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開けた窓の近くの席から椅子を引きずり出して、座った。
図書室なんて、入学した頃の校舎案内で来たっきりだと思ったなぁ……勉強もそんなしねぇし、調べものもねぇし……アイツ、なんで待ち合わせ場所を図書室にしたんだろ。
アイツ――ミチルはこの高校で出会った友達。一年生の頃から同じクラスで、仲良くなりよく集まるようになったグループの中の女子だ。そいつらの中では一番に仲が良い、というよりは気が合うというか。価値観や好みが似ていて、まるで自分を見ているかのような感覚になることもあった。
オレとミチルは自然とペアになることも多くなり、周りからはカップルだとか熟年夫婦だとか囃し立てられるけど、恋愛してるような気持ちや感覚はまるでない。これはオレだけの感覚じゃなくて、ミチルも同じだった。
『私もそうなの、リョーのことは友達として信頼も安心もしてるんだけど、恋してるって感じじゃないんだよね。何でも曝け出せて、どんなことも受けとめられる相棒、って感じ』
――なんて、オレたち二人でそれを確かめ合ったところで、周りの声が収まるわけもなく……理解のあるやつらばかりじゃないのが大衆ってもんだし、そこまで嫌な気持ちにはならないから、適当にあしらってはいるんだが。
三年生になって、最後の夏休みっていうセンチメンタルな条件で“二人で話したい”なんて文句で呼び出されると……柄にもなく、ときめいた自分が居るのだ。
恋愛ごとに関心がないわけじゃないし、噂関係なく、もしミチルと恋人になったら――なんて想像したこともある。でも、それだけだ。欲しくて堪らなくて、手を伸ばしたい、触れたい、とは思わないし望まない。恋愛にならない決定的なものは、そこなんだろう。
「やぁだ、リョー、なんで冷房つけないのよ」
頭の中で噂をすれば。
オレを呼び出し待たせたその人物は、第一声に待たせてゴメンでもなく、冷房をつけてないことに文句。そして手慣れた様子で入り口側のスイッチを押していた。なんだ、あんなとこにあったのかよ。
「おンめぇなぁ、呼び出しといて待たせといて、先に言うことあンだろ」
「あーん、ゴメンゴメン、そうだった、呼び出したの私だったね」
てへぺろ。
そんな一昔前の流行語でも思い出しそうな表情と仕草で、ミチルは謝って見せた。
「まぁいいけど。で? なしたの二人で話って」
「あー、うん、話なんてないんだけどサ」
……あン? 話なんて、ない?
意味のわからない返事をしながら、ミチルは机を挟んでオレの向かいの席に座った。
図書室なんて、入学した頃の校舎案内で来たっきりだと思ったなぁ……勉強もそんなしねぇし、調べものもねぇし……アイツ、なんで待ち合わせ場所を図書室にしたんだろ。
アイツ――ミチルはこの高校で出会った友達。一年生の頃から同じクラスで、仲良くなりよく集まるようになったグループの中の女子だ。そいつらの中では一番に仲が良い、というよりは気が合うというか。価値観や好みが似ていて、まるで自分を見ているかのような感覚になることもあった。
オレとミチルは自然とペアになることも多くなり、周りからはカップルだとか熟年夫婦だとか囃し立てられるけど、恋愛してるような気持ちや感覚はまるでない。これはオレだけの感覚じゃなくて、ミチルも同じだった。
『私もそうなの、リョーのことは友達として信頼も安心もしてるんだけど、恋してるって感じじゃないんだよね。何でも曝け出せて、どんなことも受けとめられる相棒、って感じ』
――なんて、オレたち二人でそれを確かめ合ったところで、周りの声が収まるわけもなく……理解のあるやつらばかりじゃないのが大衆ってもんだし、そこまで嫌な気持ちにはならないから、適当にあしらってはいるんだが。
三年生になって、最後の夏休みっていうセンチメンタルな条件で“二人で話したい”なんて文句で呼び出されると……柄にもなく、ときめいた自分が居るのだ。
恋愛ごとに関心がないわけじゃないし、噂関係なく、もしミチルと恋人になったら――なんて想像したこともある。でも、それだけだ。欲しくて堪らなくて、手を伸ばしたい、触れたい、とは思わないし望まない。恋愛にならない決定的なものは、そこなんだろう。
「やぁだ、リョー、なんで冷房つけないのよ」
頭の中で噂をすれば。
オレを呼び出し待たせたその人物は、第一声に待たせてゴメンでもなく、冷房をつけてないことに文句。そして手慣れた様子で入り口側のスイッチを押していた。なんだ、あんなとこにあったのかよ。
「おンめぇなぁ、呼び出しといて待たせといて、先に言うことあンだろ」
「あーん、ゴメンゴメン、そうだった、呼び出したの私だったね」
てへぺろ。
そんな一昔前の流行語でも思い出しそうな表情と仕草で、ミチルは謝って見せた。
「まぁいいけど。で? なしたの二人で話って」
「あー、うん、話なんてないんだけどサ」
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意味のわからない返事をしながら、ミチルは机を挟んでオレの向かいの席に座った。
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