下手すると、この国の王城の防衛レベルだぞ、これは」

「ハハ、ホージョーの魔法はえげつなかったからなぁ」

「それなんだが、とても信じられんな。お前の"頑命固牢"を魔法で強引にぶち抜くなど、俺にも出来んぞ」

「だが事実や。ごつい魔法を二発同時に、それもえらい短い間隔で撃ってきおった」

「魔法の発動を遅らせておいて、二つ目の魔法と同時に発動させる方法はあるが、それだと連続して魔法は使えん」

「……確かレアスキルに"ダブルキャスト"という魔法を同時に放つスキルがあったはず」

「それは俺も知ってるが、二つ同時に放つとなるとかなり難しいと聞く。俺がそのスキルを持っていても、上級魔法を同時に放てるか分からん」

「ほら、着いたで。ホージョーの話は後にしてはよ行こか」

 北条の話で盛り上がっていたゼンダーソン達だったが、西門へと到着すると一旦話をやめ、ゼンダーソンの後に続いて通用門を潜っていく。



▽△▽



「な、なんだあれは?」

「ウホホ、すげいな。オイラなんだかワクワクしてきたよ」

 初めてこの門を潜った者は、大抵が右手にあるウェディングウォーターに圧倒され、同じような反応を示す。
 それは大陸で随一と呼ばれる『バスタードブルース』からしても、変わらなかったようだ。

「あれもホージョーがこさえたようやで」

「……あそこを歩いてるゴーレムもか?」

「せや」

「…………」

「んー、他にもなんか魔物の気配もするね。『魔物使い』もいるのかな?」

「せやな。攻撃とかしかけたらアカンで」

「……それよりも、ずかずかと敷地内に入っても問題ないのか?」

 ここまで黙ってついてきたユーローだったが、気になっていたことを尋ねる。

「あー、まあ問題ないやろ」

「……お前の『問題ない』は信用できない」

「ホンマやて。これでも俺は命の恩人やからな。それよりもあの建物が中央館や。あそこに行くで」

 自信満々に歩いていくゼンダーソンの後を、少し不安に見つめながらもマージやユーローがその後に続く。
 犬人の男は見知らぬ人の敷地内に入っているというのに、まったく気にした様子はない。
 興味深そうに周囲をチラチラ眺めながら歩いている。
 特に西門から入った場合、すぐ右手に農業エリアがあって、その奥にはウェディングウォーターがあり、見どころが多い。

「そういや、こん中って雪が積もってないね」

「言われてみれば……? これも"結界魔法"による効果か? それとも……」

 魔術士として気になるのか、ぶつぶつ言いながら歩くマージ。
 先頭を歩いているゼンダーソンは、すでに中央館の軒先までたどり着いている。
 そしてノックなどもせず、まるで我が家であるかのようにゼンダーソンは中央館へと足を踏み入れていった。



▽△▽



「あ、ゼンダーソンさんお帰りなさい。えっと、そちらの人たちはもしかして……」

「おう。俺の仲間や」

「あの、初めまして。咲良と言います」

 中央館へと入ったゼンダーソン達と顔を合わしたのは、玄関付近から聞こえてきた物音を聞いて、様子を見に来た咲良だった。

「どうも初めまして、俺の名はマージだ。この馬鹿が迷惑かけてなかったか?」

「え? あ、えーとそんな事はないです。危ないところを助けてもらいましたし」

「そうか、それならよかった。突然でスマンがお邪魔させてもらうよ」

「あ、はい。ゼンダーソンさんの仲間でしたら問題ないかと……。あ、他の人にも知らせてきますね」

 そう言って咲良は建物の奥へと消えていく。
 ゼンダーソンはそんな咲良の後に続いて、一緒に奥へ行こうとしていたが、マージに止められていた。

「なんでや。もう俺はここは何度も入り浸っとるんやぞ」

「あの娘が人を呼びに行ってるんだから、今は大人しくここで待っとけよ。このコンチキショーが」

 ゼンダーソンとマージがそんなやり取りをしてると、やがて奥から何人かの足音が聞こえてきた。
 先頭を歩いているのはどうやら信也のようだ。

「ようこそ。俺は『プラネットアース』のリーダーの信也だ」

 そして再び軽い挨拶を交わしていくが、本格的な挨拶は全員が揃ってからという事で、ひとまずはゼンダーソン達を会議室の方へと案内し、現在館に居ない人達を呼び集めることになった。

 二十分ほどして全員が会議室へと集まると、自己紹介が始まった。
 信也達は人数が多いので、それぞれが軽めに。
 北条の番になると、事前に話を聞いていたせいでマージらの注目を集めはしたが、こちらも当たり障りがない短い自己紹介に留まる。

 そして信也らの紹介が終わると、ゼンダーソンの連れてきた三人の仲間の紹介が始まった。

 マージ・J・カナルは人族の魔術士で、ほとんどリーダー的な役割を果たしていないゼンダーソンに代わり、実質的なリーダーポジションを担当している。
 魔法だけでなく、近接戦闘をはじめとして、知識・鑑定系スキルや料理スキルなども持っていて、色々と器用にこなす。

 次に仲間からはコーヘイと呼ばれている、犬人族のコーヘイジャーは、少し小柄の盗賊職だ。
 獣人族としては獣の血が濃く、『獣の爪』のジェンツーほどではないが、大分犬の特徴が体にも表れている。
 盗賊職ではあるが、戦闘スキルを幾つも取得しており、器用に色々な武器を使いこなして、戦闘時には前に出て戦うらしい。

 そして最後の一人、ユーロー・フィルドコアは見ての通りのエルフであり、すでに三百年以上の時を生きているらしい。
 マージの知識系スキルも、ユーローから教わったものが多く、長い年月を生きてきたユーローの知識はかなりのものになっている。
 またマージ同様に魔法の使い手であり、同時に"精霊魔法"なども使いこなす優れたマジックユーザーだ。


 こうして互いの自己紹介が終わると、ゼンダーソンとの出会いからシルヴァーノとの関わりなどの馴れ初めに話が映り、改めて咲良や陽子からゼンダーソンに感謝の言葉が贈られる。

 それからはちょっとした雑談が両者の間で交わされ、初対面同士の間に流れていた固さが少しほぐれた頃。
 ゼンダーソンが本題を切り出した。

「ところでホージョー。例の約束なんやが……」

「あぁ、分かってる。そっちのマージとユーローだなぁ?」

「何のことだ、ゼンダーソン?」

 どうやらゼンダーソンは約束の件について、拠点に向かうまでの道中に話す事を忘れていたようだ。

「ああ。お前ら二人ともレベル百の壁にぶち当たっとるやろ。ホージョーは限界を突破する条件を知っとるらしいで」

「……!? それは本当か?」

 驚いた表情を浮かべるマージ。
 ユーローもそれとは分かりにくいが、微かに驚きの表情を浮かべていた。

「ああ。そのために二人の事を具体的に調べてみたいんだがぁ、構わんかぁ?」

「……ゼンダーソン」

「ホージョーなら問題あらへん」

「……そうか、では頼む」

「承知したぁ」

 何をされるか分からない状況だが、マージとしては何かあったとしても切り抜ける自信があった。
 それに何よりゼンダーソンの言葉は大きな判断材料だ。
 一見単純で騙しやすそうにも見えるゼンダーソンだが、"野生の勘"スキルと持ち前の野生の勘によるものなのか、人を見抜く力が強い。

「調べるとは具体的に何をするのだ?」

「特殊な鑑定系のスキルを使用して調べる」

「……分かった。私もお願いしよう」

 少し考える様子見せたユーローも、マージと同じく了承の意を返す。
 こうして北条はゼンダーソンとの約束を果たすために、レベル百の壁で止まっている二人を調べる事になった。


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