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食事を終えると黒電話で膳を下げてもらうように電話する。
この電話もどこかの魔道具職人かなんかが作ったのだろうと思うと欲しくなってくるレイン。
やっぱり鑑定して見ると作りは結構単純で振動の魔法を応用して作ってるアイデア商品といったところだ。
有線でどこかと話すだけの糸電話といった作りで無線方式でなかったのが残念だ。
携帯ほどではないが遠距離通信魔道具を持ってるレインにとっては不必要ではあるが欲しいことに変わりない。
実はレインのコレクションにあまりプレイヤーの発明品の類はなかった。理由はキリがないという一点に尽きる。とはいえお気に入りの職人のものや新魔法は集めていたのだが、アイテムとなると多すぎたのだ。
それが今この世界が現実となって見ると欲しいものがどんどん増えてくるのは不思議現象だ。
食後のお茶を楽しむと今度はお風呂に入ろうと思い立つ。
昨日からまともに入っておらず若干汗臭いのだ。せっかくの内風呂なら入らないという選択肢がない。
「せっかくの内風呂だしお風呂はいってくるね。昨日から汗もかいたし先に入ってもいいかな?」
「お風呂…ですか?」
異世界の定番お風呂を知らないのだろうと理解したレイン。
「あぁそっか。お風呂ってわからないか……」
「いえ、お風呂は知ってますよ。大きな桶にお湯を張ったお貴族様が入られる者ですよね?絵本で読みました。」
「絵本?」
絵本でお風呂を知るということに疑問を覚えたレインは詳しく聞いてみることにした。
プルシアーナにお風呂について聞くとこの国の人たちはどうもお風呂に入る習慣はなく、水やお湯で体を拭く程度の習慣で、一部の人間だけ水浴びをすることがあるという。プレイヤーが流行らしたお風呂も高級品であるためにかなりお金を持った商人か貴族しか持ってない上に一回一回手間がかかるので毎日は入らないのだ。
当然この二人は入ったことはなく、見たこともない。ただお風呂というものがどういうものかは絵本に書いていたことを知っている程度だ。絵本の内容を聞くとどうも日本の薄い本と酷似した内容である。
昔どこかのアホクランがこの世界に同人誌を流行らそうと無料配布したのを思い出しなんとなくネタ枠としてコレクションしていた本を思い出すレイン。
内容はクズ貴族のおじさんがメイドに背中を流させて喜んでるものだ。どんどんエスカレートして結局18禁となるタイプのなんの脈絡もなく話が進むストーリーよりもただエロければいい漫画。いや同人誌なのだが、とりあえず濡れ場があり、異性間・同性間その他動植物でのアレヤコレヤが描かれているものだ。貴族の中にはお風呂での火遊びを本当にやっていたものがいたらしくどこから情報が漏れたのかとビクついていたものがいたとの噂。以来貴族の火遊びが減ったのだが市民の中でよくない常識が植え付けられてしまっていることを考えると良かったのか悪かったのか…
未だにイベントリ内に死蔵している同人誌だが、捨てようにも一冊しかないと思うとなかなか捨てられずにいた本だ。しかも地味にNPCに流行ってしまい有料販売、数量限定販売まで始まるとそれも集めてしまった黒歴史があるのだ。一度集めると全て集めないと気が治らないレイン。コレクターの業は深いと思える。
プルシアーナが説明する間羞恥心に頬を染めて言いづらそうに小声で耳打ちしたりなんとも可愛い姿を見れて興奮気味のレインであったが、お風呂に偏見を持ってしまった二人の間違った知識に同人誌作者に呪詛を吐き捨てたい思いである。その間ロアナは旅の疲れと今日の着せ替え人形の疲れで頭がコクコクと船を漕ぎ眠そうであった。
「えっとお風呂は知ってるみたいだけど、入り方はその絵本の内容とは違うんだ。基本的には男女別々に入るから安心していいよ?それに無理に入らなくてもいい。体をお湯で拭くだけでもいいんじゃないかな?」
「い、いえ!こんなによくしてもらって…冗談でも結婚してくれるっていってもらえて嬉しいですから……レインさんがいいなら…いいですよ?」
恥ずかしそうにモジモジとしながらチラチラとレインの顔を見るプルシアーナを思わず抱きしめる。
「冗談じゃないから!結婚するって!!」
「あ!おねぇちゃんだけギュってずるい!」
レインがプルシアーナを抱きしめた瞬間にさっきまでウトウトとしていたロアナが大声で叫ぶ、
「あ、これはちょっと…そ、そうだ!お風呂!お風呂入ろう!」
「そそそうですね!ロアナもお風呂に入ろうね。たた楽しみです!」
レインが慌てて離れるとお風呂に入ろうと提案しプルシアーナも同意する。
慌てる二人を見てちょっと拗ね気味のロアナの目が見れなくなった二人はそそくさとお風呂の準備をする。
といってもレインがタオルと替えの下着、寝間着をイベントリから取り出すだけだ。
脱衣所に三人で移動すると少し恥ずかしそうに服を脱ぐプルシアーナに興奮する。裸になり恥ずかしげに手で体を隠そうとしている姿がなんとも艶かしい。
小ぶりだが張りのある綺麗な胸に視線が釘付けのレイン。しかも両手で胸を隠して尻尾を股に挟んでいるのが……。
見飽きたはずの女性の裸ではあるのだがこう恥ずかしそうに身をくねらせる姿がなんともそそられる。垂れた犬耳と股に挟んだ尻尾が相まってものすごくエロいのだ。対するロアナはかなり堂々としている。将来が期待できそうな胸に幼さを残した顔にエロさはないが綺麗と思える。うさぎの丸っこい尻尾がピクピク動く様がなんとも可愛らしい。
三人で風呂場に移動するとレインが得意げに風呂のマナーを説明する。当然タオル厳禁で隠すことは許さないようだ。おかげで徐々に硬くなるものを必死に抑えることになってるのだが如何せん地球での体は女であったのでどうにもコントロールできていない。
「お風呂に入ったらまず掛け湯をします!」
「掛け湯?」
「湯船のお湯を桶ですくって体にかけることです。こうやってこう!」
レインは木製の風呂桶を使ってお湯を掬うと体にかける。二人はレインの真似をしてお湯をかけると少し熱めの温泉に驚き小さく悲鳴をあげる。だが2、3度掛け湯をするとそれにも慣れて気持ちよさそうに目を細める。
次に洗髪なのだが、シャンプーがない。ゲーム時代は雰囲気を楽しむためにしかお風呂はなく、特に温いということもなかったと聞いていたレインだが頭を洗う道具がないことに少し腹をたてる。お風呂に入ることが好きなレインにとっては業腹であるがないものは仕方ない。頭髪用の石鹸で頭を洗うがギシギシゴワゴワする髪の毛にちょっと苛立つレイン。何もしないのもベトベトして髪の毛が気持ち悪いのでここは我慢だ。レインはストレスフリーのノンシリコンシャンプーを作ってやろうと決意する。
鬱憤が溜まりつつも体を洗う。新品のタオルに風呂場にある石鹸を使って泡を立てようと頑張るがこちらも泡立ちが悪く納得がいかない。予想通りではあるが渋々そのまま体を洗うレインであったがプルシアーナとロアナの二人は石鹸を使うのが初めてなので少しでも泡が立っただけでもすごいものを見たとばかりに興奮している。やはりこちらも早急に作らないといけないようだ。
スッキリとはいかないまでも体を洗ったレインは湯船に浸かる。二人も恐る恐る入るがすぐにその気持ち良さに目を細めて気持ちよさそうだ。風呂から見える城が絶景であると聞いていたレインであるが、ほんの数秒で他に絶景があることに気づく。見飽きたはずの女性の裸だが男の体を手に入れた今気軽に見れるものではないのだ!
しばらく鼻の下を伸ばして眺めていると気持ちよさそうにしていたプルシアーナも視線に気づく。
「あ、あのレインさん?私なんか見て楽しいですか?」
ロアナを膝に乗せ城を見上げていたプルシアーナの姿を眺め、ロアナが動くたびにチラチラと見える胸に一喜一憂していたレインは少し慌てたように視線をそらす。
「いや、その…綺麗なものは見てて飽きないから……」
やましい気持ちとムクムクと大きくなる違和感を感じながらどうにか言葉を絞り出す。
「ひゃ!」
「おねぇちゃんどうしたの?」
「ななななんでもないよ。お城綺麗だね!」
「うん!」
プリシアーナはレインの股間を見て思わず悲鳴をあげてしまうがなんとかごまかすとそのまま凝視してしまう。
(おおおおっきくなってる!)
目を見開き顔を真っ赤に染めたプルシアーナがそこにはいた。
レインは一度深呼吸してプルシアーナの方に向き直ると真っ赤な顔でぼーっとしてるプルシアーナの姿が飛び込んでくる。
「え!のぼせた?大丈夫??プルシアーナ?」
「へ?あ!だだ大丈夫でしゅ!ここ心ののじゅじゅんびはちゃんとででできてましゅ!」
「え?なに?顔真っ赤だよ?呂律も回ってないし上がった方がいいよ!」
「わ!おねぇちゃん顔真っ赤!」
呂律の回らないプルシアーナをお風呂からあげると少し足取りがおぼつかなくなっている。
「わわあわわわたし頑張りましゅよ!大丈夫れしゅ!」
すぐに脱衣所に移動して体を拭くとなぜかぎゅっと目をつぶってブツブツと呟くプルシアーナにレインは初めてのお風呂で長湯させすぎたと後悔する。
浸かってた時間は15分程度であったが温泉ということもあってかかなり体が熱い。もしかしたら獣人種がのぼせやすいという可能性があるかもと思ったレインはロアナの顔も伺うが体がほんのり色づく程度でのぼせてはいないようだ。
「ごめんね?お風呂初めてだったのに…」
「だだだ大丈夫でしゅよ!私こそその…動揺しちゃって…でも次はちゃんと頑張ります!」
「いやいや我慢しなくってもいいんだよ?」
「我慢してませんよ!あ、でもロアナの前はちょっとあれなので二人きりの時が…でもレインさんなら…」
どことなく話が噛み合わないことに訝しげに思ってるレインだが何がおかしいのかわからない。
湯冷めしないように寝間着に着替えると早く布団に入ろうと思いプルシアーナの手を引くと顔を真っ赤にさせてついてくる。ロアナも心配そうにプルシアーナの顔を覗き込んでいるようだ。
和風の旅館である『月下風雲』は和式であるがゆえに敷布団を引いて寝ることになる。いつの間にやら準備された布団にロアナとプルシアーナを寝かせると照明の魔道具を消す。
(そういえばここに照明器具があるのにナターシャさんは持ってなかったな。あ!フェリがなんか言ってたな。確か魔道具が紛失したんだっけ?違う壊れたんだっけ?)
ふと思った疑問を自己解決すると布団に入る。
レインが目をつぶってすぐ布団がごそごそと動き出す音が聞こえる。
「レ、レインさん。」
小声でレインを呼ぶプルシアーナの声。
「何?」
「あの…ロアナが寝てからなら…大丈夫です。」
「あ…そう……」
これが夜這いかとドキドキするレインは昼に部屋を取った時のことを思い出す。
14歳であるプルシアーナにおかしな仕事をさせたくない。レイン自身『玲奈』という女性の体であった時の14歳の体を思うと生理が始まり体の変化に戸惑いちょっとしたことで痛みや不快感を覚えた時のことを。
「もうちょっとお互いのことを知ってからでいいんだよ?」
「え…」
レインはプルシアーナの頭を撫でながら優しく抱き寄せる。
緊張してか少し震えていたプルシアーナもゆっくり頭を撫でるたび呼吸が深くなり震えが収まっていく。
しばらくそうしているとすうすうと小さな寝息を立て始めるプルシアーナ
「寝ちゃったか……」
プルシアーナの寝顔を見て安心するもちょっと勿体無いことをした気分のレイン。
「お母さん…」
「え?」
プルシアーナの寝言にレインは少し罪悪感を覚える。
選択肢のない状態で無理やり自分に付き合わせてしまってるような感覚になったためだ。妹と一緒に暮らすために地元の金持ちの妾にまでなろうとした子だ。レインとの結婚話も流れのまま受け入れてしまったのは選択肢がなかったのがよくわかる。身寄りもなく仕事もないのだ当然の帰結だろう。
レイン自身始めはただの下心であったが守ってあげたい。自分を好きになってもらいたいと本心から思うようになったのはこの時である。
この電話もどこかの魔道具職人かなんかが作ったのだろうと思うと欲しくなってくるレイン。
やっぱり鑑定して見ると作りは結構単純で振動の魔法を応用して作ってるアイデア商品といったところだ。
有線でどこかと話すだけの糸電話といった作りで無線方式でなかったのが残念だ。
携帯ほどではないが遠距離通信魔道具を持ってるレインにとっては不必要ではあるが欲しいことに変わりない。
実はレインのコレクションにあまりプレイヤーの発明品の類はなかった。理由はキリがないという一点に尽きる。とはいえお気に入りの職人のものや新魔法は集めていたのだが、アイテムとなると多すぎたのだ。
それが今この世界が現実となって見ると欲しいものがどんどん増えてくるのは不思議現象だ。
食後のお茶を楽しむと今度はお風呂に入ろうと思い立つ。
昨日からまともに入っておらず若干汗臭いのだ。せっかくの内風呂なら入らないという選択肢がない。
「せっかくの内風呂だしお風呂はいってくるね。昨日から汗もかいたし先に入ってもいいかな?」
「お風呂…ですか?」
異世界の定番お風呂を知らないのだろうと理解したレイン。
「あぁそっか。お風呂ってわからないか……」
「いえ、お風呂は知ってますよ。大きな桶にお湯を張ったお貴族様が入られる者ですよね?絵本で読みました。」
「絵本?」
絵本でお風呂を知るということに疑問を覚えたレインは詳しく聞いてみることにした。
プルシアーナにお風呂について聞くとこの国の人たちはどうもお風呂に入る習慣はなく、水やお湯で体を拭く程度の習慣で、一部の人間だけ水浴びをすることがあるという。プレイヤーが流行らしたお風呂も高級品であるためにかなりお金を持った商人か貴族しか持ってない上に一回一回手間がかかるので毎日は入らないのだ。
当然この二人は入ったことはなく、見たこともない。ただお風呂というものがどういうものかは絵本に書いていたことを知っている程度だ。絵本の内容を聞くとどうも日本の薄い本と酷似した内容である。
昔どこかのアホクランがこの世界に同人誌を流行らそうと無料配布したのを思い出しなんとなくネタ枠としてコレクションしていた本を思い出すレイン。
内容はクズ貴族のおじさんがメイドに背中を流させて喜んでるものだ。どんどんエスカレートして結局18禁となるタイプのなんの脈絡もなく話が進むストーリーよりもただエロければいい漫画。いや同人誌なのだが、とりあえず濡れ場があり、異性間・同性間その他動植物でのアレヤコレヤが描かれているものだ。貴族の中にはお風呂での火遊びを本当にやっていたものがいたらしくどこから情報が漏れたのかとビクついていたものがいたとの噂。以来貴族の火遊びが減ったのだが市民の中でよくない常識が植え付けられてしまっていることを考えると良かったのか悪かったのか…
未だにイベントリ内に死蔵している同人誌だが、捨てようにも一冊しかないと思うとなかなか捨てられずにいた本だ。しかも地味にNPCに流行ってしまい有料販売、数量限定販売まで始まるとそれも集めてしまった黒歴史があるのだ。一度集めると全て集めないと気が治らないレイン。コレクターの業は深いと思える。
プルシアーナが説明する間羞恥心に頬を染めて言いづらそうに小声で耳打ちしたりなんとも可愛い姿を見れて興奮気味のレインであったが、お風呂に偏見を持ってしまった二人の間違った知識に同人誌作者に呪詛を吐き捨てたい思いである。その間ロアナは旅の疲れと今日の着せ替え人形の疲れで頭がコクコクと船を漕ぎ眠そうであった。
「えっとお風呂は知ってるみたいだけど、入り方はその絵本の内容とは違うんだ。基本的には男女別々に入るから安心していいよ?それに無理に入らなくてもいい。体をお湯で拭くだけでもいいんじゃないかな?」
「い、いえ!こんなによくしてもらって…冗談でも結婚してくれるっていってもらえて嬉しいですから……レインさんがいいなら…いいですよ?」
恥ずかしそうにモジモジとしながらチラチラとレインの顔を見るプルシアーナを思わず抱きしめる。
「冗談じゃないから!結婚するって!!」
「あ!おねぇちゃんだけギュってずるい!」
レインがプルシアーナを抱きしめた瞬間にさっきまでウトウトとしていたロアナが大声で叫ぶ、
「あ、これはちょっと…そ、そうだ!お風呂!お風呂入ろう!」
「そそそうですね!ロアナもお風呂に入ろうね。たた楽しみです!」
レインが慌てて離れるとお風呂に入ろうと提案しプルシアーナも同意する。
慌てる二人を見てちょっと拗ね気味のロアナの目が見れなくなった二人はそそくさとお風呂の準備をする。
といってもレインがタオルと替えの下着、寝間着をイベントリから取り出すだけだ。
脱衣所に三人で移動すると少し恥ずかしそうに服を脱ぐプルシアーナに興奮する。裸になり恥ずかしげに手で体を隠そうとしている姿がなんとも艶かしい。
小ぶりだが張りのある綺麗な胸に視線が釘付けのレイン。しかも両手で胸を隠して尻尾を股に挟んでいるのが……。
見飽きたはずの女性の裸ではあるのだがこう恥ずかしそうに身をくねらせる姿がなんともそそられる。垂れた犬耳と股に挟んだ尻尾が相まってものすごくエロいのだ。対するロアナはかなり堂々としている。将来が期待できそうな胸に幼さを残した顔にエロさはないが綺麗と思える。うさぎの丸っこい尻尾がピクピク動く様がなんとも可愛らしい。
三人で風呂場に移動するとレインが得意げに風呂のマナーを説明する。当然タオル厳禁で隠すことは許さないようだ。おかげで徐々に硬くなるものを必死に抑えることになってるのだが如何せん地球での体は女であったのでどうにもコントロールできていない。
「お風呂に入ったらまず掛け湯をします!」
「掛け湯?」
「湯船のお湯を桶ですくって体にかけることです。こうやってこう!」
レインは木製の風呂桶を使ってお湯を掬うと体にかける。二人はレインの真似をしてお湯をかけると少し熱めの温泉に驚き小さく悲鳴をあげる。だが2、3度掛け湯をするとそれにも慣れて気持ちよさそうに目を細める。
次に洗髪なのだが、シャンプーがない。ゲーム時代は雰囲気を楽しむためにしかお風呂はなく、特に温いということもなかったと聞いていたレインだが頭を洗う道具がないことに少し腹をたてる。お風呂に入ることが好きなレインにとっては業腹であるがないものは仕方ない。頭髪用の石鹸で頭を洗うがギシギシゴワゴワする髪の毛にちょっと苛立つレイン。何もしないのもベトベトして髪の毛が気持ち悪いのでここは我慢だ。レインはストレスフリーのノンシリコンシャンプーを作ってやろうと決意する。
鬱憤が溜まりつつも体を洗う。新品のタオルに風呂場にある石鹸を使って泡を立てようと頑張るがこちらも泡立ちが悪く納得がいかない。予想通りではあるが渋々そのまま体を洗うレインであったがプルシアーナとロアナの二人は石鹸を使うのが初めてなので少しでも泡が立っただけでもすごいものを見たとばかりに興奮している。やはりこちらも早急に作らないといけないようだ。
スッキリとはいかないまでも体を洗ったレインは湯船に浸かる。二人も恐る恐る入るがすぐにその気持ち良さに目を細めて気持ちよさそうだ。風呂から見える城が絶景であると聞いていたレインであるが、ほんの数秒で他に絶景があることに気づく。見飽きたはずの女性の裸だが男の体を手に入れた今気軽に見れるものではないのだ!
しばらく鼻の下を伸ばして眺めていると気持ちよさそうにしていたプルシアーナも視線に気づく。
「あ、あのレインさん?私なんか見て楽しいですか?」
ロアナを膝に乗せ城を見上げていたプルシアーナの姿を眺め、ロアナが動くたびにチラチラと見える胸に一喜一憂していたレインは少し慌てたように視線をそらす。
「いや、その…綺麗なものは見てて飽きないから……」
やましい気持ちとムクムクと大きくなる違和感を感じながらどうにか言葉を絞り出す。
「ひゃ!」
「おねぇちゃんどうしたの?」
「ななななんでもないよ。お城綺麗だね!」
「うん!」
プリシアーナはレインの股間を見て思わず悲鳴をあげてしまうがなんとかごまかすとそのまま凝視してしまう。
(おおおおっきくなってる!)
目を見開き顔を真っ赤に染めたプルシアーナがそこにはいた。
レインは一度深呼吸してプルシアーナの方に向き直ると真っ赤な顔でぼーっとしてるプルシアーナの姿が飛び込んでくる。
「え!のぼせた?大丈夫??プルシアーナ?」
「へ?あ!だだ大丈夫でしゅ!ここ心ののじゅじゅんびはちゃんとででできてましゅ!」
「え?なに?顔真っ赤だよ?呂律も回ってないし上がった方がいいよ!」
「わ!おねぇちゃん顔真っ赤!」
呂律の回らないプルシアーナをお風呂からあげると少し足取りがおぼつかなくなっている。
「わわあわわわたし頑張りましゅよ!大丈夫れしゅ!」
すぐに脱衣所に移動して体を拭くとなぜかぎゅっと目をつぶってブツブツと呟くプルシアーナにレインは初めてのお風呂で長湯させすぎたと後悔する。
浸かってた時間は15分程度であったが温泉ということもあってかかなり体が熱い。もしかしたら獣人種がのぼせやすいという可能性があるかもと思ったレインはロアナの顔も伺うが体がほんのり色づく程度でのぼせてはいないようだ。
「ごめんね?お風呂初めてだったのに…」
「だだだ大丈夫でしゅよ!私こそその…動揺しちゃって…でも次はちゃんと頑張ります!」
「いやいや我慢しなくってもいいんだよ?」
「我慢してませんよ!あ、でもロアナの前はちょっとあれなので二人きりの時が…でもレインさんなら…」
どことなく話が噛み合わないことに訝しげに思ってるレインだが何がおかしいのかわからない。
湯冷めしないように寝間着に着替えると早く布団に入ろうと思いプルシアーナの手を引くと顔を真っ赤にさせてついてくる。ロアナも心配そうにプルシアーナの顔を覗き込んでいるようだ。
和風の旅館である『月下風雲』は和式であるがゆえに敷布団を引いて寝ることになる。いつの間にやら準備された布団にロアナとプルシアーナを寝かせると照明の魔道具を消す。
(そういえばここに照明器具があるのにナターシャさんは持ってなかったな。あ!フェリがなんか言ってたな。確か魔道具が紛失したんだっけ?違う壊れたんだっけ?)
ふと思った疑問を自己解決すると布団に入る。
レインが目をつぶってすぐ布団がごそごそと動き出す音が聞こえる。
「レ、レインさん。」
小声でレインを呼ぶプルシアーナの声。
「何?」
「あの…ロアナが寝てからなら…大丈夫です。」
「あ…そう……」
これが夜這いかとドキドキするレインは昼に部屋を取った時のことを思い出す。
14歳であるプルシアーナにおかしな仕事をさせたくない。レイン自身『玲奈』という女性の体であった時の14歳の体を思うと生理が始まり体の変化に戸惑いちょっとしたことで痛みや不快感を覚えた時のことを。
「もうちょっとお互いのことを知ってからでいいんだよ?」
「え…」
レインはプルシアーナの頭を撫でながら優しく抱き寄せる。
緊張してか少し震えていたプルシアーナもゆっくり頭を撫でるたび呼吸が深くなり震えが収まっていく。
しばらくそうしているとすうすうと小さな寝息を立て始めるプルシアーナ
「寝ちゃったか……」
プルシアーナの寝顔を見て安心するもちょっと勿体無いことをした気分のレイン。
「お母さん…」
「え?」
プルシアーナの寝言にレインは少し罪悪感を覚える。
選択肢のない状態で無理やり自分に付き合わせてしまってるような感覚になったためだ。妹と一緒に暮らすために地元の金持ちの妾にまでなろうとした子だ。レインとの結婚話も流れのまま受け入れてしまったのは選択肢がなかったのがよくわかる。身寄りもなく仕事もないのだ当然の帰結だろう。
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