蒼い夏

ペリハチ

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 昇降口まで来るとミチルも追いついて、オレに文句を垂れながら靴を履き替える。ピーピーうるさいから、ここはオレが大人になって謝っておく。何だかな、いやらしい話し方でオレを煽ったのはミチルなんだけどな、不毛な争いはしない主義。
 適当に世間話に気を逸らせて、オレたちは歩いて学校を後にした。


 学校近くのコンビニは、坂を下りたところにある。郊外だから街中ほどじゃないけど、その辺りにはコンビニの他にもいくつか店がある。小さなスーパーとか、ホームセンターとか、いろいろ。コンビニならウチの学校の生徒はほとんど利用しているし、先生も立ち寄っている。地元住民ももちろん利用しているけど、あまり混んでいる時に遭遇したことはない。ほんと過ごしやすい街。

 緩やかなカーブと勾配の坂道。
 道路脇の街路樹が陽射しを遮って、道路には木漏れ日と影。車なんて滅多に通らないけど、ミチルをガードレール側に歩かせる。
 あ。またあの虫が鳴いてる。
 街路樹のどこかに留まっているんだろう。とても近くに聞こえて、ミチルの声が届かない。鳴き声にかき消されてミチルの言葉はわからないけど、口パクになっているその様子が、またファンタジーに感じた。

「……ちょっと、リョー、聞いてんの?」
「――あ、ごめん、蝉の声で聞こえてなかった」
「あー、すーごい鳴いてるもんね」

 ミチルを見るたびに、ひとりファンタジーなことを考えていたなんて恥ずかしいから、内緒にしておこう。

「何のアイス食べる? って聞いたの」

 蝉の声に負けないようにと、ミチルは一段と声を張って、オレの耳に近づくようにと背伸びをしながら話す。こういうのは可愛いなって思う。

「あー、そうだなぁ……棒のアイスだと溶けてくるとすぐ落としそうだし、ゴミは増えるけどカップタイプがいいんじゃねぇかな」
「だよね、私もそう思ってた! さーすが相棒」

『いぇい』

 パシン! 考えてることが一致した時や二人での行動が何かの成功に繋がった時、オレたちはハイタッチをして“いぇい”とハモるのがお約束。


 そんなやりとりをしながら歩けば、目的地に着くのは早い。
 コンビニに入って、二人して“あ~、涼しい~”とハモってしまう。そんなオレらを見て、コンビニの店員がふふふ、と微笑んでいた。それが少し恥ずかしくて、オレらは顔を見合わせて誤魔化すように笑った。

 アイス売り場でオレたちはどれにしようか、と選ぶ。

「なぁ、アイス買って、どこで食べんの?」

 この辺りにこうして店はいくつかあるけど、腰を下ろしてゆっくりできるような場所はない。まさか、この天気で外でアイスを立ち食いするのは……と思ったオレだったが、ミチルは何を考えていたのか。

「え、学校」

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