どこかで見たような異世界物語

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第十三章

第344話 『獣の爪』 加入

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 信也達が久々にダンジョンに向かってから八日が経過し、『プラネットアース』がダンジョンから帰還。
 その次の日には『サムライトラベラーズ』も拠点に姿を現した。

 前日に帰還した『プラネットアース』は今日は休みにするようで、ロベルトと陽子は町の方に出かけているようだ。


「あ、北条さん。実は昨日俺たちが拠点に戻ってきてからすぐに、『獣の爪』が訪ねてきたんだが……」

 信也が話しているのは、ダンジョンから帰ってきたばかりの北条だ。

「お、早速クランの話をしたのかぁ?」

「ああ。彼らはうちに預けていたジャドゥジェムの件で尋ねてきたようなんだが、ついでにクランの話もしておいた」

「で、どうだって?」

「返事はまだもらってないが、俺には乗り気だったように見えたな。特に龍之介にお熱の獣人の子がはしゃいでいた」

「お熱って……、お前時折古臭い言葉が飛び出るな」

「むっ、そうだろうか」

 いまいち釈然としていない様子の信也。

「ああっと、彼らは『海鳥の囀り亭』に宿泊しているようだから、北条さんが帰還したら連絡をくれと言っていた」

「昨日の今日ならば、すでにダンジョンに向かっていてすれ違いって事もないかぁ」

「どうする? これから尋ねにいくか?」

「そうだなぁ。とりあえずは荷物を置いて少し休みを入れてからにしようかぁ」

「分かった」


 東門から帰ってきたばかりの北条達は、各々の家に荷物などを下ろしに向かう。
 一応北条と陽子の"アイテムボックス"や、異邦人全員が持っている〈魔法の小袋〉などにも色々と収納されてはいる。
 だが、すぐ手に届く所にあると便利なので、彼らは邪魔にならない程度に荷物も持ち歩いていた。
 特に〈魔法の小袋〉を持っていないロベルト兄妹は、荷物も多めだ。

 帰還後は大抵自由行動になるのだが、なんだかんだで中央館に集まったり、訓練場で訓練したりすることが多い。後は陽子たちのように町に出るか、だ。
 北条の場合は、他に自宅に籠って何らかの実験やアイテム作成、拠点の拡充などを行ったりすることもある。

 だが、今日は素直に中央館へと直行した北条。
 そこで他の合流した面子と、温かい部屋で暖かいお茶を飲んで休んでいた。
 すると、遠くから人の気配が近づいてくる事に気づく。
 その気配は複数あり、西門を通過してまっすぐこの中央館に向かってきているようだ。


「お客さんみたいだなぁ」

 北条がそう言った直後、中央館の玄関が開けられる音が聞こえてくる。
 足音の数は大分多く、素人では判断がつきにくいところだが、北条はきっちり六人分の足音を捉えていた。

「あ、みんな帰ってきてたんッスね」

「あら、兄さんだったのね」

 みんなが団らんのひと時を過ごしているリビングルームに入ってきたのは、町に出かけていたロベルトと、キカンスら『獣の爪』のメンバーだった。

「にゃあああぁ! リュー、帰ってたのね!」

 室内に龍之介がいるのを目ざとく発見したルーティアは、猫の身軽さを発揮してスルスルっとすり寄っていき、ごろごろにゃんにゃんしている。

「おい、ルー! お前はほんとにもう……」

 そんな奔放なルーティアに呆れた様子のキカンス。
 しかしすぐに気を取り戻して話を切り出す。

「どうも、こんにちは。今日はダメ元でこちらを尋ねてみたんだが、丁度『サムライトラベラーズ』が帰還していたようで良かった」

 なんでも今日まだ帰還していなかったら、ジャドゥジェムの様子を見てすぐ帰るつもりだったらしい。
 突然の来客、それも人数が多いので座席の数が足りず、床に直に座りながら案内された部屋でくつろぐキカンス達。
 玄関で靴を脱ぐという形式に戸惑っているようだが、床に直接座るのは冒険者として慣れているし、獣人としても気にするものではないらしい。
 
「それで、シンヤから話を聞いたんだが、俺たちをクランメンバーに誘いたいというのは本当なのか?」

 ツィリルが運んできたお茶をすすりながら、北条に問いかけるキカンス。

「ああ、本当だぁ。そうなれば後は彼女次第だがぁ、またジャドゥジェムと一緒のパーティーで活動すればいい」

「それはこちらとしても、願ってもない話だ」

「ただぁ、条件がぁある」

「ああ、シンヤから聞いてる。お互いにスキルなどの情報を他に漏らさないという契約だな?」

「そうだぁ。後はこの拠点内に居を構えてもらいたい。家の建築費までは流石に出ないがぁ、家庭用の魔法道具はこちらから貸与できる」

「何っ? 本当か?」

「ああ。ただし、ここから許可なく持ち出すのは勿論厳禁だぁ。一応対策はしてあるがぁ、そういった事をした場合には罰を与えるように、契約で一緒に同意してもらう」

 この契約は、すでに拠点に住んでいる他の住人たちにも、追加で施されていた。
 これまでにそういった不届き者は一人も現れなかったが、本来魔法道具というのは、簡単な明かりの魔法道具であってもそれなりに高価なものだ。
 気軽にポンポンと魔法道具を作りだせる北条は、最初その点に思い至らず、カタリナがある日指摘したことで、持ち出し禁止という追加の契約を行う事になった。

「ああ、それは当然だろう」

「それとぉ細かい点だがぁ、ダンジョンから帰還した際には、魔石の一部を供出してもらう。これは俺たちも同じようにやっている事で、その魔石をこの拠点の維持に使用している」

「なるほど。あのでかい噴水なんかを維持するのに必要な訳か」

「あー、あれは実は大気中の魔力を集めて利用してるんで、あれで意外と魔力効率はいいんだぞぉ」

「ヘェ、よくわからないが凄いな」

「そうだろう、そうだろう。あれは単純な造形に見えて実は……」

「ちょっと、ホージョー。本題を先に済ました方がいいんじゃないの?」

 北条の巨大オブジェに対する情熱が溢れ出ようとした所を、咄嗟にカタリナが抑え込む。
 
「ぬぬ、そうだったぁ。で、どうなんだぁ? クランに加入するなら"契約"を結ぶ必要があるんだがぁ……」

 そう聞かれたキカンスは、無言で室内に散らばっていた仲間へと目線を送る。
 龍之介にじゃれつくのに夢中になっていたルーティア以外は、そんなキカンスに同じく無言で頷きを返す。


「ああ、こちらからも頼む。俺たちをクランに加えてくれ」


「ほいきたぁ。そいじゃあ、早速まとめて契約を行うから、そこに全員集まってくれぃ」

 北条の指示に従い、キカンスは龍之介からルーティアを引きはがし、全員を一つ所に集める。
 準備が出来たのを確認した北条は、改めて契約の内容を口にしていく。

 拠点内の備品等の持ち出しの禁止。
 クランメンバーやこの拠点に関する情報の漏洩の禁止。
 基本はパーティー単位での行動になるが、クランリーダーの指示には従う事。
 今後はクランとして活動するので、他の冒険者パーティーなどとはなるべくもめ事を起こさない事。

 後者二つについては、禁止というほどの強制力ではなく決まり事といった感じになる。
 また罰則については、情報の漏洩に関してだけは特に厳しく定め、ロベルトらと同様に違反した場合は奴隷になるという契約内容となる。

 この場で初めて聞いた内容もあったようだが、罰則などについても信也はしっかり話していたようで、キカンスらに大きな動揺は見られなかった。

「何分試行錯誤しつつの段階だからぁ、今後問題があれば新たな契約が増えるかもしれんがぁ、そのことも踏まえて最後に問う。先ほど言った条件で、契約を誓うか?」

「ああ、誓う!」

「ウチも誓うよっ」

「……誓う」

「ち、誓います……」

「フッ、我も誓うぞ」

「ならば、双方の同意の元、ここに契約は結ばれた。【契約執行】」

 北条が"契約魔法"を発動させると、キカンスら『獣の爪』の五人と、北条、信也の胸元から光の糸のようなものが出現する。

 最初にロベルトらと契約した時は、陽子や咲良なども全員契約を結んでいたが、人数が増えていくにつれて、今ではリーダーである信也と北条。それから肝心の契約者のみで契約を結ぶようになっている。

 そして信也と北条は、それぞれパーティーメンバーに別の契約を結んでおり、その契約内容は、二人が契約した内容はパーティーメンバーにも守らせるというものだ。
 こうしておけば、北条と信也の二人が契約すれば、自動的に陽子などにもキカンスらの情報漏洩はしないという契約効果がいきわたる事になる。



「ニャニャニャッ! これは奴隷契約!?」

「…………!?」

 獣人で構成された『獣の爪』の面々にとって、奴隷契約を彷彿とさせる"契約魔法"には良い印象がなかった。
 思わず反射的に体が反応してしまうルーティア達。

「いや、者ども落ち着け。これは……、恐らく"契約魔法"による光であるぞ」

 獣人度MAXの完全ペンギン獣人のジェンツーは、『獣の爪』では魔術士を担当しいて、知識もそれなりに広い。
 彼も実際に契約現場を見た事はなかったが、この現象について文献で読んだ事はあった。

「……なるほど。やたらと強く秘密厳守を念押された意味が分かった気がするよ」

「それくらいでビックリしてたら、ウチではやってけないッスよ」

「そうよ。ウチには歩く非常識がいるからね」

 息のあったロベルト兄妹の発言だが、当の本人は"契約魔法"の行使を終えて気が抜けたのか、首をまわしてポキポキと骨を鳴らしている。

 まだギルドにクラン結成の申し込みすらしていない状態だが、こうして拠点では新たに『獣の爪』を迎え入れる事になった。

 まだ寒い季節が続いているので彼らの住居を作るのはまだ先になるだろうが、最悪宿泊費を浮かせたいなら、ジャドゥジェムのように農業エリアでのキャンプ生活というのもありだ。
 実際、『ムスカの熱き血潮』のメンバーも、この村に着いた当初はテント暮らしをしていたものだ。

 そんな事を思い出しながらも、キカンスらと今後の予定についても話し合っていく。
 その最中、再び中央館の玄関の扉が開かれる音と共に、複数の足音がリビングにまで聞こえてきた。


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